「ウ・・・ン?」
ほのかに外から焦げ臭い匂いと共に、ふかふかなベッド・・・イヤ、病人が寝るようなベッドで茶髪のハーフエルフ、エイナ・チュールは目を覚ました。
「ここ・・・は?」
エイナは周辺を見渡す。そばには花束もあり、背中は少し痛んでいた。
「どうして私は・・・」
エイナはそう言いながら頭を抑えていた。なぜ、自分がここにいるか・・・その経緯を頭の中で模索していた。
「そうだ・・・私は!」
段々とその記憶を思い出す。あの後、リヴェリア達と避難しおうとしたが途中瓦礫で押しつぶされて自分は死んだと思っていたが、エイナは今ここで生きている。そのことに驚きを隠せないでいた。
「どうしてここに・・・」
エイナは困惑し、頭を抱える。
「失礼する」
だがそうしている間突然、扉をコンコンと叩く音と聞き慣れた声が聞こえ、扉が開いた。
「アレス・・・・・・・ッ!」
「良かった・・・そこまで重傷じゃないな」
そう言って、エイナに近づいたのはあの脳筋と言われていたラキアの主神アレスであった。エイナはそれを目にして警戒する。
「体調は大丈夫か?瓦礫に埋もれているのを見つけてなんとか助けたが・・・痛いところはないか?」
「え・・・?」
だが、今目の前にいるアレスはエイナ自身のイメージとは違う脳筋と呼ばれる神ではなくどこか安心出来るような雰囲気だった。
「あの・・・」
「アレス、そのエルフの少女は目を覚めたのか?」
そこに金髪で30代の男、エルヴィン・スミスが手に花を持ちながら扉を開ける。
「ああ、エルヴィン・・・一応目覚めたが・・・・」
「ふむ・・・混乱しているようだな、エイナと言ったか・・・何人かのギルド職員の捕虜から名前は確認している・・・どうだ?体調は?」
「あ、いえ、特に・・・腰が少し痛むくらいです」
エイナは思わず答えてしまった。エルヴィン達は笑顔でエイナを見る。
「そうか、なら良かった」
そう言ってエルヴィンは手に持っている花を渡す。エイナは戸惑いを隠せず、口をパクパクとさせた。
「あの・・・一つ良いでしょうか」
「・・・・なんだい?」
エイナは、アレスの様子とエルヴィン達を見て思わず問いかけてしまう。駄目かと思ったが大丈夫そうであった。
「どうして、私を助けたんですか?」
それを聞きアレスは、少し悲しそうな顔と怒りを表す表情をしながらも息を整え答える準備をしていた。
「我々は一般市民には最低限の被害に抑えようと努力をしていた、一般市民にできる限り被害は出て欲しくはないし、なんも罪はないからな・・・今回の作戦も一般市民には被害が出ないようにするためだ」
そう言って、アレスは拳を振るわせる。だがエイナはどうも納得できていない様子ではあった。
当然だ。ベートが死んだことは知っており、エイナはリーネの涙が忘れられず怒りでいっぱいだった。納得しないかのようにエイナは続ける。
「だったら・・・なんでこの戦争を起こしたんです!!そのせいで、どれほど多くの人たちが・・・・・・・ッ!」
「それはお前らが、イケロス・ファミリアの残虐な行為を黙認していたからだ!!」
アレスは、怒りをあらわにしながら怒鳴った。エイナはそれに驚きビクリと身体を震わす。
「お前達ギルドやガネーシャ・ファミリアに問いただしても、お前達はそれを無視してセレンの同胞が苦しんでいると分かっていながら、何も出来ない悔しさが分かるか?!ガネーシャは共存を夢に見たと聞いていたが所詮は臆病者!ギルドのウラノスもだ!!口だけはなんとでも言えるがもう我慢ならなかった!!なら俺がやる!そう心に誓った!!だから俺はこの聖戦を度々起こしていたのだ!!」
そう言って、息を荒げながらエイナに怒鳴った。その姿はエイナが知っているアレスではない。何も考えていない愚王だと思っていた神はただ一人の父親としての心があることをエイナは実感する。途中でリヴェリアの言葉を思い出した。
(この戦争が起きた原因は、もしかしたら・・・正義・・・なのかもな)
「アア・・・」
エイナは心の中で嘆いた。彼はただ、あのモンスターの・・・小さな女の子の父親として彼女の同胞を救ってやりたかったのだと・・・嘘偽りのない瞳に今の彼女はそう思うことしか出来なかった。
なんて残酷なのだろうか、なんて辛いのだろうか・・・誰かが言っていた・・・世界は残酷なのだと・・・この世界が残酷だと改めて知った。
「落ち着け・・・」
「・・・・すまない」
エルヴィンがなんとか、落ち着かせるように促す。エイナはもう何も言うことが出来なかった。
