ハイスクールD(ohentai)×D(oaho)   作:胡椒こしょこしょ

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スマホって凄い!
そんな話。


文明の利器は便利だなぁ!!!

「...最悪だ。母ちゃん、オラもう.....。」

 

そう言いながら机で項垂れる。

理由は簡単だ。

あの日、スライディングで窓を蹴破ったことと制服をダメにしてしまったこと。

そのことが原因で母親にブチ切れられたのだ。

あの日の夜は思い出したくない。

人間ってあそこまでぼろ雑巾になれるものかと思ったほどだ。

 

その日から小遣いカットに夕食なし。

自分で用意しないといけないのだ。

そして俺は料理が出来ない。

自分で作ろうとあの日から二日頑張ってみたが出来たのはダークマターだけだった。

 

これが独り立ちするまで永遠に続くのか...?

終わりがないのが終わり。

まさに絶望だ。

 

「おい....AVの話してんだから聞けよ。」

 

「そうだぜ!まるでお前関係ねぇみたいじゃねぇか!お前とイッセー含めてMMM団だろ!?」

 

元浜と松田がなんか言っている。

コイツらは良いよなぁ....夜家族が夕食用意してくれるんだから。

まともな飯食えるんだから。

 

俺はな、諦めて外食しまくってたら財布の中身がいつの間にかすっからかんになってたんだよ。

分かるかよ?

テメェらみたいに呑気にAV見てるわけにはいかねぇんだよ。

 

「なぁ、仲間なら今すぐ階段の窓蹴破ってきてくんないか?同じ気持ちを分かち合おうぜ....。」

 

そんな俺の有様を見て、二人は呆れた顔をする。

 

「お前さぁ....いつまで引き摺ってんだよ。」

 

「そうだぜ、今更気にしたところで窓が割れなかったことにはならないんだ。それならAVでも見て気分転換でもしようや、なぁ?これやるから。」

 

そう言われて差し出されるのは洋物AV。

それが衆目に晒されると、女子生徒たちは汚らわしい物を見るような目で俺達を見つめ、ひそひそと陰口をたたいてた。

今は弱ってるから....やめてほしいなって。

 

「...もらうけど、見るか分かんねぇぞ。」

 

「おう、構わねぇよ。」

 

松田は笑っている。

あぁ....良い友達だな。

でも、学校にAV持ち込んでるんだもんなぁ。

そう考えるとコイツバカだな.....。

 

自分の事を棚に上げて松田をバカだと再度認識していると、扉が開く。

そこにはイッセーが立っていた。

なにやら隠しているような顔をしている。

幼馴染だから分かる。

大方AVでも持って来たんだろ。

....なんで俺達ってAV持ってきてるのが普通みたいになってるんだろうか?

まぁいいや。

 

「お、イッセーおはよう!」

 

「なんだよそんな神妙な顔してよぉ!松田が良い奴持って来て....」

 

元浜が松田がAV持ってきたことを告げようとすると、イッセーが口を開いた。

 

「なぁ、元浜...松田、そして雄二。」

 

なにやら思い詰めたかのような表情。

....どうしたんだろうか?

少なくとも今の俺よりは深刻な状況ではないと思うが、それでも幼馴染として気になるな。

 

「なっ、どうしたんだよイッセー。」

 

「そ、その顔、何かあるみたいだな....言い出せるまで待つぜ....。」

 

「...言えよイッセー。幼馴染なんだ、隠し事はなしだろ。」

 

松田と元浜も神妙な顔で聞いている。

俺も同じ顔をしているつもりだけどどうだろう....。

疲れが顔に出ていないかな?

FXで有り金全部溶かした顔になってないかな?

 

すると意を決した顔をするイッセー。

そして口を開いた。

 

「みんな....俺、俺!!彼女が出来たぁあああああ!!!!!」

 

叫ぶイッセー。

静まり返る俺ら。

そして元浜と松田はゆっくりと口を開いた。

 

「...は?」

 

「え?」

 

....今、コイツ彼女出来たって言ったのか?

え....彼女?

彼女ってあの彼女?

あの...なんかデートとかして、一緒に楽しく会話して良い感じになったら....あわよくばそう言う感じになったらそういうことするあの?

え?俺が出来ていないのにコイツ出来たの?

こんな変態エロ魔人覗き常習犯が出来て、俺いないの....?

