季節イベント(波間IF)   作:夢枕 七変化

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七夕18(不死鳥マルコ)

 その袖が見えた時、イゾウかと思ったがその直後にそれがナミであると判断して、どうしたのかと近付けばホッとしたように笑みを浮かべて俺を見る。それから白髭様に会いたいのだけど、時間取ってもらえるかしら?なんて聞くから、案内する事にした。

 何度かナミと親父は2人で話し合いの席を設けていて、その度に親父は真剣にナミの話を吟味していた。時には俺もそれに同席したが、基本的に口出しが出来る雰囲気でも状況でも無かった。

 そんなナミが何処か砕けた雰囲気で親父に会いたいというなら、今回は厄介事では無いのだろう。そう判断したからこそ、俺は親父の元へとナミを連れて行った。

 

 「こんにちは、白髭様。今日は小さな宴をやりませんかという提案に来ました」

 「珍しいな。だが、金のかかる事はしねェぞ」

 

 親父の言葉に俺が溜息を落とせば、ナミは少し驚いたような顔をしてから笑顔で頷いた。そして笹竹を差し出すと簡単に宴の内容を語り始める。

 それを聞いた親父は金もかからねェならとそれを承諾して、俺に視線を向けるから何人かで笹竹を取りに行く事になりそうだと理解する。願い事を書いて吊るして、夜に燃やすという行事らしい。

 それだけの事なら確かに何か必要と言う訳でもねェなぃ。その上ナース達が喜びそうなイベントだから、親父も納得したのだろう。

 何処を見ているのか分からないような顔をする事の多いナミは、けれども俺達に害を成す事は絶対にしないと何故か確信できる。親父と海賊王の右腕、俺を憧れの人だと言い切る担力と、お人好しで生真面目な性格の同居を見事にしてみせるナミ。

 そんなナミだからこそ、隊長格のメンバーはすぐにナミを受け入れた。それは革命的な事とも言える事態だが、ナミはその事実に気付いていない。

 警戒心の塊のような彼等が警戒心を抱けないのは、基本が抜けてる少女であると気付けてしまったからだろう。大人としてのキリリとした姿が、仮面もしくは必要に迫られての姿で、基本的には疑う事を知らない子供だと分かるからこそ。

 だからこそ、こんな風に無邪気に親父に宴を開きたいなんて言ってる姿にホッとする。まだ、心を壊したりはしていなかったようだと。

 俺の炎では、心を癒したりは出来ねェからなぃ。それよりも……気になるのは着ている物。

 これは買う所を見ていないし、持って来た荷物にも無かった筈だぃ。……イゾウから貰ったにしては柄が地味だしねぃ。

 

 「……宴の件は了解したよぃ。ただ、ナミ。その服はどうしたんだよい?」

 「この間島で皆買出ししたじゃない。その時に」

 

 平然と言うナミだが、そんな物を買ってるのは見てない。ナミが降りる時は俺もいたから間違いは無ェ。

 

 「買ってるの見てねェよぃ」

 「布、買ってたの覚えてない?」

 「布?」

 

 言われてみれば珍しい布を扱ってる店で何やら買い込んではいた。アレか?

 

 「あの時に買った布で作ったんだけど……何処かおかしい?」

 「……おかしくねェ所が、おかしいよぃ。万能過ぎるだろぃ」

 

 呆れを滲ませて言えば、ナミは首を横に振った。それから困ったように言う。

 

 「前に1度作った事があるだけだから、多分色々間違ってると思うのよ。落ち着いたらイゾウさんに確認して貰おうと思ってるの」

 「……お前は何を目指してんだよぃ。まァ、似合うからそのままで良いと思うけどなぃ」

 

 思わず口にした言葉を聞いたナミは、その顔を赤く染めて、小さくありがとうと言うからその照れが伝染する。そんな俺達を見ていた親父がグララララと大爆笑するから、俺は誤魔化すようにナミを残して笹竹を取りに行くメンバーを選出しに行く。

 親父を含めた大きな体の人でも使えるような笹竹も必要だからと使用目的も含めて説明して、取りに行かせれば何だか家族が皆楽しそうにしていた事で、宴も久々だったと思い出す。それならばと戦闘員に海王類を仕留めれば、宴で肉が出るぞとけしかけて適当に食料調達させつつサッチの元へと向かう。

 

 「今夜は宴か?」

 

 食堂に入ってすぐに声をかけられれば、気付かれていたのかと笑うしかない。簡単に説明すればサッチはナミちゃんはいい子だなァなんて言うから、その真意を探ろうとサッチを見る。

 

 「……他意はねェさ。最近敵船にも会わねェから宴も無かっただろ。その鬱憤が溜まり始めたこのタイミングで金のかからない季節のイベントとなれば、妙な事を考える奴も減るし、喧嘩も減る。助かると思えばこそだ」

 「確かに、そうだなぃ。喧嘩が増えるとモビーが壊されて、親父が怒るからねぃ」

 

