季節イベント(波間IF)   作:夢枕 七変化

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エイプリルフール(麦わらのルフィ)

 最近、なんかナミの様子がおかしい。多少だと具合が悪くても隠しちまうというか、気付かないナミだからこそなんか不安になる。

 俺が分かるくらいなら、チョッパーに伝えるべきだろう。正直、俺が落ち着かないってのより、ナミに何かあればこの1味は立ち行かなくなるのだから。

 

 「チョッパー……ナミが、おかしい」

 「……どんな風に?冷たいとか、構ってくんないとかなら、忙しいだけだと思うぞ」

 「違ェよ!なんか、顔赤くて……」

 

 慌てる俺にチョッパーは胡乱な視線を向ける。何か、怒られる予感がして身体が固くなる。

 ピシッと姿勢を正すと、チョッパーがふんすっとその表情に怒りを滲ませた。思い当たる理由は、今の所無いけど大人しく聞いとくのがいい事はこれ迄の経験から分かってるのだ。

 

 「ナミの体力考えないで、交尾し過ぎてるんじゃないだろうな!?」

 「最近はしてねェよ!机に齧り付いてるもんよ!」

 「……そっか。なら後で診てみるよ。偉大なる航路は気候が乱れてるから、体調崩しやすいんだ。そういう事なら大丈夫だと思うぞ」

 「ふーん。ナミ、弱っちいもんな!」

 

 素直に言葉にした時、チョッパーは分かりやすく視線を逸らして溜息を吐き出した。そして無言でまたゴリゴリと木の実を潰し始める。

 その様子に忙しそうだからと傍を離れて、サンジの所へ向かう。サンジならナミに甘いから、もう少し何かちゃんとしてくれる気がした。

 

 「サンジー……ナミがおかしい」

 「ん?なら、これ持ってけ」

 

 言葉と同時に差し出されたトレイを見れば、飲み物と蜜柑が乗っている。俺なら肉の方が良いけど、ナミは蜜柑で回復するらしい。

 確かにナミは蜜柑の匂いするもんな。それに、ナミは全てが甘いし……。

 そんな事を考えながらも、言われるままにトレイ片手にナミの所へ行けば真剣な顔で机に向かっているのが見えた。ソロバンを手にしてるから、何か計算しているらしいと言うのはわかる。

 ……邪魔したら怒られちまうよな。仕方ない。

 そっと机の隙間にトレイを置いて、図書室を後にすれば花壇で花に水をやっているロビンを見付けた。本当にナミとロビンは、変なとこ似てると思う。

 

 「ロビン」

 「あら、ルフィ。どうしたの?」

 「ナミが……」

 「ふふっ」

 

 俺が話始める前にロビンは笑い出す。その理由が本気で分からない。

 

 「なんだよ」

 「ルフィはいつも、第一声がナミよね。……様子見ておくわ」

 「ありがとう。あ!そういやウソップ見てねェか?」

 「フランキーと下に篭ってるわよ。なんか作ってるみたい」

 

 完成した時は弄らせてくれるけど、その前の段階で顔出すと完成しなくなるって怒られちまうんだよな。必要なネジを俺が壊しちまった事もあるし……。

 なら、今はやめとくか。そうすると後は……。

 

 「なら、ブルックの所に行くな!邪魔したら怒られちまうからよ」

 「そうね、ゾロは見張り室で寝てるから遊べないものね」

 「にししっ!」

 

 そうしてブルックに色々演奏して貰ってたけど、ナミが気になってソワソワしちまう。そんな俺に、ブルックはヨホホと笑うと毛布を差し出して来た。

 

 「それ程心配ならば、様子を見に行かれては如何ですか?」

 「……そうする!」

 

 そう言って駆け出した俺は、眠ってるナミを見付けて……なんか、少しホッとした。でも、1人にしたら魘されちまうからって言い訳して、ナミをそっと抱き上げて女部屋に運んじまう。

 ベッドに寝かせて、その寝顔見てたけど……全然起きる気配がないナミに、大丈夫かなと首を傾げれば皆が入れ替わり立ち代り様子見に来たりする。チョッパーが診察して、サンジが俺の飯を届けてくれて、ゾロが部屋の入り口付近で寝ながら護衛してくれてた。

 ブルックが甲板から安眠しやすいようにと演奏してくれて、ウソップが俺が暇しないかって時々顔を出してくれる。ロビンはフランキーを連れて部屋を明け渡してくれて、俺はただ……眠るナミの髪に指を絡ませたりしながら見守っていた。

 時々俺の名前呼んで、甘えたように俺の手に擦り寄るナミに顔が赤くなるのは……そう、シゼンノセツリだ!ナミが、可愛いのがいけないんだ!

 そうして朝が来た頃、漸くナミが目覚めた。少し寝惚けた顔で頭を動かして、窓を見たと思ったら慌てた様子で飛び起きたのが愛しい。

 

 「うそ!?もう夕方!?」

 「朝焼けだ。……眠れたみたいで安心した」

 

 俺の言葉にナミは驚愕を絵に描いたような顔をした。そして、ロビンが部屋を出る前にめくって行ったカレンダーに視線を向けて、暫し硬直する。

 それから少し何かを考えていたらしいけど、俺に視線を向けてふわりと笑う。少し困ったような、ナミらしい笑顔。

 

 「おはよ」

 「……ああ、おはよう」

 

 つられたように挨拶して、笑い返す。すると今度は悪戯に瞳を輝かせて、怯えたように肩をさすり、頭を振る。

 本当にナミって、見てて飽きないな。そんな事を思いながら眺めていたら、何故か聞きにくそうに質問して来るナミの姿。

 

