「ここは・・・?」
ベルとアリーゼは思わず息をのむ。それもそうだろう。無人島かと思いきや地下室らしき物があり入ってみると目の前には、大量の太った人間が何も調理していない生肉を食していたからだ。汗を垂らしむさぼり食う。味わいもしていなさそうだった。そしてその人間はやがて食べた食べ物を吐く。その光景が地下室に広がっていた。
「ゥ・・・・」
ふとアリーゼ達が呆然としていると太った人間はアリーゼ達の方を見る。そしてこちらに迫ってきた。
「・・・ッ!ここから出ないと!」
そう言ってアリーゼはベルの上を引っ張り逃げようとするが・・・
「・・・ッ!閉まっている?!」
「嘘でしょ?!」
その扉はいつの間にか閉まっていた。門のような扉で強引には開けられないのである。急いでアリーゼ達は物陰に隠れる。すると見失ったように太った人間は席に着きまた生肉を食い始める。
「どうしよう・・・」
そう言ってベルはアリーゼの近くで震えていた。それを見てアリーゼはベルを抱き寄せる。そしてあやす。
「大丈夫・・・私が傍にいるから」
「うん・・・」
そして暫く隠れることにしたがこのままでは埒があかないと言うことで移動することにした。
「行くよ・・・」
「うん・・・」
そう言って忍び足で進む、太った人間には気が付けられないようにしている。しかし古びた床なのかベルの足にとげのような物が刺さった。
「痛っ・・・ッ!」
「ベル・・・大丈夫?」
「うん、木の枝が・・・少し・・・」
そう言って大丈夫だと言い先に進む。暫く進んでエレベーターの方に進む。その時だった・・・
「ウ・・・・」
包丁を持っていておりコック帽をかぶり、エプロンが血まみれの丸々と太ったシェフのような男が降りてきた。そしてアリーゼ達を興奮した状態で見つめる。アリーゼは冒険者の勘が騒いだ・・・
「ブォ!!」
「・・・ッ!ベル!!逃げるわよ!!」
「え・・・?」
そう言って逃げた瞬間シェフが包丁を持ってアリーゼ達を追う。興奮状態でこちらに迫ってくる。
(遅いわね・・・体が大きい分・・・ノロい!!)
そうしてアリーゼは猛スピードで船の中を駆けた。そばには太った人間もいたがそれでもスピードはアリーゼが圧倒的だった。
「このまま突っ切るよ!!」
「うん!」
そうして目の前にエレベーターを見つけた。しかしそこには・・・
「ゴァ!!」
「シェフ?!」
「双子なの?!」
シェフが現れた。しかし、顔が若干違うため双子だと分かる。すぐに逃げようにも目の前には太った人間とシェフがいる。
(レロッ!)
「・・・ッ!」
ふと、太った人間が地面についているベルの足にたれている血をなめた。その途端・・・
「ウオオオオォオオオ!!」
突然太った人間は叫び出した。相当な興奮状態だった。その様子を見て太った人間はベル達の方を見る。
「ヒッ・・・ッ!」
「・・・ッ!」
そうして勢いよくベル達の方に向かって突進してきた。さっきとは比べられないほどのスピードだ。
「不味い・・・ッ!」
「ウオオオオオ!!」
このままでは殺される。そう直感し、剣を抜くがそれでも剣が折れそうな勢いだった。食にとりつかれた人間は机を壊すほどの力、下手したら鉄も折れる勢いである。それにアリーゼも圧迫される。そうして太った人間はベルの足を噛みつこうとした・・・その時だった・・・
「ウワアアアアアア!!」
床が抜けたのだ。太った人間が次々と落ちる。そこにアリーゼはベルの手をつかむ。
「ベル!!大丈夫?!」
「うん、ありがとう・・・ローゼは?」
「私は大丈夫・・・「ローゼ、危ない!!」え・・・?」
ベルが叫ぶと後ろのシェフが包丁を振りかぶろうとしていた。
「止めろぉ!!」
「オオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!」
ベルは残っている片手で短剣を出しシェフの方に投げる。何とか一人腕に刺さり苦しそうなうめき声を上げる。しかし・・・
「うぉ!!」
「・・・ッ!」
もう一人のシェフがこちらを見つめ鉄の棒を振りかぶる。その途端アリーゼの背中に傷がついた。
「・・・ァ!」
「ローゼェ!!!」
ベルの叫び声が空間に響く。恩恵があるからか耐えられてはいけるがそれでも何度もやられれば死にいたってしまう。
「ローゼェ・・・僕を・・・離して・・・」
「離さないわよ、バカ!大丈夫、私は超絶美人ちゃんなんだからすぐに助けるから・・・」
そう言ってベルは涙を流す。アリーゼの手から背中に流れている血が流れ出ていた。さっきよりも酷い状況だ。それにベルはまだ9歳・・・この年齢でこの光景は恐怖でしかなかった。その途端、またあの夢が、あの村の出来事がフラッシュバックしてきた。その途端ベルの手が震え出す。
「・・・もう、イヤなんだ・・・」
「ベル・・・?」
「もう、大切な人を失いたくないんだ・・・これ以上・・家族が死ぬのを見たくない!!」
そうしてベルの背中にあった布が剥がれ落ちる。後ろにある剣はその姿をさらけ出した。それがなぜか心臓の音と共に鼓動が走る。
「僕は・・・あの村を殺した女達を・・・僕の家族を傷つける奴は誰であろうと・・・許さない!!ローゼは・・・僕がまもるんだぁぁ!!」
「ヴォ!!」
「・・・ッ!?」
そう言った瞬間突如、ベルの剣が赤く光り出した。それに反射してシェフは目をつぶる。それと同時にアリーゼは今のうちと判断したのか急いでベルを引き上げる。
「ベル!逃げるよ!!」
「・・・うん!」
そうして逃げた途端、ベル達は一気に廊下を駆け抜ける。後ろに迫ってくるのは太った人間達、背後から来る重量級モンスターのように向かってくる。アレに踏み潰されたら一溜まりもなさそうだった・・・
「急がないと・・・ッ!」
「見て・・・ッ!」
急いで走ると行き止まりで穴になっていた。
「・・・ッ!」
しかし、それでも太った人間達は追うのを止めない。奥の方では押しつぶされているにもかかわらず進んでいる者がいる。その姿に二人はゾッとした。しかしそうしている間もなくこちらに向かってへたりつきながら追いかけてきた。
(どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする、どうする?!)