 

「....うぉぇ、うぷっ。」

 

余りの精神的苦痛に吐きそうになって咄嗟に口を押さえた。

多分、最近色々あったのもあると思う。

すると隣の元浜が背中を撫でてくれる。

 

「お、おい!大丈夫か雄二!!お前....今の雄二になんて冗談を言うんだ!!!」

 

「そうだぞイッセー!今の雄二はナーバスなんだよ!そんな悪趣味なジョーク言いやがって、幼馴染を殺す気か!!」

 

元浜と松田がイッセーに抗議する。

そうだ...流石に悪い冗談だよな。

あってもこれが彼女とか言ってゲームとか見せてくるくらいだよな。

それも正直キモイけど、俺も偶にやるから許してやる。

だから....早く俺を安心させてくれ。

 

すると彼は携帯を取り出す。

なんだ....びっくりさせやがって。

やっぱり架空の嫁じゃないか....

そう思っていると、そこには....

 

「この子、夕麻ちゃんって言ってさ...向こうから告白してきてくれたんだよ。やっぱ分かる人には俺の良さは分かるってことかな....これはその後、向こうから一緒に撮ろうって言われてさ.....」

 

なんか浮足立った様子で喋るイッセー。

携帯にはイッセーと仲良さげに写る黒髪の美少女が写っていた。

....ゲームじゃ、ないだと!?

 

「ガハッ....ハァ.....ハァッ.......!!」

 

「血を吐いたッ!?」

 

「兵藤、テメェェェェェ!!!」

 

背中を撫でていた元浜は俺が血を吐いたことに驚いており、松田はイッセーに掴みかかっていた。

な、なんで....腹殴られたりしたわけでもないのに、血が出てるんだ....?

俺の身体に何が起きている....?

もしかしてこれが...ストレスってやつか?

 

松田はイッセーに間接を極めながら口を開く。

 

「テメェ、裏切りやがって!何時だ!何時からだ!?いつからこんなめっちゃ可愛くておっぱいおっきい子と付き合ってるんだよぉ!!!」

 

「いだぁ!痛いって松田!昨日の帰り!昨日の帰りだよ!!昨日の帰りにずっと好きだって!」

 

「昨日....?」

 

俺はイッセーの言葉を聞いて、言葉が漏れる。

今コイツ昨日って言わなかったか?

俺が最近精神的に参っているという事を、当然イッセーは知っている。

励ましの言葉を掛けてくれたこともあった。

 

昨日は、俺は金もないから家にさっさと帰って肩身の狭い思いをしながらまっずい飯作って食べていたんだぞ。

それなのに、コイツは!俺がどういう状況か分かっているのはコイツはァ!!

俺がまずい飯食って苦しんでいる間、女の子と告白されてキャッキャッウフフしてただとぉぉぉぉ!!!!

 

俺はせり上がっていたゲロと血を飲み込むと、フラフラと立ち上がる。

元浜は心配そうに俺に声を掛けた。

 

「お、おい...大丈夫かよ?」

 

「..あ、ああ...問題ない。」

 

そして、俺はまっすぐイッセーの目を見た。

 

「なぁ...イッセー。」

 

「な、なんだよ雄二....。」

 

戸惑うイッセー。

しかし気にすることなく、俺は言葉を続けた。

 

「お前に彼女が出来たこと、それは認めたくはないが....良い事であるとは思う。幼馴染としてはめでたいとも少しは思うよ。」

 

「ほ、本当か!?や、やっぱ幼馴染だけあってそこの二人とは違うな!俺の事祝福してくれるなんて!」

 

嬉しそうな表情をするイッセー。

幼馴染に彼女が出来たことを祝ってもらえると思って純粋に嬉しいのだろう。

今言った言葉もあながち嘘ではない。

確かにコイツ欲しがっていたし、良かったなぁと思うよ。

祝福はしてやるよ.....。

 

「あぁ。でもよォ...個人的に人がまず飯食って、家で肩身が狭くて苦しんでいるのに....彼女が出来ましたと笑って告げるのはおかしかないか?幼馴染よォ。」

 

俺が言うと、イッセーの顔が青くなる。

 

「ま、まさか怒って....る?」

 

何言ってんだよコイツ、怒ってねぇよ。

別に怒ってねぇ....ただ。

 

「お前は俺なんかよりも早く彼女を作った。俺を置いて行ったんだ。...お前は二度、俺の心を裏切った!!!」

 

一度目は前のう〇こ踏んだ時。

そして二度目が今日だ!!

