どうやらボクの親友が美少女たちをフルそうで   作:『テキスト』

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ある幼馴染みの場合

 

「あら、私が最後かしら?」

 

 本日、九回目の訪問者。黒色のツインテールの見慣れた彼女。ツリ目で気が強そうに見えるけど根は凄い優しい、彼女はそんな女性だ。

 

「この感じだと、全員フラれた感じね」

 

 机や椅子が整えられていない加味を揺らしながら彼女は言った。

 

 「あんたにはダッチワイフでも勿体ないくらいなのに」と肩をすくめて大げさに表現をしている。

 目は俺の馬鹿にするように見下していた。

 

 ……前言撤回、コイツは根も腐っているようだ。

 

「それで、最後まで待たされた可愛い私の告白を受けてくれるの?」

 

 可愛いって、自分で言うか?

 

「まあ、実際に可愛いからね。事実を言ったら悪い?」

 

 彼女は教卓の前まで歩いきながらおちゃらけているけど、まとっている最初から雰囲気はギラギラと真剣なモノだ。

 

「それでどうなの? 付き合ってくれるの?」

 

 太陽がなくなりそうで不安げな風が窓をカタカタと音を鳴らしながら揺れる。

 

 廊下への小さな窓の夕焼けが俺ら二人の姿を認知すると、暗い印象の空気にする。暗い空間。物語でいうと終わりが少しずつではあるけどすぐ側に迫ってきている。

 影も姿も俺からは彼女は大人に見えた。

 

 首を横に振る。

 

「あんた、まさか男色? 周りにあんなに女性をはびこらせて、それは流石に失礼じゃないの」

 

 イラッとして、眉間にしわが寄ってしまう。

 

「……分かってるわよ。そんな目で睨まないで頂戴。まったく全然変わってないじゃない」

 

 夕焼けで背伸びはしているけど、自分にも彼女にも伸びた影からは年相応の姿が見える。

 彼女も俺も変わっていないわけじゃない。変わらないだけだと改めて思う。

 

「で、言い訳くらいは聞くけど」

 

 何でも器用にできて、面倒見がよくて優しい。

 

「それで?」

 

 十人男がいれば九人は振り返ると思う。

 

「振り返らなかった残りの一人は?」

 

 それは俺だけど?

 

 そこまで黒板に書くと彼女は笑って、すぐに悲しんだ顔をする。

 

「まっ、あんたにしては上出来ね」

 

 強ばった顔からは一切変わらない。

 

「あの子が好きなんでしょ?」

 

 ……他の人にも言われたけどそんなに分かりやすいかな俺。

 

「はぁ」

 

 そんなに思いっきりため息を吐かなくても。幸せが逃げるよ?

 

「お互いに分かりやすすぎるから、私が身を引くって言ってるんじゃない。現実の両片思いなんて見てるだけで恥ずかしいわ」

 

 それは、すまん。

 

「後それから、ため息を吐いたくらいで逃げる幸せなんてこっちから願い下げよ」

 

 待ってくれ、これ。

 

 二つあるうちの赤い小さな花が沢山ついている方を彼女に手渡す。

 

「ま、あんたにしては良いプレゼントじゃないの」

 

 彼女は取っ手に手をかける。とっくの昔から手入れのされていない扉は今日だけで何回も開き閉めて、限界をむかえつつある。後もう数回で開くことも閉めることもできなくなりそうになるほどに。

 

 出て行く前に、体は振り返らずに彼女は思いっきり息を吸った。

 

「あの子を泣かせちゃ、ただじゃおかないんだから」

 

 息は放棄せずに言葉を全力で言った。

 

 分かってるよ。だから、そんな目で睨まないでくれ。

 

「……ふふっ、冗談よ冗談。そんな様子だと大丈夫そうね。それじゃあ頑張ってね二人とも」

 

 彼女が教室から出るとき、入れ替わるように一人の女性が入ってきた。

 顔は廊下から入る逆光で見えない。だけど不安そうな声に聞き覚えがある。

 

「……体だって殆ど無くなったのに、どうして彼女をフッたの?」

 

 その声を聞いて脳裏に浮かんだのは親友の顔だった。

 

 

「フラれちゃったかぁ」

 

