神ゲーでVRデビュー!   作:ずーZ

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原作鉛筆がその時々でB~2Bくらいなら、この鉛筆は2B混じりの4B鉛筆くらい。


セカンディル 2

 …………

 

 ちょっとした沼の川を渡りきる直前、向こう岸の大岩の影から蹴飛ばされるように人が転がりでたのを見て、泥沼の中だが咄嗟に傍の小さい岩陰に無理やり隠れた、わけだが──

 

 

「PK所有物判定、倉庫とか、……知り合いの……んー。なるほどねえ。検証が……」

 

 

 一通り、シグマ・レガートというプレイヤーの持っていたのだろうマーニや装備、アイテムをニコニコニコニコと拾いながら、なにやらウィンドウを眺めて頷くPK、アーサー・ペンシルゴン。

 

 

「ワクワクして来たっ」

 

 

 得心がいったのか微かに見える笑みは、ゾクリとするくらい()()を感じた。

 いやもう怖いとかじゃねえ。PKはゲーム的な要素だとしても正気を疑う。たとえ、プレイヤーがポリゴンに還ってまた再起動していたとしても、だ。こんなリアルな人型相手に容赦なく槍を突き立てて、罵詈雑言の怨みをぶつけられてそれでまだ心底楽しそうにしてる、その心境を俺はまっっったく想像できない。

 

 PKを否定するつもりは無い。俺だってディスプレイゲームのPvPには参加したし、流れでPKもPKKも数回経験ある。

 

 だがVRで、しかもこのシャンフロシステムだ。感情表現、NPCの喜怒哀楽はほとんど本物のそれだ。プレイヤーのなんてもっとリアルだ。それを真正面で受けて嘲り笑える精神力、ありゃマジものだ。関わりたくないっ。

 

 

「っあっははは!」

 

 

 ……!? 

 アーサー・ペンシルゴンが唐突に笑った。何を笑ってるのか、もうチラッとでも覗こうものなら見付かる気がしてダメだもう無理。

 なにが可笑しいのか知らないが、早くどこかにいってくれ……

 

 

「スズキ・えすじーくん? でいっかな? 読み方。なんでもいいけど、あまりに可笑しくて必死すぎて、いかな私でも不意打ち出来なかったから特別に『どうして居所が分かったのか』教えてあげよう。まずは出てきてくれる? そこのちぃっちゃい岩からサ」

 

 

 完全にバレてる!? なんだってんだ、なんのスキルだ? くそ、こうなった以上仕方ねえ落ち着け、()()()。落ち着け、俺がなっちゃいけないパターンを考えろ──

 

 

 ゆっくりと。

 起き上がって改めて、アーサー・ペンシルゴンを見る。

 

 

「おや? さっきぶり。名前までは見てなかったんだ、殺りやすそうだなってしか見てなくてね。ごめんよスズキくん」

 

 

 聞き惚れた声色で名前を呼ばれた、そこに高揚はしない。そんな余裕はない。

 

 こうして向き合ってわかる、なんて圧だよこの女……

 

 夕闇に染まってなお映える立ち姿に、愉悦に爛々と輝くような眼差しに、正直に俺は震えが抑えられない。

 ぶっちゃけ貪食の大蛇よりも、もっとでかいヘビの顎に咥えられているかのようだ。

 Lv差が開いてるのか? 何かのスキルか? 

 

 

「だんまりかあ。にしても、──っぶぷ。めっちゃくちゃ泥だらけじゃんもうっ。いやホントに必死だったんだねキミ、くくっ」

「っ。なんだよ、ほら顔を出したぞ! 笑ってないで教えてみろ! なんのスキルを使った!?」

「んー? べつにー、しっかりと見えてただけだよ?」

「え」

 

 

 見えてた? 隠れるところを? 

