刀鍛冶師が行くネギま   作:金属粘性生命体

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日記:3

 

 

 

 

 

△月○日

 

 今日も今日とて刀を打つ。でも最近は色々と試していることがあるのだ。いわゆる刀に対する属性付与というものだ。

 

 刀に対して火属性やら氷属性なんてものが付与出来ればもっと戦法が広がるため急務になっている。詠春もなかなか乗り気のせいか色んな呪物とか持ってきてやがる。

 

 今日なんか特に酷かった。下手したら俺の家が丸ごと呪われるかと思うほどには強烈なやつだった。確か名称はなんだっけなぁ……

 

 そうそう【神便鬼毒酒(しんぺんきどくしゅ)】って言ったっけな。なんかどっかで聞いたことのある名前だ。

 

 

 

△月✕日

 

 昨日受け取った【神便鬼毒酒】をどうやって使えばいいのか分からんかったが、とりあえず焼き入れの時に水の代わりに使用してみた。

 

 刀が熔けた。

 

 は?

 

 

 

△月□日

 

 どうやら強力な腐食性が原因で鋼が持たないようだ。これは材料の段階から考えなければならないな。

 

 対腐食性ということを考えればステンレスなどがあるが、刀として扱うに少々強度が不安だ。これはかなり悩まされそうだな。

 

 詠春も首を捻っていたが、そういえばあれ使えるなら作れそうな気がする。ちょっと試してみる。

 

 

△月?日

 

 対腐食性という概念を付与した魔剣なら耐えることが出来た。これならいい刀が出来そうだ。ただ、どうなるかちょっと分からない……

 

 まずひとつ言えることがあるとしたら、なんかイヤーな予感がするのだ。

 

 

△月!日

 

 やっぱり厄ネタだった。

 

 しばらくは布団から起き上がれそうにもない。

 

 

 何が起きたのかと言うと、どうやら全力を持って打っていたらその反動と呪いの強さにより肉体が汚染されていたようだ。禊をしなければならないと言うが、「明神切村正」を脇に寝かせていたら楽になったのでしばらくは持つだろう。

 

 明日、滝行しに行ってくる。

 

 

 そうそう、新しく打てた刀の銘は

 

酒呑童子・紫(しゅてんどうじ・ムラサキ)】という。

 

 刀身が紫色に染まっていて、腐り切るという奇妙なことが出来る。鞘は【神便鬼毒酒】を保存していた瓢箪を材料に作り出した。後はこの刀からでる強烈な酒気に多くの人は酔うだろうな。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「以前に迷惑をかけないと決意したばっかでしょうに……」

 

 若気の至りなんて言葉が使えないほどには歳をとった、それはつまり失敗も成功も味わってきたということ。それなのに以前発生した百鬼夜行の件を糧に成長ができていなかったようだ。

 

「それにしてもこの刀。何やら奇妙な気配を感じますね?」

 

 村正さんに持っていった最上呪物【神便鬼毒酒】。酒呑童子を酔い潰したという強烈なお酒。それを用いた刀。良くもまぁ作り出すことができたものです。もはやこの刀、妖刀と化していますね。

 

「封印処置、した方が良いのでしょう。勿体ないですが、これはさすがに危険すぎます」

 

 鞘に入れていない限り周囲のもの全てを腐らせる。そしてありとあらゆる生命体を酒に酔わせる。これほど危険な刀はありませんね。

 

「明日封印処置しましょう。今日はその下準備ということで札の準備や──」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 夜、なにかに呼ばれる気がして目が覚めてしまった。一体何に呼ばれたのか、気になってしまった私は深夜に屋敷の中を歩き回る。

 

 恐らく私のことを呼んだであろう存在に近づけば近づくほど、何かの声が聞こえてくる。耳をトロトロに溶かし尽くすようなその声は、聞く度に多幸感に溢れていってしまい、徐々に歩きから走りに変わっていく。

 

 そしてついに見つけた声の主は刀から聞こえてきていた。

 

 たしかこれは村正さんが新しく打った刀のはず。妖刀と呼ぶに等しいと近づくなと言われていた。

 

 なのに私はフラフラと、誘蛾灯につられる蛾のごとくその刀に近づいていく。

 

『そうそう、こっちへ来とぉくれやす』

 

 ついに手に取れる距離になり、手を伸ばし。

 

『抜いてくれへん?』

 

 そして、刀を抜きはなった。

 

 

 

 

 

「ふふふ、偉う可愛い子やったなぁ。悪いような気もするけれど、しゃあないことやさかい。しばらくこの体、借るなぁ」

 

 

 

 

 もはやそこには淫靡に笑う少女が立つだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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