アリーゼ自身辺りを見渡す。しかし、何処にも抜け道がない。ふと隣に小さな展望台のような部屋が横にあった。そこを見て少し深呼吸をする。そして、ベルに告げた。
「ベル!私に捕まって!!」
「え・・・なにw「良いから早く!!」・・・ッ!分かった」
そう言ってベルはアリーゼの体につかまる。そして・・・
「行くよ!!」
そう言って壁のへこみに手をつかむ。それに太った人間は追った衝撃で何体か下に落ちていった。
「・・・ッ!」
ベルは一瞬のことで何かは分からなかったが下には深い穴が広がっていた。それに恐怖を覚えた。もし落ちれば即死・・・その恐怖がベルを襲った。
「ベル、大丈夫?」
「ウ・・・うん・・・ローゼも大丈夫?」
「ええ、へっちゃらよ・・・今からあそこに渡るから・・・じっとしていて」
ベルはうなずき、アリーゼは深呼吸をして展望台のような場所まで行った。
「ふう・・・ついた・・・」
二人は今までの疲れがどっと来た。
「全く・・・この島何なの?!」
そう言って寝転がる。その時ベルが口を開いた。
「違う・・・ここは島じゃない」
「え・・・本当だ、わずかだけど揺れている」
そう言ってアリーゼも床を触る。少しだけだが揺れていた。
「ここは船だね・・・最初島だと勘違いしたけど」
「こんな船があるなんて・・・」
そう言ってベル達は暫く休憩をする。ふと奥のふすまに目が行く。
「進んでみる?」
「うん・・・」
そうしてベル達はふすまを開け進み始める・・・暫く道を進み始めるとどこか異臭がした。その時だった・・・
「・・・・ッ!」
「これは・・・」
何やら生き物の死骸だった。しかも見たこともない。そばにはソーセージが落ちてある。その生き物は小さい人型のようだった・・・三角形の頭をしていた。
「何なの・・・?」
「分からない・・・何があったの・・・ッ!」
次の瞬間何か物音が聞こえた。アリーゼ達は辺りを警戒する。少しあたりを見渡したとき机の下から何か見えた。
「え・・・?」
「ヒッ・・・ッ!」
そこにいたのはネズミと同じ身長の黄色のレインコートを着た小さな、小さな少女だった。こちらを見て震えている。
「ベルどうしたの・・・って小さっ!」
アリーゼも見つけてレインコートの少女を見つめる。レインコートの少女の震えは止まらなくなっていった。そこでどうしたものかベル達が悩んでいたところ・・・
「ねえ・・・君、名前は?僕はベル・クラネル・・・」
そう言ってベルが自己紹介を始めた。そこに少女は敵では無いと悟ったのか近づいてくる。
「シックス・・・」
レインコートの少女、シックスはすんなりベルに近づいて指をつかむ。それにアリーゼはときめいたのか、目を輝かせる。
「何、この子可愛い!!」
そう言ってシックスを手にのせスリスリと頬に擦る。それにシックスは少し怖がっていた。
「ローゼ、シックスが怖がっているよ」
「あ、ごめんね、シックスちゃん・・・」
「・・・ローゼ・・・怖い」
そう言ってシックスはアリーゼを避ける。アリーゼは「ガーン」と音が聞こえ落ち込んでいた。ベルは暫く励まし、シックスはその様子を少し笑っていた。
「そこに誰かいるの?!」
そこに一人の女の声が聞こえた・・・アリーゼは何やら焦ってフードをかぶり後ろを見つめる。そこには・・・
「貴方は・・・」
「止まって、それ以上近づくなら・・・」
その途端ベル達は振り向く。そこには・・・
「アーディ・・・」
ガネーシャ・ファミリアの団員、アーディ・ヴァルマだった。
「何で私の名前を・・・ってその声って・・・」
そう言いかけた瞬間アリーゼはアーディに抱きついた。アーディ自身何が起こったか分からなかったがとりあえず状況を整理していた。アリーゼはベルのいないところでアーディを連れて行く。
「ローゼ?」
「ごめん、ちょっと話があるから・・・」
そう言って少し奥に行った。
「アーディ!久しぶり!!」
「もしかして、アリーゼ?」
アーディもアリーゼだと気づき涙を浮かべる。
「アリーゼ!なんでこんな所にいるの?!」
「いやね・・・ベルと一緒に旅をしていたらフェレライについて怪しい人間にであって逃げたらこうなった」
