リヴェリア達は恐怖した。レフィーヤのあの一言により、少年の殺気が後ろの竜と共に、ビシビシと伝わる。
(なんなの・・・この殺気・・・普通じゃない!)
(こんな殺気・・・初めて・・・怖い)
(震えている・・・私が・・・この少年に・・・恐怖をしているのか?)
リヴェリアでも、武器を持つ手が震えている。レベル6であり、4代派閥の副団長であり、ハイエルフである彼女でも彼の殺気に震えているのだ。
それでレフィーヤが耐えられるはずもなくへなへなと倒れ込む。涙まで流し、座り込んでしまった。
「おい、そこのエルフ・・・もう一度言ってみろ」
「ひぃ・・・・・・・ッ!」
ベルの声にレフィーヤは震える。しかし、ベルはそんなことも知ったことではないかのようにレフィーヤに近づいた。
「おい、もう一度言ってみろと言っているんだ・・・なんて言ったテメェ・・・・・・・ッ!」
「やめて・・・来ないで」
レフィーヤは後ずさりするも、腰が砕けたように立ち上がることも出来ずにいた。
(動いて、動いて私の身体!このままじゃ・・・「貴様に言っているんだぞ・・・エルフ」ヒ・・・・・・・ッ!」
ベルは容赦せず近づいてくる。ジワジワと迫り来る恐怖が、レフィーヤの心を蝕む。
「ローゼが、あのクソ女共の団長ってか?そんなわけあるかよ!ローゼは誰よりも優しいんだ!!あの女達と一緒にするなんて・・・・・・・ッ」
「ウ・・・ッ!」
そう言って、ベルはレフィーヤの首を手にかけ壁に打ち付ける。
「アア・・・・・・・ッ!」
「さっき言ったよな?アストレア・ファミリアは正義のファミリアだってな・・・ちげぇよ、彼奴らは正義じゃねぇよ、彼奴らは僕からしてみれば闇派閥と同じなんだよ!」
「どう・・・して?」
レフィーヤは、首をつかまれながらもベルの言葉に問いかける。
「知らないのか・・・?アストレア・ファミリアがどんな所業をしてきたか!」
そう言って、レフィーヤの首をつかむ手を強めた。
「アガァ・・・・・・・ッ!」
レフィーヤの口からは血が出てしまう。だが、ベルが首を締める力を緩めない。
「僕の村は、アストレア・ファミリアに壊されたんだよ!」
その瞬間、ベルの瞳からは悲しみと怒りが伝わってきた。
「僕は・・・ただ、お爺ちゃんと一緒に住んでいたかったのに・・・!アルミノ兄ちゃんは立派になった姿を見てもらいたいだけだったのに・・・イシスお姉ちゃんは、彼奴らが村を壊さなかったら、自殺寸前まで行かず今でも笑顔で旅行に行っていたのに・・・カストロお兄ちゃんは自殺せずにすんだのに!!そこにいるアストレア・ファミリアのせいで!」
そう言って、ベルは頬から涙を流しながら叫び出す。
「僕は全て失った。そのせいで、あのクソ女共に殺されかけた・・・でも、彼女が・・・ローゼが、手を差し伸べてくれたんだ!!」
殺気がますます大きくなった。上空には、アジ・ダハーカもいるため威圧感がレフィーヤにビシビシと伝わる。
「そんな、僕の愛する人を、侮辱するなら僕は許さない!」
そう言って、ベルは目が赤く光り出す。
「・・・・・・・ッ!」
「許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない、許さない」
殺気の強さが増していく。ベルの目は狼から竜と化していた。レフィーヤの首を締める強さは更に強まっていき、レフィーヤの身体は宙に浮いた。
「ウゥ・・・・・・・ッ!」
レフィーヤは必死にもがくも、レベルが下だとは思わせられないほどの力だった。このままでは死ぬと、リヴェリア達が助けに入ろうとも恐怖で身体が動かない。
(急げ、急げ、急げ、急げ、急げ、急げ!このままでは・・・・・・・ッ!)
