∀月●日
酒呑童子復活から一年経ち、今年で1997年らしい。
らしいというのは単純にオレたちがずぼらで把握していなかったからだ。この前の正月祝いでやっとその事を知った。てことはオレはこの世界に来てからおおよそ……1年近く経っているのだ。少し感慨深い物がある。
その間にもやはり刀を大量に鍛造していたのだが、どうやらこの日本の地にいる魔法使いの首領であり詠春の父、近衛近右衛門がオレの腕前に惚れ込んだのか会ってみたいという話が上がったらしい。
どうやらそれだけでは無さそうだが……
∀月♂日
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∀月♀日
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∀月〒日
近衛近右衛門とか言う奴の面会依頼が正式に通ったらしい。だが話を聞く限り余り歓迎されていない模様。何故だろうか?
酒呑が話を持ってきてくれた。酒の席で色々と聞いてくれたようだ、ありがたい。
どうやら魔法使い達は過去に【
思ったより重い事情で驚いた。そこに何故オレが行くことになったのか不思議だがまぁ……了承してしまったからには約束を守るのが大事だろう。酒呑は刀として同行、茨木はお留守番だ。理由としてはどうやら桜咲を気に入ったらしく頻繁に和菓子をたかりにオレの部屋に2人でよく来るようになった。しかもちゃんと鍛錬にも付き合っているとの事だから離れ離れにするのもあれだろう。仲良くやってくださいな。
「久々に京都から出るな……いや、こちらに来てからだと初めてか」
『うちも初めてやわ。麻帆良ちゅう場所はどないな所やろか』
「魔法使いとやらが多く居て、どうやら
『は〜、そりゃけったいな。イマドキそないな事目指して何しはるん?』
「知らないが、まともだといい」
新幹線のグランクラス。要は最高のおもてなしがされるお高い席にオレは座っていた。ただ、周りには余り人が居らず小声で話せば周りに気づかれず酒呑と話す事が出来る。
「しっかし、こんな鍛冶師に何の用だか。オレが出来んのは鉄を打つことぐらいだってぇのに」
『そら流石に謙遜すぎやない?鬼の首領であるうちとやり合えるんやし、自信持ったらええのに』
「そりゃ対外的には無かったことだ。オレが──」
楽しく酒呑と会話していた最中、突如として周囲の人の気配が消えた。流石にこれは違和感が凄いし、何となく心当たりもある。
「あそこに呪符がある、酒呑」
『ほな』
周りに誰もいないので誰はばかることなく酒呑が刀から霊体を出し、実体化する。そしてオレが指さした先にある呪符を酒気で溶かし尽くした。
「ふふふ、脆いわぁ」
「そう言ってやるんじゃねぇ。お前さんの酒気は少々呪われすぎてる、ただの呪符程度じゃあ耐えきれねぇよ」
鬼の首領である彼女の身は存在するだけで呪いの一種に近い。周りの全てを酒で魅了し、堕落させることも可能なのだ。ただし、理性の無い獣にする程度だが……
「しかし、何が目的だ?大体は分かりきっちゃいるが、人を寄せつけないだけか?」
「それは貴様が我々が登場する前に呪符を破ったからだろう!」
「これはこれは……ふふ、随分と可愛らしゅう子が出てきはった」
「……子供、か」
声が聞こえた方に視線を向けるとそこには凡そ10代前半の子供がこちらを睨んでいた。その周囲には顔を何かしらの布で隠した護衛らしき男が3人、刀を抜きこちらを睨みつける女性が更に1人居た。
それぞれ表情や雰囲気ではこちらに対して怒りを抱いているのがわかった。
「……お前さん、名前はなんだ?」
「なっ!?失礼なこのお方が誰か──「知らねぇよ」──くっ」
女性が食ってかかってきたが聞きたいのは子供の名前だ。その身に溢れる清浄な雰囲気は恐らくだが……
「いいだろうよく聞くが良い!」
尊大な態度に手を挙げ声を張る子供。
「余の名前は
「あぁ、女児だったのかい。それで、なんの用だよ」
「ふん!余の性別など関係あるまい。余はな家族たちを犠牲にした魔法使い共と仲良くしようなどという愚行をする貴様を誅殺しに来たのだよ」
思わず手に投影していた刀を下ろす、こいつを見ているとなんかやる気が起きないのだ。
何故だろうか、目をはっきりと見つめてみる……なるほど、ね。
「お前さん、ひとつ聞きたいんだがよ」
「……なんじゃ」
