季節イベント(波間IF)   作:夢枕 七変化

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夏祭り(英雄クロコダイル)

 ドアを開けた瞬間、似合うを通り越してナミの為に存在しているような衣装だなと感心してしまった。そんな俺の視線に気付いたのか、ナミはその顔を僅かに赤く染める。

 やはりいつものように、このままこの部屋で1日過ごすかと1瞬考えるが、ナミと妙に仲の良いニコ・ロビンが煩くなる事は予想出来てしまい、それが面倒で俺は腕を掴むと無言で歩き出す。それに驚いた様子は見せるが、特に文句も言わないところを見ると、ナミは混乱でもしているのだろう。

 予測は立つが、だからと言って何かをするつもりは無い。とりあえずカジノを抜けて表に出れば街は祭りを開催しており、大騒ぎになっている。

 雨が降らない事で、落ち込みがちな気分を盛り上げる意味もあるこのイベントを俺が好んでいる筈も無いが、ニコ・ロビンが言うにはナミは喜ぶらしい。最終的にはただ砂だけが支配する国になり、人間は俺と俺の認めた者の他は誰1人として生きていない国となる。

 そう決めているのに、何故……俺はナミを喜ばせたいと思っちまうのか。英雄らしく適当に歩き、ナミの様子を伺えば、確かにニコ・ロビンの言うように確かに楽しそうにしている。

 辺りを見て、ナミは穏やかに微笑むと俺に視線を向けて来た。外にいる時に俺に話し掛けても良いのか分からないといった所かと、わかりやすい思考に小さく笑うと、腕を強く引いてそのまま胸に抱き締める。

 

 「どうした」

 「あの、視察に連れて来てくれたの?」

 「ナミが好きそうなイベントだったからな」

 「ありがとう」

 

 腕の中で俺に砂にされるとは、露程にも思っていないと言う顔で、俺に微笑むナミを見れば、毒されていると感じる。それからナミは物珍しそうに辺りを見て、小さく笑う。

 それが妙に気になって眺めていると、不思議な言葉を口にした。

 

 「この世界ではスーパーボールとかキャラクター人形とか無いものね……」

 

 なんだその聞き馴染みの無い言葉はと思ったが、俺が問い掛けるより早くナミは面を売っている店へと視線を向けた。そこにある猫の面を見た瞬間、俺はそれを購入して手渡していた。

 それを素直に受け取ったナミはありがとうと微笑み、すぐに顔を隠したが茶猫の面は異様に似合っていてこれはそういう生き物なのではないかと思わされる。これで、誰だか分からないわねと面の内側で笑っているであろう相手の頭を撫でてから、俺はナミに遊んで来いと小遣いを手渡して腕から解放する。

 俺がいては何も出来ないだろうと思っての行動だったが、ナミは動かずに俺を見ていて、表情が分からないと不便だなと思う。それからそっとナミの方から手を伸ばして俺の手を掴むと、自力で結果を出せないタイプの、ただ参加する事に意味があるようなゲームに参加させられる。

 

 「ビンゴゲームみたいなものね……」

 

 と言って笑っているナミの表情は見えないが、英雄も参加していると言うのは1つのパフォーマンスになる為、こういった何もしないタイプも意外と楽なものだなと感じる。それを狙って居るとしたら、ナミは相当賢いのだろうが……さて、狙っているのか偶然なのか。

 自分で買い与えたのに、顔が見えない事が不満でナミから面を奪うと、俺を真っ直ぐに見て首を傾げて来た。警戒心を失っている様子に、俺は何故か笑えて来てその唇に自らのものを重ねる。

 

 「えっ!?……まっ……」

 

 驚き止めようとするナミの口内を蹂躙して、僅かに唇を離した時、小さく喘ぐように、見られてるからクロコが困るでしょ、なんてほざくので、再びその唇を奪う。吐息さえ俺の物だと伝える為に。

 その顔を隠して来たのは、有象無象が近付くのが嫌だったからで、どうせ砂になる奴らに今見られたところで俺は構わねェと、腰を抱いて頭を支えながら深く迄侵入して、舌を絡めとる。苦しそうに喘ぐナミは、最初に恥ずかしそうにしていたのが嘘のように、今は何処か流されている様子だ。

 そろそろ立っていられない頃かと唇を離せば、真っ赤な顔で潤んだ瞳を向けて来る。もう既に、俺もナミもゲームの結果なんぞ気にしてはいないだろう。

 例え何も景品が当たらなくても、ナミのこの顔が見られたならば充分過ぎる程に、大当たりだろう。

 

 「ビンゴゲーム、の、途中なのにっ」

 

 崩れ落ちそうな体で、荒い呼吸をしながらそんな事を言うナミに俺はニヤリと嗤うと、当然の事として言い放つ。まさか、俺にキスをされてゲームを気にしていたとはな。

 

 「ビンゴの景品はお前だろ。ちゃんと持ち帰って可愛がってやるから、今は大人しくしてろ」

 

 その瞬間耳まで赤くしたナミが、俺を突き飛ばして駆け出すから、俺もナミを追ってゆっくりと祭りの人混みを歩く。逃げたきゃ逃げろ。

 その分、帰ってから覚悟しろと内心で呟きながら……。

 回収したナミの腕にバナナワニのぬいぐるみが抱かれていて、帰宅と同時に好きかと思ってと笑顔で渡されてどうしたものかと途方に暮れるのは、まだ誰も知らないほんの少しだけ未来の話。

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