 「そう言えば、朝ごはんって……」

 「食わないって選択肢は無いからな」

 

 俺の言葉に首を傾げるけど、それで許してはやれない。本当に心配かけやがって。

 

 「蜜柑は飯じゃないから、ナミは四日、飯食ってねェんだぞ。ちゃんと飯を!肉を食えよ!」

 

 怒鳴るように言葉を告げた俺に、ナミは優しく微笑む。その笑顔に見惚れそうになったけど……誤魔化されねェぞ。

 

 「笑っても飯食わないとか許さねェからな!!」

 「うん、分かってるわ。ルフィは、優しいわね」

 「……ごっ!」

 「ご?」

 

 優しいのはナミだろうとか、飯を食えとか、色々言いたくて何を言えば良いのか分からなくなる。その為に声を詰まらせた俺に、ナミは復唱する形で声を出して首を傾げた。

 

 「誤魔化されないからな!ロビン!ナミが食事するように連れて行くぞ!」

 「なんでわざわざロビンまで巻き込むのよ」

 

 そう言って笑うナミを抱き上げて、サンジの待つキッチンへ向かう。そんな俺とナミを皆が笑いながら見ていて、こんな日常がこれからも続けば良いと心から願っている。

 それから飯を食って、俺はフランキーに貰った最新式の釣竿片手にチョッパーを釣りに誘おうとしたけど、ナミと困った様子で会話してて……。これって、下手に近付くと、怒られる気がする。

 でもなァ……これ、チョッパーも喜ぶと思うんだよなァ……。そっと声掛けたら、怒られねェかな?

 

 「チョッパー……?」

 「……ルフィ、あのな、ナミがな」

  「ん?」

 「……いや、何でもねェ!どうしたんだ?あ!その竿見た事ねェぞ!?」

 「えっと、フランキーが、くれたんだけど……チョッパー、これやるからさ、何があったのか教え「竿ありがとう!大物釣り上げるぞー!!」」

 

 俺の言葉を最後まで聞かずに飛び出すチョッパーを見送り、残ったナミを見詰めれば、困ったように笑う。どうしたんだろう?

 困ったように視線を動かして、言いにくそうにしてる。何か頼み事でもあるのかな?

 

 「ルフィ」

 「どうした?」

 「……最近、微熱が続いてたから、チョッパーに診てもらったの」

 「風邪か?サンジに喉に優しいの作ってもらうか?」

 

 でも、それならなんでチョッパーは隠したんだろう。そう思ってナミを見詰めれば、ロビンがまさか!と言って動きを止める。

 その反応を受けて、サンジは顔面蒼白だし、ウソップは真っ赤になつて動揺する。サンジとウソップの顔色が正反対なのは、何なんだ?

 

 「やだ!大丈夫よ!皆落ち着いて!変な病気じゃないわ!」

 「ナミ、すぐに休んで!」

 

 焦った様子で言葉を口にしてから、明るく笑ったナミの反応を見て、ロビンが焦った様子で肩を掴む。それによりナミが慌てるけど、本当に意味が分からねェ。

 

 「いや待って!まだ何も嘘ついてないのに、その反応されるとは思わなかったから待って!」

 「まだ嘘ついてないって、なんだ?」

 「今日は、エイプリルフールだから、人を傷付けない嘘ならついてもいい日なのよ。だから何か嘘つこうと思ったのに、嘘つく前に騒ぎになって焦ったって話しよ」

 

 困ったように笑ったナミを見て、今度こそブルックがカタカタと震え出した。何なんだろう。

 でも、嘘ついていい日か。俺も嘘ついてみようかな。

 そんな事を考えていたら、ロビンが呆然とした様子で問い掛ける。それにナミは笑顔で頷いた。

 

 「では、嘘ではなく本当に……?」

 「ええ、本当に「ナミ!部屋に戻るわよ!!」え!?なんで!?」

 「ロビン、ナミとは今日から俺が同室になるよ。守らないとだからな!」

 

 半分本音、半分嘘で言葉にした瞬間、ロビンとナミが涙ぐむ。そして、騒ぎにより集まって来たフランキーが大声で泣き出して、ゾロが変な事を言い出した。

 

 「ルフィが父親か……」

 「へ?」

 「あん?」

 「いいプリンの日で嘘ついて良いって言うから、部屋交代って言ってみただけだぞ?なんだ、父親って」

 

 その瞬間何故か突然ロビンがクラッチして来て、サンジには蹴られた。意味がわからなくて首を傾げたら、真っ赤になったナミが叫ぶ。

 

 「皆落ち着いてよ!私、妊娠してないから!ただの、疲労よ!嘘つくより厄介な状態にならないで!!」

 

それによりホッとしたような、残念なような変な空気が流れる。でも、俺は心から思うんだ。

 どんな嘘でも、もしもナミが望むなら、それは現実にしてやりたい。俺は嘘偽りなく、どんなナミでも愛していると断言出来るのだから。

 

 「なら、チョッパーは……?」

 「無理させないで休ませてやってくれって、言おうとしてただけよ」

 

 何を言い淀んでいたのかといい切る事ができないままに、首を傾げた俺にナミは恥ずかしそうに顔を俯ける。そんなナミをそっと抱き締めて、俺はその頭を撫でておいた。

 疲れてるなら、俺の腕で休んで良いぞと言いながら。抱きしめてる他に、確実に守ってやれる手段を俺は知らないんだ。

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