ベル達は、宿を出た後イシスという女性の元に向かった。アルミノから生きている可能性が出てきたからだ。ヘルメスから聞けば、あの虐殺が起こっていたとき旅行中だったらしい。そのため、ベル達は急いでその女性の元に向かう。あの虐殺を聞いた後、アルカンレティアのギルドにその村の住人には無償で家を提供してくれたらしい。意外だったのがイシスにその対応を提案したのがこの街を統治する女神の一人で異常性を持つ信者が崇めている女神、アクアが提案したらしい。
「でも、大丈夫なんですか?あの女神、噂に聞いた所酒癖が強いらしく駄女神だと言われているらしいですが・・・」
ベルが不安そうに聞く。ベルは祖父から聞いたのだが、神にも色々いてその中でアクアは酒癖が強く、仕事もしない女神だと聞いていたからだ。ヘルメスは苦笑いする。
「確かに、彼奴は仕事をサボるわ、酒好きでダメダメなヤツだが、根は優しいんだ」
そう言ってヘルメスは、懐かしそうに口角を上げる。
「そうなんですか・・・」
そう言って、ベルは少し気になるような目でヘルメスを見る。少しだが二人は女神アクアにあってみたいと思っていた。
「ついたよ・・・」
暫く歩くと、例の家に着いた。二階建てで簡素的だが最低限の生活は出来るようだったので少し安心する。早速扉を開けてみようとした。
「あら?ヘルメスじゃない、なんでここに?」
その時、後ろから女性の声が聞こえた。ベル達が後ろを振り向くと水色の髪色で、全体的に青い服を着ており酒といくらかの果物を手にぶら下げている女性が姿を見せる。
「アクア?!どうしてここに?!」
「それはこっちの台詞よ!!イシスに何のよう?・・・ってその子は?」
女神アクアがヘルメスに言及していると、アクアは気になったのかベルの方を見る。
「何よこの子、可愛いわね・・・」
そう言って顔を近づける。ベルはアクアの言葉に少し顔を赤くする。アリーゼは謎の殺意を向けた。
「アクア、この子はイシスの同胞・・・あの村の生き残りの一人、ベル・クラネルだ」
「え・・・?」
ヘルメスは真剣な顔でアクアを見る。アクアはヘルメスの様子に本当のことだと悟り、ベルの方を見る。その顔はどこか、悲しそうだった。
「そう、良かったわ・・・あの子もきっと喜ぶと思う・・・」
そう言って、アクアは合鍵のようなものを取り出す。
「アクアはよくここに来るのか?」
「ええ、あの子、最初はとても明るかった子でね・・・ここの常連みたいな子だったのよ・・・観光に来たときはいつも楽しそうだったわ・・・でも・・・あの知らせがきた途端、彼女は変わってしまった」
そう言って、アクアはうつむく。震える手が彼女の感情を表している。
「とても・・・辛そうだった。次第にやつれてきてね・・・見るにも耐えない姿だったわ」
そうしてアクアは鍵を開け、扉を開ける。内装は、テーブルとキッチンがあったがほとんど使われていないと思うほどきれいだった。
「私とエリスで時々掃除に来るのよ・・・あんまり使わないようで楽だけど・・・」
アクアは階段を上りすぐ目の前にある扉に目を向ける。ベル達も後ろからついてきてアクアと共に扉の前に立つ。アクアは軽く扉をノックした。
「イシス・・・?入るわよ」
そう言って、アクアは扉を開ける。そこには・・・
「アクア様・・・」
白色の髪に、銀の瞳をしていてやつれていた女性、イシスがベッドで身体を置きあげていた。何時ものようにアクアはそばにある椅子に腰掛ける。
「イシス・・・今日はお客さんがきているわよ・・・」
「え・・・」
アクアがそう言った途端、ベルが扉の後ろから出てきた。
「イシスお姉ちゃん・・・」
「・・・ベル・・・?」
イシスはベルの姿を見て、身体が固まる。ベルはイシスに近づき頭を撫でた。イシスはベルの温もりを感じ、目から涙が出た。
「ベル!!」
次の瞬間イシスはベルに勢いよく抱きついた。イシスは涙を流しながら強く抱きしめる。
「よかった・・・よかった・・・・・・・ッ!ベル・・・ベル・・・・ッ!」
かすれた声と共に、イシスはベルの名前を呼ぶ。ベルはカサカサに乾いた手をそっと重ねた。
