バレンタイン(麦わらのルフィ)
買い物に行きたい島があるなんて珍しくナミが言った。だから、よく分からねェ俺はロビンに確認してみたんだ。
そうしたら治安が悪い事で有名だって言うから、俺が1緒なら良いぞって言ったのによ。……俺と1緒だけは嫌だって言ってナミは部屋に閉じこもっちまった。
なんだってんだ?
そう思って時々覗いたけど、部屋の中にはナミが居る。いつもの後ろ姿、いつもの位置、でも何かおかしい。
声を掛けても気付かないのもいつもだけど、何か変だ。そう思って気付く。
匂いがしねェ。ナミの匂いがねェ!
それでまさかと思って慌てて島まで行ってみたら、ホクホクした顔で買い物した物抱えてる女がいる。姿がいつもと違ェけど……ナミだけはわかる。
だから、荷物ごとグルグルと腕に巻いて連れ帰ったのに、反省しねェ。だいたい俺とじゃ、島に行くのヤダって何なんだよー!
そんな俺とナミを心配したのか、フランキーが来て呆れた様子を見せてたけどよ。船に帰るとフランキーがナミを猫の子掴むみたいにしてロビンに預けたが、多分ここまでに俺が話した事は何も聞いてねェ。
「ナミ、船長命令だ。部屋から出るな!」
「船長!トイレとお風呂はどうしましょうか?」
「……ロビンと1緒なら、それだけは許可する!」
「はぁい!」
何故だ。喜んでる。
ナミお前、ハンセーしろよ。ハンセー!
それから3日、本当にナミは風呂とトイレ以外で出てこねェ。サンジが言うには、食事も殆ど食わねェらしい……。
少し、怒りすぎたかな。でもよ、ナミがそんな危ない所に1人で行ったから……心配だったんだ。
そっと部屋を覗いて見たら、中で真剣な顔で何かやってるのが見える。反省とか以前に、何か作ってたのかと思うけど、それが何だか分からねェ。
「ルフィ?」
「ナミ、ハンセーしたか?」
俺が中を覗いてると気付いたらしいナミが俺に声を掛けてくれたので問い掛ける。すると、ハッとした顔をしてから勿論よと答えたので、ハンセーしてねェとわかる。
寧ろ、閉じ込められた理由忘れてた口だなこりゃ。ナミって、そういう所あるよな、うん、知ってた。
これ以上はだとしたら無駄かと、閉じ込めていたのを解放してやると言えばナミが嬉しそうに笑って……何かを手に飛び出して行った。なんだ、いったい。
ポツンと残された俺にロビンが声を掛けてくるけど、ナミに甘いロビンの言葉なんか参考に出来るかよ。
「ルフィ……少し過保護が過ぎるわ。たまにはナミにも自由をあげてちょうだい」
「ナミは、捕まえておかねェとすぐに攫われちまう。だから、過保護で丁度いいと俺は思ってる」
ロビンの言葉にそう返したらロビンは楽しそうに笑って、邪魔だけはしないのよなんて言い出す。……邪魔って何だよ。
モヤモヤした時間を過ごして、でもそんな事があったから最近ずっとナミに触れてないと気付く。……結構キツイ。
その翌日、ナミが皆に朝食の席でお菓子を配り始めた。サンジにはチョコの中にドライフルーツが入ってる物を、ゾロには甘さのほぼ無い物を渡した。
それから当然のような顔して、チョッパーには中にマシュマロが上には金平糖が乗ってる物だ。ナミは、それぞれに合わせた違う物を渡して行く。
ロビンとフランキーには同じ物よなんて笑っていたし、ウソップとブルックにも何か美味そうなのあげてた。明らかにナミのそれは手作りだとわかる。
丁寧にそれぞれに合わせて作っただろうとわかるそれは羨ましい。それなのに……俺には何もくれねェ。
「ナミ!俺のは!?」
「……っ!ルフィのは、その、もう少し待って!ここでは、渡したくないの!」
真っ赤になってそんな事言うけど、ただ菓子を配ってるだけだろ?そう思っていたらサンジが奥から巨大なチョコレートケーキとチョコフォンデュってのを用意して来た。
チョコは、白と、赤と、茶の3種類が用意されて、それが流れてる。果物とかチョコじゃないお菓子がその近くに置かれて、ナミとサンジが2人で大成功とか言ってる。
「フランキーにも循環器作りで世話になったが、今日はバレンタインだからって事で基本は俺とナミさんで作った。喜べよー!」