「ベル・・・」
その時だった。レフィーヤの首を締める力が強まり首の骨も折れかけたところ煉獄騎士・・・アリーゼがベルの肩に手を置いた。その瞬間ベルは手を離した。
「ローゼ・・・?」
「ベル・・・後は私にまかせて・・・貴方はやるべき事があるでしょう?こんな事で魔力を消費しちゃ駄目よ」
そう言ってベルを諭すようにベルの手にふれる。その声は、もはやリュー達が確信する程はっきり聞こえる。
「・・・・分かった」
ベルはレフィーヤの首を離し、ローゼの方を見つめる。そうしてアリーゼはベルの頭を撫でた。
「私は、大丈夫よ・・・ありがとう、私の為に怒ってくれて・・・」
「ごめん・・・もう、大丈夫だから」
その瞬間、ベルの殺気は少しだけマシになった。少しだけ兎のようになっていた。
「ほら、貴方は自分の使命を果たすんでしょう?大丈夫、貴方なら出来るわよ」
「うん・・・」
そう言って、ローゼはベルをリューの方向へ指さす。
「行ってくる・・・」
「・・・・・ええ、行ってらっしゃい」
ベルは再び、アクワルタ・グラルナフを手にリューのもとまで走る。
「アリーゼさん・・・・もしかして・・・私を・・・」
「・・・・・」
アリーゼは、レフィーヤの言葉にフェイタルを持つ手が震えていることに気づいたのはリューだけであった・・・
「何・・・あのモンスター!」
「なんという・・・禍々しいモンスターなの」
上空に浮かび上がるモンスター、アジ・ダハーカに全員恐怖を覚える。ロキ・ファミリア団長フィン・ディムナは親指をなめながらアジ・ダハーカを凝視する。
「彼奴・・・です・・・」
「え・・・?」
小さくエルフィの声が聞こえる。エルフィは恐る恐るアジ・ダハーカに指を差した。
「あのモンスターが・・・ラウルを・・・殺したモンスターです!」
トラウマが蘇りだした。エルフィはその場では吐き涙を流した。
「・・・・・・・ッ!」
その瞬間、アイズの殺気が膨れ上がった。
(彼奴が・・・・・・・ッ!)
「『
「待て、アイズ!!」
「私が追います!!」
アイズは怒りで我を忘れ、アジ・ダハーカの元まで走り出すあらかじめ、シャクティと別行動していたアーディがアイズの後を追うのだった。
「ガレス・・・あの作戦をやるぞ」
「・・・・なんとなく察しがついたわ」
ガレスとフィンは準備するのであった。
「オラリオの冒険者よ、お前らの力を見せてみよ・・・さもなくば、破壊するまでだ」
ふと、上からリューの耳に低く恐怖を煽る声が入ってきた。そう、終焉魔竜アジ・ダハーカの声だ。
「アジ・ダハーカ、お前は手を出すな・・・僕は自分の手で、ヤツをやる」
「・・・分かった・・・その望み、叶えてやろう」
そう言ってアジ・ダハーカは空で待機しベルは、リューの元に刃を向ける。瞬間、アクワルタ・グラルナフから魔力がたまりこむ。
「・・・・・・・ッ!」
リューは直感した。アレに当たったら間違えなく殺される。恐らくだが、リヴェリアの魔法でも防げるかどうかであった。リューはその魔力と殺気でその場から動けないでいた。
「まずは一人目・・・」
そう言って、ベルは剣を振るう。その瞬間、紫色の光が勢いよくリューの元に目がけて放たれた。
「アッ・・・・」
それは、震えている足と謎の安心感のせいで動けなくなっていた。リューはベルが放った光がスローモーションに見える。
(私・・・死ぬのかな?)
リューは自分が死ぬと感じ、急に記憶が鮮明に現れる。
リュー・リオンは昔、『リュミルアの森』と言う大聖樹を守る一族であり、戦士として修行をしていた。
だが、エルフは排他的で他の種族、特にクロッゾ家を蔑視しているのに嫌悪し、11歳に森を出てオラリオへ行った。ある日アリーゼにアストレア・ファミリアに入ることを誘われたのだ。その時はまだ彼女は荒れ狂っていた。
エルフの風習を嫌っていたはずなのに、自分もその風習が身についてしまっていて最初はなかなかなじめずにいた。だが、それでもアリーゼは見捨てないでくれた。一緒に苦楽をともにし、自分に向ける優しさがいつしかリューにとって憧れの存在であった。
だが、そんな日もあることで一瞬にして砕けてしまう。
最初は、ルドラ・ファミリアを追い詰めたとこだった。火炎瓶などを使い私達を殺そうとしたが、失敗し捕らえようとした。だが、その時ダンジョンがあのモンスターを生み出した。
それは『悪夢』と呼ばれてもおかしくはない、強さと見た目であった。幸いにも、全員生還できたが、私達は恐怖心でいっぱいになっていた。そのせいか、ギルドの情報を信じ切って私は襲撃し、早く終わらせたかった。
だが、それが私達を狂わせた。そう、あの情報は間違いで襲撃していたのは少年の村だったのだ。
それにリュー達、アストレア・ファミリアは自らの罪に後悔した。私がもっと冷静であったら、私が気づいていたら・・・そんな声が上がっていた。酷いときは自殺をしようとしていた団員もいたほどだ。気持ちは分かる。アリーゼは全ての責任を自分に向けさせオラリオから追放された。
苦しかった、辛かった、冷静に見えても彼女はもう限界であった。リューは自分の死を直感して、自らの武器を手放した。
(ああ、ようやく・・・・楽になれる)
「アリーゼ・・・せめて・・・貴方だけは・・・幸せになってください」
そう彼女はこぼしそっと目を閉じるのだった・・・
