神ゲーでVRデビュー!   作:ずーZ

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お前と(一緒に)戦いたくなかった!(VS貪食の大蛇

 □

 

 

 

 

 森を完全に抜けると、緑のない乾いた大地に見たこともないくらい大きな蛇が現れた。

 なんでか髪の毛が生えてるのは気になるが。まるで丸太みたいな太さのホースを幾重にも巻いたかのような、あの異様なデカさの前じゃ瑣末事だ。睨んでくる爬虫類独特の眼差しは見つめ返すだけで飲まれそうで、チロチロと見せる舌すらデカいしやたら長い。あれで絡め取られるだけでも逃れられないだろう。

 

 

「うおらいくぜヘビてめえええええーっ」

「……、……うわあ」

 

 

 うわあ。

 貪食の大蛇でっけえこえーもはやカッケェ、って俺が畏怖して感動した直後に、合図もなく突っ込むのかよ。

 

 やべー。ブレイカーさんヤベェ……。VRゲームのマルチがどこでもこんなんだったら俺ずっとソロでいいや、って思う位の身勝手を地でいきやがる。

 

 

「おらおらー! どしたどしたー!?」

 

 

 もっとも。

 Lv22は伊達じゃないか。蛇のあの図体が大剣で切られるたびに大きく震えている。こりゃ楽勝そうでいいけど。

 ただ見てるだけじゃあとで絶対めんどくさいこと、グチグチグチグチグチグチ言われるよな。確信がある。

 

 仕方ないなあ。

 

 

「ファイアボ」

「そらあっ!」

「……ストップブ」

「ぐぅう!? なんだやるじゃねえかあ! うりゃあ!」

「…………んー」

 

 

 邪魔! 

 

 やたらめたらと動き回られる。

 ブレイカーさんが右往左往してタゲ取ってるもんだから、大蛇もそれにつられて弱点だろう頭が狙えない。だが何となく、動きは読めなくもない。

 

 ブレイカーさんの位置取りから大蛇の動きに合わせて。

 どうにか、狙いを、定め──た! 

 よしここっ

 

 

「ファ」

「隙だらけだぜえ!」

 

 

 

 ……直後にブレイカーさんが射線にまあ入る入る入る。

 やっぱり無理せず傍観に徹して、いつでも行けるようにはしておくか。

 

 

「おい!! サボってねえで! 今のうちにお前も攻撃しろよなあ! 寄生かよ! 晒しちまうぞてめえ!」

「っ。……すみ、ません」

 

 

 大っっっっっ変言いたい事はございますが、事実ではあるので仕方ない。

 ひたすら危険だが、ここは多少無茶するかっ。

 

 接近して、ぶち込む! 

 

 まずブレイカーさんが陣取る位置、大蛇の真正面、と反対側に大きく距離を取りながら移動。さて、と気を見計らって、たまらず息を飲む。

 

 離れてるからこそよくわかる。あらゆる動作とそれが及ぼす規模のデカさ。

 地面が冗談みたいにバカスカ砕けて砂塵が舞う。

 大剣や蛇が何度となくぶつかり合う度、波打つように風が吹く。

 

 余波だけで明白。

 飛び込んだら死ぬ。

 なんてスリルだ。

 

 これがゲーム。

 これがシャンフロ。

 

 

「ファイアボールっ」

 

 

 駆けながらのそれ、我ながら驚くほどの絞り出すような声。

 それでも。

 唱えた通りに、杖の向いた先へ火球は飛ぶ。

 

 近づいて、攻撃を避わして隙を見い出して、刃を叩きつける戦いは俺じゃできない! 

 近づいて、テキトーにぶっ飛ばすだけしかできねえよクソッタレが! やってやる! 

 

 ……攻撃を避けてなんて考えるな。無理なものは無理だ。でも、呪文を唱えるだけで俺は戦えるんだから、口を止めるな! 

 

 放った火球はちょうど身動ぎした蛇の背を掠めていく。なんの痛快にもならないだろうが、当たった。

 

 よし! もっと近寄れば戦える! こんなおっかない大蛇と! 

 すげえよVR!! 

 やべえなシャンフロ!! 

 

 

「手を休めんな! トロイんだよもっと魔法使え!」

「……」

 

 

 水をさされるってのはコレかな。アレがいなかったらなあ、けど居てくんないと戦いにならなかったかもだし。

 

 だが言われるまでもない。

 

 さらに近寄る。圧を感じる。今俺は蛇の攻撃圏内にいると肌でわかる。だがここなら絶対当たるっ! 

 

 

「ファイアボール!」

 

 

 尻尾よりにイイ当たり。蛇の動きが一瞬止まった! 頭を狙って畳み掛ける! 

 

 

「ファイアボール、ファイアボール! っち、ファイアボール」

 

 

 頭を狙った最初の2発は外れ。仕方なしに3発目を体に当てる。

 瞬間、グッと体が重くなった。

 これは? 