 

すると松田と元浜が声を上げる。

 

「やれー!殺せェェェ!!!!」

 

「やっちまえぇぇ!雄二ィ!!!」

 

松田はイッセーを解放するも、そう叫ぶ。

そして元浜は俺の後ろで雄たけびを上げるかのように俺に言っていた。

顔を青くするイッセー。

 

「ま、待て!落ち着け!なっ!?話せばわかる!話せばわかるって!!」

 

「MMM団代表としての判決を言い渡す、.....死だ。」

 

そう言って拳を構える。

あまり手荒なことはしたくなかったがしょうがない。

このまま溜め込んでいてはこちらが参ってしまう。

だからこそ、ここで一発殴らせろやオラァ!!

 

拳を振りかぶり、イッセーに肉迫しようとしたその時。

 

「ご、ごめん!その悪かった!」

 

イッセーが謝罪の言葉を口にした。

拳を止める。

 

「お、俺....初めて彼女が出来て、嬉しくて....どうしても誰かに言いたかったんだ。よく考えたらお前はそれどころじゃなかったのに、松田や元浜ならまだしも、幼馴染だからわかってたはずなのに....本当にごめん.....。」

 

そう言って神妙な顔をするイッセー。

お前、今頃そんなこと言われても、俺の傷ついた心は戻らないんだぞ!

今頃そう言われたって....ッ!

 

「イッセー、おめでとう。」

 

「...えっ?雄二....?」

 

俺は拳を降ろしてイッセーに祝福の言葉を掛ける。

呆気にとられた表情をするイッセー。

 

「お前は...謝ってくれた。だから...許す。お前が幸せになるなら...ごふっ!...許してやってもいい。」

 

「お、おい!無理すんなって雄二!!」

 

「そうだ!兵藤を許してお前が傷つく必要はないんだぞ!!」

 

後ろからそう声を掛けてくれる二人。

しかしその二人にも笑いかける。

 

「俺らはァ...MMM団だ。でもよぉ、最近思うんだよ。....モテない奴でそうやって組織作ってるのってダサいし、寒くないか.....?」

 

「そ、それは言わない約束だろ雄二!!」

 

「松田の言う通りだ!お、俺だって....そんなこと分かってた!でも...!!」

 

二人は俺にそう言ってくる。

そうだ、元浜の言う通り。

本当は分かってたんだ。

でも....。

 

「分かる...分かるぞ。心地よかったんだ、ぬるま湯が。モテない奴らで集まってバカやって楽しかったんだ。...でも、それは逃げてるだけ。もう、いい加減卒業しようぜ。」

 

「雄二....。」

 

イッセーが俺の名前を呼んだ。

元々は、俺とイッセーで作っていたこの組織。

でも後から松田や元浜と言った同好の士が入ってきた。

とても楽しかったな....。

だからこそ、この終わりは見えていたんだ。

ぶっちゃけ、イッセー顔は良い方だし、こうなることは分かっていたんだ。

だから...創設者の一人である俺が、終わりにしないと。

 

そう思い、手を広げる。

 

「...今日をもって、MMM団は解散すッぐはっ!!!」

 

馬鹿は馬鹿なりに良い演説したなぁと悦に浸りながらも解散を口にした瞬間、顔面を二人にぶん殴られた。

尻もちをつく俺を見て、二人は笑みを浮かべた。

 

「雄二...見損なったぞ。まさか彼女持ちの方の味方につくとはな....」

 

「絆されて解散などと世迷い言を....無能な代表は裏切者と一緒に地獄に送ってやる!!俺達が次の代表だ!!!」

 

あ、アレェ~~~?

な、なんでこうなってるんだ?

二人が....長らく友人のはずの二人が分からない。

お、俺がバカだから?

この後、先生たちが来るまで俺たちの命を狙う元浜と松田からイッセーと共に逃げ続ける羽目になった。

ただでさえ弱っているのに....彼らから逃げる為に今日一日の活力を使い切ってしまったのだ.....。

 

 

 

 

 

 

「へぇ、それでデートプランを考えているってわけね。」

 

「あぁ。正直、俺こういうことしたことないからさぁ~。どうしたら良いか分かんねぇんだよなぁ。何か、考えはないか?」

 

放課後、そう言って携帯で映画館や公園などデートスポットを虱潰しに調べるイッセー。

あの後、元浜と松田は嫉妬で面倒臭いことになってしまい、俺だけがイッセーの相談に乗ることになったのだ。

その顔は悩める男の顔だった。

思えば、最近は俺頭悪いから名前あやふやだが、何故かイッセーになんか学校で凄い美人で有名な先輩が話しかけていたりしてたしな。

そういうこともあるのだから、きっと俺の見ていない間で彼の何かが変わったのだろう。

風水でも始めたのかな?

