横へと振るう、弾かれる。
縦に振るう、ズラされる。
突きを繰り出す、受け止められる。
「クハ」
久しぶりの再会に喜びの感情が全身を支配する。それに呼応して右手に持つ刀も振動する。
「うーん?」
「……どうしたよ」
「嗅いだことのある匂いがするんやけど……色々混ざりすぎやない?」
「まぁお前に匂いだけで気づかれるのはちょいと都合が悪かったもんでな、匂いは誤魔化してるんだ、よっ!」
魔力を刀に注ぎ込むと炎熱を纏った状態になった刀を振るいその延長線上にある山々ごと酒呑童子を焼き斬る。その一閃は強烈でその余波により酒呑童子の頬には一筋の傷ができていた。
その傷より零れた血を酒呑童子は手の甲で荒々しく拭き取り……獰猛に笑った。
「……ふふ」
「あ、やっべ──」
さて、ここで忘れてはいけないことがある。鬼とは一体どういう力を持つかだ。
伝承では山を砕き三里の山を地面を砕きながら駆けると言われているらしい。ならば、鬼の首領である酒呑童子はどうなるのかと言えば、こうなる。
酒呑童子が右手に持つ刀を縦に振るった瞬間5つほどあった山に一直線で巨大な谷が出来上がった。その一閃をギリギリで避けきった村正は冷や汗が止まらなかった。
「おいおい、少しは手加減してくれてもいいだろっ!」
「ふふふ、ほんまにおもろい人やわ。ここまで滾るような事をしてくれたのはそっちやろうに」
そう言い村正が持つ刀に注目しながら笑う。
「斬られてようやっと分かったわ。それ、茨木やろ?」
「おうともよ。こいつぁ【尺骨・羅生門】ていう、茨木童子が所有していた骨刀を元に自ら切り落とした両腕を溶かして馴染ませたものだ。だからこいつもな……って何黙ってやがる。喋ればどうだ?久々の再会だろうに」
刀身は赤とオレンジに染って、柄が黒ずんでおり炭のような匂いを漂わせている。打刀と呼ばれる種類であり、非常に扱いやすいが、その刀身は非常に高い温度を保っておりただの鉄では焼き切られるであろうことがわかる。
『い、いや。今の吾では酒呑に顔を合わせられん……ほっといてくれ』
「ありゃま、恥ずかしがってるなぁ」
「ふふふ、茨木らしいわ。それで、何ができはるん?」
「こういう事が出来る。やるぞ茨木」
『…………』
「おい」
『……分かった。少しだけだ』
その言葉に笑みを浮かべ刀身に腕をさらけ出し、焼けるのを感じながらもそれで左腕の肘から先を切り飛ばした。しかしそのきり飛ばされた腕は地面に落ちず村正の眼前で宙に浮いていた。
「へぇ、それは確か茨木の」
「正直この技を使うのはまだ慣れ切ってないし、時間もないからな……今できる全力でぶちかます」
全身の魔力を左腕に集約、右手に持つ刀を地面にー突き刺し右手を左腕の残った部分に添える。徐々に切り飛ばされた腕が燃え盛っていき……それは巨大な鬼の手へと関わっていった。
「ほなうちも本気で向い打ちますわ」
「宝具、擬似展開。魔力を全力で回せ……!ここら一体全て、焼き野原にするッ!」
どこからが現れた杯と瓢箪を持ち酒呑童子は杯から酒を零す。落ちた雫は地面に触れた瞬間莫大な量の酒となり、津波となり村正へと迫っていく。
「本来とは違ぇが、焼き飛ばす!」
『合わせろ!』
「おうさ!」
『「『羅生門大怨起』ッ!」』
「溶けて、溶けて、死にはったらよろしおす……『千紫万紅・神便鬼毒』……旦那はんは骨の髄から魂まで全てウチのものや」
衝突。
酒の津波が焼かれ、周囲一体が燃え盛り。
酒呑童子の持つ刀は村正の手の中にあった。
「おかえり、酒呑」
『ただいま、旦那はん』
この後近衛詠春と共に山の修繕+街への記憶改変諸々やった。
詠春の胃が死んだ。