 

 

「なん、!?」

 

 

 右側から大きな風音。咄嗟に左手を翳しスキル『ガードポイント』を発動。直後、左手の盾に蛇の尻尾が叩きつけられた。

 甲高く弾ける音が全身を震わせる。盾にかけた防御スキルがその攻撃を受け止めて、威力を大きく減退している。

 

 

「う、わったた」

 

 

 だが俺の体は衝撃で数メートル飛ばされた。幸い尻もちはつかず、すぐ体勢を整えて蛇へと向き直る。

 

 目と目が合った──ここ、真正面じゃん。

 

 

「っっ」

 

 

 目の前に誘導!? 完全に狙われてる! 

 

 圧がさらに増す。バックステップ、はダメだ、何をしてくるか分からないし、こんな至近距離からじゃ逃げられる気がしない! 

 逃げるように、隠れるように盾を体の前に出す。

 

 大きく口が開かれた。鋭い牙が、粘液が、人1人丸呑みにするなど訳ない口腔。まるで俺を覗いているかのようだ。

 

 来る、と何故か予感がした直後のこと。

 

 

「無視すんな蛇! っへ、ぁっしま、毒くそっ」

 

 

 俺と反対側に位置するブレイカーさんの雄叫び、そして短い悲鳴。

 蛇を背後から切りつけたが、この蛇ならではの毒糞による反撃を受けたっぽい。なんにせよ。

 

 視線が一瞬でも逸れたことで圧が一気に下がった。

 

 

「ファイアボールッ」

 

 

 その一瞬にまず一撃! 

 ファイアボール1発を顔面に叩き込めた。炎の粉塵が舞って隠れた顔面へ、さらにと立て続けに放つ! 

 

 

「ファイアボール!」

 

 

 2発目も頂き! 3発目を、

 

 

「ファイアボー」

「やりやがってえー!」

「ル!?」

 

 

 ブレイカーさん!? 

 怯み続ける頭に3発目を撃ったとほぼ同時、復帰してきたブレイカーさんが飛びかかってってマジか今かよ!? 

 

 

「あっぶ、てめ邪魔すんなヘタクソぉ!!」

「は──、っ……っ!!」

 

 

 諸共吹っ飛ばしてやりたいと、心底思った。

 いやコイツほんと…………

 

 

「ストレングス! チャージングスマッシュ! ……っい、──へへ、くらえカウンターブレイドォオッ!!」

 

 

 ブレイカー何某の何やらスキルで強化した大剣を、攻撃を受け止めて発動するらしいカウンター系の合わせ技で、大蛇が轟断された。

 

 オーバーキル、だったのかもしれない。あっという間に貪食の大蛇の全身がポリゴンと化し、消えていった。

 

 

「はあ」

 

 

 いくつかの大蛇素材、レベルアップ通知。

 だが、不安だらけだったボス討伐をなし得たのに、達成感、なんてない。協力した感覚もない。頼りきりになったつもりもない。

 

 ──とっとと行こう。

 

 

「おいおいてめさっきは」

「じゃ! おつかれっした! あざしたー! 急いでるんで失礼しますね!」

「は」

 

 

 なんか言おうとしてるが知るか。パーティはすでに抜けている。せカンディル行って、セーブポイントでステ振りして、一旦落ちよ。

 

 

「待てよ!」

「っ!? なんです?」

 

 

 肩を掴むな、強すぎてハラスメント出てんぞ。

 一瞬通報するのも悪くないと思えるくらいだったが、一応はボスを倒せたのは間違いなくコイツのおかげ。さすがに通報まではできない。いやしたいが。

 

 

「解毒ポーション寄越せ」

「え」

 

 

 え。

 

 毒糞攻撃は、攻略サイト見てなくても、そもそも1度の戦闘中1度は必ず最後っ屁みたいに使ってくる攻撃。

 見た感じあの蛇素材で作った全身装備までしておいて? 何度も倒した事があるのに? 

 

 ……ふんたー。

 

 

「はい」

「早く寄越せよったく。……あー治った。クソが面倒くせえ攻撃しやがる、ナーフしろよホントこんなの」

 

 

 お礼もなしか。まあいいけどさあ。

 

 

「つーか何勝手にパーティ抜けてんだよ。やめてくんね? そういうの迷惑だぞ」

 

 

 ──んー。んー? 

 

 

「急いでるんで」

「はあ? お前オレがいなきゃ」

「い・そ・い・で・る・ん・で」

「うわウザ。寄生野郎かよなんなんだよ。はー、気持ち悪。とっとと行けよ急いでんだろ。あー嫌な奴手伝っちまったぜほんと最悪だわ!!」

 

 

 言い捨てて森へと引き返す後ろ姿に、ファイアボール!! ……と、MPのある限り唱えなかった俺を、誰かめちゃくちゃ褒めて欲しい。

 

 

「……ブレイカー、ね」

 

 

 二度と関わらないっ!!

 

 

 









ファステイア編〆。
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