 

しかし、正直に言えば俺だってそんなこと聞かれても困る。

俺なんて彼女いない=年齢だ。

居ないのが当たり前の人種に女性との付き合い方なんて分かるわけがない。

でも、一つ言えることは....。

 

「その子、お前が好きで告白してきたんだろ?」

 

「えっ、おう。そうだけど....。」

 

イッセーはそう頷く。

それを聞いて確信する。

 

「俺みたいなのの意見で悪いんだが....やっぱお前が好きで告白してきたなら、そのお前が一生懸命こうして時間かけて考えてくれたデートプランなら内容はどうであれ嬉しい物なんじゃないか?...まぁ、童貞特有の夢見がちな思想かもしれないし、俺馬鹿だから自信ないけど.....。」

 

俺がそう言うと、イッセーは考える。

そして口に出した。

 

「そ、そうかなぁ....?でもさぁ....やっぱいいなって思われたいじゃん。そういう気の利いたデートプランっていうの考えてこれるのとかかっこよくないか?」

 

「それは同感だな。俺もそう思う。」

 

そういう男性は魅力的に見えるとかテレビでも言っていた気がするしな。

それにしても...結構真剣なんだな。

分かっていたことだけど、やっぱり普段との落差で少し慣れない。

コイツは変態だし、そんなに頭が良いわけではない。

いや、俺より確実に良いけど。

だが、それ以上に本当は努力家でマジメな奴なんだ。

エロで覆われていて見えない本性だけど。

 

「じゃあそれなりに経験積んでそうな奴に聞いてみるか?例えばそうだな....木場裕斗とか。」

 

俺が言うと、イッセーはうげっと表情を歪めた。

 

「い、いやぁ....アイツに聞くのはやめとこうぜ。お前が聞くなら別に良いんだけど....」

 

どうやら苦手意識をもっているらしい。

多分木場に嫉妬しているんだろう。

俺もモテる木場には嫉妬している。

けど...まぁ俺が窓ぶち破っちゃったときに真っ先に様子を見に来てくれたのは彼だったわけだし、そう考えるとアイツも悪い奴ではないんじゃないかなと思う。

 

「じゃあ女子の好みのことなんだから女子に聞こうぜ。」

 

「いや、この学園の女子が俺達とまともに話してくれるわけないだろぉ?あ~、マジでどうしようかな....。」

 

そう言って頭を抱えるイッセー。

まぁでも俺が言いたかったことは一番最初に伝えたわけだし、まぁ後は彼自身の問題だろう。

 

「....まぁ、なんだ。イッセー、あまり気負いすぎんなよ。俺みたいに何も考えてない方が人生楽しいって!マジで!!」

 

「はは....、そうかもな。まぁ、話聞いてくれてありがとな、雄二。」

 

イッセーは笑顔を俺に見せる。

俺はそんな彼に手を振ると、そのまま教室を出た。

 

 

 

 

 

 

「って言っても、正直家帰ってもキツイだけなんだよなぁ....。」

 

こんなことなら最後までイッセーに付き合ってやってもよかったかもしれない。

ここでなんかとんでもないデートプランなんか思いついてたら面白いな。

なんか初手ラブホ!!みたいな。

まぁ流石にアイツ、そう言う所は誠実で奥手だからそれはないんだろうけど。

 

町を歩きながらも、イッセーのことを考えて少し笑っていると、公園の方に目が惹きつけられる。

それもそのはず、公園には金髪で小柄、そしてお人形さんのように整った容姿の少女がキョロキョロと挙動不審に辺りを見回している。

 

はえ~すっごい可愛いな、うん。

髪色からして外国の人なのかな?

可愛い女の子はいいね、目の保養になる。

見ているだけで癒されるよ。

 

そう思っていると、その子と不意に目があった。

やっべぇ!

見てるのバレちまった....。

こ、こういうのってアレだろ?

