ボールで行く宇宙世紀 ~MSがなんぼのもんじゃい~ 作:ゴールド龍
「──·····おいおい、冗談きついぞ。あれを一般人が操縦していたのかよ」
その通信を聞いた俺は、正直に言うと信じられない気持ちでいっぱいだった。何せ軍事機密の塊であるこのMSを、訓練も無しに一般人が操縦し、尚且つ敵MSの撃破に成功しているからだ。
第一、何故この少年がMSに乗っているんだとか、普通に考えて一般人が入れる場所では無いとか色々と聞かなくてはいけない事が多い。
「あー·····とりあえず、その機体から降りてくれ。こっちも軍人として色々と聞かなきゃいけない事が有るからな」
『──えっとそれは良いんですけど、まだ敵が来るんじゃ·····?』
「ああ、来るかもしれないな。だが君が乗ったMSによって撃破されているやつがいる。普通に考えて暫くの様子見が入るだろうし多少は余裕がある筈だ」
俺がそう説明すると、アムロ・レイと名乗った少年が降りてくる。見た所、凡そ15から16歳辺りだろうか。まだまだ成熟した青年には遠い印象を感じさせられる。
·····そう言えば、確かV作戦に参加しているリストの中にレイと言う名が──そうだ思い出した。確か本作戦の指揮を取っている技術士官に、テム・レイと言う技術大尉がいた筈だ。となると、この少年はレイ大尉の親族か、若しくは息子と言った所か?
兎に角、まずは色々と話を聞かないといけない。なので、俺はボールを地面に着陸させ、直ぐにコクピットから降りる。本来だったら下部にもスラスターが取り付けられているので、あまり地面に着陸するのは勧められないが、今回は致し方ない。
「君·····確かアムロ・レイと言ったな? 確かこの機体の開発にテム・レイ技術大尉が関わっているが、君はレイ大尉の親族か?」
「──はい、テム・レイは僕の親父ですけど·····」
「·····レイ大尉から、この機体について話を聞いていたのかい?」
「いえ、親父の部屋に忍び込んだ時になんですけど·····資料等をその時に見ました」
·····マジかよ。テム・レイ大尉、これはかなり重要機密になる筈なのに、管理が杜撰すぎるだろ。いくら息子とはいえ、自室にそのまま機密情報を置きっぱなしにするものか?
連邦士官として·····いや、1人の大人として、もう少し危機管理を持つべきじゃないか? 俺だって流石に機密情報とか次の作戦についての書類とかはきっちりと管理するぞ·····。
「それは·····なんというか·····。色々と物申したい所があるけど、今は少ししか猶予がない。簡潔に言わせてもらうが、こうなったら君にも協力してもらう」
「えぇ!? そ、そんな事言われても、僕は一般人ですよ!?」
「·····君はまだ詳しくは知らないだろうが、
俺のその言葉に、アムロ君は顔を強ばらせる。何しろ家で見つけたものが、そんなに重要だとは思っていなかっただろうからな。だが、酷なことだろうけどこちらも今は余裕が無い。動かせる者にこのMSに乗ってもらうしかない。
「·····そういう事だ。君も軍事裁判になったら色々と困るだろう? 脅すようではあるが、君の為でもあるんだ。今は俺の指示に従ってもらう」
「──·····分かり、ました。そうなったら、僕は何をすればいいんですか?」
俺が指示を出そうとした時、ヘルメットに内蔵されている通信機から通信が入った。
『──レイピア1、こちら
「·····HQ、こちらレイピア1。今から5分前、敵MS2機と交戦、これを撃破。なお、敵MS撃破にあたり新型に搭乗したパイロットと共に行動。しかし搭乗していたパイロットが一般人だった為、この後の対処等の指揮を求む」
通信先で対応しているルイスの息を飲む音が聞こえる。俺も驚いたが、新型に一般人が乗り込んで戦うなんて、普通だったら絶対に有り得ない話だからだ。しかし、現状これが起きてしまっている為、指示が必要だ。
少し時間を空けて、艦長からの指示が届く。支持の内容は、『直ちに例の一般人と共にホワイトベース隊と合流し、現状の把握に務めよ』との事だった。
「·····よし、上からの指示が来た。アムロ君、俺に着いてきてくれるか? ホワイトベース隊へと合流する為に連邦軍が使用しているドックへ向かう」