「キャスト!『ドラゴンシールド 黒竜の盾』!」
その瞬間、黒い竜の形をした盾がリューを守る。突然の事にベルは驚きを隠せない。
「ローゼ!!なにをするの!!」
魔法を使ったのはアリーゼであった。コレは、ベルが万が一のためにアリーゼに防御魔法を渡しといたのだ。コレは4回まで使える代物である。それを自分の仇に使われ怒りを覚える。
「あ、ごめん・・・間違えて使っちゃた」
はっとし、アリーゼはそのまま顔をうつむかせる。
「もう、しっかりしてよ・・・たく、あと3回だから気をつけてね・・・」
ベルは少し戸惑いながらも、アリーゼを守るように立つ。レフィーヤはいつの間にかリヴェリアの傍にいた。
「疲れたの?ローゼ・・・少し休んでいた方がいいよ・・・大丈夫、君がアストレア・ファミリア団長なわけあるはずが無いんだから・・・」
ベルがそう言うと、アリーゼはそのまま立ち尽くしていた。
「そうか・・・私、つかれていたんだ・・・」
そうこぼした瞬間、突然アリーゼがベルの前に立ちはだかった。
「どうしたの・・・ローゼ?」
「・・・・・・・」
「どいてよ!ローゼ!!僕は仇を取るんだ!!そこをどけ!!」
そう怒鳴るもアリーゼはどかない。それどころか、ベルに刃を向けてきた。やがてアリーゼの口が開く。
「はは、なんでこうなっちゃたんだろ・・・きっと・・・貴方と長く一緒にいたせいかしら」
「ハ・・・?」
「もう・・・・私には正義が分からなくなっちゃた・・・こんな優しい子だって知らなければ・・・貴方に会わなければ私は・・・こんな、最低な女にはならなかった!」
「何を言って・・・」
そう言っている間、アリーゼは自身の鎧を脱いだ。やがて、リューたちがよく見る服装をした彼女が姿を現す。
「でも、今私がやるべき事は・・・『紅の正花』として・・・最期まで責任を果たす!!それだけよ!!」
「――――――ァ」
その瞬間、彼女がアリーゼだと分かった・・・分かってしまったのだ・・・自分の村を壊し、大切な人たちを殺した張本人。ヘルメスから聞いていた・・・ファミリアの最終決定権は団長と主神であると・・・
つまり、あの惨劇の主犯者でもあるのだ・・・その真実が彼にのし掛かる。
「アア・・・アア・・・アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
その瞬間泣き叫ぶように吠えた。
(僕は・・・騙された?全部・・・ウソ?)
ベルの頭には今までの記憶が蘇る。共に旅をして、共に笑って、共に危機を乗り越えた彼女の思い出が彼の中に渦巻く。
「嘘だ・・・・・・」
そう言って、ベルは膝を地面に突く。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダウソダ・・・嘘だぁ!!」
涙を流しながら怒りの感情があらわになった。ベルは壊れた人形のようにそう連呼する。
「ベル・・・と言ったか・・・悪いが、真実だ」
リヴェリアが最期にとどめの一言を放った。その瞬間、ベルの何かがガラスのようにパリンと壊れた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ベルの悲痛な叫びが聞こえる。
「・・・・・・・ッ!」
レフィーヤは少年に何か同情してしまっていた。レフィーヤだけではない。リヴェリアもであった。二人は敵でありながらも歩み寄ろうとしていた。
「は・・・はは」
(後は・・・私が彼に)
そう、アリーゼはここでベルに殺される事を決意していたのだ。アリーゼは目を閉じてただ自分が殺されるのを待つ。
その時だった。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」
アジ・ダハーカに異変が起きた。アジ・ダハーカのからだに紫色の電流が流れ徐々に紫色に変色していった。
「何が・・・・・・・ッ!」
「許さない・・・」
「・・・・・・・ッ!」
ベルがそうつぶやくと紫色の電流が流れ、アジ・ダハーカは更にでかくなっていった。
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない!ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ・・・ユルサナイィ!」
リヴェリア達もアジ・ダハーカの様子に驚きが隠せない。姿は禍々しくなり殺気も大きくなって行った。
「殺して・・・殺してやる!アリーゼ・ローヴェル!!アストレア・ファミリアァ!!」
(良いぞ・・・我が
その瞬間、リヴェリアが何かを察した。
こいつは生かしておけない・・・生かしちゃだめだと・・・そう、こいつを生かせば世界が壊れる。それが、リヴェリアだけでなく遠くにフィン達も分かった。
「おい、『疾風』、『
「「え・・・?」」
それは終焉が舞い降りた事を意味した竜、今まででも強かった竜が今少年の絶望、憤怒、憎悪によって進化を遂げたのだ・・・
『終末の大魔竜 アジ・ダハーカ』へと・・・
「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!」」
少年と竜の怒りの咆哮がオラリオを包み込んだのだった・・・・
はい、遂にアリーゼの正体がベルに知られました。次回、フィンのトンデモ作戦も・・・お楽しみに!!