 喉の奥で笑えば、サッチがお前もなんかズレてるよななんて失礼な事を言う。そうして動き回っていたら、ナミの姿が見当たらなくて取り敢えず部屋に戻ってみた。

 部屋に置かれていた書類は重要な順番に並べ替えられており、計算書類は間違いの無い物とある物に分けて積まれている。間違っている物にはそれぞれ紙が添えられていて、訂正箇所が書かれていてるだけでなく『訂正前にもう1度確認して下さい』と書かれている。

 海図や地図も確認しておかしい所を修正してあり、既に俺のやる事は確認のみと言っても良さそうな状態になっている。医療系の書類は並べ替えのみで終えているあたり、分かってやっていると伝わって来る。

 これをここまで終えてくれたナミはと思えば、何かを抱き締めた状態で、何故かベッドを背もたれにして寝ている。何故ベッドでもソファでも無く、床で寝ているのかとその細い体を抱き上げると抱いていた物が青い鳥のぬいぐるみだと分かり動揺する。

 ……そんなもん、何処に売ってたんだよぃ。そもそも布もだが、どうやって買っていたのか。

 見学するだけだと言っていたから、念の為について歩いていたが、金は持ってなかった筈だ。だからこそ、時々飲み物を買う時にその場に残したりはしたが、他は常に傍に居たし、短時間で戻れば必ずその場に居たのだから不思議でならない。

 いつの間にか俺のシャワー室に増えていた洗剤類は、見覚えのない物でそれも販売されてるのを見た記憶は無い。深く眠っているのか、ベッドに移動させても起きる気配のないナミの額に口付けると、ナミの瞼が微かに動いた。

 それからゆっくりと瞳を見せるナミに、笑いながら声をかければ少し眠そうにしながら体を起こして、抱いていたぬいぐるみを撫でながら何かを確認している。

 

 「それ、どうしたんだよぃ?」

 「ん……?マルコがいない時に、作ってたの。スモールマルコ。可愛いでしょ」

 

 まだ微かに寝惚けているらしいナミに、けれどもその問いに俺はどう答えたら良いのか。作った事を褒めればいいのか、可愛いと言われても嬉しくないと言えばいいのか。

 それとも、そんなに愛してくれてありがとうとでも言うべきか。悩んだ末に口から飛び出したのは、素直な言葉。

 

 「今は俺本人が居るから、それじゃなくて俺を撫でろぃ」

 

 それにナミはふわりと笑って、俺に手を伸ばすとぎゅっと抱き着いて、そのまままた眠ってしまった。どうやら相当疲れていたらしいなぃ。

 宴が始まるまで寝かせてやるかとその頭を撫でながら、腰に抱きついたまま離れずに眠るナミをどうしたものかと思う。仕方なくベッドに腰掛けて膝枕してやりながら書類に目を通しつつ、宴の始まる時間まで2人で部屋に篭っていた。

 宴が始まると呼びに来たハルタは俺とナミを見て、何故か嫌そうに溜息を落としてから、ナミに優しく声を掛けて起こす。飛び起きたナミを見たハルタが俺を睨み付けながら、揶揄うように言葉を投げ捨てて姿を消した。

 

 「親父に孫抱かせたいのは分かるけど、無理させちゃ逃げられるぞー!」

 

 どうやら悪者は俺と決められているらしい。ハルタを見送ってから、今更短冊に願いを書いてなかったと思い出して、どうしたものかと考えて、心からの願いを書く。

 

 〝無駄な仕事が減りますように〟

 

 仕事がこれだけあると、ナミと過ごす時間が減り過ぎる。寂しい想いをさせたから、こんな物を作ったのだろうと思えば、申し訳ないような気持ちにもなろうってもんだろぃ。

 目覚めたのを確認して2人で宴の会場になっている甲板に出ると、ギター片手に弾き語りを始めるナミには、先程の甘えた印象は無い。酒場の楽士も裸足で逃げ出すような腕前で弾き語るのは、この宴の趣旨となっている恋物語。

 ナース達はそれをうっとりと聞き入り、そのナースに気がある男達は色めき立つ。ただ、食事や酒を楽しむ者もいる中で、弾き語りを終えたナミは、1礼してから笹竹へと向かい短冊を取り付ける。

 俺もそれに続いて取り付ければ、書くだけ書いて付けていなかった奴が慌てて笹竹に集まって来た。揉みくちゃにされる前にとナミを連れて離れる時見えたナミの願い事は、海賊らしくないとしか言いようがない。

 

 〝皆の願い事が叶いますように〟

 

 そんなナミにそっと耳打ちする。

 

 「明日は運良く俺の休みの日でねぃ。……寝られると思うなよぃ」

 

 俺の言葉に私何かした!?と半泣きで縋り付くナミを無視して歩けば、周りからは暖かい笑い声が聞こえてくる。エースを取り戻すまでもう少し……俺にも甘えさせてくれよぃ。

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