季節イベント(波間IF)   作:夢枕 七変化

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夏祭り(鷹の目のミホーク)

 ドアを開けると何故か睨むようにして立っているナミの姿があり、どうしたのかとそれを眺める。何を理由にドアを睨んでいたのかは知らないが、想像した以上に似合っている和服姿に笑崩れそうになるのを抑える事に意識を集中せざるを得ない。

 

 「ミホーク、これ……どうしたの?」

 「気に入らなかったか?」

 「凄く好きだけど……そうじゃなくて」

 「1人で着られる事は誇っても良いと思うぞ。……それに、似合っている」

 

 自分の見立てを褒め讃えたいような気持ちになりながら、俺はナミの耳に触れる。それに小さく反応するナミが可愛くて、このまま部屋に閉じ込めたくなるが、それではこれを着させた意味が無い。

 人の多い所へ連れて行くのは些か不快だが、これは恐らく喜ぶであろうと分かっているから連れて来たのだ。ナミの手を握り行くぞと声をかければ、何処に!?と言いながらも素直についてくる。

 何故ナミはこうも可愛く俺を魅了するのか、今もって謎は深まるばかりだ。そんな事を考えていたら、目的地に到着した。

 そこには案の定人が多くいて、ナミは人がいるところに連れてきてもらえるなんてと呟いている。祭りの会場と近くの商店街を交互に見て、小さくどっちも行きたいと言うので、必要な物を書き出せば商店街の方は後程買い揃えてやると伝える。

 それだけでナミは嬉しそうに顔を上げて俺を見ると、無邪気に飛び付いてきた。このままやはり持ち帰るかと思わなくもないが、無邪気な笑顔を失いたくないが為に俺はナミと共に、祭りの会場へと足を踏み入れる。

 中では踊り狂う者共と、遊び呆ける者共とでごった返しており、何とも言い難い気分にさせられる。その中でフラフラと歩き回るナミだが、人が多くなると無意識にか俺の手を強く握る。

 まだ恐怖が残っているのかと小さく溜息を落とした俺に、ナミは不安そうな瞳を向けてくる。これが計算ならばいい女なのだろうが、最近気付いたがこれは計算では無く素だ。

 妖艶な笑みを浮かべる時が寧ろ演技。どうやらナミの本質はまだまだ幼いようで、艶やかな笑みを浮かべている時は演技である事が多い。

 突然ナミが立ち止まり、カラフルな鳥を見詰めている。そしてボソリと、呟いた。

 

 「あの中にメスって居るのかな?」

 「解らぬ」

 

 あれが何という鳥なのかさえ分からぬのに、性別など分かろう筈も無かろうと思うが口にはできず、ナミの様子を眺める。どうやらメスなら2、3羽連れ帰りたかったらしいが、それについては俺が拒絶する。

 例え動物であれ、俺以外の存在に微笑みかけるところなど見たくはない。そう言ったらナミは、何と言うのだろうか。

 その先へ進むと的当てを行っている場所があり、珍しいと足を止めればナミも何故だか懐かしそうにしている。俺はこうして見るとナミについて、知らぬ事が多いな。

 

 「やって見るか?」

 「ミホークが?」

 「主が、だ。俺は見ているだけで良い」

 

 そう言うとナミは少し考える様子を見せてから、やって見ると言い出した。玩具とは言え弓を使うので、怪我をせぬようにと言えば、見て驚きなさいなんて勝気に言われる。

 どうやら自信があるらしいとその様子を伺えば、なんとその構えは堂に入ったもので、凛とした立ち姿に通行人が立ち止まるのが分かる。ナミは的の真ん中を射抜き、大当たりを連続で出すと何やら景品を貰って嬉しそうに帰ってきた。

 

 「ミホーク、どう?少しは見直した?」

 

 その様子から褒めて欲しいらしいとわかり、頭を撫でれば嬉しそうに頬を染めた。……なんだ、この可愛い生き物は。

 新種か。絶滅危惧種か、どちらだ?

 どちらにしても持ち帰るべきだろうと1瞬考えてから、貰ったであろう景品を見る。明らかに紙切れだ。

 

 「何だそれは」

 「これ、商品券。地酒のにして貰ったから、明日とか買出しに行く時に、ついでにどうかなって」

 

 それで真剣な顔をしていたのかと商品券を受け取ると、地酒とワインの商品券で俺の為かと気付く。基本的に無欲に近いナミは、こういった時大概誰かの為にやるのだが、今回は俺の為だったようだ。

 

 「可愛い事を。ナミ、今宵眠れると思うなよ」

 「え!?な、なんで?喜ぶと思ったのに……」

 「喜んでいるから、その礼だ」

 

 笑いかけるとナミは頬を染めて、囁くような声で手加減してくださいと言った。これは、俺の理性を試しているのだろうか。

 そう思いながらも、耐えきれなかった想いをぶつける為にナミの唇を奪うと、視線が集まるのは分かったが今更どうでもいい。問題は恥じらう愛らしいナミの姿を見る、男共が存在するという事のみ。

 

 「んっ……ぁ……ミホーク……」

 

 そう言って俺の首に腕を回すナミをそのまま抱き上げ、連れ帰る事にした。祭りよりも、共に汗を流す方が俺達らしい夏の過ごし方だろうと、そっと囁きを落として。

 酒はまた後日、俺1人で貰い受けよに来よう。ナミよりも甘美な酒などこの世には無かろうがな。

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