木場みたいなイケメンならまだしも俺みたいな奴が見ているのバレたら「うわっキモ...なんであの人こっち見てんだろ、警察に連絡しよ(唐突)」って感じになるんだろ?

い、嫌だよ....流石に警察にまでお世話になったら勘当されちゃう....生きていけなくなっちゃう!!

 

そう思っていると、その子は立ち上がり、こちらへと歩み寄ると.....

口を開いた。

 

「#$&~、’%#’#?」

 

えっ?な、なんだって?

なんか凄い可愛い声でなにか言っている。

それは分かる。

でも、日本語じゃないから全然分かんない。

ど、どうしよう....?

 

「あ、キャンユースピークジャパニーズ?」

 

「?」

 

ガバガバな発音で聞いて見るも、彼女は可愛く小首を傾げる。

ダメか....。

言語系はマジで無理なんだよ....外国語なんか分かるわけないだろ!

母国語ですら怪しいんだぞ!!

 

なにやら言葉尻の発音が上がっているからこちらに質問しているだということは何となく分かる。

なに言われてんだろ?

あれかな?「通報しますけど、覚悟の準備は出来てるか?俺は出来ている。」みたいなニュアンスかな?

それとも「見物料としてお金払ってください?」とか。

やだ....女の子に対する偏見凄すぎない?

こんな純粋な目をした女の子がそんなこと言うわけないだろ!!

...言わないよね?

 

言語の壁を前にお互いしどろもどろしていると、あることを思いつく。

あっ、そうだ。

GO〇GLEの翻訳使えば良いじゃん!!

携帯を取り出すと、俺はGO〇GLE翻訳のページを開く。

そして、彼女に渡すと意図を伝える。

 

「あ、えーと、トーキングランゲージ、ディススマホ!オーケー?」

 

自分の言語に自信はないので、スマホに話しかけるようなジェスチャーを取る。

すると、彼女は頷きおずおずとスマホに言葉を掛ける。

それにしても綺麗な形した唇だな.....いや、流石にこれはキモすぎるな。

 

そしてこちらにスマホを渡す。

 

『これで良いですか?』

 

おっ、ちゃんと翻訳出来ている。

検出した言語は....イタリア語か。

なら俺も日本語をイタリア語に翻訳しよう。

 

「良いですよ。」

 

そう言った後に、翻訳を見せると彼女は嬉しそうにうんと頷いた。

意思疎通出来たのがそんなに嬉しかったのだろうか?

僕はまた彼女にちょいちょいとジェスチャーでスマホを渡すように促す。

彼女はこちらにスマホを渡してきたので、再度言葉をスマホにかけた。

 

「何の用ですか?」

 

そう言って彼女にスマホを渡す。

すると彼女もスマホに言葉を掛けて渡してくる。

 

『すみません、教会の場所を知りませんか?』

 

あー、なるほど。

道理で挙動不審なはずだ。

彼女は協会に行こうとして道に迷ったのだ。

馬鹿な俺でもこうすれば意思疎通が取れると気づいたのだ。

利発そうなこの子が気づかないはずがない。

彼女はスマホを出さない辺り、持っていないのだろう。

そうなると地図アプリなども使えないだろう。

 

地図アプリを使って道を教えてあげよう!

そうしようとしたが、その瞬間。

俺の耳元で俺の中の悪魔が囁いた。

 

『へへっ....ここでただ道を伝えるだけで良いのか?どうせ家に帰ってもきついだけだ。それなら案内でもしてやって少しでもこの子と一緒に居た方が役得だろ....』

 

確かに家に帰っても気まずいだけだし、この子滅茶苦茶可愛いしな。

最近辛い事ばかりの俺に神様が与えてくれたうるおいだとも思える。

別に手を出したりはしないけど、少しくらいこういう可愛い子と一緒に居るとかそういう良い思いをしてもいいんじゃないか?

そう思うと、今度は天使が耳元で囁く。

 

『最近辛い事ばっかりだし、疲れてるよね....?手を出すのは駄目だけど....そのくらい誰も文句言わないさ!許すよ!!』

 

そうだな!

よし、やろう!!

そう思った俺はスマンホホ君に話しかけた。

 

「ここら辺の道は詳しいから俺が案内するよ!」

 

そう言ってスマホを渡すと彼女は慌てた様子で翻訳して返す。

 

『そんな 悪いですよ。』

 

「良いって、良いって!困ったら助け合いでしょ?」

 

そう言って彼女に返すと、彼女はどこかモジモジしながらも笑顔を見せつつスマホを返す

 

『ありがとうございます』

 

可愛い子にお礼言われるとこう....気持ちがフワッとするよね。

それにこれは一応良い事だ!

