季節イベント(波間IF)   作:夢枕 七変化

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夏祭り(ハートの副船長ロシナンテ)

 いつまでも起きないのがデフォルトのローは兎も角、ナミまで起きて来ないとはとその部屋のドアを開けると、中で驚いたのか硬直しているナミが立っていた。少し顔色が悪いので、そっとその額に触れると、ビクリと体を揺らしたけれど、拒絶しないだけ良いのだろうか。

 

 「ナミ、大丈夫か?」

 「えぇ、ありがとうロシー。この浴衣ってロシーが?」

 「あァ、今日は祭りがあると聞いて、ナミに似合うかなと。……嫌だったか?」

 「ううん、凄く嬉しい」

 

 そう言ってナミは微笑むから、俺はそれに甘えてしまう。手を差し出せば俺の半分位しかないだろう少女は、微笑みを浮かべて頷いてから、そっと手を握り寄り添ってくれる。

 この温もりの為ならば、なんでも出来そうだと小さく笑う俺に、ナミは優しく微笑む。そして、祭りの会場へと揃って出掛ければ、クルーが何故かナミにコラさんを無事に連れ帰れよ!なんて言う。

 ……そこまで俺はドジだろうか?

 祭りの会場では、踊る人、楽しむ人、売る人、様々な人々がいて、何だか平和だなと思う。ナミもそれは同じなのか、何処か寂しそうに祭りの会場を見ている。

 不意にナミが立ち止まった。その視線を辿れば、そこには金魚すくいがあって小さな金魚が泳いでいるのが見える。

 

 「飼いたいか?」

 

 声をかければ驚いたような顔をしてから、小さく首を横に振る。だが、その顔には可愛いとデカデカと書かれていて、どうしたものかと思う。

 

 「ローが怒るわよ。連れて帰ったら」

 

 言われてみれば確かにと思う。だが、本当は飼いたいのだろうと言うのも伝わってくるので、俺はそっとナミの頭を撫でると、とりあえずやってみるかと誘う。

 俺が金魚すくいの為にお金を支払いポイを受け取ると、構えて……金魚の中に落ちた。それを見たナミが俺を助けながら店主に謝っていて、俺も1緒に謝れば店主は見た目とは逆の関係性に思えるなんて言い出した。

 

 「それは……?」

 「父親と娘かと思ったが、母親と息子みたいだな。あんたら」

 「ふふ、コレで頼りになるんですよ。……何より、優しい人なんです」

 

 そう言って微笑むナミに、俺は顔が赤くなるのを感じて俯いてしまう。それに対して店主が、あてられそうだなんてボヤいた。

 結局何回か俺が落ちた為、俺はナミが金魚すくいをやる所を見ているだけにしてくれと頼まれてしまい、そうなれば俺に拒否権なんてものは既に無い。そのナミが行った金魚すくいの結果は、赤と黒を1匹ずつGETと言う形に収まった。

 それを可愛いと言って眺めながら、ナミは少し寂しそうにするから、蓋のできる金魚鉢と、金魚を育てる為の道具をそこで1式買い揃える事にした。それを見たナミが怒られるわよと言うから、俺は笑ってしまう。

 

 「俺が怒られておくよ」

 「……もう、ロシーは私に甘過ぎると思うのよね。なら……叱られる時は、私も1緒に叱られるわ。それなら、怖さも半減でしょ?」

 「違いない」

 

 購入した物を俺が持とうとしたらナミに、これは割れ物だからダメと言われて、落としても問題のないアミだとか、砂利だとかを持たされる。流石は偉大なる航路の金魚だけあって、海水で問題無く生きられるというので、定期的に水だけ取り替えてやれば大丈夫だそうだ。

 餌も本来なんでもいいらしい。野菜のヘタなどを適当に刻んで入れてやれば、勝手に生きると言われれば心配はしなくて良さそうだ。

 黒と赤の金魚は、小さな袋に入れられていて、常に寄り添っている為か何となく俺とナミを見ているような気分になる。実際ナミの髪は赤では無く橙で、俺も黒のコートを着る機会は大分減ったのだが。

 祭りの会場をそのままぐるりと回り、適当に買った屋台の物を2人で半分ずつ食べていく。初めに2個ずつ買おうとしたら、そんなに食べられないから、2人で1つの物を分け合って色々食べてみたいなんて言われたのだ。

 店の前でそんな会話をしていたら、何故か店員にケッと言われてしまったが、何が気に入らなかったのか。ナミはそれに対してクスクスと擽ったそうに笑っていて、どうやら理解していたらしい。

 

 「ロシー、はいあーん」

 

 何故か食事の時、俺に買ったものを持たせないナミにより、口元に運ばれる食物を食べていれば、確かにドジっ子スキルは発動しない。ナミはそれを警戒していたのだろうか。

 

 「……色々食べたな」

 「そうね、でも特にこれが特別美味しいって言えるものは無いわねー。今度機会があったら美食の町とウォーターセブンに行って、またこうして食べ歩いてみたいわ」

 「……そう、だな。だが……」

 「どうしたの?」

 「何を食べてもナミよりも美味しいものは、なかなか無いだろうな」

 

 俺の言葉にナミは茹だる。それを見て、言い方を間違えた事に気付いたが、それもまた真実だからいいかと考えを改めて笑う。

 

 「何よりもナミが可愛いし、美味しい」

 「ばっ……!バカっ!」

 

 当初はナミの作った料理という意味だったが、2回目の時は明らかに言葉のままの意味として伝える。口では馬鹿だと怒っていても、実際は照れているだけな辺りが何とも可愛い。

 

 「そんな事を言うんなら……ちゃんと、最後まで責任もってよ?」

 

 その言葉の意味をナミこそ、理解しているのだろうか。もし理解してなくても、俺はきっと手放す事なんて出来はしないのだろうが。

 

 「あァ、永遠を誓うよ」

 「……もう、適当な事ばっかり言って」

 

 そう言って微笑むナミは、何処か寂しそうで、同時に嬉しそうだ。俺は他愛ないこんな幸せな日常が、いつまでも続く事を願ってやまない。

 袋の中で寄り添う金魚のように、俺達もこれから先ずっと共に居られたら……。そう、願いつつそっとナミの唇に自らの唇を重ねた。

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