季節イベント(波間IF)   作:夢枕 七変化

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七夕18(海賊狩りのゾロ)

 見張り室と呼ばれている所でいつもの様に体を鍛えていたら下が騒がしくなったのを感じて、汗を拭いつつ下に降りる。降りてみれば見慣れない服装で、不思議な物を持ったナミがいて何事かと思う。

 いつもとは違い露出の少ない姿に、そう言うのも似合うなと思うが声には出せず見つめていれば、突然皆に呼び掛け始めた。

 

 「皆、ちょっとしたイベントしない?思い出した事があるのよ」

 

 そう言って皆を集めたナミが〝七夕祭り〟と言うのを説明し始める。皆の願い事を短冊と呼ばれる紙に書いて、笹と言うナミの持つ植物に取り付ける。

 そして、それを最後笹ごと燃やして終わるだけのイベントで、燃やした煙が星に届いて願いが叶うらしい。昼間の内に願いを書いて取り付けたら、夜星が見えた時に燃やして終わりの何でもないイベント。

 そう言って1人で準備してたらしいナミが笑う。どこの国か忘れたけど、そんな風習があるんだってと言うと、空を見上げてちょうど今夜が天の川の見える日だしとその瞳を細めた。

 何処か遠いところを見ているような表情で言うナミの言葉に皆も何か金がかかるでもなし、いいんじゃないかと賛成して、コックは1応簡単な宴にでもするかと準備に取り掛かった。ルフィが宴は好きだからそれなら大歓迎だと答えたからか、皆好きな色の短冊を取ってその場を離れる。

 俺が緑を手に取るとナミは1人で納得している。それから自分の紙を選べずにいる様子だったから、緑の紙を示してやれば驚いた様子で俺に視線を向けて来る。

 

 「ナミは蜜柑だろ。なら、願いを叶える役割は、栄養を集める緑の葉にしとけ」

 

 それっぽい事を言ってみたが、揃いの色を使って欲しかっただけなんだが……鈍いナミに伝わったとは思えず、笑って受け取ったその笑顔で今は我慢しておく。この紙に書いた願いが本当に叶うならば、自力だけで叶えられる大剣豪になるよりも叶えたい祈りは1つだ。

 

 〝ナミの心が欲しい〟

 

 体なんか後からでも手に入れられる。今は誰とも付き合っていないナミの心を手に入れたい。

 その手に持つ紙にナミはどんな願いを書いたのかと気になるが、覗く事も出来ず宴が始まるまで少し寝る事にする。少しのつもりだったが、目が覚めると既に祭りは始まろうとしていて、体を起こす。

 その時体に何かが掛けられていたようで、それが落ちたので拾えば微かに蜜柑の香りがする。見ればいつもナミが使ってる膝掛けで、その小さな気遣いが嬉しい。

 ルフィの号令で〝七夕祭り〟が始まれば、ハープを鳴らしながらナミが昔話を始める。皆はそれを聞きながらそんな話のイベントだったのかと、それぞれの気持ちをその表情に浮かべる。

 ウソップは何処か照れたような顔で空を見上げているし、チョッパーは怠けたらダメだよななんて言ってる。ロビンは恋人のイベントなのねと笑ってからフランキーに視線を向けて、向けられたフランキーは気付いてないフリしてコーラを1気飲みしてるが、アルコールも入ってない筈なのに顔が赤い。

 コックは興味深そうに、ルフィ楽しそうに話を聞いて、ブルックはそれなら恋の歌でも演奏しましょうかなんて提案している。ルフィがそれに答えているから、今夜は恋の歌が何曲も演奏される事になりそうだ。

 何となく懐かしい服装のナミに近付き似合うなと言えば、ナミは良かったと微笑む。それを見て思わず抱き締めれば、驚いた様子でそれを受け入れるナミに警戒心を持てと心から思う。

 

 「……そんな服持ってたのか」

 「無いから作ったのよ」

 

 何かを言わなければと口を開いた俺の言葉に返されたのは、謎の言葉。俺が意味が分からないと呟けば、布買ってきて作ったと言われる。

 作れる物なのか、これは。何でもできる奴だなと言えば、戦えないから守って貰ってるわなんて言う。だが……必要な時にはいつも戦っているし、十分過ぎるだろうと思う。

 宴の終わりが近付くと、フランキーが用意した入れ物の中で笹に火が付けられた。その時ナミの文字が書かれた短冊を見付けて、それに視線を向ける。

 

 〝皆の願い事が叶いますように〟

 

 おい待て、ナミの願いは無いのかと振り向けば、ナミもまたその頬を赤くして俺の方を見ている。どうやら俺の願いを見たらしい。

 

 「俺の願いが叶えば、ナミの願いも叶う訳だが……叶えてくれるか?」

 

 俺の問い掛けにナミは耳まで赤くして、俯いてしまう。鈍いナミにも想いが通じたとわかれば、ここで引き下がるのもおかしいだろう。

 その腰を抱き寄せれば困惑の表情を浮かべるから、俺は片手をその頬に這わせて唇が唇に触れる直前の所まで顔を近付ける。そこでナミに選択肢を突き付ける。

 

 「俺の願いを叶えてくれるなら、このまま唇を受け入れろ。無理なら、俺を突き飛ばして逃げろ。悩む時間は与えてやれそうもねェから、すぐに決めろよ」

 

 早くしなければ、俺は逃げようとするナミを手放す余裕も無くなるだろうと思いながら、唇を重ねる。ナミからはただ困惑が伝わって来ているが、抵抗もされないからと頬に添えていた手を後頭部に移動させてその唇を堪能する。

 苦しそうに俺を受け入れるナミに、理性の糸は既に切れて無くなりそうだ。息継ぎの為に離した唇の隙間でナミが喘ぐように待ったをかける。

 それに動きを止めれば、ナミは少しでいいから考える時間が欲しいと言う。

 

 「今夜は俺が見張りだ。受け入れるつもりなら来い。ただし、来たらもう……この程度じゃァ止まらねェぞ」

 

 耳元で最後に覚悟は決めて来いと囁きを落とせば、ナミがその場で崩れ落ちた。最後に決めるのはナミだと言う形を取ったが、もし今夜来なければロビンが見張りの夜に部屋に侵入してやるつもりでいる。

 今夜だけでは決められなかったんだろと言って、大義名分を引っ提げていればナミも騒ぎはしないだろう。理由があれば怒る事をあまりしないナミだからこそ、その怒りを躱す方法も分かっている。

 俺の織姫となるつもりなら、今夜はまだ始まったばかりだ。来る等とは1言も言われていないが、ナミは来ると何故か確信して、見張り室で待つ。

 宴の後片付けが終わり、それぞれが休みに向かった頃誰かの登ってくる音が聞こえて、微かに蜜柑の香りが漂えば口角が上がるのを抑える事は、出来そうにもない。今夜は楽しくなりそうだ。

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