 アイツと会話してから何分後の出来事だっただろうか。廊下から見る窓は夏とほど遠いくらいに夕焼けが早く来ていた。

 幼い頃は、三人で朝から遊んで夜になったら知識もないのに星を見て、よく親に怒られたっけ。

 

 クスリと一人で笑ってしまう。懐かしい、懐かしいけどもうあの頃のように無邪気に笑い合えないのかも。

 

「それにしても、バーベナね」

 

 キュッキュッと廊下を歩きながら手に持っている花を見る。可愛らしいリボンが巻かれていた。

 

 小さな赤い花びらが何個もある、可愛らしい花。

 ちょっと前に、花言葉をアイツが調べていた事もあったから

 

 意味は――家族愛。

 

 

 初めて会った日は何時だっただろう。会話したのは、優しくてされたのは。

 高校? 中学? いや、小学校の頃だ。一人ぼっちの私に声をかけてくれたのは。

 

『――ちゃんて、かわいくないよね』

 

『ホント、ホント。お誕生日の日だってむすっとし』

 

『……なに?』

 

『そういう所だよ』

 

 陰口を聞いた。

 冷たい言葉しか口にできない私は本当の事しか言われていないから、相手が幼いからの素直さで悪いわけじゃないことも知っている。

 

 両親だっていて、三人で特別貧乏でもないし幸せに暮らしている。私は笑えない、心の中では楽しんでいる。だから、笑えと無理やり言わない親が大好きになっていた。

 親は自分の理解者だって無意識に思っていた。

 

 それなのに、両親だって。

 

『何時もそんなつまらなそうな顔だとお友達できないぞ』

 

『そうよ、笑顔。笑顔を作らなきゃ』

 

 両親も何も分かってくれなかった。唯一の肉親にも理解されない私はどうすればいいの?

 

 悲劇のヒロインになりたいわけじゃない、心の悲しみを何処かにぶつけたくなって、それが余計に表情に出る。そうすればまた、私の周りからまた一人と消えていって、いつの間にか私は孤独になった。

 

 そんなときにアイツが私の前に現れた。

 

『不器用なだけだよ』

 

 そう、不器用なだけ。

 

 それだけなのに彼以外――いや、彼とあの子以外は気づいてくれる人はいなかった。

 

『ボクも友達がいないんだ。良かったら友達になってくれない?』

 

 その言葉を言ってくれる人を待っていたの。私の王子さまになってくれると、私の唯一の理解者になってくれていつかは、恋人になって結婚してくれると思っていた。

 

 でも、それは無理だ。アイツはあの子が好き。あの子もアイツが好き。これに私なんかが勝てるはずなかった。

 

 いつこの関係が終わるのかビクビクしていた。もし明日失礼な態度をとって今日みたいな幸せな日が唐突に終わってしまったら? もし、昔みたいに一人ぼっちなってしまったら? 今度はあの恐怖に私は耐えられるだろうか?

 

 私は気づいたら明日が怖くなってしまった。今日が好きでこの時間が一生続けばいいと心残り底から思ってしまうほど醜い人間だと。

 

 

 明日におびえる生活のどの日だろうか、図書室で一人で勉強していた時だ。

 

『せんぱい。勉強教えてくださいっ』

 

『私が? アイツじゃなくていいの?』

 

 中学の時からこの子はアイツの事を想っていたらしい。高校も同じ所に入学して、怖くて私にはできなかった同じ部活に入部して、友達も多いらしい。

 

 飾り気のない優しい子だ。私とは違うキラキラと濁り気が一つもない顔で笑う表情に羨ましく思ってしまう。棘が心を縛り上げる。この子に罪はない私が独りで痛がってしまっている。

 

『えー、あの人は数学は苦手じゃないですか』

 

 ブーブーと文句を言うためだけに口をくちばしみたいにしているのは愛嬌がある。

 

『……それなら、私じゃなくても』

 

『それにっ! 恋バナしましょうよコ・イ・バ・ナ』

 

 ああ、勉強は建前でアイツの事を聞きたかっただけか、落胆する自分に何を期待してたのだと呆れてしまった。

 私なんかに後輩ができるとでも思ったのかと。

 

『明日の放課後ヒマですか?』

 

『まあ、予定はないけど』

 