「イシスお姉ちゃん・・・ッ!」
そう言ってベルはイシスの身体を抱きしめる。暫く、二人の泣き声が辺りに響くのだった。
「本当によかった・・・ベルが生きていてくれて・・・」
「はは、本当死にそうだったよ・・・」
あれから暫く、涙が枯れるまで泣き続けた二人は落ち着いた後下のテーブルのある部屋まで連れて行った。そこで、イシスはアリーゼとも顔を合わせる。
「貴方がベルを助けてくれたのですね・・・話はベルから聞いています」
「いえ、私はたった一つの命しか守れませんでした・・・貴方の家族をお守りできず、申し訳ございません・・・」
そう言ってアリーゼは頭を下げる。アリーゼはただそうすることしか出来なかった。
「顔を上げてください・・・貴方はベルの命を助けてくれた・・・それをもうなんてお礼を言えばいいのやら・・・」
その言葉に、アリーゼは胸が刺さる。アリーゼにはお礼を言われる資格はない。それはアリーゼ本人が、一番分かっている。あの虐殺を起こしたのは、アリーゼ自身なのだから・・・
「ローゼさんでしたよね・・・ベルは私の息子のようなものでした・・・いえ、村全員の息子であり、弟だったんでしょうね・・・この子は私達にとっての希望だったんです、それを救ってくれたのは貴方本人なのですよ・・・」
「そう言っていただけるのも、ありがたいです」
そう言って、アリーゼはアクアが持ってきた酒を飲む。
「にしても、本当運がよかったわね・・・ローゼさんがいてくれなっきゃ、きっと私は・・・」
そう言ってイシスは小さな瓶が入った液体を取り出した。アクアが、液体を見ていると顔が固まる。
「これって・・・毒じゃない!!」
「ええ、今日自殺するつもりだったの・・・」
「「「・・・・ッ!」」」
全員は驚嘆の顔を浮かべる。そう、あと少し遅ければイシスは死んでいたのだ。アリーゼはこの女性を、死なせる寸前まで追い込めていたのだ。
「ア・・・アア・・・」
アリーゼは涙を流す。しかし、それは罪悪感の涙だ。自分がもっとしっかりしていれば彼女をここまで追い詰めたことはなかった。言えば、今回はただ運がよかっただけなのだ。もし、アルミノから連絡が無ければ彼女は死んでいただろう。現実がアリーゼに目の前の光景を打ち付ける。
「ローゼさん?」
「ローゼ・・・大丈夫?」
ベル達はアリーゼの様子に気をかける。ベル達はアリーゼが自分達のために泣いてくれたのだろうと思い、肩に手をかける。
「ありがとうございます・・・貴方は私の英雄です」
イシスはそうつぶやきベルも慰めるように抱きつく。彼女たちの泣き声が家の中で響くのだった・・・
「イシスさん・・・大丈夫ですか・・・?」
「ええ、お陰で立ち直れそう・・・ローゼさん、ベルをよろしくお願いします」
「はい・・・、お任せください」
そう言ってアリーゼはベルの手をつかみ、ベルの方を見る。イシスはベルの頭を撫でる。
ベルはそれを受け止めてゆっくり撫でられる。そうして馬車が出発する前の時間になった。
「ベル・・・」
「イシスお姉ちゃん・・・」
「幸せになりなさいよ!」
イシスは少しニヤニヤしながらベルの方を見た。ベルは少し首をかしげた。
「アクア様から聞いたんだからね!あなた達・・・したんだってね・・・」
「「・・・・・・・ッ!」」
それを聞き、アリーゼ達は顔を赤くした。ベル達はアクアに殺意を持っていた。アクアはそっぽを向く。
「まあ、ローゼさん!ベルをよろしくお願いしますよ!」
そう言って、イシスはニヤニヤとしながらベルを見つめる。
「ベル、さっきも言ったけど幸せになってよ!!」
そう言って馬車に乗るベルに大声で叫んだ。そうして馬車は出発する。イシスはまるで自分の娘を結婚した後の家に送られるような感覚で見送ったのだった。
それにベルは恥ずかしくなったのか顔をうつむかせるのだった。
はい、今回はここまでです。もう、ベル君ヒロインでいいかな?と思う、自分です。次回から更に物語が進みます。お楽しみに!
イシスのイメージはReゼロのエミリアです。