季節イベント(波間IF)   作:夢枕 七変化

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クリスマス(不死鳥マルコ)

 俺の可愛い恋人が書いた物の為に、世界規模で行われている祭りは当然この白髭海賊団でも例外なく行われている。楽しそうにそれぞれが贈り物を渡し合い、親父の元にもこれをチャンスにと贈り物が積み上げられた。

 その中で薬膳酒を忍ばせたナースに親父がコレは酒じゃねェだろうがと言いながらも、嬉しそうにしていたのを俺は穏やかな気持ちで眺めていた。そこへナミが近づいて行き、ナース達には医学書を、親父には何やら巨大な箱を1つ渡して笑う。

 サッチ達の用意したクリスマス用の食事もワイワイ言いながら皆で食べて…… 平和だと思う。問題は恋人である筈のナミが俺になかなか近付かない事だろうか。

 

 「ナミ」

 

 宴がお開きになった時、囁くように名を呼べば本来ならば聞こえる筈も無いのにナミは何故か振り向いた。それから小首を傾げて、呼んだ?と聞いてくる。

 

 「あァ、呼んだよぃ」

 「どうしたの?」

 

 そう言って近付いてきたナミは俺の頬にそっと触れると、泣きそうな顔してるなんて言い出す。それから、俺にそっとKissをして笑う。

 

 「私が作り出した宴だから、皆の所にいただけよ。私は、本当ならずっと、マルコの傍にいたいのだから」

 「年齢詐称してねェか、ナミ。なんだってそんなに俺を甘やかすんだよぃ」

 

 俺の言葉にナミは1瞬ビクリと肩を揺らして、視線を彷徨わせる。……年齢詐称が冗談じゃ済まなくなりそうだから、その反応辞めてくれよぃ。

 そんな俺にナミは優しく触れると、その身を預けるように抱き締めてくれる。それだけで寂しさも寒さも、何もかもが溶けていくような気がした。

 それから小さく笑ったナミが囁くように言う。2人きりで過ごせる時間なんて、なかなか無いのにごめんねと。

 俺はそんなナミに思わず溜息を落として、そっとその身を抱き締める。少し冷えてるその体に、暖かくして戻って来いよぃと声をかければ少し不思議そうにしながらも、そっと俺から離れて行く。

 素直に俺の言葉に従ったのだと分かっているのに、腕に残る温もりが離れた事を示していて、心まで凍えそうな気持ちになる。その時俺の心に呼応するかのように雪がチラつき始めて、全くなんてタイミングだよぃと笑う。

 モコモコした姿で戻って来たナミを見ると、本当に可愛いなと思う。これで結構寒がりだよなとも。

 そんな俺にナミはそっと箱を手渡してくるから、ほぼ無意識でそれを受け取りその場で開けてみた。その中には眼鏡が入っていて、少し驚く。

 

 「時々眼鏡の度が合ってない感じだったから、様子みててね、多分それだと合うと思うから使って」

 「……様子から分かるのかよぃ」

 

 すげェな、おい。ナミも充分船医になれるよぃ。

 そう思いつつ掛けてみれば恐ろしい程に度が合っていて、よく見える。こいつはと思って言葉を失う俺に、ナミが納得したような顔で頷く。

 

 「……やっぱり眼鏡似合うわね。私、マルコの眼鏡かけてることろ好きよ」

 「容姿を褒められたのは人生で初めてな気がするよぃ」

 

 思わず口にすればナミは1瞬驚いたような顔をしてから、その髪型がねなんて言ってクスクス笑う。けれどもその直後に優しく微笑みを浮かべて、平然と言うのだ。

 

 「今の姿も好きよ。でも、どんな姿に変わっても、多分私はマルコなら何でもいいの」

 「……ナミは俺をどうしたいんだよぃ」

 「ほぇ?」

 

 なんだその気の抜ける返事はと思うが、本気で分かってないその様子に少し力が抜ける。即ち先程の言葉は本心だと言う事だ。

 

 「ナミ、2人だけになろうか」

 「え?」

 

 声をかけて姿を変じればナミの瞳が輝いた。……動物好きだもんなァとその様子に少し呆れるが、ナミは嬉しそうに俺の体に抱き着きまさぐる。

 やめろィ、俺である事に変わりはねェからその、撫で回すなよぃ!と、言う事が出来ねェ俺の弱さ。

 

 「ふかふかァ……あったかぁい、マルコだー……」

 「人の姿よりこっちが好きとか言ったら、流石に俺も怒るよぃ?」

 「どっちもマルコだもの、どっちも好きよ。でも……」

 「でも?」

 「人の姿で居るのに、感情とか色々制御出来なくて炎纏ってる時が、1番好きかも」

 「……俺の理性を試してるとかかよぃ?」

 「ふぇ?」

 