 いいさ。利用されるだけ利用されよう。アイツにはあの子がいるんだ、どうせ誰も勝てないし。

 

『じゃあ、私の家に放課後来てください。あ、お着替えも忘れないでくださいよ!』

 

『え? 着替え? ちょっと!』

 

 良く分からないまま、明日になって後輩の家に寄って。勉強をして流れでお泊まりになった。

 

『えー、せんぱいも思いますよね』

 

『えっと、そうね』

 

『えへへ、せんぱい温かい』

 

 ベッドの上で勉強していて急に私を抱きしめてきた。女性同士だとしてもその時は少し恥ずかしかった。

 そういえば、あの子以外の家に泊まったのは初めてこれが初めてだった。

 

『もう、ちょっと』

 

 いつの間にか無愛想な私に可愛い後輩ができた。

 

 

 思い出すのは、天文学部の部活の事だった。

 

『あはは、君も級友くんみたいに委員長なんて言うんだ』

 

 河川敷で一人で座っていた私の隣にクラスで委員長をしている彼女が座る。彼女も話したことはなかったけど天文学部に入っていた。、

 委員長と人の名前を呼び慣れない私はアイツが何時も言っている名称で口に出てしまった。

 

『――』

 

 えっ?

 

 アイツに委員長と言われる人は何を口すさんだのだろうか?

 夜の空に浮かび上がっている星の名前? それとも――

 

『下の名前』

 

 私の名前じゃない。それなら?

 

『あれ、クラスメイトなのに寂しくなっちゃうよ』

 

 彼女の名前だった。

 知らなかったわけじゃない。ただ、私が口にすることはないと思っていただけ。勿論どんな言い方だって言い訳にしかならない。

 

『あんまり話したことなかったけど、その。友達になりたいんだ』

 

 彼女もアイツの情報を聞きたかった。

 表情を変えないようにしていたのに、暗い表情をしてしまったのかもしれない。

 

『あっ、別に級友くんの情報を聞きたいとかじゃなくてね?』

 

 じゃあなんで?

 

『はじめはさ。何時もむすっとした顔して付き合い悪そうだなって、思っちゃったんだよね』

 

 それは私にも分かっている。だから、アイツ以外とはなるべく関わらないようにしていたから。

 

『だけどさ、級友くんと話すときに貴女の笑顔を見て。ああ、彼女ってこんな風に笑うんだって、私は表面しか見えていなかったんだなって』

 

 それが普通なんだよ。だから気にしなくて良い。

 

『えっと、その』

 

 急に歯切れの悪くなった彼女に首を傾げる。何かを伝えたいみたいだ。

 

『えっと、と……だちに』

 

 ともだち。彼女はそう言いたいのか?

 

『友達になる?』

 

 私がそう言うとぱーっと彼女は明るくなって首を縦に大きく振りはじめ『なるっ!』と大きな声で言って他の部員に注目を浴びてしまった。二人とも恥ずかしくて顔を赤くしたのを写真に撮られ、渡されたときはお互いにまた頬を赤くしたのは今でも覚えている。

 

 委員長はこんな人だったのかとこの夜に、初めて知って衝撃を受ける。表面しか見ないのは私も同じだったみたいだ。

 

『今度の休みにショッピングでも行かない? きっと楽しいよ』

 

 友達が少なかった私はいつの間にか友達が増えた。

 全部全部、アイツのおかげで。

 

 ……やっぱり笑い合えるのかもしれない。思い出せば出すほど、アイツはアイツだ。

 心の何処かで求めていた言葉を行動をやってくれる。私一人じゃ友達も後輩もできっこなかった。

 よそよそしく接していたら余計にグイグイ来て、また私が特別な人間だと勘違いしそうになりそう。

 

 素晴らしいモノをくれた彼にもう、高望みも強請るのは幼馴染みとして失格になってしまう。

 私は胸張ってアイツの幼馴染みと言える人間になりたかった。

 

「素直になって、上手くやりなさいよ馬鹿ども」

 

 消えかけている彼の姿を思い出して、ぽたりと、手に流れ星が堕ちる。これは夜の星の前借り。

 彼が本当に手遅れになる前に。




人物データ

幼馴染み
 ツインテールツンデレの努力家。天文学部。
 抹茶とおせんべいが好きで自分でよく作っている。
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