『──は、はい。分かりました』
さて、早く合流しないと。こうも状況が分からんとどうしようもないからな。俺はコクピットへと戻り、フットペダルを操作し浮上。そのままアムロ君に対して先導する様にドックへと向かう。
俺の後ろをアムロ君は器用に機体を動かし着いてくる。あまり操縦ノウハウが蓄積されていないMSで、あそこまでスムーズに操縦出来るのは驚きを隠せない。
戦闘時の動きもそうだが、唯の一般人だったとは思えない。一応MPや作業用のプチモビルスーツもあるが、見た感じそういう事をしていた様には見えない。
「·····まあ、考えていても仕方ない。さっさとドックに行って、指示をこなすとしますかね」
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·····えっと、僕はアムロ・レイ。テム・レイの息子で、少し機械いじりが出来る一般人だ。今現在、僕が住んでいたサイド7はジオン軍のMSの襲撃を受けていた。
この襲撃でコロニー内のあちこちは壊れ、避難しようとしていた多くの一般人が亡くなった。僕のお隣さんの、フラウ・ボウの家族も巻き込まれた。
そして、今は僕に目の前にいるボールについて行き、軍ドックへと向かっていた。あのボールに乗っているのは、確かアレックス・ベイカーと言う人が乗っている。さっきの戦闘では、ザクのメインカメラを破壊したり僕に通信でアドバイスを送ってくれた。
「·····一体、どうなるんだろうか」
僕がそう呟くと、アレックスさんから通信が入る。どうやらさっき繋いだ通信が切れてなかったみたいだ。
『·····──あー、どうなうかは詳しくはわかってないけど、これだけは言える。もうそのMSに乗ったからには、俺達に着いてきてもらわないといけない』
「·····この機体が、重要な軍事機密の機体だから、ですよね」
『そう、その通りだ。さっきも言ったが、最低でも軍事裁判は免れないだろう。まあ、解決する方法を1つあるけどな』
アレックスさんのその言葉に、僕は驚いた。こんな状況からどうやって軍事裁判行きを免れられるんだろうか。一体、何をすれば?
「えっと、ちなみになんですけどどうやって·····?」
僕がそう聞くと、帰ってきた言葉に言葉を失った。
『·····乗ったパイロットが一般人じゃない様にするのさ。つまりは、軍に入隊してしまえばいいんだ。そうすれば、名目上軍人が乗ったって事になり、少なくとも重い罪では無くなるな』
「僕が、軍人だって!? 一体、どうやって入れるんです!?」
『えーっとだな、なんでかって言うと、今のご時世戦力は多い方がいい。君の場合だと、連邦でも貴重なMSを操縦できる腕が有るみたいだしな。いくらでも理由を付ければ簡単さ』
「そんな、横暴じゃないですか!?」
『·····横暴もクソもねえよ。ただ、そうしないと軍事裁判を避けるなんて、以ての外。そのまま裁かれたいってんだったら別に良いけどな。もう君はこの件に関わってしまった。その時点で自由意志は尊重出来ないし、こっちの指示に従ってもらう以外選択肢は無いよ』
その言葉に、僕は何も言えなくなった。確かに、親父が関わっていたとはいえこの機体に乗ろうとして乗ったのは僕の意思だ。確かに乗る時にそんな事なんて考えれる程、余裕なんてなかった。
乗らなきゃ、みんな死ぬ。そう思ったから乗ったんだ。そして·····僕は敵兵をこの手で殺したんだ。後戻りなんて、出来ないんだ。
『·····まあ、俺の個人的な意見としては軍には入って欲しくは無いよ。少なくとも俺より下の子供を戦場に出すなんざ、真っ平御免だ。この戦争を始めたのは、俺達大人だ。なら、戦場に出る役目は俺達大人じゃねえと駄目なんだよ』
「アレックスさん·····」
『·····さて、そろそろドックだ。着いたら降りてもらわないといけないから、用意をしとく事だ』
「·····分かりました」
そのままドックへと到着し、僕はMSから降りてアレックスさんの後ろについて行く。到着したホワイトベースでは、避難民の誘導などで人でごった返してる状態だった。僕達は人をかき分け、ホワイトベースの中へと入る。
少しして艦橋に着く。そこには未だに混乱状態が続いていて、怪我をした軍人の人達や作業に追われているクルーらしき人達が行ったり来たりしていた。
