ボールで行く宇宙世紀 ~MSがなんぼのもんじゃい~ 作:ゴールド龍
あれから少しして、俺達はサイド7に無事到着した。道中危惧していた襲撃はなく、戦時にしてはかなり平和な航海だった。·····まあ、安全に終わるに越したことはないからな。
サイド7に辿り着くと、俺達はホワイトベース隊とは一旦別れ軍用のドックにて待機となるのだが·····これが本当に暇で仕方がない!!
いや、護衛を務めている身でそう言うのは間違ってるかもしれないが、トイレや飯以外は機体に搭乗して待機は流石にキツすぎる。
「·····って事なんだが、何とかならないか?」
『──·····うーん、一応命令なので私はなんとも言えないですね·····。まあ、良ければ私が話し相手になりますけど?』
「·····そうしてくれるのは有難いけど、
そこの所が疑問だったので、俺はそうルイスへと質問する。
『大丈夫です、事情を話したら別のクルーの方が代役を務めてくれると言っていたので。クルーの方曰く「我らがエース様のモチベーション維持を頼んだ」だとか』
「そうか、なら良いか。·····って言っても、何話すかだなあ。なんか話のネタになりそうなのってあるか?」
『──そうですねー·····特に何かあると言っても·····あ、アレがありました』
「アレ? アレってなんだ?」
『えっとですね、最近のジオン軍って大きな動きを見せてないですよね? それでなんですけど、もしかしたら何か大きな作戦に向けての準備期間かもしれないなんて何処かで聞いたんです。これってどう思いますか先輩?』
·····確かに、最近のジオン軍はあまり大きい部隊が動いているなんて聞かなくなってきてる。準備期間だとすると、奴らは一体何を狙っているんだ? ルナツーか、いや、もしかしたらジャブローを直接狙おうとでもしてるんだろうか。
確かにそうだとしたら、ジャブローを攻めるとなったら生半可な戦力じゃあ攻略は出来ない。その為の準備期間だとしたら筋が通る。
「──·····もしかしたら、連中はジャブローを攻めようとしてるんじゃないか? 本丸さえ落としてしまえば、こんな戦争なんざ終結だ。国力が乏しいジオンだったら有り得る作戦だ」
『──あー、なるほど。確かにその線も有りますね。ジオンは元々この戦争を短期決戦で終わらせる筈だったって言われてますし、確かにそろそろ停滞してる戦況を終わらせにかかってもおかしくは無いですもんね』
ジオン公国と奴らは名乗っているが、元はサイド3のコロニー群。資材やら人的資源とかは連邦と比べてもかなり小さいものだ。その為戦争が長引くと不利になるのは奴らの方だ。
コロニー落としで多くの人が亡くなったとはいえ、やはりまだまだ連邦は力を残している。今回のV作戦が上手く行けばMSの量産も決まるだろう。そしたらこっちが奴らを攻める番になる。
だからこそのジャブローの本部に対しての攻勢に出る可能性が有る。とは言ってもジャブローはまだ奴らには詳しい位置はバレてないと思うが·····まあスパイとかが紛れ込んでいたらその限りではない。
「まあ俺達があーだこーだ言っても、どうなるかは未来にならないと分からん。本当にジャブロー侵攻作戦だとしたら、どちらにせよパイロットの俺は戦う事しか出来ないけどな」
『──そうですよねー、もしかしたら本当にタダの噂ってだけかもしれないですし。·····そう言えばもう1つ、と言うよりは聞きたい事があったんですけどいいですか?』
「ああ、別に構わないけど一体何が聞きたい?」
『えっとですね、最近ボールも正式量産が始まったじゃないですか。それでなんですけどそのボールの事って先輩はどう思いますか?』
「·····どうって、俺が今乗ってる先行量産型のとスペックとかを比べて、って事でいいか?」
俺がそう言うと、ルイスは『そうですそうです』と頷きながら返してくる。·····ふむ、まあ別にいいか。言っても何かがあるって訳じゃないし。
「·····そうだな、最初に結論だけ言うと俺は先行量産型のコイツで別に良いかなって感じだな」
『──どうしてです? 普通だったら先行量産型より正式量産型の方が優れてるものじゃないんですか?』