「暫く安静にしていろ・・・何かあれば、外にいる衛生兵に聞くと良い・・・」
そう言って、アレスは病室から去る。やがて病室は静かになっていった。
「・・・・・・・ッ!」
(リヴェリア様・・・私、どうすれば良いのでしょうか・・・・)
エイナはアレスの姿に何も言えずただ、涙を流すのだった・・・
「貴方・・・・誰?」
「え・・・・?」
一方18階層では戸惑いの声が聞こえる。アリーゼの様子が変であったからだ・・・突然、アリーゼがアストレアを見てそう言ったのだ。さっきまではアストレアのことは覚えていたはず。だが、今の彼女にはそのような雰囲気はなかった。むしろ、今目の前にいるのは別人のように思えた。
「どうしたの・・・アリーゼ・・・!まさか記憶喪失?」
「そんなはずは・・・」
この事に全員は頭を悩ませていた。フィンは親指をなめ、リューは驚嘆で身体が固まる。だが、リヴェリアが閃いたように口を開いた。
「もしかしてだが・・・君、名前は?」
「・・・・ローゼ・アーリヴェルです・・・」
その瞬間、全員は再び身体が凍るように動かなくなる。リヴェリアは再び口を開いた。
「良いか?お前はローゼ・アーリヴェルではない・・・・・・・・・・お前は、アストレア・ファミリア団長のアリーゼ・ローヴェルだ・・・・」
「私が・・・?イヤそんな・・・私は騎士で旅人です!それに・・・っ!」
「なら、お前はここにいるはずもないだろう・・・?」
その瞬間、ローゼは息を荒げる。
(やめて・・・やめて!!)
今まで思い出したくない記憶が鮮明に彼女の頭に入っていった。
「そう・・・でしたね」
瞬間、ローゼはアリーゼに変わった。そのことに、アストレア達は驚きを隠せないでいた。
「やはりな・・・」
「どう言う・・・こと?」
そう言ってリヴェリアはアミッドを呼ぶよう指示する。アリーゼは泣きながら地面に座り込む。暫くしてアミッドがやって来て戸惑いながらも仮入院施設に入れられたのだった。
「女神アストレア・・・今から言うことを落ち着いて聞いて欲しい」
リヴェラの街の建物の一角で紅茶を餅ながらリヴェリアはアストレアの前でそう言う。アストレアも覚悟をして聞いていくことにする。
「『紅の正花』・・・アリーゼは・・・恐らく二つの人格に分かれているのだと思う」
「と言うと・・・?」
「彼女とともにいた少年、あの事件の生き残りとともにいたのは知っていたか?」
「え・・ええ、ローゼと名乗って一緒にいるってアーディ達から聞いていたけど」
アストレアは輝夜達にベルの事を聞いていたため、理解は出来ていた。
「恐らくだが、あの少年の前ではローゼと名乗っていた。そのため騙している罪悪感から彼女は自分がそうであると無意識に思ってしまう・・・二重人格になってしまう病になってしまったんだろう」
「・・・・・・・ッ!」
リヴェリアの言葉に、アストレアは自分のやるせなさに怒りを感じる。本当なら、私達が総出でアリーゼを支えなければならなかった。本来、コレは自分達の責任だから・・・だが、彼女達はアリーゼの優しさに甘えてしまったのだ・・・そのせいで彼女がここまで追い詰められる事になってしまったのだから・・・アストレアは涙が出てしまった。
「ともかく、しばらくはアミッドのカウンセリングを受けさせる。今では戦力が乏しい位だからな・・・疾風にも同じような処置を施そう・・・くれぐれも他の団員達には伝えぬように」
そう言ってリヴェリアはそのまま紅茶のカップを皿に置く。アストレアはそれを聞いて、ただそう頷くしかなかった・・・
???視点 end
アリーゼside
「はい、今回は以上です」
「ごめんなさい、アミッド・・・私のせいで」
「確かにそうかも知れませんが、今はゆっくりしていてください・・・話はそれからです」
そう言ってアミッドは私に休むよう促された・・・私は、自分お部屋の扉を開ける。
部屋に戻った私は罪悪感に襲われる。
私はなんて最悪な女なのだろう・・・私にはもう正義はないのに・・・本当はであった時から私はあの子に殺されるべきであった・・・なのに自分の都合で、騙して、犯して、挙げ句の果てには裏切って・・・
薬品の匂いがする病室の中、私はベルの事が頭に離れない・・・あの子は今どうしているだろうか・・・身体、悪くしてはいないだろうか・・・ちゃんと、食べてはいるのだろうか・・・・
思ってはいけないのは分かる・・・でも、私はどうすれば良いの・・・
私は・・・ッ!