 分かった。何も考えてねェんだな。

 よォく分かった。ならまァ、今はそれで良い。

 

 「ナミ、乗れよぃ。2人で、過ごそう」

 

 俺の言葉に素直に頷いて背に乗ったナミは、ギュッと俺の首に腕を回してから俺の負担にならないようにと、尾羽まで真っ直ぐにその体を伸ばす。その気遣いに、飛び始めて少し安定する迄はそうしていてもらうかと小さく笑って飛び立つ。

 僅かではない浮遊感がある筈なのに、ナミは怯える事も無く楽しそうにして居る。ただ寒いのか、俺の背に顔を埋めてくるのが擽ったいんだが。

 

 「……ナミに、夜空を、星の海を贈るよぃ」

 「マルコにしか出来ない贈り物ね。嬉しいわ」

 

 背中でナミが笑う。雪の舞う中を登って行くと、上に行けば行く程に寒いようで、俺に掴まっているナミの体が冷えていくのが分かる。

 だが雲の中を通るには雪雲は危険だからとその切れ目を探して飛び、雲の上に向かう。雲がなくなった時、そこには遮るもののない星空が広がっていて、空島でなくとも時折ある乗れる雲を探して移動する。

 調度いい雲を見付けて降り立つと、ナミも迷い無くその雲に足を降ろした。それから雲の上に座ると、懐かしそうにその瞳を細める。

 

 「プラネタリウムみたい。でも、これだけ星があると、線で繋ぐなんて出来そうにないわね」

 「……それは、なんだよぃ?」

 

 聞きなれない言葉につい口を挟めばナミは慌てた様子で、なんでもないの。新作のネタで考えてるもので、空想の物だから!なんて慌て始める。

 何を隠しているんだかと思いながらも騙されてやれば、ホッとしたような顔をする。そんなナミに贈り物は気に入ったかと問いかければ、本当に嬉しそうな笑みを向けられた。

 

 「ありがとう、私、自然が好きだから……本当に嬉しい」

 

 自然なんてものは、ない所の方が珍しいだろうと思うがナミは時折こうした言葉を口にする。黙っていればきっと何か話してくれるのだろうが、今は折角2人きりなのだからとその冷えている体を抱き寄せて、愛を囁く。

 それだけで1気に体温を上げたナミに、どうしてこんなにも可愛いのかと思わされる。この場で襲ったら、泣かれるだろうか。

 誰がいる訳でも無く、誰に聞かれる心配も無い。星を眺めながら、柔らかな雲の上であれば雰囲気と言う意味でも、肉体にかかる負担という意味でも問題は無いだろう。

 問題は外である事と、脱がせるには寒いだろうと言うところか。

 

 「マルコ……」

 

 呼びかけられて視線をナミに戻せば、首に腕を回されそのまま引き寄せられる。されるがままになれば、その艶やかなナミの唇と俺の唇が自然と重なった。

 甘いその唇を頭を押さえて逃げられなくしてから堪能すれば、髪の間に指を入れた事に反応するナミに本当に敏感な子だと思う。敏感だからこそ、天候の異変に気付けるのだろうが、少しばかり心配にもなる。

 誰にでも恐らく反応してしまうだろうから、それにより心が傷付いているのではないかと。普段が理性の塊であるが故に、自己に対する評価の低さも相俟って己を責めるのでは無いかと。

 僅かに離れた唇の合間で、ナミに囁く。不安なんて感じなくていいと伝えたくて。

 

 「何が起きても、俺はナミを愛しているし、ナミは俺の女だよぃ」

 「マルコ……」

 「ナミがいい女過ぎて、他の男達が放置しねェのが困りものだねぃ」

 

 俺の言葉にナミは小さくそんな事ないわと言う。見た目は可愛いけど、中身が伴ってないから、物珍しいだけだと。

 見た目が可愛いのは、認めてるんだなと思えば少しばかり笑える。だが、魅惑的な肉体である事に、自覚は無いらしい。

 

 「俺は、見た目も嫌いじゃねェが……その表情をコロコロ変える瞳が好きで、何より……ナミのその心が愛しいよぃ」

 

 甘く、優しく、強がりなその心が……本当に愛しい。この先何が起きようとも、傍に置いて離しはしないと誓いその唇を奪う。その時ナミがそっと涙を零して、キスの合間に愛してると囁くから……俺はこの場でナミの服を脱がしに掛かる。

 Merry Christmas……隠されている不安も、2人ならば晒せるだろう。孤独を知り過ぎて、無理をし過ぎる2人だから、共に支え合っていけるだろうと……。

 重なり合うのはその体なのか、心なのか。繋がったのは体なのか、魂なのか……それは当事者達にしか分からないだろう。

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