「普通だったら確かに正式量産型の方が性能が優れてるもんだ。だけど、これはなんと言うか·····純粋に
俺がそう言うと、ルイスは首をこてんと傾かせる。·····多分素でやってるんだろうけど、無駄に仕草が可愛いんだよなあ。まあそれは置いておくとして、何故やれる事が多いのかについて説明しよう。
元々ボールは民間の作業用のMPを改造し、軍用に転用させた機体だ。その為機動性等は民間用では考えられておらず、装甲等の安全性を重視している。
しかし軍用に転用するにあたり、エンジンやジェネレーターは軍用のものを積み、スラスターの強化等が施された為戦闘に耐えうる位までには機動性は格段に向上している。
しかし正式量産型となったRG-79ボールの方は、量産性やコストの削減等により性能だけで言うとRG-79K先行量産型ボールより劣っている部分が発生している。
前面装甲が薄くなったりスラスターの速度低下、プロペラントタンクの廃止による航続距離低下·····色々とコスト削減によりオミットされている。タダでさえボールの性能はMSと比べると低いのに、これ以上下げてどうするんだって感じだ。
更に言うと、俺がよく敵の牽制や意表を突く行動の為に使用しているアンカー等もオミットされている。まああれは本来作業用に使用されるもので、敵の牽制などに使うものでは無い。というかそういう事自体があまり想定されてないので、正直オミットされてもしょうがないかもしれない。
「──·····とまあ、こういう理由で俺があっちのボールを使わない訳になるな。長くなったけど、まあこんな感じかな?」
『なるほど-·····正式量産型だからって言っても、そういう事も有るんですねぇ』
「まあ性能は落ちても攻撃力は変わってないから、要はやりようって事だな」
そう言いながら会話をしていた時だった。いきなりコロニー内から爆発音が響く。聞こえる音を分析してみた所、どうやらザクⅡのマシンガンの発砲音のようだ。
「·····おいおいおいおい、冗談じゃねえぞ。いつの間にジオン軍が攻め入ってきたってんだよ!? レーダーには感はなかったのかよ!?」
『──いえ、こっちのレーダーには反応が確認でき·····あ、もしかしてこれは』
「なんだ、何か分かったのか!?」
『──·····おそらくですが、反対の方角のドックから侵入した可能性があります! うちのサラミスのレーダー範囲だと、そちらの方角まで対応できませんから·····!』
くそっ、奴らの狙いはおそらくV作戦の機体か。しかし、コロニー内だとボールで戦闘となると火力がなまじ有る所為でキツい。コロニーの隔壁なんて余裕で撃ち抜く可能性があるからな、そのせいでコロニーの住民まで被害が出たら本末転倒だ。
「──くそったれ、こうなったら装備換装しかないな。ルイス、整備班を呼んでくれ!! 180mmキャノン砲からフィフティーン・キャリバーへと換装し、コロニー内へと向かう!!」
『──えぇ!? で、ですけど指示はまだ出てないんですよ!?』
「大丈夫、あの艦長の事だすぐに·····おっ」
『アレックス中尉、聞こえているな?』
俺がそう言うと、直ぐに艦長からの通信が届く。やっぱり頼りになるぜ。流石はあのルウム戦役を生き抜いてきた猛者って感じだ。
『状況が状況の為、手短に話す。君にはこのままコロニー内へと向かい、ジオン軍のMSの撃退か撃破を頼みたい、行けるな?』
「──了解、しかしこの武装だとコロニーの隔壁にダメージを負わせる可能性が有ります。その為フィフティーン・キャリバーへと換装し次第向かいます」
『──ああ、了解した。既に整備班は向かわせている。換装が終わり次第出撃だ』
「レイピア1了解、
さて、急いで戦闘準備だ。一応スラスターを吹かせば重力があるコロニー内でもある程度は行ける。まあ無重力空間の宙域よりやりづらいが、少し機体が重くなった戦闘機だと思えば行けんことは無い。
『──こちら整備班。アレックス中尉、聞こえていますか』
「ああ、聞こえている。分かってるかもしれないが換装を急いでくれ。事態は一刻を争う!」
『──ええ、分かっていますとも。火器管制システムとの同期等を含めて、5分·····いえ、3分で終わらせます』
「流石だぜ整備長。それじゃあ頼む」