今俺は良い事をしている!

胸を張ってこの子の隣を歩けるぞ~!!

 

 

 

 

 

 

地図アプリを起動して彼女を先導しつつ歩き始めて数分。

彼女の笑顔を隣で見ながら、話しかけられるのに生返事する。

正直、地図アプリ見ながら歩いており、翻訳に変えると道が分からなくなってしまう為、話していることはまったく意味が分からなかった。

しかし、それ以上に歩きながら不思議に思っていたのだ。

あれ?なんか着かなくね?

 

所用時間は3分。

そして今は5分かかっている。

その上、この角を曲がれば着くよ!と彼女に行って曲がった先が....

 

「マジかよ....」

 

ラブホだった。

看板にはご休憩何円、一泊何円と書かれた看板。

な、なんで....ちゃんと地図見たのに!

まさか....GPSが狂ってたのか!?だからこんなことに....。

 

もうヤバい。

やばさしかない。

サーッと血の気が引いていく。

今の俺は日本語が分からない子を引き連れてラブホまで騙して連れてきたような形になっている。

最低じゃん、死んだ方がいいよ。

今隣の彼女はどんな顔しているんだろ....。

油の切れたロボットのようにギギギと見ると、彼女はどこかこちらを窺うような...不安そうな表情をしていた。

 

「ち、違う!これは誤解だ!!そのっ、そういうつもりじゃ.....」

 

弾かれたように距離を開けて、首を振って弁明する。

...が、言葉が通じてない。

そ、そうだ...そういえば、俺方向音痴だった。

地図見れねぇんだったわ。

どうしよう....でもこんなこと今更言ったら邪推されちゃうんじゃ.....

 

....いや、やめよう。

自分を守るのはやめる。

彼女はさっきまで言葉が通じない中、不安そうにキョロキョロとしていた。

それをさらに不安にさせたのは俺じゃないか。

罵られて然るべきだろ。

それに、なんでこうなったのか素直に言うべきだ。

そして誠意を見せなければ。

 

「...ごめん、実は俺方向音痴なんだ。地図読めないんだよ....迷った。本当にごめん。」

 

スマホで翻訳すると、それを彼女に渡す。

そして、ゆっくりと膝を突いて土下座をした。

俺は簡単に土下座する奴は嫌いだ。

でも、これは流石に土下座しないといけないだろう。

頭とか踏まれるのかな.....。

 

暫しの沈黙。

彼女は俺をどんな目で見てるんだろう。

可愛い女の子に嫌われるのって....キツイな.....。

 

そう思っていると、頭上でクスクスと笑い声が聞こえた。

え?

頭を上げると、彼女が笑っている。

笑って....いる?

怒っているんじゃなくて?

困惑していると、彼女はスマホに口を近づけて何か喋ると、こちらに見せてきた。

 

『それなら一緒に地図を見ましょう、大丈夫ですから。』

 

お、怒らないのか.....。

それどころかこんなことを水に流してくれるっていうのかよ....。

なんだこの子....女神か?

急に神々しく見えてくる。

こんな....許してくれるなんて......。

 

「ッ、ああっ!わかった!」

 

俺は感極まった心をなんとか抑えながらも、ゆっくりと立ち上がる。

すると彼女は服についた砂ぼこりを払ってくれた。

メッチャ良い子やん.....。

世の中にこんな子が居るなんて....まだまだ世の中捨てたもんじゃないんだね母さん!

 

 

 

その間、俺は彼女と二人で地図アプリを見ながら歩き続けた。

正直、空間把握能力に関しては彼女に敵う事がなく、路地など周りの風景を見て彼女に指さした方向を訂正されることもよくあった。

それに...二人でスマホを見ていただけあってお互いの距離が近かったのもすごくドギマギしたものだ。

しかし、その甲斐もあってか目の前に教会が見える。

 

「着いたか....、力になるはずだったのに...君の手を煩わせて、本当にごめん。」

 

謝罪の言葉を翻訳して彼女に見せる。

すると、彼女は俺のスマホを取ると言葉を掛けた。

 

『私も楽しかったです。』

 

そうか....

