1998年11月1日「消された天皇賞覇者」   作:防人の唄

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神速のウマ娘(1)

 

 

今年は、様々なウマ娘がレースを賑わせた。

 

自在の逃げ足で皐月賞・菊花賞を制したセイウンスカイ。

天才トレーナーの悲願であったダービー制覇を果たしたスペシャルウイーク。

入学2年目で国際大レースのJC(ジャパンカップ)を制したエルコンドルパサー。

超良血のプリンセスとして三冠《クラシック》を賑わせたキングヘイロー。

名族の貴公子として長距離戦線を制したメジロブライト。

“女帝”として今年も第一人者の活躍をみせたエアグルーヴ。

短距離戦線で圧倒的な強さを見せ、海外の大レースも制したタイキシャトル&シーキングザパール。

そして、勝ち星こそないが大レースで大活躍したステイゴールド。

彼女らの活躍によって、ウマ娘界は史上最高といえる盛り上がりを魅せている。

 

しかし、数多くいる新星ウマ娘の中でも、別格の輝きを放つウマ娘がいた。

名は、サイレンススズカ。

 

 

サイレンススズカ、入学3年目の栗毛のウマ娘。

入学当初から、その非凡なスピード能力は注目されていた。

だがメンタルにやや不安があり、レース直前にパニックを起こしたり所属チームを何度も変えたりするなど何度もゴタゴタがあった。

そのせいかレースの内容も毎回不安定で、期待されたクラシックでも結果を残せないまま、燻った状態で2年目までを終えていた。

 

だが3年目、新たにチーム『スピカ』に入ってから、彼女のメンタルは安定し、同時に走りは一変した。

一変というよりは、秘めていた能力が一挙に覚醒したというべきか。

 

年初のバレンタインS(ステークス)での圧勝を皮切りに、スズカは中山記念(G2)・小倉大賞典(G3)・金鯱賞(G2)と重賞戦線を連戦連勝。

特に金鯱賞では、前年のG1レース覇者を含めた相手達に2秒近い大差をつけて圧勝するという驚異的な強さを見せつけ、一躍スターとして躍り出した。

 

彼女のウマ娘としての最大の魅力は、そのレースでの内容だった。

先行逃げ切り、或いは後方からの追い込みといった基本的なレース運びではなく、スタート直後から先頭に躍り出てハイスピードで飛ばし、そのまま最後まで逃げ切るというのが彼女の戦法だった。

 

普通、スタートから最後まで先頭で逃げ切るというのは至難の戦法。

ましてやハイスピードでの逃げ切り戦法など、自爆覚悟の危険な戦法だとされていた。

 

ウマ娘の歴史でも、その戦法をとっていた者は希少といえる程少ない。

その戦法を使っていた数少ない一人であるツインターボというウマ娘は、何度か勝利を重ねたことがあるが、それ以上の数の惨敗を重ねた。負ける姿は“逆噴射”などと揶揄された。

またメジロパーマーというウマ娘も、その戦法で宝塚・有馬記念という大レースを制したことがあるが、そのレース内容はギリギリで、またそれ以外のレースは振るわないものも多かった。

 

 

唯一、その戦法で結果を残し続けたウマ娘は、20年以上前に活躍したカブラヤオーという大先輩のウマ娘のみ。

ただカブラヤオーは極端な臆病ウマ娘で、他のウマ娘と群れで走るのが怖いから、超ハイペースの逃げ戦法をとっていた。

臆病ゆえ使わざるを得なかったその戦法と走りは、レースの最後にはカブラヤオー含めた全ウマ娘達がバテバテでゴールインしターフ上に倒れ込むという凄まじい結末となっることもあり、『狂気&恐気・殺ウマ娘的な逃げ』と称された。

カブラヤオーはその戦法で、皐月賞・ダービーを制覇し、通算で9連勝含めた13戦11勝というウマ娘史上屈指の好成績を残した。

だがそれでも、戦法ゆえか結果と裏腹にレース内容は辛勝も多かった。

 

サイレンススズカは、そのカブラヤオーを超えたのではと思う程の強さを見せていた。

何故なら、ハイペースで先行したまま最後まで脚色が衰えることなく、表情も全く変えないまま他のウマ娘との着差を引き離しての圧勝を繰り返していのだから。

 

つまり戦法ではなく、スズカはただ気持ちよく走ってるだけなのだ。

ただ気持ちよく走るだけで、他を圧倒する程のスピードを備えているという、稀代のウマ娘だった。

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