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会見が終わった後、生徒会ウマ娘達は殺到してきた報道陣達の取材攻勢をかわし、生徒会室に戻った。
「お疲れ様でしたわ。」
生徒会室に戻ると、生徒会長のマックイーンは役員達を労った。
「…お疲れ様でした。」
疲労の色が全くないマックイーンと異なり、他の三人はかなり疲弊して見えた。
特にゼファーにその色が濃かった。
「ご協力ありがとうございました、ゼファー。」
会見前にその内容でゼファーと対立していたマックイーンは、感謝するように彼女を見た。
「礼には及びません。私は生徒会役員として義務と本分を果たそうとしただけですから。それに…」
「大変なのはこれから、だからね。」
パーマーが、ゼファーの肩に手を当てながら言った。
「なんたって人間達に歯向かったのだから。運営に支障が出ることは間違いない。レースの施行もこれまで通りにはいかない可能性が高いし、ファンとの対立も深刻化するよ。」
「厳しいことばかりではないと思います。」
生徒会役員の中で最も年少のトップガンが、気勢を保った口調で首を振った。
「今回の我々の会見と覚悟を見て、偏っていた考えを変える人間の皆さんもきっといる筈です。長年の負の遺産は膨大ですが、今は動き出せたことの意味の大きさを考えるべきです。勿論、今回のことで何かしらの犠牲が出る事は覚悟せねばなりませんが。」
「…そうだね。」
ゼファーは、トップガンの言葉に頷いた。
「理事長や渡辺医師を始め、ウマ娘の味方をしてる人間だっている。悲観し過ぎてはいけないわね。」
少し時間が経つと、生徒会は今後の行動について話し合った。
その結果、パーマー・ゼファー・トップガンらは学園に残って外部との対応にあたることになり、マックイーンはこれから中山に向かうことになった。
その方針が決まると、すぐにマックイーンは中山に向かう為生徒会室を後にした。
学園に残ることになった役員三人は、今回の会見受けての外部の反応を確認した。
「会見の内容に対する一般の反応は、内容が内容だけに非常に混乱した反応のようです。」
ネットでそれを調べているトップガンが緊張した面持ちで言った。
「会見内容の真偽を疑う声も多いですし、非難の矛先を逸らさせる為の学園のでっちあげだと言う声もあります。少なくとも、学園の発表をすぐに信じた一般ファンは殆どいないようで、疑問の声が遥かに多いです。」
「やっぱりか。」
それは予想出来てたことなので、パーマーもゼファーも大して驚かなかった。
「一般はともかく、レースの協賛者やスポンサー関係者の方は大変みたいだわ。今回の会見に対してかなり反発が強いみたい。理事長をはじめ人間の学園運営関係者が四方八方で手を尽くして対応にあたると約束してるけど、厳しい状況は避けられないわ。」
パーマーが険しい口調でそれを言うと、ゼファーが反応した。
「その件については、人間だけじゃなくて学園の元生徒達も対応に当たってくれるようです。」
「元生徒?」
「アンバーシャダイ先輩やミスターシービー先輩など、外部との関係も深い偉大な先輩方達です。各々、対応に奔走して下さるとのことでした。」
「そうですか…。」
ゼファーからの情報に、パーマーは複雑な表情をした。
学園の偉大な元生徒達が、今回の学園の断行に対して難色を示していたことは知っている。
それでも学園の為に動いてくれることに、感謝と責念を感じた。
「…。」
複雑な思いを胸に、つとパーマーは思い出したようにスマホを取り出し、あるウマ娘に通知を送った。
『デュレン様へ報告です。マックイーンは中山に向かいました。 パーマー』
「そういえば、渡辺医師はどうしたのかしら?」
ふと、ゼファーが今更思い出したように言った。
「そういえば、そうですね。」
トップガンも思い出したように呟いた。
会見終了前に会見場を後にした椎菜とは、その後誰も会っていなかった。
「渡辺医師なら、もう療養施設への帰路についたと思うわ。」
パーマーは作業の手を止めずにぶっきらぼうに答えた。
「…。」
ゼファーもトップガンも思うことがあるのか、それ以上椎菜のことに関しては言及しなかった。
椎菜は今回の会見で、生徒会と同じく人間達に対し重大な行動をした。
しかしそれは学園側としてではなく、療養ウマ娘側としての行動だった。
椎菜はむしろ、一般の人間達より学園上層部に対して敵意を抱いてた。
だから彼女の行動は、パーマーら生徒会にも突き刺さっていた。
というより、彼女の行動から療養ウマ娘達の受けている苦しみを痛切に感じた。
「…私達は、私達の責務を果たそう。」
パーマーが、重い口調で呟いた。
療養ウマ娘達の行く末は、椎菜や施設にいるブルボンらの同胞達に任せているのだから。
一方。
中山に向かう為生徒会室を後にしたマックイーンは、すぐには学園の外には行かず、学園内の一室へと向かっていた。
「…。」
一室に着き扉を開けると、マックイーンはその室内の様子を見てやや眉をひそめつつも、微かに微笑を浮かべた。
そこには、メジロ家の使用人と思われる人間がいて、その片方の手には注射器が握られていた。
そして使用人の足元には、意識を失って倒れている椎菜の姿があった。
「処置、ご苦労ですわ。」
室内に入ったマックイーンは使用人を労うと、倒れている椎菜に視線を落とした。
椎菜の手元には鞄が落ちていて、中身の物が見えた。
…私の想像通りだったようですわね。
鞄の中身をチラと見下ろし、マックイーンは胸中で溜息を吐いた。
「渡辺椎菜医師、これもウマ娘の未来の為の闘いですわ。」
鞄から眼を逸らし、マックイーンは意識を失っている椎菜を見下ろしたまま、無感情な声で語りかけた。
「重要な役割を果たして下さりありがとうございました。心から礼を言いますわ。」
その後、マックイーンはメジロ使用人に幾つか指示を出し、室内を出ると今度こそ学園の外へと向かった。
学園の外では、メジロ家の車両が待機していた。
外は既に闇に覆われていて、寒い風が吹き荒れていた。
晴れていた筈の空は、いつの間にか雲に覆われていた。
「…。」
つと、マックイーンは二つの方角の空を見上げた。
一つは療養施設の方角、もう一つは中山の方角。
…どちらからも感じますね、途轍もなく膨大な〈死神〉を。
マックイーンは視線を下ろし、車両に乗り込んだ。