季節イベント(波間IF)   作:夢枕 七変化

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ハロウィン(火拳のエース)

 ルフィ達が妙に疲れた様子で女部屋に視線を向けているのを見て、まさかと思う。慌てて部屋に押し入れば、案の定机に向かって作家モードになってるのが見えた。

 

 「おい、ルフィ。ナミ変わってねェのかよ」

 「……悪化した」

 

 ルフィの返事を聞いて俺はルフィに言おうと思っていた言葉を全て飲み込むしか無くなり、そんな俺達のやり取りを受けてマルコが楽しそうに笑った。それは本当に、まるで仲間を見付けたかのように嬉しげで……。

 

 「この集中力、凄いものがあるねぃ……。俺も見習いたいもんだよぃ」

 「辞めろマルコ!船医がクルーの胃痛の元になるんじゃねェ!」

 

 やっぱり同類だと思い知らされつつも、マルコの言葉に咄嗟にそう返した時、狸にしか思えないがトナカイだと自称するルフィの仲間がマルコに飛び付いて楽しそうに会話を始めた。その手にはナミが出版したという本があり、その話を聞いたマルコの目の色が変わった。

 

 「それは……聞いてないねぃ。宝玉とは……流石に驚かされたよぃ」

 

 辞めろ、変なライバルを増やすなとトナカイに念じても既に無駄。溜息を落として俺はナミの為にと茶を用意しに行く事で、その場から離脱する。

 

 「何してんだ?」

 「ああなったナミは、慣れた人間の気配の後で置かれた飲み物だけ、口に入れるんだよ。だから、蜂蜜とミルクの入った茶をだな……」

 

 突然かけられた声に驚きつつも、精一杯の集中力と古い記憶を掘り起こしつつのあやふやなそれで、茶葉やらポットやらを並べて行く。燃やしたり割ったりしたら、後で烈火の如く怒るだろう事はわかりきっている。

 ここは〝ルフィの船〟だからな。どうしても〝ルフィの物〟を傷付けたと判断されるだろう事は理解出来る。

 

 「危なっかしいから、用意は俺がするから下がってろよ。……お兄さん」

 

 ルフィの兄だからお兄さんって意味だろうと分かり、素直にその場を金髪の青年に明け渡すと本当に手馴れた手付きでお茶を入れているのが見えた。それを見ているとナミと似ているなと思わされる。

 

 「ナミもよくそうやって何か作ってくれてたな」

 「くっそ羨ましい事、呟いてんじゃねェよ!ほら、持ってけ!」

 「……俺としちゃ、ナミにそこまで料理の腕と味を信用されて、毒味をしなくてもいいと警戒されない程の信頼得てるアンタの方が羨ましいけどな」

 

 受け取りながらそう言うと1瞬固まってから、少しだけ照れた様子を見せた青年に褒められ慣れてねェんだなと思う。少し前の自分とそれが重なり、だからこそナミの優しさに惹かれているのかと気付かされる。

 いつも思うがナミの甘さは、ある意味で毒だ。麻薬と同じような性質を持ち、知ったら手放せなくなり、依存しちまう。

 小さく溜息を落としつつナミの動きを阻害しない位置にそのお茶を置けば、少しした時ペンを持つのとは逆の手でそれを手にして飲み始めた。それを見て本当に変わらねェなと思う。

 8歳の時から成長しないナミは、あの頃大人すぎたのか、それとも今が子供じみてるのか。どちらなのだろうかと少し考えて……1部だけ大人になり過ぎて、他の成長が止まってるのだろうと当たりをつける。

 そのままナミのだろうと思われるベッドに腰を下ろして様子を見ていれば、小さな声で何かを歌い始めた。優しい歌声は微かにしか音を出さないが、それでもこの状態になったナミにお茶を提供すると半分の確率でこうなるのだ。

 だから俺は密かにこれを楽しみにしている。これを聞く権利を持つ者は、お茶を提供した人間だけの特権だろう。

 俺はこの小さな幸福を、誰かに教えるつもりは無い。穏やかなその声に導かれるようにして、ナミのベッドで寝ていた。

 俺がふと気付いた時には、表が騒がしくなっていて何事かと飛び起きる。そこには思い思いに仮装したメンバーがいて、ナミからの手紙にあったイベントをやっているらしいと分かる。

 

 「エース!ナミの部屋で寝てたのか?」

 「ああ、なんでわかったんだ?」

 「ナミの匂いがした」

 「……ビビちゃんだったか?も、似たような匂いがするだろ」

 「ナミの方が甘いんだよ。気付かなかったのか?」

 

 ルフィは不思議そうに言うが、お前は犬か!と言いたくなるのを抑えるので精一杯だ。何故仲間を匂いで判断したり、区別したりしてんだよお前は。

 それでもルフィはやはり可愛くて、楽しそうにしているのを見て、落ちるなよと声を掛けてからナミの元へと戻る。そんな俺に剣士が声を掛けてきた。

 

 「ナミが、水分だけでもとったってのは本当か?」

 「あァ、多分ここのクルーなら、誰が持って行っても飲むと思うぜ」

 

 今後の為にも、この情報は伝えておきたい。そう思って口に出せば、情報感謝すると言って剣士が去って行ったので、本当にライバルが多いなと苦笑するしかない。

 そんな事とは知らないだろうナミは、相変わらず海図を描いていて……夜も明けようってのにと思った時、不意にその動きが止まった。こちらに意識が帰ってきたと分かるが、その直後に何故かまたすぐにペンにインクを付けようとしたのを見て、その手を掴む。

 

 「えっ?!エース!?」

 「馬鹿ナミ、いい加減にしとけ」

 「……ごめん、つい……」

 「分かってるけどな。心配なんだよ」

 

 俺の言葉にナミは嬉しそうに笑うから、俺はその先の言葉に詰まる。そして、何をとち狂ったのか口から飛び出したのはイベントの文言。

 

 「Trick or Treat」

 「え?ちょっと、どうしよう。用意してないわ」

 「なら、イタズラするか」

 

 思わず呟いた俺にナミは両手を広げて待機する。恐らく擽られるとでも思っているのだろう。

 ……本当に、馬鹿だよな。

 その胴体を遠慮なく抱き締めて、それに動揺してるナミの唇に己のそれを重ねる。それにナミは微かな抵抗を見せるが、根本的に弟枠で見て俺を傷付けられねェ時点でナミが俺に勝てる筈はねェんだよ。

 

 「俺は、ナミの事を姉としてじゃなく、女として好きだ。このまま女として俺のモノになるか、イベントの菓子として食われるか、好きな方選べよ」

 

 俺の言葉にナミは小さく、それ何が違うのよと抗議するがそんなものは知らねェよ。どっちにしても、逃げ場何かねェって事だ。

 真っ赤になったナミの返事を聞いて、俺はナミをベッドに縫い付ける。Trick or Treat……醒めない夜があれば良いと、心から思いつつその甘さと熱に溺れていく。

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