ヒロインとの百合関係は御座いません(怪しいだけ)
ルフィの話のsideストーリー風になっています。
心配のあまり倒れかけた私にフランキーは心配し過ぎだと言うけれど、あんな無防備な子兎が武器も無しに出掛けた時点で心配しない方がどうかしていると私は思うのよ。あァやっぱり私が……せめて私が1緒に行けば……!
「フランキー……ナミを連れ戻して……私、心配で……」
「分かったから泣くな。なんだってお前ェはいつも、ナミだけそんな特別枠なんだよ!」
「……ナミだからよ」
「答えになってねェ……」
キッパリとわかりやすく答えた私にフランキーは呆れた様子で、けれど迎えに行ってくれたのでホッと息を吐いた。それは、ルフィに行かせたらそれこそどんなお仕置きされるか分からないからと言うのがある。
ルフィはあれで中々ナミには独占欲が強いもの。無防備過ぎる兎にも原因は有るけど……危ういのよね。
そうして連れ戻されたナミはフランキーでは無くルフィにぐるぐる巻きにされていた。だから、助けにならなかったわねと思う。
ナミは買い物した荷物を大切そうに抱えて、叱られてる言葉を右から左に流してるのがよく分かる顔をしている。だから、恐らくは何か考えているのよねと思う。
無事で良かったと思って笑うと、フランキーがナミをルフィから回収して摘んで私に寄越したので、部屋に引き取る事にした。その後もルフィのお小言を聞き流してるから、後が面倒そうねと少し思う。
「ナミ、船長命令だ。部屋から出るな!」
「船長!トイレとお風呂はどうしましょうか?」
「……ロビンと1緒なら、それだけは許可する!」
「はぁい!」
会話が成立していたのは、これだけだったから他は何も聞いてなかったわね。それから少ししたら、何故か満面の笑みででも丁度良かったと言い出す。
そして買い物してきた物を広げて、私に言う。それも何だかウキウキした様子で。
「何作る?」
「何って……?」
「バレンタインよ。その為に買い物に行ったんだもの。……ロビンはフランキーに何かあげるんじゃないの?」
そんなものの存在忘れてたわ。でも、そんな事を言ったら嘆かれそうで言えないけれど。
「……どうしようかと、悩んでたのよ。ナミはどうするの?」
「私は、その……ルフィの姿をね、チョコに描いてプレゼントしてみようかなって……何してても、好きよって意味で」
……可愛いわ。物凄く可愛い。
もしもルフィにいじめられたら、守ってあげるわとの思いを込めて抱きしめたら、擽ったいと笑う。だから何となく、閉じ込められてても楽しい時間を過ごせていた。
私となら外に出られるというのもあり、ナミは当日ギリギリまで掛けてルフィとその他へのプレゼントを用意している。だから私も、その材料を少し分けてもらってナミに作り方を教わりつつお酒入りのチョコを作った。
作りながらも幸せそうに笑うナミに、ルフィが酷い事をしなければ良いけれどと少し思う。相当怒ってたのに、ナミったら何も聞いてないんですもの。
バレンタイン当日。ナミは全員にチョコを渡すのに、ルフィにだけ渡せずにいるから、これは不味いと少し思うけれど、私には何もしてあげられない。
そして、私とフランキーに丸いチョコを〝お揃い〟と言ってくれた。お揃いって言葉がミソよね。
何かしらと思って少し齧ると中が空洞になっていて、出てきたのは水色の石。……アクアマリンだわ。
結婚前のカップルに贈る事が多いとされる石であり、フランキーの色……。ナミったら!
私が顔を赤くしていると、フランキーも食べたチョコから同じ小さな石が出てきたようで驚き、そして私をじっと見詰めてくる。その後で視線だけで私を呼ぶから、私はそっとフランキーに近付いた。
「どうしたの?」
「同じ物か?」
「……そう、みたいね」
「小娘……ロビンに何かって時に俺の石を贈るとはな」
楽しげに笑ったフランキーは、私の石も回収すると後で見張り台に加工した物を持って行ってやると言われるので、任せてみる事にした。今夜は私が見張りなのよね……。
そうなるとナミが部屋に1人になる訳で、どうしても心配になる。ナミは、なんにもわかって無さそうだもの。
チョコを楽しそうに食べている人達の姿を眺めながら、さり気無くそれに参加する。そうして様子を見れば、ナミは相変わらず皆の〝お母さん〟をしていて、常に誰かの手伝いをするか1人で何かをしている。
今だけでも、今夜に備えて少しは休んで欲しいと願う事は、罪なのかしら?
