皆と楽しく遊びながら、次の島はどんな所だろうかとワクワクしていたら珍しいものを見た。ナミが蜜柑の収穫とかしてるのはいつもなんだけどよ、その近くにフランキーがいて何か喋ってる。
ヒョイっとその近くまで行くと、フランキーがナミに手を上げろとか何とか言ってはメモしてると分かるけど……何してるんだろう?
「何してるんだ?」
「ん?あァ、麦藁か。小娘に安全で使いやすい脚立を作ってやろうと思ってな。見てて危なっかしいのよ」
「へェ……フランキーはなんでも作れるんだな!俺にも何か作ってくれよ!ロボとか!」
「ばァか!ホワイトデー用だ!小娘に欲しいモン聞いても無駄だったから作る事にしただけだ」
「むだ?」
「……小娘が欲しいのは、皆の笑顔だとよ!っとに、調子狂うぜ」
あァ、うん。ナミだ。
しかもその後でロビン泣かせんなとか、ロビンに優しくしろだとか、そんな言葉を繰り返されたらしい。ナミもロビンもお互いの事好き過ぎだろ。
と言うかロビンはもう少し俺に協力してくれてもいいと思うのに、何故か常にナミの味方してる。おかげで2人になれる事が本当に少ねェ。
「俺も、ロビンに似たような事言われたばっかりだ。〝ナミはルフィとは違うんだから、体力を考えてあげて。それが出来ないならもう2人にさせないわよ〟とか言われたんだぜ。……2人共似てるよな。頭良いし、何か飲み物飲んで文字書いてばっかだ」
「ロビンは……小娘が可愛くて仕方ねェみたいだからな。だがまァ、麦藁は少し小娘に無理させすぎてるのは確かだろ。それにしても、俺も小娘はロビンを大切にし過ぎてるとは思うぜ……。小娘に妬きそうだぜ、俺は」
フランキーはそんな言葉を口にしてから、静かにその場を後にした。その日から暫くナミとフランキーが1緒に居るのをよく見かけて、ナミは楽しそうに笑ってる。
そういや、ホワイトデーってなんだろうと思ってそれを聞きたくてナミのいる部屋に行く。すると、ニュースクーに何か食べ物を渡してる所だった。
飛び立つそれを見送り、ウキウキした様子で箱を開けて喜んでいるナミは、箱から手紙が落ちた事に気付いていないようだ。それを咄嗟に拾って、どうしようかと少しだけ考える。
封筒の口は空いていて、中身が普通に取り出せる。でも、勝手に読むのは……そう思うのに、少しだけと思って開いてしまう。
『ナミへ
バレンタインの贈り物ありがとう。大切に使わせてもらうね。そのお返しに、私からはハンドクリームを贈るよ。どうせ今でも毎日紙を弄ってるんだろうから、少しはケアしないと……彼氏に嫌われるよ?
ゲンさんは今も認めんって頑張ってるけど、ベルメールさんも私もアンタの味方だからね。アンタが幸せなら、アンタが選んだ相手なら、それだけでいい。
楽しくやんな!
ノジコ』
風車のおっさん、まだ認めてくれてねェのかよ。……でも、ナミにとって大切な順位1位と2位が味方だから、良いか。
そう思って手紙を戻すと、そのタイミングで俺に気付いたらしいナミが振り向く。そして何故か箱の中身を1つ摘むと俺の口に押し込んでくる。
細い指が俺の唇に触れて、押し込まれた柔らかい物は妙に甘い。なんなんだとナミに視線を向ければ、悪戯に笑う。
「特別よ。私がノジコに貰ったマシュマロなんだから」
「有り難すぎて涙が出そうだ」
世界中の誰より愛してるもんな、ナミは。そう思うからこそ、声は低くなった筈なのにナミはにこやかに笑ってそうでしょーなんて言ってる。
時々妙に鈍いのは、計算じゃねェよな。だとしたらアレか、天然って奴なのか。
結局俺は手紙を直接返せなくて、そっと箱の横に置いて部屋を出る。それから数日後、ホワイトデーって日が来た。
相変わらずフランキーがナミの側にいて、ナミは何か頼んでるのか意外と楽しそうにしている。仲間なんだから、当然なんだけどなんか、モヤモヤする。
ふとロビンを見れば、特にいつもと変わらない様子に思えるけど、不愉快にならねェのかな。そんな事を考えていたら、ナミが朝言っていたように島に到着した。
「ナミ!行くぞ!」
そう言って腕を伸ばせばナミは驚いた様子は見せるけど、抵抗はしないで俺の腕に収まるから、そのままナミを連れて飛び出して行く。後ろから待てとサンジが叫んでたけど、今日はホワイトデーだからな、お礼するんだろ?よくわかんねェけど。
「ルフィ、何処か目的地あるの?」
「ない!ただ、ナミと2人になりたかったんだ」
「ルフィ……」
そのまま顔を俯けて、恥ずかしそうに視線を反らすナミが異様に可愛い。誰にも、見せたくねェって思うくらい。
「バレンタインの時は、ちょっとイジメ過ぎたからな、今日は優しくしてやる。お礼の日だからな!」
「別に、無理に抱かないでい「俺がナミを欲しいって思ったんだ。ナミだけだ、俺が滅茶苦茶にしてェって思うのは」」
そこそこの高さのある屋根の上で、ナミにそう言ってキスをすればナミは真っ赤な顔で戸惑いを見せるのに、抵抗はしねェからそれに苦笑しそうになる。だってよ、可愛いからってこのままここで襲ったら泣かれそうだなとそれくらいは分かるもんよ。
嫌われたりはしないだろうけど、泣かれるのは嫌だなと思って、近くのホテルを探して、真っ直ぐにナミを連れ込むとナミは困ったような顔で笑った。ナミは俺になら多分本当に殺されそうになっても、抵抗しねェんだろうなと思わされる。
「仕方ないなぁ。……優しくしてよね?」
「おぅ!ホワイトデーだからな!」
よく分からずに言えば、ナミは分かってないくせになんて言って笑う。なんでも分かってるナミと、何も分からねェ俺だけど、でも俺は1つだけ分かってる事がある。
世界から狙われて居ても、誰に奪われそうになっても、ナミは最後にはまた俺の所に帰ってくるって事。んでもって、心はずっと俺と1緒に居るんだって事は変わらねェんだって知ってる。
だから俺は迷わねェ。導いてくれる優しい光が傍で笑ってるから、なんでも受け入れてくれるから、俺はただ進むだけでいい。
「ナミ、好きだ」
「私もよ、ルフィ」
はにかんだように笑ったナミをホテルの部屋でベッドに押し倒せば、そこからはもう2人だけの時間だ。優しくするなんて言ったけど、どうしたって俺はナミより優しくはなれねェ事を知ってる。
でも、今日は精一杯優しくするから……。だからさ……家族とか、ロビンとか、チョッパーとか、フランキーじゃなくてよ……。
「俺を見てくれよ、ナミ」
俺の言葉にナミは笑って、いつも無意識でルフィばっかり見てるわなんて言う。お揃いだなと俺が笑えばナミは照れたような顔で頷いた。
それから優しい声で、そうねなんて言うから、俺はそっとナミに触れる為に手を伸ばした。その温もりを、この手にする為に。
ホワイトデーが何たるかも知らずとも、男は女に尽くせば良いと大切にその体に触れる。心も体も、全てが自分のものだと確信を持って、愛しい女に溺れて行く。
後に、2日経っても帰らない2人を心配した仲間達から、男が叱られたのはご愛嬌だろう。