夏祭り(麦わらのルフィ)
祭りだと聞いてナミを誘おうと飛び出した俺はロビンに邪魔されて、ロビンとの攻防に勝利をおさめて漸くドアを開けたら中にはヒラヒラした格好のナミが立っていた。ドアを開けようとしていたのか、少しだけ持ち上げられた手がそのままに硬直している。
「ナミ、これから出掛けるのか?」
「甲板に出ようと思ってただけよ。どうしたの?」
「ん!ナミを祭りに誘いに来たんだ!」
「そう、じゃぁ行きましょうか」
俺が笑えばナミも笑う。それが1番大切なんじゃねェのかなんて思う。
周りを気遣ってばっかりで、自分の事ナイガシロにするナミだからこそ、自然に笑ってくれるのが1番なんだって思う。そりゃ、ナミには男が勝手に集まるから……弱いのは自分で倒してくれるけど、強い奴らに狙われ続けるから気が気じゃねェのは確かなんだけどよ。
……ゾロとサンジも本気だし。もしかしたらロビンこそ危険かもしれねェし……なんて考えてから、このヒラヒラどうしたんだろうって考える。
「なァナミ、その服どうしたんだ?」
「え?……あぁ、ならロビンね。ルフィからかと思って着たんだけど。似合わないなら着替えてくるわよ?」
「似合ってるから、なんか嫌だ」
「……まさか、ロビンに妬いてるの?」
驚いた様子で言うナミに、顔が赤くなるのが分かる。それを見たナミがさもおかしいと言うようにクスクス笑うから、俺はナミに抱き着いた。
細くて、頼りない体で……でも、本当の意味では誰より強いからこそ、脆いのを知っている。どんなナミでも俺は愛してるのに、ナミは自分に自信が無い。
なんでも出来るし、魅力的で、優しくて……それでも足りないって言う。でもよ……。
「ナミがそんなに色々出来るのに足りないんなら、俺は何も無いじゃねェか」
「ルフィは強いもの。私は、ルフィに戦いでは守られるし、それ以外でも助けて貰ってるの。だから……ルフィの出来ない事は、私がなんでもやらないとね」
穏やかに微笑むナミを見て、ちぇーと言えば頭を撫でられる。こういう時ナミの中で、俺はまだまだ可愛い弟なんだろうなって思わされる。
「ナミ、行こう!俺腹減った!」
それでも構わねェけどさ。普段は。
何かあった時ナミはいつも、真っ先に俺の名を呼ぶ。そして、俺と2人の時はちゃんと男として見てくれる。
今はそれで良い。チョッパーにだけ優しい顔されるよりは、全ての顔を俺に向けてもらえる今が良い。
腕を掴んで走り出せば、ナミは笑いながら着いてくる。会場まで走って行く俺達をサンジがワーワー言ってたけど、ロビンに止められてるから今日は邪魔されないらしいと分かって、少し顔がニヤける。
……ロビンにとってナミは1番近い存在で、妹みたいな立場の親友何だって事を知っている。ナミもまたロビンを時々妹みたいに見て、大切に守ってる。
だから……ロビンが女で良かったと心から思う。たまに、本当にたまにだけどロビンがロビオな気がする時があって、ナミとロビンで出かけてる時、ナミに手を出したヤツが傍から離れてから何をされてるのかを知らないナミは、幸せだろうと思う。
……多分、ナミに関する事では1番沸点低いのはロビンだ。そんな事考えてたら会場に到着して、手当たり次第に買った食べ物を食べ歩く。
そんな俺の口元をナミが笑いながら拭いてきて、元気ねェなんて言うから、俺はおぅ!と笑う。そんな当たり前の毎日が幸せだと思えるんだ。
「ルフィ、あっちで大食い大会やってるけど、参加してみない?」
「大食い大会?」
「そう、1位になったら、屋台で使える金券貰えるらしいのよ。お小遣いの節約になると思うわよ」
笑いながら提案されたそれに従えば、会場には沢山の人がいて、ナミは見守ってるわと言って見物客に混ざる。俺はそれを見送ったけど、ナミだけは何処にいても分かるんだよなァ。
不思議だ。
同時に同じ物が出されて、食べきれない奴がいたらそれが席を立つって流れらしい。予選は10品食べろって出されたけど、全然足りねェ。
でも、この10個の料理はタダだったんだってだけでも良いのかな?
「ルフィ、これからが本番よ!1位になって金券貰ってきなさい!」
「おゥ!」
にこにこ笑ってるのは、食費が抑えられるからだってのは分かってるけど、同時にナミは俺が何かしてるのを眺めてるの好きなんだよな。食ってても、遊んでても俺を見てる。
少し前までは、見守ってる感じだったけど、今は見てる。んで、どっちにしても俺が困ると手を差し出すんだ。
それを断ると、頭撫でて困ったら言ってねって笑うから、俺はいつも意地になる。そんな事を思い出しながら、出されるのを食べるけどよ、サンジの飯のが美味いよな。
そんな贅沢な事を思っていたからか、ナミが視界から消えていてやっと見付けた時にはナミが知らない婆さんを助け起こしていた。優しく笑うその姿は、善良な市民のそれだ。
……お人好しな海賊も、居ていいと俺は思うんだけどよ。本当に海賊らしくないよな、ナミは。
唯1海賊らしい金へと執着も仲間の為だもんな……。でも俺は、そんなナミが好きだから、海賊らしいかなんてどうでもいいんだ。
目の前に出される物を食べて、目の前の皿が空になるとナミを見て……ってやってたら気付いた時には会場に、俺ともう1人しか残ってないらしかった。それはどうでもいいけど、ナミはさっきから何人もの男に声をかけられて、それを追い払ってる事の方が大きな問題だ。
俺が皿を空にした直後、ナミに知らない男がまた近付いてその腕を掴んだ。
「そこのお前!ナミに触んな!」
立ち上がった俺に視線が集まる。ナミは少し恥ずかしそうにしてから、小さくそう言う訳だからとか言ってるけどよ、何がそう言う訳なんだよ。
っとに、ナミは何だってあんなに男集めるんだよ。あれか、美味そうだからかな。
少しムッとしながら椅子に座ったら、会場が何故か笑いに包まれた。ナミはなんか顔を赤くして俯いてる。
いつの間にか優勝してた俺は、金券貰ってからナミの所へぴょんと移動して抱き着く。やっぱり、ナミにくっ付いてるのが1番安心できるな。
「ナミ!」
「ルフィ!……もぅ、恥ずかしいでしょ!?1人であしらえるんだから、騒がないでよ!」
「あ!さっきの男か。でもよ、ナミに触るとか許せねェもん」
「……そう、ね。……ルフィ、ありがとう」
真っ赤になったナミがそう言って俯くから、俺はにししっと笑って金券を差し出す。今日は俺が食べてるだけでナミは何も買ってないから、それでなんか買ってもらおう。
「これはナミにやるよ!だから、なんか欲しいもの買っていいぞ!」
「……そこは普通何か買って、プレゼントするんじゃ?まぁ、ルフィらしいか」
そんな事言って、ナミは笑う。だから俺は今日も幸せだ。
結局ナミは猿のぬいぐるみと、それに被せる小さな麦藁帽子を買って、部屋に置いとくなんて言ってたけど……なんだろうな。麦藁帽子が好きなのか?
首を傾げた俺にナミが鈍いわねなんて笑っていて、ナミにだけは言われたくねェって心から思って、ついその生意気な口を人目もはばからずに塞いじまった。それにより後でナミに半泣きで叱られる事になるなんて、この時は考えてもいなかったんだ。