ナーヴギア(SAO同梱版)約13万円は中学生には金額的にキツいです…… 作:山田ヘイタロウ
「お邪魔しましたー」
惣弥も和人の精神衛生的な問題を考えたのか、家族が家に帰ってくる前に家を出る事にした。
とは言え、危険性があるとするなら妹の直葉と
今回、和人の家に来たのもナーヴギアを見させてもらう為だ。長い時間、ほぼ初対面とも言える人間に自分の部屋に居座られても困るだろうと言う気遣いがあった。
「ああ、気をつけてな」
「桐ヶ谷に心配されるか……」
「俺もお前も大して変わらないだろ」
「こう見えて筋肉はついてるからな」
「はいはい」
どことなく最初ほどの態度や言葉遣いの固さがなくなっている。
雰囲気は惣弥の知る和人に近づいているような感覚だ。
「またな」
「ああ」
仕方ないなと言うような笑い方。
この日、惣弥は何度か和人の笑う顔を目にする事になったが、桐ヶ谷家の人たちは彼の笑う顔を一番最近に見たのはいつなのか。
もしかしたら、笑顔など中々家族には見せない珍しい物なのかもしれない。
「……キリトってあんなんだったんか」
惣弥の知るキリトという存在はやはりSAOのプレイヤーアバターなのだろう。こうしてSAOの世界が始まる以前の和人を知ることができたと言うのは、惣弥にとっては喜び以外の何ものでもなかった。
「(まあ、自慢する相手なんて居ないけど……)」
誰が、この世界で羨ましいと思うのだろうか。
この先、桐ヶ谷和人が原作の通りに問題なく生きていけば
更に言えば桐ヶ谷直葉が最も和人の事に関しては詳しい筈だ。
結局、気にするだけ無駄な事だと惣弥は思考を断ち切った。
「すみません」
「はい?」
背後からかけられた声に惣弥は振り返る。
知っている顔な筈が無い。
埼玉県に重要なキャラクターは桐ヶ谷兄妹以外には居なかった筈だ。結城明日奈も
「あの、ここの近くに電器屋ってありますか?」
「で、電器屋?」
「はい」
「それなら」
全くもって知らない女性であった。
とは言え、桐ヶ谷和人を一眼見ただけではSAOの主人公であるという事を見抜く事はできなかったのだから、もしかしたら重要人物である可能性もあるのだが。
「えーと、ここを真っ直ぐ行って……」
説明をすると女性はありがとうございますと丁寧に礼を述べて早足で歩いて行ってしまう。
「いやいや、流石に重要人物じゃないか」
去っていく女性の背中を見送り、惣弥も自宅に向かい再び歩き始める。
現在、惣弥のSAO登場人物で交友のある相手は桐ヶ谷和人たった一人だ。
茅場晶彦も現段階どこに居るかなど、惣弥にわかるわけが無い。殆どのキャラクターはどこに住んでいるかも分からない。
「ま、さっさと帰ってゲームの続きやろ。通信対戦とか出来ねぇけど……、アレはストーリーを楽しむ物だから」
自宅にある携帯ゲーム機への思いを馳せて惣弥は歩き始めるが、ナーヴギアを目にしたためか、いまいち興奮というものが薄い。
「う、ウチはウチ。ヨソはヨソだし……」
こうして本物に触れてしまったが為にか、憧れが加速する。
惣弥は憧れを抑えるために、自らに携帯ゲーム機も楽しいだろうと言い聞かせる。
「(そもそも、SAOってデスゲームになるんだよな……)いや、でも……」
やはり、我慢するべきだ。
これから生活で使う金も自分で決めねばならない。憧れだけで金を使うわけにはいかないのだ。
「SAOは諦めよう。そしてダッツを買おう」
ちょっとした贅沢をする事で満足しておこうと、惣弥は心に言い聞かせる。
近くにあったコンビニに入り、彼は夕飯と目当てのアイスを購入する。大凡、千三百円。このプチ贅沢が百回もできてしまえるのがナーヴギアの値段だ。
「……いや、あんまピンと来ねぇぞ」
レシートを眺めながら呟き、直ぐにレシートを握りしめてポケットに突っ込んでレジ袋を持って歩き始める。
「ただいまー……って、誰も居ないんだけど」
暗く寂しい家に彼の声が響いた。
灯りを点けてから、惣弥は座り込むと買ってきたものをテーブルの上に広げる。
「てか、これ明後日までに片付けないとな……」
乱雑に並べられた刀の数々。
この光景は惣弥が幼い頃に見た、この家の姿と同じだ。
思わず惣弥の口がひくついた。