クリスマス(麦わらのルフィ)
サンジが言うにはナミが書いてる本のおかげで、世界的にクリスマスって行事が広まったらしい。最近はそれに合わせた料理の本とか、小説、歌の何かも出してるらしくて、料理本はサンジに、歌のはブルックに託されてるらしい。
どうしていつもナミは働いてんだろうと思いながら、その様子を見守る。あんまり束縛したら、ナミも嫌がるよななんて思ったから。
でも、サンタの衣装よなんて見慣れない赤い服を着たナミが、素足晒して歩いてるのを見たら……不愉快にもなる。皆でクリスマスパーティってのをやって、それは楽しかったしナミが全員に毛糸で作った何かを渡してたのも良いとは思う。
セーターだったり、マフラーだったり、ケープだったり。サンジとウソップにはセーターで、動く時邪魔にならないでしょと笑っていた。
ゾロとフランキーとブルックにはマフラーで、手を使う人にはこっちかなとか言ってて、チョッパーとロビンにはケープを渡してた。チョッパーは形態が変わるから、そんな時にも困らないようにって、ロビンには邪魔な時はひざ掛けにも出来るでしょと笑って……。
なのに俺にはまだ何もない。何だろうと思っていたら、昨日はイブだから、今日の私の時間を全てルフィにあげましょうなんて言い出した。
プレゼントは無いのか?と首を傾げたら、困った顔をされた。本気で困ってる様子に、俺も何か欲しいとは言えなくて……。
「だって、ルフィはマフラーどこかに引っ掛けて首絞めになりそうだし、物食べるのに手袋は邪魔だろうし、セーターとケープは戦いの時ボロボロにして落ち込みそう。それに帽子は、いつものがあるでしょ?」
言われてみれば確かにと思う。けどよ、俺だけ無いってと思ったら、顔を赤くしたナミが俺から視線を反らして呟いた。
「だから、今日は1日、ルフィの為だけの私でいるから、それで我慢しなさいよ」
「ナミを、好きにしていいって事か?」
その瞬間、ナミの顔が爆発する勢いで赤くなった。……可愛い。
そっか、そういう意味も込めて、好きにしていいのかと笑えば、泣きそうな顔で俺を見て来たから、とりあえず抱き締めてその唇を貰っておく。それに恥ずかしそうにするけど、本当に抵抗しねェからこの可愛い恋人をどうしようかと考える。
「……とりあえず、飯に行こう!それから、何か買い物でもしような」
「買い物?」
「俺も皆に何か返さねェとさ。昨日貰ったし」
「そうね、1緒に考えてあげるわ」
そう言って笑った顔は姉の顔で、すぐに恋人から姉に変わろうとするそれに少しムッとする。だから耳元でそっと囁く。
「今日のナミは俺のなら、今夜……覚悟しとけよ」
その瞬間、恥ずかしがり屋な彼女の顔になったのを見て、よしっと思う。どんなナミも俺のだけど、今は彼女として側にいて欲しいと思うからな。
仲間としてのナミは頼りになるし、いつもは皆のお姉ちゃんって感じだけどさ……今は俺の彼女でいて欲しい。手を握って走り出せば、少し戸惑いつつも笑ってくれるから俺はそれが嬉しいんだ。
何か身に付けられる物をナミにって思うけど、指輪とかはペン持つのに邪魔になるだろうし、どうすっかなァと眺めて……髪飾りを手に取る。白い花の飾りが、蜜柑の花と良く似てる。
俺にはただの棒に蜜柑の花と似た飾りがチャラチャラしてるようにしか見えないけどさ、ナミなら上手く使えるんだろうから……。だからこそ疑問なんだけどよ、なんでこう、何でも器用に出来て髪だけ拭けないんだろうな?
