その後時間は経ち、放課後になった。
放課後のトレーニングを終え下校路についたゴールドは、昨日と同じように『祝福』へ向かっていた。
午前のオフサイドとの一件後、ゴールドは先輩の状態に配慮して、あの後は部室には行かなかった。
放課後のトレーニング前後も行かなかったので、オフサイドとは午前以降学園で会わなかった。
『祝福』に着くと、店内ではライスシャワーと、彼女の親友である
「あらステイゴールド、こんにちは!」
座席でライスと談笑していた美久が、来店してきたゴールドの姿に気づいた。
「学園の新星さん!今日もお疲れ様!」
彼女は持参していたカメラをゴールドに向け、明るく問いかけながらシャッターを切ろうとした。
だが寸前でそれを止め、カメラを下ろした。
何故なら、ゴールドの表情に笑顔がなかったから。
「どーも美久さん、こんちは。」
学園専属カメラマンの美久とはかなりの顔馴染みであるゴールドは、相変わらずですねーと挨拶しながら、彼女とライスがいる席の側にきた。
何してるのかなーと覗いてみると、テーブルの上には、美久がここ最近撮影した写真が多く並べられていた。
どうやらライスにそれを見せている最中だったらしい。
「お疲れ様、ゴールドさん。」
「どうもライスさん。今朝は苦いコー…ゴホン、美味しいコーヒーをありがとうございました。」
「いいのいいの。何飲む?」
「いつものやつで。」
ライスに飲み物を注文した後、ゴールドは再びテーブル上の写真を一つ一つ眺めた。
写真に写っているのは、レースを制したウマ娘達、トレーニングに励むウマ娘、授業や休憩時間を過ごすウマ娘、プライベートの時間を楽しむウマ娘達…など。
撮影された写真の現場や状況はそれぞれ異なるが、共通しているのは写真に映っているウマ娘達がみんな笑顔で幸せそうな表情を浮かべている点だ。
美久は、ウマ娘達の幸せな姿、笑顔に満ち溢れた姿を撮影するカメラマンなのだ。
「相変わらず、明るい写真ばっかりすね。」
ゴールドはそう言いながら、いくつかの写真を手に取った。
レース関係の写真が、まず眼を引いた。
菊花賞でライバルを圧倒し、世界レコードの樹立と共に二冠達成したセイウンスカイ。
エリザベス女王杯で女帝を破り優勝した名族令嬢メジロドーベル。
マイル
JCで上位を独占したエルコンドルパサー・エアグルーヴ・スペシャルウイークの3人。
他には、大穴で驚きの重賞制覇を果たしたユーセイトップランや、初のG1レースでかつ最低人気ながら健闘し、最後はヨレヨレながらも4着に入り喝采を浴びたナギサとかの写真もある。
レース関係の他には、トレーニングに励む『リギル』・『スピカ』・『カノープス』などのチームの写真、または日常の学園におけるウマ娘達の様々な姿が撮影されていた。
みんな楽しそうだな、生き生きしてる。
写真を次々と見ながら、ゴールドは羨ましく思った。
特に、トップランと一緒に写っている彼女の仲間《チームメイト》のエガオヲミセテなんて、名前通り良い笑顔を見せているなー。
そう思う中で、彼女は全ての写真の中で、ある一定の者が映っていないことにも気づいていた。
一定の者、それは『フォアマン』の面々だ。
「うちのメンバー(離脱中だが)、あたしも含めて一人も映っていませんね。」
「そうなのよね。」
ゴールドの言葉に対し、撮影者の美久もそれが分かっていたらしいく、うーんという表情をした。
「『フォアマン』メンバーの明るい写真も撮りたかったんだけど、誰一人としてそういう場面を見れなくてね。」
「マジすか?こないだ初勝利を挙げたエアデールも?」
「エアデールちゃんね…。一応笑ってはいたけど、どこか影のある感じがしたから、私は撮れなかったわ。」
「マジかー。」
「彼女も、他のコ達も、まだ中々笑顔にはなれないみたいだわ。」
美久はそういいながら、テーブル上の写真を鞄にしまいはじめた。
「出来ればJCで、あなたの明るい笑顔を撮りたかったけどね。」
「すんませんねー、勝てるどころか10着で。」
「ごめん。」
「気にしないでください。」
あのレースは自分でも不甲斐なかったと自覚してる。
「普段のあなたの笑顔も期待してるんだけどね。」
「すんませんねー、曲がった仏頂面で。」