「最低ね・・・私って」
そう言いながら、私は涙を流す。暫く私は、自分に怒りを感じていながら私は不思議と眠りについたのだった・・・
「ここは・・・」
気が付けば、私は知らない場所に来ていた。私はソファのような物に座っていて、全体的に広く、青い空間で所々木造の長机が置いてある。所々ステンドガラスがあり、左には60ほどある椅子に黒い影が私を見つめていた。
すぐ真横には、青い帽子に憲兵のような服装をしている人・・・らしき生き物が座っていた。少し、極東の食べ物の寿司の匂いが漂う。何かつかんでいるようで私はそれに目を移す。
「・・・・・・・ッ!何・・・コレ・・・」
持っていたのは縄であった。それをたどっていくと私には手首に拘束器具が取り付けられている。更に足には鎖と共に足かせがあった。
「オラ、立ち上がれ」
「い、行くよ・・・大人しく・・・ね?」
そう言って寿司の香りを漂わす、魚らしきモンスターが私を引っ張る。隣には黄色く背の低い蜥蜴のモンスターがおどおどしながら私を見つめていた。私はなされるがままに、ある場所へ連れて行かれた。そこは、円形の台に前方には木の柵で囲まれていた。
「ニェニェニェニェ・・・」
突然に聞こえてくる個性的な笑い声に私は驚きを隠せない。すると左側にはスパルトイとは違う、骸骨系にモンスターがいた。右にも少し太った骸骨のモンスターがいる。うっすらと笑みを浮かべながら私を見ていた。
私は戸惑っていた。知らないところに連れて行かれ、挙げ句の果てには見たことのないモンスターがいたからだ・・・私は何が何だか分からずじまいで頭を悩ませる。
カン、カン、カン・・・
突然、建物中に響いた。私は咄嗟に音がした方を見る。そこには奇妙な顔、神は白髪で目はギョロギョロ・・・鼻は異常に長く、不気味な雰囲気の老人が目に入った。とても不気味だ・・・
誰だ・・・?何処なんだここは・・・あの老人は何者なのだと、私はそれで頭がいっぱいだった。
暫くして、老人は私を見てにやりと笑い一言おいてこういったのだった。
「ようこそ・・・ベルベット・ルームへ」
はい、今回はここで終了です。さて、アリーゼを誰に似せたかというとそう、ライナーです。理由、僕は前にも好きなキャラは悪役、闇堕ちさせたいと言う思考の持ち主なんですが・・・実は同時にライナーみたいに苦しませたい、と言う歪んだ愛情の持ち主でもあるのです。なんか、モチーフとして書くと結構魅力的ですよね・・・ライナーって・・・特に銃フ○ラは良かったです(悪い笑み)。ちなみに、似せていると言ってもすこし違うかもしれませんが作者はアニメ勢なのでご了承を・・・
と言うわけでアリーゼにはこれからドンドン苦しませていきます。苦手の方は申し訳ございません。
次回もお楽しみに!