その言葉の後に、直ぐに作業に取り掛かる整備班。180mmキャノン砲を取り外し、フィフティーン・キャリバーへと取り替えられ、システムと同期が開始。宣言通りに3分以内に作業が完了した。
「
『──レイピア1、こちらHQ。現在敵機は確認されているので2機。どちらも機種はMS-06FザクⅡ。新型MS格納庫周辺にて戦闘を行っている模様。守備隊も交戦したが、既に壊滅している様子の為十分に注意されたし、
「──レイピア1了解、出撃に入る。·····アレックス・ベイカー、ボール、出撃する!!」
俺がそう言うと、艦体に固定されていた留め具が外される。そのままドックに入口へとスラスターを吹かしコロニー内へと侵入する。
「くっそ、やっぱり重力が有ると機体が重い! スラスターを吹かしまくらないと飛んでいられねえ·····この状況じゃ10分戦闘出来るかどうかか·····」
10分だと、かなり行動が制限される。しかも敵機からの攻撃等で戦闘機動を行う為、実際はもう少し少ない時間しか戦えない。
だが、それでいい。あくまでも敵機体の撃退だ。無理に撃破はする必要が無いので、そこは留意しておく。
「──見えた、奴らか·····って、なんだあれは。見た事ないMSだが·····もしかして、アレが例の新型か!?」
現場に到着すると、ザク二機相手に見た事ないMSが対峙している。機体色は試作機の為か塗装はトリコロールカラーで塗られていて、デュアルアイに2本のアンテナが特徴的な機体だ。
とにかく、ジオンのザクを追い払う為に照準を定める。出来るだけコロニーにダメージがいかないように考慮し、無駄弾を無くすようにする。
敵はこちらには気付いていない。絶好の奇襲タイミングだ。狙うはランドセル、装甲が薄くコロニーのダメージを防ぎ、尚且つ効果的に敵機にダメージを与えられる箇所だからだ。
「タイミング、良し。今だ!!」
引鉄を引き、いつもの180mm砲弾より威力は劣るが、砲弾が発射される。しかし、敵機は撤退しようとしていたのか急に反転する。その為ランドセルを狙っていた弾丸は、少しズレてザクの頭部へと直撃した。
部品を撒き散らしながらザクの頭部は破壊される。結果的にはかなりいいダメージだが、行動不能状態に持っていけていないので、正直不味い。
しかし、背後から新型MSが接近。何か分からないが、背部に取り付けられていた武装·····おそらく、ミノフスキー粒子を利用した近接武器だろう。そのままビームの刃をザク目掛けて勢いよく振り抜く。
その攻撃を受けたザクは胴体を真っ二つに溶断され、少しして轟音を立てて激しい爆発を起こした。おそらく核融合炉が誘爆したのだろう。
「うおわっ!?」
爆風に煽られ、バランスを崩されそうになるが機体の周囲に取り付けられているサブバーニアを吹かし、何とか姿勢制御に成功する。
「くっそ、なんて爆発だ。あの武装は凄い威力だが、核融合炉を巻き込んで攻撃なんて何をやっているんだよ!?」
局地的に起きた核爆発により、コロニーの隔壁にはかなりの大穴が空いてしまった。また核融合炉が誘爆する事になったら、おそらくこのコロニーは持たないだろう。
そうなるのは防がなくては。そう思った俺は即座に通信を立ち上げ、新型MSへと繋げる。連邦規格の周波数なので、大体の通信機なら繋ぐことが出来る。
「新型のパイロット、聞こえるか!? 狙うなら核融合炉を避けるんだ!」
その通信の直後、もう一機のザクが新型へと吶喊していく。しかし、思っていたよりパイロットは落ち着いていたのか、即座に構えていた武装を傾け、ザクのコクピットを貫く。
今度は無事核融合炉に誘爆はせず、そのままザクはゆっくりと倒れて行った。
「──ふう、何とかなったか。さて、一体誰がアイツに乗っているのかね? ·····新型に告ぐ、こちらはレイピア1。貴官の官姓名を問う、
『──え、えっと、僕のことでしょうか?』
「ああ、そうだ。さっきは良くやった。何とか核融合炉が誘爆せずに済んだからな。·····それで、貴官の名は?」
その後、帰ってきた答えに俺は唖然とした。
『·····えっと、アムロ・レイです。·····その、僕は軍人ではありません。──唯の一般人です』