「これ、包んでくれ」
「どなたへのプレゼント用ですか?」
「ん、そこにいる」
「……恋人、で宜しいですか?」
あァ、そういう意味かと漸く分かって頷くと、店員さんが紙とリボンの他に赤い花を1つ付けてくれた。ありがとうと言ってそれの代わりにベリーを渡してナミの所へ行くと、ナミは真剣な顔で何かを見てる。
どれを見てるのかと視線を辿れば、紙を立てておく為の入れ物だと分かる。欲しいのかと思って顔を見たら違うと分かって、素直に聞いてみる事にした。
「……駄目ね、壊れやすいし入れるものに困るわ」
「どうしたんだ?」
「お返しのプレゼントでしょ?それなら全員分、出来るだけ揃えた方がいいかと思って写真立て見てたのよ。でも船だもの、危険すぎるわ。だから、困ってるのよ」
あァ俺の為に考えてくれてたのかと分かれば、嬉しくなる。ありがとうと言えば、はにかんだように笑って俺の手を握ってくれた。
その指先が少し冷たくて……突然俺が離れて不安にさせたのかなと思う。普段から不安を口に出す事もできないナミは、不安なのか寒いのかどちらにしても指先が冷たくなる事に違いはなくて、そして今冷たい事は変わらねェ現実だからとその手を強く握る。
「これなんてどう?」
俺の気持ちに気付かずに他に視線を移していたナミの声に導かれるようにそれを見れば、ペラペラした薄い板や紙が並んでいる。種類も豊富なそれが何だか分からなくて首を傾げれば、栞よと笑われる。
「これは定規として使えるから、ウソップとフランキーに、こっちはシンプルだけど邪魔にならないからゾロ、サンジ君、チョッパー、ブルックに、この辺りのは花だからロビンにどうかしら?」
「良いかもな。皆本読むもんな」
「そうね、ルフィ以外は皆読むわよね」
クスクスと笑うナミに見惚れそうになりながら、言われた辺りを見ていたらナミは店の中をもう少し見てみたいから後でねと言って離れて行く。それから俺が買う物を決めてレジに行くと、ナミも何か買おうとしてるのが見えた。
見ると蜜柑の飾りがついた紐で、ホント蜜柑好きだなと笑っちまう。それから皆へのお返しも手に入ったしと店を出ると、食事を後回しにしたからか力が入りにくくなって来た。
そんな俺にナミは可笑しそうに笑うと、近くのホテルに足を向けた。大人しくついて行くと、宿泊と食事と言ってさっさと支払いを済ませて俺を手招く。
そういうの、俺がやるべきなんじゃねェのかとも思うけど、今更かと笑う。それにしても、俺の小遣いウソップより少ない気がするのは気のせいかな?
レストランの所に着くと、好きなだけ食べていいから帽子貸してと言われたのでとりあえず渡しておく。ナミは俺の帽子を大切そうに受け取って、優しく笑ってから何かを取り付け始めた。
それがさっき買ってた蜜柑の飾りがついた紐だと気付けば、紐が俺へのプレゼントかと気付く。俺にだけ何も無いと言ったから、そんな事してくれたのかと思ったら嬉しくて、同時に少し恥ずかしいような気持ちになる。
だからそれに気付かなかったフリして食事をしてたら、ナミの手が止まってるのに気付いて、その視線を辿れば外は雪が降ってた。後で雪だるまとか作れるかな?
「ホワイト・クリスマスね。関東や関西でも珍しいけど、それより南に行けば行く程に珍しいから何だか特別に思えるわ」
「……なんだ、そのカントウとかなんとか言うの」
初めて聞く言葉に疑問をぶつけると、少しその瞳を揺らしてからそういう地域があるんですってと笑った。何か隠してるのは分かる。
けど、ナミがなんだか寂しそうだったから、それ以上は聞かずにそっかと言えばナミはホッとしたように笑った。泣いちまえば良いのに……。
時々ナミはこういう顔をする。2度と逢えない誰かを想うような、寂しそうな顔を。
でもナミは村人を全員守っただろ、だからそんな顔すんなよ。そう思って食事を終えて立ち上がる。
そんな俺にナミは不思議そうな顔をするから、さっき買ったプレゼントを渡す。俺はただ、ナミに感情を隠さずにいて欲しいんだ。
「これ、ナミにやる。だから、早く部屋に行こう」
俺の言葉にナミは頷くから、用意された部屋に向かい……そこでナミに触れる程度のキスをする。それだけで真っ赤になる可愛い彼女を見れば、自然と俺も笑顔になっていた。
「俺は、ナミが笑うなら後は何でもいい。ナミの事が好きだ」
「……ありがとう、ルフィ。これ、開けてもいい?」
そう言ってプレゼントについてる花を見て、この花、意味分かってつけた?なんて聞いてくる。
オマケで付けてくれたと言えばそうよねと、安心したように笑ったナミに意味を聞けば、小さく「愛してるって意味よ」なんて答える。知らなかったけど、それなら問題ないなと笑えば花よりも赤くなったナミに、俺もにししっと笑う。
その中身を見たナミが静かに涙を落とすから、何か間違えたかと思って焦った。でもそのすぐ後にナミが俺に抱き着いてきたから、問題なかったと知る。
「ありがとう、ルフィ……大切に、使うわ」
俺の可愛い蜜柑の花は、俺には泣いたり笑ったりしてくれる。それがどれだけ俺を嬉しくするか、きっと分かってない。
Merry Christmas……君がいるならそれだけで、本当は他に何もいらないのだけれど、聖なる夜だと言うならば、その全てを独占させて欲しいと願う。皆の為にと頑張る優しい君を、今夜は俺だけのモノに。