サンジの言葉に皆が楽しそうに喜び、笑い、食べ始める。その中でナミがゾロにチョコは付けなくても良いから、適当に摘んでなんて言ってるのが見えた。
俺も皆と1緒にチョコを食べて、笑って楽しむ。チョコまみれになって風呂に入るよう言われた俺達が順番に風呂へと向かうと、帰った頃にはサンジとナミが掃除とかを全部終わらせていた。
楽しかったから1瞬忘れそうになったけどよ、夜になってもまだ、ナミは俺にだけチョコをくれない。……そう言えばバレンタインって何だろう?と少し首を傾げていたら後ろから頭を蹴られた。
「なァに黄昏てやがる」
「ナミが、俺にだけ何もくれない」
「……今夜は、ロビンちゃんが見張りだ」
「あァ知ってっけど?」
「……俺が言えるのは、これだけだ。バレンタインデーってのは、大切な人に贈物をする日だ。ナミさんを……泣かせんなよ、クソゴム」
そう言って去っていくサンジを見送り、チョコ貰えなくて泣きそうなの俺の方なんだけどと思う。それからそっと女部屋を覗くと、部屋の中をウロウロと歩き回ってるナミが見えた。
……珍しいな。
ドアを開けて中に入ると、ナミがビクリと肩を揺らして、その顔を赤く染める。それから……俺にハート型のラッピングされた箱を渡してきた。
「……ルフィのは、その、私の想いが詰まってるから、皆の前では見せたくなったのよ。遅くなったけど、あげるわ」
耳まで赤くしたナミからのそれを受取り、その場で開けるとナミがワタワタし始めて、なんか可愛いなと思う。そして箱を開けると中には丸い形の平べったいチョコがいくつも入ってるんだけど……それには絵と文字が描かれている。
釣りしてる俺とか、寝てる俺とかの絵が描かれていて、その下にLoveとか、likeとか、それぞれに文字が書かれていた。……思わずナミを見れば、これでもかってくらい真っ赤になってる。
だから俺はその1つを食べながら少し考えて、よしと立ち上がる。そんな俺の動きをナミが視線で追うのが分かり、なんか擽ったい。
「……美味しくなかった?」
「ん?美味いよ。ありがとな」
不安そうに聞いてくるナミに答えながら、ドアの鍵を内側から閉めて、中を覗けないように窓のカーテンを閉めてからナミの所へ向かう。それに首を傾げる無防備な姿に、小さく笑みが零れる。
「……でもよ、俺が俺を食ってもって思ってさ」
「え?チョッパーとかの方が良かった?私が好きなルフィの姿描いたんだけ…………なんでもない!」
……そっか、色々な姿の俺だなって思ったけど、そういう事か。どんな姿でも、何をしてても、俺を好きだとナミが言ってくれたのが嬉しくて、そっとベッドに押し倒す。
「なんでチョッパーだよ。俺はナミを喰いたい。だから……食わせろ」
「チョコは!?いらないの!?」
「ナミがチョコになるんだよ」
意味が分からないって顔してるナミを脱がせて、チョコをナミの胸に置くと全身を真っ赤にしてナミは言う。
「衛生面で良くないから、辞めなさ……ぁ!」
ナミの体温で溶けたチョコを舐めながら笑うと、ナミが泣きそうな顔で俺を見た。それが本当に可愛くて、ついニッコリと笑っちまう。
「チョコは全て、こうやって食うから。まだまだ沢山チョコはあるし、ゆっくり喰わせろよ……」
元々甘いナミが更に甘くなって、ナミの体温が上がるからチョコは溶けやすくなる。それを敏感な所に持って行って溶かしながら身体中を舐めてやれば、可愛い声をあげながらでも中途半端なそれに身悶える。
さァて、長期間お預けされた俺の気持ちをナミが理解する迄、チョコが無くなるその瞬間まで、続けてやるかとまた1つナミにチョコを落とす。
それに今回は丁度いい言い訳もある。何よりナミは結局、俺には逆らえねェ事は分かってんだ。
「ナミが、俺の駄目だって言った事して、反省しなかったから……お詫びのチョコを俺が食い終わったら、許してやるよ」
「やぁ……!ルフィ、許してぇ!」
「……あァ、食い終わったらな」
甘い甘い香りに包まれて、弱い所にチョコを押し付け刺激してやればビクリと跳ねるその体。……悪い子には、お仕置きが必要だろ?
夜はまだ、始まったばかり。2人の甘い時間はこれから始まる。
Happy Valentine……恋人達の時間は、ゆっくりと流れ行く。