気を遣われているのかもしれない。

でも、それでもそう言ってもらえてうれしかった。

 

「そっか、ありがと....」

 

スマホを受け取ろうと、手を差し伸べるも彼女は手を引っ込めた。

?どういうことだろうか?

すると再度スマホに語り掛ける。

そして俺にスマホを両手で返した。

画面には彼女の言葉が翻訳されて写っていた。

 

『私はアーシアです。貴方の名前は何ですか?』

 

アーシア。

この子の名前は、アーシアって言うのか。

名前を教えてくれる。

それはつまり仲良くなれた...そういうことで良いんだよな。

...あまり難しく考えるのはやめよう。

俺馬鹿だから頭が痛くなる。

 

俺はスマホに言葉を掛ける。

 

「俺の名前は、二駒雄二。二駒雄二だ。」

 

それを見せる。

すると彼女は笑顔を見せて、言葉を口にした。

 

「&#%&$’&#’..ユージ、$&#%&&#%&!」

 

彼女はそう言って手を振る。

ほとんど何を言っているのか分からなかったけど、それでも俺の名前を言ってくれたことは分かったから。

俺も笑顔で、手を振り返した。

 

「おう、また....な?」

 

手を振っているから多分彼女は教会に行く前に別れを言ったのだろう。

もしかしたら違うかもしれないけど。

するとそんな俺を見て、彼女はことさら愉快そうに笑うとそのまま教会の方へと歩いていった。

 

....今日は良い日だったな。

最初イッセーの言葉で吐きそうだったけど、今ではそれ以上の多幸感に包まれている。

あんな可愛い子と仲良くなったから当然だ。

 

....さて、帰るか。

家の事を考えると、一気にテンションが落ちていった。

今日はこの出来事を慰みに寝るか....。

 

 

 

 

そうして、暫く歩いていると不意に靴紐が緩んでいる事に気づく。

まぁ今日は一杯歩いたからな。

こんなこともあるだろう。

結ぶの面倒臭いけど、まぁ歩きづらいしな。

そう思い、しゃがむと....頭上を何かが通りすぎてドゴッと石を貫くような音がする。

 

「えっ....え!な、なにこれ....!」

 

異変を感じて、顔を上げるとそこには目の前の道路に突き刺さるトゲみたいな光っている何か。

それは暫くするとふわっと霧散して消えていった。

え、なにこれ....一体なんなのこれ?

 

「つ、つらら?でもこんな寒くもないし、上は空だし....」

 

不思議に思いつつ一歩踏み出すと空が一瞬光り、ガシャーンと大きな音が響いた。

か、雷!?

で、でも雨なんか降ってないぞ....もしかして!

 

「こ、これが晴天のなんちゃらって奴か!初めて見たぜ!今度イッセーに教えてやらねぇと!!」

 

珍しい物を見たと思いながら、家へとまた帰路に就く。

靴紐はしっかりと結んであるから転ぶこともないだろう。

....今日は楽しかったなぁ。

 

 

 

「な、なんなんすかアイツ.....槍を避けるし、それに追撃しようとしたら急に雷....ごほっ!」

 

とある路地に横たわって呻くように呟く金髪の少女。

その姿は煤のような物に塗れて頭はモコモコとアフロのようになっていた。

さながら、ギャグマンガで実験に失敗した博士のように....。

 

 

 

 

 

 

携帯?で翻訳してくれてまで私を道案内をしようとしてくれた男の人。

彼の背中は大きくて、頼もしい印象を抱くものでした。

しかし....それにしても見覚えのない道ばかりを行きます。

...いや、この人は多分現地の人だから、私の知らない道を知っているんだ。

ただそう思ってついて行きました。

 

すると、目の前には....。

 

「お城....?」

 

なにやらお城のような建物が広がっています。

どこをどう見ても、私の目的地である教会ではありません。

ど、どういうことなんだろう....?もしかして、ちゃんと話が伝わってないのかな?

それとも....本当にそうとは考えたくないけど....この人は私をここに連れてくるために嘘を?

