ナーヴギア(SAO同梱版)約13万円は中学生には金額的にキツいです…… 作:山田ヘイタロウ
「あー、何で鞘にしまってねぇかなー、俺」
そもそも鞘師が居れば問題はなかったのだが、当然のように寿家にはいるわけも無く刀を納める鞘も自作となる。
「白鞘も幾つか作ったんだけどな……」
絶対に鍛冶の仕事ではないだろうと思いながらも祖父がやっていたもので、惣弥も鞘の製作技術を吸収したのだ。
「まあ、ちゃんと納める様に作っといて良かった……」
などと言うが、刀が鞘に収められていないことが殆どだ。少し考えてみれば分かる話だが、幼少の惣弥で有れば怖いと思った筈だ。
剥き出しの刀が散らばった部屋を歩けなどと言うのは、画鋲の散らばった場所を裸足で歩け、と言う以上に危険な筈だ。
「(流石に危なすぎんだろ。何でこんな無用心なのかね。あれか? 爺ちゃんの遺伝子か?)とりあえず、蔵に持ってくか」
鞘に入れた刀を数本ほど持って蔵まで移動する。無理して大量に抱えて持っていって怪我でもしたら笑えない。
「おいしょっと……」
刀を置いて再び蔵から出て家屋に戻る。これを三往復ほどして家屋に放置してあった刀を全て蔵へと移すことができた。
「む、こんな汚い家にキリトさんをお呼びするなんて……」
何となく汚れが気になり始め、モップをかける。
まだだ。
雑巾をかける。
まだ綺麗にできるはず。
テスト勉強中に突然、部屋の汚さが気になり掃除をし始めた時以上の捗りを見せる。
いつの間にかちゅんちゅんと家の外では鳥の鳴き声が響く時間となっていた。
「あ……、学校行かなきゃじゃん」
気がつけば登校時間となっていた。
普段、朝食を取らない惣弥は急ぎ身だしなみを最低限に整え制服に着替え鞄を背負い家を出る。
「続きは帰ってきてからで……」
惣弥の家は桐ヶ谷家よりも学校から離れており、早めに出なければならない。だが、惣弥は急いで学校に行かなければならないというのは好きではなかった為、出来る限り余裕を持って学校に向かう。
「今日は、あーとお茶と……、茶菓子か。あんま、もてなしとかはできなそうだけど」
惣弥も分かってはいるのだ。和人が人からのもてなしをそこまで気にするタイプでない事くらいは。
「ま、出来る限りで頑張るか……」
歩きながらぶつぶつと独り言を漏らしていると、昨日立ち寄った桐ヶ谷家が見える。
「(てか、何で気づかなかったんだ? 登校ルートだし。まあ、俺、若干方向音痴な所あるし。)……仕方ないか?」
桐ヶ谷家は大きな家だ。
二階建て、道場も池もある。邸宅といっても問題ないだろう。
「いや、でけぇな……」
惣弥の住む家も思いの外、広い物だ。具体的には、一人で住むと掃除の手が行き届かず困る程には。
更には鍛冶場と刀蔵まである。
並の家よりも広い家だろう。
「おわっ……!」
「す、すみません!」
駆け足で飛び出してきた少女はぺこりと惣弥に向けて頭を下げると、また駆け出して行ってしまった。
「ん? (もしかして直葉さん? にしては……)」
胸がそこまで大きくなかった様な。
惣弥の頭の中には若干、邪と感じてしまう様な思考がよぎる。
「待て待て……(じゃあ二年で……え、育ちすぎじゃね?)」
何とも不思議な物だ。
原作とのギャップと言うべきか。惣弥は自分がSAOの世界に生きているのだと理解する。SAOの世界が始まる前から、この世界は存在していたのだと。
「あれ、寿?」
「ああ、桐ヶ谷」
「……何で立ち止まってたんだ?」
「いや、デカい家だなって」
「そうかもな」
「あ、さっき女の子が走って行ったけど。桐ヶ谷の妹だよな?」
「ん、たぶんな」
「黒髪の短い髪の……」
「ああ、スグだ」
特に会話らしい会話もなかったが、二人目の主要人物に会えたことには感謝した方がいいかと惣弥は心の中で合掌する。
「……そうだ、一緒に学校行こうぜ」
「まあ、いいけど」
「(キリトさん、もしかしなくても押しに弱い?)そうだ、電撃NerveGearとかってもう、SAOとかの情報とか出てたりすんの?」
和人の部屋にあったのは確認できたが、中身までは読めていない。SAOが本格始動する事になれば、茅場晶彦へのインタビュー記事やSAOの魅力がぎっしり詰まった物になる事は間違いない。
「まだβテストも始まってないから、ちょっとだけって感じかな」
「でも買ってる人の目的の殆どって、それじゃないか?」
「確かに……」
「他にゲームは無いんかね」
「いや、他のゲームじゃSAOの注目度は超えられないな」
「だよなぁ」
分かりきっていたことだ。
ゲーマーの和人が言うのだから間違いない。どれほど小さな情報でもSAOであると言うだけで他の情報以上の価値があるのだろう。
「そういや、妹さんはゲームやらんの?」
「スグはネトゲ嫌いだから……」
「(そういやそうだった……)へー」
「それに部活で忙しいだろうし。……寿は部活やらないのか?」
「俺? 俺は良いよ。今からやっても輪に馴染めないし」
人付き合いの苦手な和人にも、惣弥の部活をやらない理由は理解できた様だ。
「桐ヶ谷は?」
「俺もゲームで忙しいから」
「うん、納得だな」
他愛もない事を話しながら学校に向けて二人は歩いていく。