季節イベント(波間IF)   作:夢枕 七変化

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七夕18(死の外科医ロー)

 この船は騒がしいなと思った直後に、俺の船も変わらないかと思い至る。コラさんやベポを思い出して少し感傷に浸っていると、甲板がザワついたのが分かり視線を向けた。

 このザワつきはナミが関わってるとしか思えねェ。見れば和装に身を包んだナミが竹を持っていて、何をしたいのかとそれを見つめる。

 船員を集めて口を開いたのは宴を開こうというもので、麦藁屋は大喜びでそれを受入れてナミの説明を聞いている。短冊に願いを書いて笹竹に付けた後に燃やして星まで届けると願いが叶うという、子供が喜びそうなそれを聞けばうちのクルーも大喜びしそうだと思う。

 だが火を使うのはコラさんがなァと溜息が出てしまう。そこまで甘やかす必要も無いかと思っていたら、ナミが目の前に来ていて、短冊を差し出される。

 それを見て黄色を手に取ればナミはそうよねと言う。

 

 「黒の紙に文字書けないもんね」

 「……何故黒を選ぶと思ったんだよ」

 

 俺の素直な問い掛けにナミはクスクスと笑う。あの時から本当に変わらないナミは、今では俺よりも少し小さくて、あの頃は綺麗だとしか思わなかったが今は可愛く見える。

 

 「ローちゃんのイメージカラーが黒だったのよ。ゴメンね」

 

 確かに黒は好きだが、着ているのは黄色が多いだろうと小さく言えば、今更気づいた様子で確かにと言うから全くと笑ってしまう。ナミと居ると、気付けば笑っている事が多い。

 それから当然のように宴に参加させられるらしいと気付き、願いを書くように言われた短冊を睨み付ける。書いただけで叶うならば、誰も苦労はしねェんだよと思うが言葉には出来ずに苦笑が浮かぶ。

 家族を返せとか、海軍なんぞ滅べとか、そんな事を書いても何の価値も無い。だからと言って、ドフラミンゴ死ねとか書いた所でそれも無意味だ。

 そうなると他に願いは何かあるだろうか。クルーは今皆揃って安全なゾウにいる。

 そうなると安全を願うのもおかしい。……子供や女が喜ぶ願いを書くイベントならば、恋愛絡みが良いのかとナミに視線を向ける。

 和装に身を包んだナミは美しく、当然のように色々と動き回っているのが見える。いつ休んでいるんだと問いたくなる程に、ナミは多忙だ。

 仕事が多過ぎると言うのが第1印象だ。誰といても恋愛絡みではなく仕事をしている。

 遊んだり寛いだりしているように見えても、近付けばそれは航海日誌を書いていたり、備品点検をしていたりで遊んでる事は1度もなかった。1人で何か作っている事も多く、何時なら余裕があるのかわからない。

 夜中に図書室から明かりが見えて登ってみれば、海図や地図を描いていて、俺に気付くと優しく微笑む。幼い子供を見るような眼差しで。

 ……調子が狂う。ナミの中で俺は今も13歳のガキのままだ。

 深く口付けしても、大人になったと見せたがる子供扱いでは、それ以上先に進むのも難しい。恋愛に関しては脳の中でその細胞が死滅してるように思える。

 

 〝ナミに俺の愛が伝わる事を祈る〟

 

 最後は神頼みかと自嘲しちまうが、仕方ねェだろう。そうして迎えた夜に、短冊を付けて宴に参加すればナミは歌うように語る。

 やはり恋愛物のイベントかと笑えば、語り終えたナミが不思議そうに俺を見て近付いてくる。当然のように俺に近づいてそばにいて、それでも俺の想いには気付かない女。

 燃やされる竹に視線を向けると、妙に綺麗な文字が見えてまさかとそれを読めば肩から力が抜ける。俺の願いを叶えられる唯1の存在が、それを願うのかと。

 

 〝皆の願い事が叶いますように〟

 

 視線を横に向ければナミもまた驚きの表情で俺を見ていた。それから少し戸惑ったように視線を泳がせて、小さく勘違い、よね。と呟いた。

 

 「……勘違いじゃねェよ。ナミを1人の男として愛してる」

 

 ここで聴き逃していたらと思うとゾッとする。何故勝手に否定するんだお前は!

 俺の声に反応して顔を上げたナミはゆっくりとその顔を赤く染めて、俯いた。無駄に良い頭で、その内容を考えているのだろう。

 そんなナミの顎に指を這わせて顔を上げさせると、恥じらうようにその瞳を伏せて逃げようとするからその唇を奪う。ナミは抵抗してるつもりなのか、なんなのか分からないが、俺の胸元に手を置いている。

 角度を変えようと唇を離した俺にナミは縋るような声で、静止をかける。

 

 「ローちゃん、待って。お願い、混乱していて……」

 「無駄に考えるな。嫌なら突き飛ばせ。その時は辞めてやる」

 

 言って再び唇を奪うと、ナミからは戸惑いと混乱だけが伝わり、本当にこいつはと思う。辞めてやると言ったが、この唇は麻薬だと思えるほど、甘美だ。

 角度を変えて何度も降らせたキスにより、ナミの体からは力が抜けて行くのが分かる。苦しそうな吐息の合間に、俺を呼ぶのは誘っているのか。

 このままここで襲う訳には流石にいかないかと、自制心で唇を離せばナミはその瞳を潤ませて俺を見ている。

 

 「これ以上の事をしたいという意味で、ナミを求めてる。受け入れるつもりがあるなら、図書室で待ってるから来い」

 

 俺はそう言って立ち上がると移動する。まだまだ幼い恋愛観を持つナミが、どんな結果を選ぼうとあんな表情で見つめられて諦められる筈も無い。

 夜も深まった頃、宴の片付けをした後で風呂に入ったらしいナミの足音と香りに顔を上げる。ただ、海図を描きに来た等と言っても、許すつもりは無い。

 じっくりと可愛がってやると、少し緊張した様子で入口から動かないナミを見て笑った。

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