そう思って彼の顔を見ました。

すると....彼は、私なんかよりも青い顔をしてアタフタしていました。

 

呼吸は荒く、汗も掻いています。

それを見て、どうやら悪意があってここにつれてきたのではないみたいです。

そう思った矢先、彼は私から距離を離れるとアタフタと慌てた様子で言葉を紡ぎます。

 

「$%#’&#(#&#!!$#&’”’&!!」

 

何を言っているのか分かりません。

でも一生懸命弁明しようとしていることはなんとなく私には分かりました。

そして彼はこちらにスマホを差し出します。

 

『...ごめん、私は方向音痴です。地図読めません。....迷いました。本当にごめんなさい。』

 

翻訳にはそう書いていました。

それを見て、私は....おかしくて笑ってしまいました。

でもそれは馬鹿にするとかそういうんじゃなくて...。

この人はきっと私を助けてくれようとして、自分が地図を読めないのに教会に連れて行ってくれようと、私の傍に居てくれようとしたんだと思いました。

 

私の周りにはあの日から傍に居てくれようとした人は居なかった。

魔女と呼ばれたあの日から。

教会に引き取ってもらった時も、どこかあそこの人とは距離も感じます。

こんなに近く、傍に居てくれる人は本当に久しぶりで....だから笑ってしまった。

まぁでも、ここまで動揺していることが顔に顕著に出る人は初めてで、その様子がとても面白かったのもあるのですが....。

 

彼は顔を上げるとなんだかぽかんとしていました。

本当に...面白い人ですね、あなたは。

そう思いながら私はスマホに言葉を掛けて、見せます。

 

それを見ると、彼はなんだか目を潤ませながらも元気に返事をしてくれました。

それから二人で地図を見て、分かったのですが彼は言っていた通り本当に方向音痴で、変な方向を指さしたりしていました。

それを訂正すると彼は頭を下げるし、近くに居るとどこか顔を赤くしています。

なんだか表情がコロコロ変わるからやっぱり面白い人だと、私は思いました。

 

教会が目の前に見えてきます。

するとすぐ申し訳なさそうに彼はスマホをこちらに見せてきました。

 

『到着しましたか。力になれずごめんなさい。』

 

それを見て、また笑ってしまった。

そんなことはないです。

貴方と一緒にいて、この国で初めてこんなに楽しいって思いました。

だから....私の為に動いてくれて、ありがとう。

そう言おうと思ったけど、あることに気づきます。

この人の名前を知らないことに。

そしてこの人も私の名前を知りません。

 

...名前を憶えていない人のことを思い出す人は居るのでしょうか?

時間が経てば今日の事などは彼にとっては風化していくだけ?

そう考えると、ちょっと嫌です。

教会に行くまで案内してもらって、彼と一緒に地図を見て歩いた時間。

それは私にとっても大切な思い出...この国に来て出来た優しい思い出だから。

だから、私は覚えていてほしくて、彼に名前を言いました。

 

「私、アーシアって言います。貴方の名前は?」

 

翻訳機はちゃんと伝えてくれるのでしょうか?

実は彼の言葉が文法としておかしい時もありました。

だからこそ、やっぱりまだ人の会話を完全に翻訳してくれはしないということでしょう。

でも、それでも伝わって欲しい。

 

私の名前を、知って欲しいから。

貴方の名前も知りたいから。

初めてこの国で初めて優しくしてくれた人....その名前が知りたい。

 

すると、彼は呟きます。

 

「アーシア...。」

 

伝わった!

ちゃんと彼に、私の名前が伝わりました。

私が安堵していると彼もこちらにスマホを見せてきます。

 

そこにはフタコマユージと書かれていました。

ユージ。

きっとコッチが名前です...多分。

良かったちゃんと貴方の名前が分かりました。

 

友達の名前....ユージ。

忘れません。

 

「貴方の名前は...ユージって言うんですね。今度、また会えたら会いましょうね!」

 

私が言うと、彼は私に笑顔を見せてくれます。

 

「おう、また...な?」

 

...どうやら完全には伝わっていないみたいです。

少しとぼけた顔をしているのが、また面白いです。

それに、全部伝わってなくても良いんです。

大事なことは....ちゃんと伝わったから。

 

抜けているけれど優しくて面白い人。

そんな貴方と、知り合えた。

今まで辛い事も色々あったけど、それでも今日は楽しかったから。

 

また、会えると良いなぁ。

そう思いながら、彼に手を振って教会へと歩みを進めます。

足取りが重くてちゃんと着実に足を進めました.....。




今日のギャグ補正:危険な目にあってもあんまり怪我しない。怪我しても大きなリアクションを取った後は元に戻る。トラブルを呼び込む、引き起こす。生命の危機をどうでもいいようなことで偶然切り抜ける。別に意図してないのに、危害を加えようとした相手がコミカルにやられる。

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