ハロウィン/妖怪(麦わらのルフィ)
最近町が騒がしい。イイオンナが居るって話してるのは聞くけど、俺はそれより美味い飯を食いたい。腹も減ったしと、近くの店に入るとその店の奥にオレンジ色の長い髪が見えて動きを止める。
……まさか、でも、本当に?
あの日、サボやエースとはぐれたあの日に、俺はナミを見送る筈だった。燃え盛る町の中で、後に合流出来たのはエースだけで……それなのに、まさか本当に?
近付けば困ったような、何処か怯えたような顔で俺を見てくるオレンジ髪の女。……違うのか?
でも、近付く事に香るその匂いまでもがナミのもので……。喉が、鳴る。
「……ナミ、か?」
「え?」
驚いた顔をして、それからゆっくりと俺が誰なのか認識したらしく表情が知ってるナミものに変わる。そして、飛び付いてきた。
……いや、双方肉体が成長してる事を多少でいいから考慮してくれ。俺獣だから、我慢とか無理だから、頼むよ。
「ルフィッ!大きくなって、お姉ちゃん嬉しい!ね、この後用事とかある?」
「何もねェけど、腹減った」
「マスター!肉料理適当にお願い。とりあえずボリュームのあるやつ!」
迷う事も無く俺の為に注文してくれるけど、俺そんなに金ないぞ?
そう思って視線を向けたら、ナミが優しく頭を撫でて来た。甘やかすように、けれども何処か楽しそうに。
「ルフィに支払いさせようなんて思ってないから、好きなだけ食べなさい。……無事で、良かった……」
そう言って俯いたナミは静かに肩を震わせてるから、なんか変な気分になる。……俺も、心配してたんだぞ?
でも、元々町を出て行く予定だったナミ達家族が無事なのは、何となく分かってた。そういう意味だと、見送りの約束を守れなかった俺達を心配してた気持ちの方が強いんだろうってのも……わかる。
特にナミは別れに弱い。花が枯れただけで落ち込むくらい、弱い。
出された料理を食べながら、目の前で酒を呑み続けるナミを眺める。昔から可愛かったけど、すっげェ美味そうになったよな。
……なんだろ、今肉食ってるのに、飢えてるみたいな感覚。ナミを喰いたい。
「ルフィ?どうしたの?」
「ん?……飯終わったら、ゆっくり話したいなと思ってさ」
「そうね、とりあえず部屋何処かで借りましょうか。眠くなったらそのまま寝られる方がいいでしょ?」
……警戒心、何処に置いてきたんだ?
俺もナミもオトシゴロって奴だよな?
だからナミの言葉に周りの客が酒を吹き出したり、噎せたりしてるのにナミは全く気付いてねェ。俺を弟としてしか見てないから、なんだろうけどさ。
……多分、力だけでも俺は負けねェと思うし、力で勝てなくてもナミは俺を傷付けられねェから抵抗なんて出来ねェだろう。それを分かってて、襲う気でいる俺は駄目なのか?
でもよ、兎が鍋の中で「食べて」って札下げてたら、喰うだろ?
俺は今、正にそんな状態なんだよ。……よし、泣かれたら辞めよう。
そんな事を考えながらナミと部屋に入ると、ナミはベッドに座って俺を手招く。近付けば当然のように抱き着いてきて、幸せそうに笑うから…………逆に、手を出せねェ。
信頼されてるのが悲しくなる程に伝わる。無邪気な笑顔でただ再会を喜んでくれてるその姿に、手が出せなくなっちまう。
「ナミ……」
「どうしたの?悲しそうな顔してる」
両手で頬を挟んで、覗き込んでくる暖かいその温もり。変わらないその顔の上にはナミの髪色と同じ耳があっ……て?
「耳!?」
「ルフィ?」
「ナミ、お前、頭、耳!!」
キョトンとした顔をしてから、あぁと1人で納得するナミに説明を求めればにこにことしながら、ルフィに会えたのが嬉しくて、感情高まっちゃったのね。感情が大きく動くと生えちゃうのよなんて、簡単に言うけどよ……。
猫耳って……そりゃァ飢えた気持ちにもなる。俺狼系だもんよ。
「ナミ、俺、ナミが欲しい」
「へ?」
「ナミを抱きたい」
「ほぇ!?」
混乱してるナミを、今だと畳み掛ける。頭が良いから、色々考える時間を与えたら俺が負けるのも分かってんだ。
「ナミを、俺だけのものにしたい」
「……うっ」
「いや、か?ナミは俺の事、嫌いか?」
「ルフィの事嫌いな訳……!大好きよ!」
「なら、良いよな!頂きます!」
それからはもう、言葉を聞いてやるつもりは無い。あれだ、ゲンチは取ったからな!
Trick or Treat……狼はどのお話でも狡猾で嘘つきなのだと、猫は知らないままに貪られる。楽しい夜は、始まったばかり。