ナーヴギア(SAO同梱版)約13万円は中学生には金額的にキツいです……   作:山田ヘイタロウ

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こ、これが10万円のヘルメットか……

「待った?」

 

 惣弥は自分の吐いた言葉に「デートかよ」と自分で脳内ツッコミを入れる。流石に声には出さなかった。

 

「別に」

 

 和人の素っ気ない態度に、こんなものかと惣弥も納得したのか軽く笑う。

 

「桐ヶ谷の家か」

 

 気分的には憧れのアイドルの家に行くような物。僅かな高揚感があるが、和人は苦笑いをして大した家ではないと説明する。

 

「家族とかは?」

「……大丈夫だと思う。直葉(すぐは)、……妹も部活でいない筈だし、母さんも仕事で帰ってくる事は少ないし、父さんも単身赴任で」

「…………」

 

 惣弥は言葉を失ってしまう。

 記憶から抜け落ちていたが、和人は家族との折り合いも良くなかったのかもしれない。本当の家族ではないと言う点に和人が遠慮を覚えてしまったのだろうが。

 家族という点では惣弥だって幼い頃に両親を失っているのだから、身の上では似ている所もある。

 

「家には誰もいない?」

「そうだね、たぶん」

「いやぁ、会ってみたかったな」

 

 惣弥としては特に妹の直葉に会ってみたいという気持ちがあった。彼女は作中ではメインヒロインを張っていて、ALOの世界ではリーファという重要なキャラクターとなっている。

 更に言えば、惣弥には彼らの両親である桐ヶ谷(みどり)と桐ヶ谷峰高(みねたか)も原作主人公の親という面で憧れがある。

 

「はは、そんな珍しいもんでもないよ」

「そんなもんか」

「そんなもんだよ」

 

 和人も僅かに雰囲気が柔らかくなっているような気がする。

 彼もまた、この世界に生きる一人の人間であって主人公という特別な意識をする必要はないのかもしれない。

 

「そういや、SAOとかもやる気ある?」

 

 茅場晶彦が開発した新世代のゲーム。まだ、開発段階か。そのβテストの抽選も行われる筈だ。正直なところ惣弥にとって興味は尽きないが、ナーヴギアも持っていないため他人事でしかない。

 

「そりゃ、やりたい。ただβテストの募集で選ばれるかだな」

「期待値高いよな……」

「ナーヴギアの製作者が作ったゲームだからかな」

茅場(かやば)晶彦(あきひこ)、か……」

 

 ナーヴギアの発表の時もテレビで彼の姿は見た覚えがある。何とも良い声を出す天才だと称賛の念を抱いたものだ。

 そして、彼がこのSAO世界の発端であるという事も、改めて理解した。

 

「プログラミングとか齧ってる人からしたら、茅場晶彦は憧れの対象だ」

「それは桐ヶ谷も?」

「まあ、俺もゲーム好きで、プログラミングもちょっとは……」

 

 この先、和人はキリトとして憧れの対象であった茅場晶彦、SAOの世界ではヒースクリフと命を懸けて戦う事になる。

 この未来を惣弥の目の前にいる、中性的で色白なただの少年は知らない。

 SAOというゲームという名の監獄に囚われた中で多くの人と出会い、友達を作るだろう。

 

「プログラミングか。俺、あんまり理数系詳しくないんだよな……」

「そうなのか?」

「そうそう。知ってるのなんて刀の打ち方くらいだし。最近だと金も馬鹿にならないし、あんまり打ってないけど」

「か、刀?」

「そ。まあ、刀造っても買い手なんて見つけれないんだけどさ」

「そっちの方が珍しいと思うんだけど」

「あー、確かに。じゃあ今度は俺の家に来いよ。いつでも大丈夫だからな?」

 

 家族の心配も必要はない。

 惣弥以外に誰もあの家には居ないのだから。

 

「分かったよ」

「明後日とかどうよ?」

「うん」

「(しゃぁい! お家にキリトさんが来てくれるでぇ! か、片付けしなきゃ。お茶、お茶も買わなきゃ。あ、後、茶菓子もか)じゃあ、決まりだな!」

 

 約束を取り付け、惣弥の心の中は大層跳ね回っていた。

 

「お、お邪魔しまーす……(しゅ、主人公さんのお家! や、やっべぇテンション上がる)」

「こっちだよ」

「は、はい!」

 

 和人の案内を受けて惣弥は背中を追う。どうにも一般家庭である筈なのに神聖さを覚える。まるで聖地巡礼のような。いや、ここはまさしく桐ヶ谷家なのだから、聖地その物であるわけなのだが。

 

「お茶持ってくるから、待ってて」

「はい!(うひょおおお! キリトさんの部屋! 何か英霊が召喚できそうだね!)」

 

 挙動不審。

 惣弥は視線を右へ左へ、上へ下へと忙しなく動かし部屋を見る。視界に映るのはアニメで見た覚えのある家具の配置。やはり、和人は黒色が好きなのだろうか。

 

「お茶で良かったよな?」

「あざます!」

「お、おう?」

 

 差し出されたお茶を啜り、惣弥は和人の方へと視線を向けた。

 

「で、ナーヴギアは……?」

「あ、そうだった」

「楽しみだな。実物見るのは」

「見るだけで?」

「いや、憧れと言うのは馬鹿にならないぞ。毎日見てる桐ヶ谷には分からないかも知れないけど……」

「ははは……」

 

 そんな事はどうでも良いのだ。

 兎に角、ナーヴギア本体を見る事ができると言う事が惣弥にとっては重要なのだ。

 そしてナーヴギアが惣弥の目の前に和人が抱える形で現れた。

 

「こ、これが……、ナーヴギア……」

 

 暗い色のヘルメット。

 額の辺りには大きなNVGと言う文字と、その下に小さくNerveGearと書かれている。

 絵で見た光景が、今リアルとして惣弥の目の前にある。

 

「ちょ、ちょっと触ってみても?」

「良いけど」

 

 恐る恐る、人差し指で触れる。その手触りが更にナーヴギアのリアルを感じさせる。

 

「す、すげぇ」

「そんな大袈裟な……」

「こ、これが10万円のヘルメット……」

「言い方」

「あ、すまん」

 

 興奮は冷めない。

 どうして自分はナーヴギアを持っていないのだろうかと、悔しさすらも沸き起こる。

 

「これで、アレだろ? フルダイブできんだろ?」

「そうだな、脳波で……」

 

 惣弥には小難しい理論などわからないが、改めて茅場晶彦を称賛する。出来ればもう少し安くして欲しかったが、これほどの機能の物を、携帯ゲーム機、或いはテレビゲーム機と同程度の価格帯にまで落とし込む事の厳しさは想像に難くない。

 

「そりゃ、携帯ゲーム機よりもよっぽど注目される訳だ……」

 

 喉の渇きを感じたのか、惣弥は和人が持ってきてくれたお茶を全て飲み干した。ただ、お茶の味はよく分からなかった。




 主人公がナーヴギアとかアミュスフィアを購入できる未来が見えないんですが。
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