「そこの君、少しいいか? 俺はアレックス・ベイカー、階級は中尉で今回の護衛に着いているボールのパイロットだ。一体どんな状況で、パオロ艦長は何処にいるか知っているか?」
「·····私ですか!? はっ、えっと、私はブライト・ノア少尉であります。今現在、上級士官の多くは死亡しパオロ艦長は負傷されていて、自分が残っている士官で階級が1番上の為、臨時に指揮を取っている所です。状況は、パオロ艦長の指示に従い避難民の誘導に入っている所になります。えっと、今の所確認している状況は以上になりますが·····」
「成程、だからあんなに避難民が·····。状況は理解した、となると1つ聞きたいんだが、避難民の誘導が済み次第どうなっている?」
「えっと·····パオロ艦長の指示によりますと、避難民の誘導が済んだ後に開発ブロックに残されている新型の情報や、部品等の破壊を行えとの事です。それさえ終われば、このサイド7から脱出しろとも伝えられています」
「そうか、すまん助かった。となると·····こちらレイピア1、HQへ状況を報告。現在ホワイトベース隊は避難民の誘導を行っている模様。現場で指揮を取っているのはブライト・ノア少尉、他の上級士官は死亡、または重傷を負っている。パオロ艦長も重傷を負っており指揮を取れない状況だ。残されている指示は、開発ブロックに残されているV作戦のデータや予備部品を破壊し、済み次第サイド7から脱出との事。──·····ああ、レイピア1了解。通信終わり」
どうやら話が纏まった様子だ。とりあえず、僕はどうすれば良いのか·····そう考えていると、さっきから指示を出していた人が、アレックスさんに話しかけ始めた。
「·····所で中尉、そこにいる少年は一体?」
「ああ、こいつか? 話してなかったな、こいつはあの機体を動かしちまった奴だ。今は俺の指示に従う事になっている」
「えぇ!? あのガンダムを動かしていたのが、こんな少年·····しかも一般人だったんですか!?」
「そういう事になるな。因みになんだが、確かパイロット候補生が何人か居たはずだが、そいつらは?」
アレックスさんがそう聞くと、ブライトさんは話しづらそうではあるが、話し始める。
「·····今回の襲撃により、ガンダムに搭乗する事になっていた候補生は死亡。他の候補生も数名を残してやられてしまい、残っている候補生も今は出られない状況です」
「·····ま、そんな気はしていたがな。分かった、では臨時にこいつをガンダムのパイロットとして扱う事になるな。一般人ではあるが、こんな状況ではなりふり構っていられない。これより残されているデータや予備部品の破壊に行ってくる。こっちの指揮は任せるぞ、少尉?」
アレックスさんそう言うと、「了解しました!」と言いながらブライトさんは敬礼している。どうやら、僕がやる事はデータと予備部品の破壊らしい。
「·····という事だ、アムロ君。直ぐに使用出来る武装を確保し、データと予備部品の破壊に行くぞ。いいな?」
「·····分かりました、直ぐに用意します」
言われたからには、やりこなして見せないと。直ぐにガンダムへと向かい、アレックスさんの後ろについて行き開発ブロックへと向かう。残されているデータや予備部品の破壊には、ホワイトベースに残されていたスーパーナパーム弾を用いた。
しかし、ある程度余裕があったのでこの機体の予備部品と武装は持ち出すことが出来た。これで、暫くは何とかなるかもしれない。だけど、これから僕はどうなってしまうんだろうか。そんな不安を抱えながら、ホワイトベースに乗りサイド7を僕達は脱出した。
脱出した先には、連邦軍の戦艦が居た。どうやらあれがアレックスさんが所属している艦らしい。そのアレックスさんは、詳しい状況を艦長に伝える為にその艦へと戻って行った。そして、脱出して直ぐにジオンのザクを発見した。
『いいか、今の状況だと君しかガンダムに乗れる人がいない。何とかジオン軍を撃退してくれ、いいな?』
「分かりました。·····ガンダム、アムロ・レイ、行きまーす!!」
今出来ることを、僕はやらなくちゃいけない。それがこの機体に乗った僕の責任なんだ·····さあ、行くぞ!!