「お前さん本人が魔法使いを恨んでるのかい?」
その瞳には憎悪という物が足りなかった、嫌悪が少なかった、怨恨というものを孕んでいなかった。そしてそれらを感じるのは、隣に立つ女性と顔を隠して分からないが身に纏う雰囲気から相当の恨みを持つ男2人からなのだ。
「どうにもお前さんは魔法使いというものを恨んじゃいないらしい。その反面でお付きのテメェらからは心の底からの憎悪を感じる。大方お前さんはその三人の建てた計画を実行するために協力しに来たって感じだろう。違うか?」
そう言ってやると目に見えて動揺を露わにする安倍麻知。どうやら図星のようであり、年齢故か隠すということが出来ていなかった。
そして残り3人はその言葉を聞いた瞬間、殺意を全身から滾らせて各々が刀剣、槍、短刀を構えいつでもこちらに飛びかかれるような姿勢へと変わった。
「……なぜ、なぜ分かった?」
「
会話している最中に襲いかかってきていた3人のうち男二人を酒呑が一撃の元に叩き落とし、女1人を投影したハンマーで短刀をへし折り首を掴みあげる。
「トロイわぁ。もうすこ〜し早う出来へんの?」
「ぐっ!?」
「がふっ……!」
「かひゅっ!?」
「すまんな、儂だって本来はこんなこたァしたくないんだが、テメェらが襲いかかってきたのが悪いからな」
そのまま地面へと叩きつけてやり眼前へと投影した抜き身の刀を突き刺す。酒呑は叩き落とした2人に酒を嗅がせ酩酊させて正常な思考を奪っていた。
「ひとまず黙っておきな……さて、嬢ちゃん。お前さんは何がしたい?こいつらを助けるために、何が出来る?」
「何を……」
「忘れちゃあいけねぇ。元々儂が麻帆良の地へと向かっているのは詠春からの依頼みたいなものだ。分かるか?お前さんらは関西呪術協会の長たる近衛詠春を裏切ったんだよ。なら安倍麻知の部下もしくは家族であるこの3人の処遇がどうなるかは分かるな?」
「……ッ!」
「だから聞いたんだよ、何が出来ると。おそらく詠春の事だから麻知、お前さんは無事に事が終わるだろう。そんなお前さんは、この処罰されるであろう3人のために何が出来る?」
そう問いかけるも口が開けない様子の安倍麻知。幼く、立場がまだ弱い彼女が何が出来るのか、それを今は必死こいて思考しているのだろう。
そこに無粋な言葉が投げかけられる。
「姫さ──」
「黙れ、今はテメェらが口を挟む状況じゃあねぇんだよ」
「しかしっ!姫様には関係ない話!我らを処罰するだけで──」
「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ!」
「──!?」
思わず怒号を上げてしまった。あまりにも愚かな事を抜かすこいつの言葉を聞いて感情を抑えられなくなってしまった。
「あぁ!?関係ないだァ??馬鹿にしているのかテメェは!こうなったのはテメェらが嬢ちゃんを私怨でここに連れて来たからだろうが!やるならテメェらだけでやりゃ良かったんだ!どうせ免罪符にしようだとかそんなことを考えてたんだろうが!嬢ちゃんの良心につけこんでこんなことをしやがってよォ……!」
思わず刀を握る手に力が篭もり、拵えを付けていない柄の部分を握りつぶしてしまった。それを見て少しエスカレートしすぎたから、一つ息を吐き冷静になるように目を数瞬閉じる。
「ふぅ…………まぁいい、今回のことは黙っておいてやる。とっとと帰りやがれ」
「ッ!?余は答えを返せておらぬぞ!」
「一つ貸しだ。それでいいだろうよ。行け」
「しかし!」
「行け」
「っ……すまぬ……」
刀を抜いて女を解放してやり、その場から少し離れる。
「ほんまに良かったん?こない簡単に見逃して」
「はん、別に儂達になんか被害があったわけじゃないからな。元々ことを大きくする気はなかったんだ。ただ、あの女の考えに腹が立って怒っただけだ」
「……じゃあうちも気にせんとく。それでええんやろ?」
「あぁ、悪いな」
「ふふふ、うちと旦那はんの仲やないか。気にせんといて」
「なぁにが儂とお前の仲だァ」
「あら、ちゃいますか?うちはとっくのとうに恋人やと思たんやけど」
「……お前さん、そんなこと考えれたのかよ」
「失礼やわ、旦那はんは。夜の方の伽もしてはったのに」
「うぐっ……すまんな」
「ふふふ……」
「調子狂うなぁ……」
うちの酒呑童子は純愛風味で行きたいと思います。殺し愛もしますけどね、それもまた純愛よ……