ルフィが追われているのを助けて後程合流する筈が、ルフィが自分の仲間と逸れるという珍事を起こしてくれたので共に行動して、船まで連れ帰った。その後目的地が同じだと言う事で船で進める所まで進みながら、ユバまでは共に行けるとはしゃぐルフィを宥めていた時、ルフィの仲間の1人であり手紙の送り主が見慣れない姿で甲板に出て来た。
それから宴でも開きましょうと笑ったのを見て、周りに視線を向ければどうやら思い詰めている王女の為にと考えたらしいと分かる。船長である筈のルフィが何も出来ないからか、クルーは優秀なのが揃っているなと苦笑しちまう。
まだまだ荒削りだが、後々確実に力を付けて名を残せそうな人材だけを集めているのは、ルフィの天性の能力なのか。その中でも特に目を惹くのは剣士の強さだ。
覇気を身に付ければ相当手強い相手になるだろう。そしてコックの料理の腕。
その中で異彩を放つのは航海士だと言うナミだ。航海士としての腕前は今の所不明だが、このクルーが信頼している様子から見て、相当な腕前なのだろうと推測は出来る。
それよりも……送って来た手紙の内容を考えれば、先読み系の能力を持っているのだろう。それと知識量とその質の高さ、分析能力も高いのに、お人好しで周りに気を遣いすぎだな。
今も夜どちらにしてもキャンプになるのだからと言って願いを書いた物を燃やすだけのそれならば、問題無いでしょと笑っている。それから俺に視線を向けて、願いを書く為の紙を見て困ったような顔をする。
「エース……燃やさないで紙を持っていられる?」
「なんで俺が能力の制御苦手なの知ってんだよ」
思わず言えばナミはしまったと言う顔になるから、これは何かあるなと分かってしまう。それから唇の動きがオーズと動いたので、帽子の件を知っているのかと分かってつい、その腕を掴む。
「ルフィには言うなよ」
「兄としての威厳が消えるから?」
クスクスと笑いながら言われたので俺は深々と溜息を落とした。賢く優しいが、少しイタズラ好きなんだよな。
それからその唇が言葉をこれ以上紡がないように塞げば、無駄な抵抗をして来る。反応するのに抵抗するとか意味がわからねェと思っていたら、思いっきり舌を噛もうとして来るから仕方なく唇を離す。
「エース、ふざけないで!まぁ、ビビに手を出したんじゃないだけマシだけどね」
そう言ってから近くの村に娼館あったかなと呟くので、これは手強いなと思う。どうやら欲求不満だと思われたらしい。
けれども1過性のものだと思っているのか、手を離している今は逃げるでも怯えるでもない所がまたなんと言っていいのかわからない。それから燃やしちゃったら新しいの渡すから、願い事書けたら吊るしといてねと言って適当に何枚か俺に押し付けて立ち去る。
願い事と言われてもと思いながら、短冊を睨み付ける。書いた所でどうにもならない事を書いたら、どんな反応をするのかと考えてしまった俺は、性格が良くはないだろう。
それでも1度思い浮かんだそれは、消える事はなくて俺は結局それを書いてみる事にした。それをルフィが見る可能性を失念して。
〝もう1度兄弟揃って会いたい〟
それをぶら下げてから船内を歩いていれば、人気の無いところで座り込んでいるナミを見付ける。顔を赤くして、何やらブツブツ言っているから、どうしたのかとその声に耳を傾ける。
「大丈夫、あれは事故。他意は無い。大丈夫。気にしない、犬に噛まれただけ、大丈夫」
……平然として見えたのは、演技か。そうと分かれば押してみるのもありだなと内心で嗤いつつ近付けば、俺に気づいたらしいナミは慌ててその表情を取り繕う。
「あら、エースどうしたの?」
「ナミこそ、そんな所に座ってどうした?」
それに対してナミは迷う事も無く涼んでたなんて言う。平然としたその様子に、先にあれを見聞きして無ければ信じるだろうなと思わされる。
そんなナミが人気の無い所で座っているのはある意味都合が良いと、その肩を押して床に縫い付けるように押し倒せばキッと睨み付けてくる。けれどもよく見れば体は小さく震えている。
「……怖いか?」
「馬鹿言わないで!怒ってるのよ、適当に近場の女で済まそうとしないで!」
瞳まで演じられるのかと感嘆の思いでナミを見ながら、それでも俺が手を少し動かしただけでその体は小さく反応する。そしてほんの僅かな時だけ、瞳に怯えの色が浮かぶ。
素直にそれを表に出す事の出来ない環境で育ったのかと思えば、余り虐めるのも良くないと分かる。それでも、泣かせてみたいと思うのだから、俺も駄目だよな。
「……後で、娼館に案内するから辞めなさい」
突然ナミに投げ付けられたその言葉で、俺は何かが切れた音を聞いた。その勢いのままでナミにのしかかり簡単に脱がせられるその服を剥ぎ取りながら、唇を重ねれば力でも技術でも、かなう筈もないのに必死で抵抗を示してくる。
「エース、やだ!やめ……」
唇を離す僅かな時に抵抗の声を上げるが、辞めたくねェ。このまま俺のものにと思った時、少し離れたところで物音が聞こえてその体を解放する。
流石にその現場を見られるのは趣味じゃねェからな。
「エース……」
怯えを隠さずにナミは俺を呼び、俺が少しでも動けばビクリと体を揺らす。その反応にまさかと思う。
「……急に悪かった。だが、抱きたいと思ったのは、遊びじゃねェ。俺はナミが欲しい」
言い捨ててその場を去る事が今俺に出来る唯1の事で、甲板に戻れば半泣きのルフィが俺に巻き付いてきた。どうやら短冊を見られたらしい。
俺が身動きを取れずにいると、何事も無かったかのように平然とした様子で姿を見せたナミが自分の短冊を取り付けながら、俺の書いたものを見つけたようで何か考える仕草をしている。それから少し低い声でルフィを呼んだ。
「……ルフィ、サボは生きてるわよ。革命軍の参謀長に同じ名前の人が居るから、後で手配書出てないか調べてみるわね」
その言葉にルフィは疑う事も無く喜びを示すが、その言葉が俺には理解しきれない。俺は〝サボの名前を書いていない〟のに……。
夜になって船を降りて笹竹を燃やしている時、明日の朝また集まりましょうと言ってナミは陸の奥へと姿を消す。ルフィ達は何か調べに行ったのかなと気にした様子もないが、俺は話をするチャンスだとその後を追ってみた。
酒場に迷わず入っていくナミは、古い手配書とか無いかしらと店主に声を掛けていて、どうやら本気でサボの手配書を探してくれているらしいと分かる。それから見付けたらしく、その手配書を貰えないか交渉している。
手に入れた手配書を持って酒場を出て来たナミを捕まえれば、ナミは困ったように笑って、それから手配書を差し出してきた。その手配書の顔を見れば、どれだけ時が流れていても分かっちまう。
間違いなく、サボだ。叶わないと諦めていた事が叶うかもしれないと分かり、俺はもう1つの諦めかけていた事に全力で立ち向かう事を決める。
「ナミ、お前だけでも白髭に来ないか?手放したくねェ」
答えがどうであれ、その心と体だけは手に入れると心に誓って、俺はその唇が返事を紡ぐ為に動くのを待つ。もうこの時既に、弟の仲間だとかそんな事を考える余裕は残されていなかった。