 

 

「あらあらいやはや、バッサリやっちゃうのも躊躇するくらいのビギナーなんだねキミ。演技だったとしたらおネエさん脱帽ものだよそれ」

「へ。な、なんで俺が初心者だってわかるんだよあんたっ」

「んーとね? キミさ、そこの岩に全身隠してたけどさ、それじゃ隠せないんだよ()()()()()()()()はさ」

 

 

 あ。

 アーサー・ペンシルゴン、その名前は彼女のアバターより何十cmか中空にある。それはメニュー操作でわざわざ『ゲーム内の全ての文字出現をoff』設定にしてる酔狂な人間でもない限り、誰にでも見えてるもの、で、つまり。

 

 顔から火が出る思い、とはまさにこれこの状況だ。

 

 

「つまり俺は隠れてるつもりで、アーサー・ペンシルゴン、さんからすりゃ……」

「『さん』ってこの状況で着けるかな。ま、そゆこと。頭隠して何とやらって感じで笑えた笑えた。それはそれとして」

 

 

 ん? なんだこの人、急に眉を潜めて。

 

 

「ペンシルゴンって呼び捨てがいいなあ、少なくとも今は。私としては。それでよろしくスズキくん」

「え、あ、はい。じゃあ、ペンシルゴン」

「よし」

 

 

 何がよしなのか。ダメだ完全に向こうのペースだ。しかし逃げようにも戦おうにも、こっちは移動制限がかかる沼の川の真っ只中、あっちは沼から多少離れた平地。

 魔法で戦えるにしても、このPKをやり慣れてるペンシルゴンの雰囲気からするに、相当場数踏んでるのは明らかで。MPが切れるまでに倒せるか、退かせることができるのか俺に……

 

 

「まあ? 名前が見えてたっていっても半分くらいさ。この暗がりでなら、フツーのP(プレイヤー)K(キラー)なら見逃してたんじゃない?」

 

 

 私はフツーではないと言わずとも聞こえた。

 暗がりの中でもプレイヤーは夜目が効く。ハッキリとは見えないが。ペンシルゴンは強調するかのように「PK」と言って、クルリと、槍を一振した。

 

 霧散していた圧が戻ってくる。ゆっくりと、ここに来て初めて穂先を向けられた。

 さらにさらに圧が増してくる。空気が戻った。杖を握る両手に自然と力が入った。

 

 

「なんてね」

「へ?」

 

 

 再び圧が消えた。アッサリ穂先を下げて何するかと思えば、踵を返すように半身になるペンシルゴンの、うわ流し目やめろ心臓に悪い……

 

 

「まだ私は出会ってないけど、夜にこの辺りで現れる『レッドキャップ』ってモンスターが中々メンドクサーイみたいでね。スズキくんみたいに音で寄ってこられちゃ困るのよ、おネエさんとしてはさ」

「だから、もう」

「そ。帰るの。PK御用達ってとこもホントにあるのか探しとかないとだしねえ。そんな泥沼にハマったスズキくんみたいなビギナーを滅多刺し、ってのはちょぉっとだけ良心が痛むから、さすがにねー」

「はあ」

 

 

 なる、ほど? そうか、夜のモンスター相手は俺も嫌だし、何にしても対人に慣れてそうなこの人相手に勝てるかもわからんから願ったりだ。たぶん経験だけじゃなくLvも俺よりあからさま上だろう、装備的に見ても。

 ただ、さすがにさっきの嘲りっぷりのあとのそのセリフはな。かといって「良心あんの?」とは、うん、状況的に口を噤むしかねえわこれ。

 

 

「んじゃ、そういうわけですサヨウナラ。またねー」

「またはいいです。はあ」

 

 

 こりゃダメだと半ば観念してたが、よかったいやはや、助かった助かった──ん? 

 ピトッて腹に何か当たっ、ん? いやこれ刺さってる? なんだ? 

 

 

「(トゲ? いやこれ──は)」

 

 

 ──声が出ない!? 

 

 

「スパイラルホーク」

 

 

 彼女の楽しげな声にハッと顔を上げた時には、右肩が根元から吹き飛んだかのような衝撃に襲われた。

 

 

 

 




コレジャナイ感はネニキじゃないから許して。
あと(3月12日21時15分現在TL)私の性癖は直球でおっきい胸。めがね、タレ目、指、手首、脇、ソケイブッ。むずがる様子たまらなくない?

頭を撫でる撫でられる、シチュや強弱リアクションそこからの展開その前後、その辺全部ひっくるめて好きらしい。
アキツアカネもとい隠岐茜ちゃんは推しであり光、卒業式茜ちゃん2次書きたいし読みてえなあ
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