「ちょ・・・マジで・・・?」
「うん、アーディこそどうしてここに?」
「私はオラリオの要請で、こっちに来たの・・・この船、モウのね・・・」
「・・・ッ!」
モウ、と言う言葉にアリーゼは驚嘆の声を上げる。あの二人組について思い出した。
「他にもリュー達も来ているから・・・良かったら合流した後会わない?」
そう言った途端アリーゼは暗い顔をする。アーディは心配そうにアリーゼを見つめる。
「どうしたの・・・?」
「ごめん、アーディ。それだけは出来ない」
「どうして・・・?」
「実は・・・」
アリーゼは全てを話した。あの後どうなったか。ベルがあの村の唯一の生き残りであること、ベルと旅をしたこと、そして自分をごまかしていること・・・全てを話した。
「そうか・・・色々大変だったんだね、分かった。私もあのこの前ではそう振る舞うよ」
「うん、ありがとう・・・」
そう言ってアリーゼ達はベル達の元に戻る。
「ローゼ・・・この人は・・・?」
「初めまして、ベル君。私はアーディ・ヴァルマ・・・ローゼから話は聞いたよ・・・大変だったね・・・」
そう言ってアーディはベルを抱きしめる。そのときわけも分からずだったが安心したのかまた泣き出してしまった。その様子にシックスもベルのそばによる。
「ありがとう・・・」
暫く泣き続けた後ベル達はとにかくこの状況をどうするか考えていた。
「まず、ここの脱出よね・・・一体どうすれば・・・」
「扉は閉まっているし、かといってむやみやたらに動くのは危険、だけどここも安全というわけではないし・・・どこか抜け道は・・・」
そうなやんでいた末にアリーゼたちの沈黙は続く。その時シックスが何かを見つけた。
「これって・・・」
それは抜け道だった。ちょうど人一人はいれるくらいの大きさだ。
「これなら・・・」
そう言ってシックスは穴に入る
「うん、いける!」
「でかしたわよ!シックスちゃん!!」
「エヘヘ」とシックスは少し照れながらも穴に入っていく。それに続くようにベル達も入っていった。
この先の悪夢も知らずに・・・
「チッ!!レディの刺客か!!」
「侵入者は排除だ」
輝夜、ライラ、リューはアーディと分かれた後モウの地下らへんを捜索していたが突如あの二人組の男女だった。
「クソ・・・ッ!こいつら、攻撃があたらねぇ!!」
「闇で出来ているのでしょうか・・・そんな感じがします」
「この程度ですか・・・」
「チッ!!なめんじゃねぇ!!」
そう言ってリュー達は攻撃する。・・・がそれも全然効かない。二人組は闇に消えてしまった。
「終わりだ・・・ッ!」
そう言って女の方はリューに剣を振るう。
「リオン!!」
「チッ!!」
しかし、何とか輝夜が受け止める。そこでライラが女方に武器を振るう。
「輝夜・・・ここは・・・」
「ああ、撤退だ」
そう言ってリュー達は退却の準備をする。
「させるか!!」
そこに男が斬りかかってきた。それをリューが止める。
「クソ・・・ッ!待て!!」
「走れ!!」
そしてリュー達は廊下を駆け抜ける。やがて明かりがある場所につく。
「ヤツは・・・」
ライラ達は後ろを向く。二人組の男女はいない。どうやら撒いたようだった。
「ハァハァ・・・」
全員息が上がっている。少し傷もついていた。
「何だよ・・・この船は・・・」
そう言ってリュー達は怪我の治療をした。その時だった。ある紙、いや写真が壁に貼ってあった。リューがそれを見つける。
「何でしょう・・・これ」
リューは写真を見る。
「指名手配?」
「犯罪者か?こいつ・・・」
「脱走者だってよ・・・」
そう言って全員写真の方を見る。上に名前がついていた。
「この子の名前って」
そこに書かれてあったのは・・・
「シックス・・・」
黄色のレインコートを着たシックスだった。
はい、ついに登場させました。リトルナイトメアの主人公、シックス。そして出ました、アーディとアリーゼと、再会です。ちなみにアーディはあの虐殺には全くの無関係です。これからベルと共にどんな結末になるかお楽しみにしていてください!