その日の夜、見張り台に登った私の元へフランキーが尋ねてきた。そして、困ったような顔をする。
「何かあったのかしら?」
「小娘が、麦藁に泣かされててな……下手に助けに入るのも出来なくて、どうしたものかと……」
「必要なら、明日から暫くナミにルフィを近付かせないわ。……私のナミを泣かせるなんて」
「いや、それは違ェだろ」
「ナミ……可愛いナミ……」
「聞いてねェ……」
今私がナミを助けに部屋へと飛び込めば、恥ずかしがってつらい思いをするのが分かるし、ナミの事だから泣かされたとしてもきっとルフィを許してしまうから……。だから今は行かないけれど、明日ルフィにはお灸を据えてあげるわ。
そう思っていたら、唇が何かに触れていた。暖かいそれに、思考が止まりかけてしまう。
けれども直後にそれがフランキーのものだと分かれば、その首に腕を回してそれを受け入れる。……いいえ、寧ろ攻めていく。
そんな私にフランキーは好戦的な様子でまた攻め返してくるから、だから私達のキスはいつも長くなってしまう。どちらからともなく離れた唇を銀糸が繋ぎ、言葉も無く見つめ合ってからふっと笑えばフランキーが照れたような顔をする。
この人のそんな所が堪らなく愛しいと言ったら、笑うかしら。私は言葉を貰ってばかりで、何も返していない気がするけれど……。
「ロビン、約束してただろ。栞とペンにしておいた」
「フランキーの分まで、良かったの?」
「俺が俺の石持っててどうすんだよ。……小娘もそのつもりだろうぜ」
少し不愉快そうに、けれども気恥しそうに視線を逸らしたフランキーからその2つを受け取れば、本当にフランキーの瞳とよく似ていて嬉しくなる。でも、そうね……。
「フランキーの石なら、私もペンを胸にしまっておこうかしら」
「なんだ、私もってなァ」
「ナミは胸の谷間に、ペンとメモをいつも入れてるのよ」
「インクが無きゃ書けねェだろう?」
不思議そうに言うフランキーにナミの持つペンについて話せば、興味を惹かれたようで同じようにしてからまた渡してやるなんて言って回収されてしまう。それでも栞の方は手元にあるから、それを大切に使おうとそっと笑う。
その時甲高い悲鳴が聞こえて思わず立ち上がると、私の手首をフランキーが掴み、寂しそうな顔で行くなとその瞳で訴えて来た。……狡い、人。
行ったところで何も出来ないと分かっているから、私はそっとフランキーの元へと戻る。そして、今更チョコを差し出すと遅くなったわねと言って笑いかけてみる。
それを受け取ると同時に口に入れて、その直後に私を床に押し倒したフランキーに私は余裕なんて無いくせに挑発的に笑ってしまう。強がりな私は、中々弱さも見せられないけど……それでも、甘えてるのよ、フランキーには。
「その程度で酔ったの?それは、お酒に?それとも……私に?」
「決まってんだろ、そんなもん……ロビンにだ」
私の心臓が痛いくらいに脈打ってる事を、気付かれなければいい。そう思いながらも、脱がされる中で生意気な言葉ばかりが紡がれる。
「見張りの、途中なのに……イケナイ人ね」
「悪い大人だからな。……1緒に堕ちろよ、ロビン」
言葉と共にフランキーが私の体に触れる。それに自らの体が素直に反応しているのを感じながら、いつか心も素直になって想いを伝えたいと願う。
Happy Valentine……チョコと共に想いも伝わる事を願う女と、何も言葉にされなくても雄弁に伝えて来る瞳の動きで全てを察する男。互いに相手の事は分かるのに、自分の事を分かっていない不器用な2人の夜は始まったばかりで、見張りの仕事は……当然の如く放棄された。