大仏の兄は飄々としている   作:奈良の大仏

1 / 22
勢いで書いてます。
ヒロイン募集中。
アンケートで決める方針。


序章 大仏たいき
プロローグ


 ———その男はあまりにも浅はかで、あまりにも飄々としていた。

 

 

 

「みんなー、あそぼー!」

 

 甘ったるい変声期前の子供の声。

 何が面白いのかひどくニヤついたその笑顔は、誰彼構わずあたりを明るくさせる。

 それが自分にはない一種の才能なのだと自覚するには、当時の私ではまだ無理があった。

 

「すみません。私は別にみんなと遊びたくないので遠慮します」

 

 しっかりとした拒絶の言葉を放ったのはこれが初めてのことではない。

 多分同じクラスになってから両手両足の指では足らぬ程、このやりとりは繰り返した。

 それなのに男はニヤついた笑顔を消そうともしないで、私の腕をとりそのまま運動場へと引き摺り出す。

 迷惑。鬱陶しい。面倒臭い。嫌悪。負の感情が胸中に渦巻いては私の心を犯していく。

 その度に男は「ははは」と乾いた笑みを浮かべ私の気持ちを踏み躙って弄んだ。

 

 

 

§

 

 

 

「告白すれば?」

 

 そんな昔の事を思い出してしまう程、私から話を聞いて告げた言葉は簡素なものだった。

 男は私の顔をまじまじと見つめながら、初等部の時から変わらない童顔で笑っている。

 はっきり言うと神経を逆撫でされる表情。

 園児から「お姉ちゃんの胸は小さいね」と馬鹿にされた時並に腹立たしい。

 

「話聞いてた?」

 

 不満げな感情を表に出すためにも、私はわざと声に怒気を孕ませた言い方をする。

 普段であればそんな事を人前でしないのだが、目の前の男であればそれも気にしない。

 それに今この教室には誰もいないのだ。わざわざ外壁を作る必要も感じなかった。

 そのせいか彼は私の発言を冗談と受け取ったらしく、ぴしっとサムズアップして見せた。

 

「もちろん。つまりかぐやは御行のことが好きで、付き合いたいってことでしょ?」

 

 ……やはりこの男は何も人の話を聞いていなかったらしい。

 私が彼に話したのは「どうすれば会長が私に屈服するのか」である。

 そこに「私が付き合いたいと思っている」という願望は入っていなかったはずだ。

 仮に私の話を聞いていたとしても、それは当初の話から大分趣旨が挿げ替わってしまっている。

 だから、このバカにも分かるように話の軌道修正を行わなければならない。

 

「話を変えないで。私は会長が告白してくれば付き合ってあげても良いと思ってるだけ」

「それはつまり好きってことじゃん?」

「違うわよ」

「いや絶対に違ってないよ」

「違うっていってるじゃない!」

 

 はあはあと肩で息を切らせながらふと気がつく。

 告白してくれれば付き合ってもいいと思うのは、つまり好きであることの裏返しとこの男は言った。

 であれば逆説的に私に対してそう思っている会長は間違いなく私のことが好きなはず。

 結果、そういう状況に持ち込めばこの恋愛頭脳戦は私の勝利に収まるのでは?

 妙案が閃いたとしか言い様がない。

 

「ねえ。私、今良いことを思いついたの」

「あ、通報したわ」

「なんでよ!?」

 

 バンっと机を叩けば乾いた音が鳴る。

 男はそれを見てくつくつと面白そうに笑うと、わざとらしくスマホを仕舞い、一本の人差し指を目の前で立てた。

 これは昔から彼がよくする癖のようなもの。

 意味はその時によって異なるが、今回は少し落ち着けという意味なのだと私は察した。

 

「かぐや。周りくどいやり方じゃいつまでも進展しないぞ。良いのか?」

「あなたのやり方もダメでしょ」

「いや。俺はこれでも彼女いたことあるし」

「知ってるわよ。でも長続きしていないじゃない」

 

 そうこの男、幾人の女性と付き合ってはみんな長続きしていない。

 最短記録は何と脅威の30分。中等部の時に私に報告してきたから今でも覚えている。

 正直、それは交際としてカウントするのか微妙ではあるけど。

 

「でも経験はかぐやより豊富だ。その俺が言うんだから、君の意見より重みはある」

 

 ぐうの音も出ない正論とはまさにこのことを言う。

 私の恋愛観なんて所詮、今まで彼氏がいなかったモテない女とそう変わらないのだ。

 いくら私が我が物顔で弁舌したって、実のない話に価値はない。

 だからこの男が言っている「さっさと告れ」はある意味正解なのだろう。

 認めたくはないが、こと付き合うという目標に達する最短はその工程で間違いない。

 間違い無いのだが……。

 

「私だって……されたいもん……」

 

 自分でも何を言っているのか分からなくなるほど顔が熱りだす。

 タコが茹で上がるときのような、トマトが赤く熟したときのような、真っ赤な私の顔。

 水の入ったヤカンでもおけば、一瞬にして水が沸騰しそうなほどの熱量を帯びている。

 男はそれをケラケラと笑い私の肩を何度も叩くと、目尻に溜まった涙をそっと拭った。

 

「ういやつめ。あー、かぐやはめんこいのー」

「何よ、馬鹿にして」

「馬鹿になんてしてないわい」

 

 私の反論も話半分で聞き流し、わざとらしい爺さん言葉で男ははぐらかす。

 何年経ってもやっぱりこの男は変わらない。

 出会った時から今日に至るまで、この男は飄々としている。

 

「じゃあ、そろぼち時間だし行くわ。また明日な、四宮かぐや」

 

 男は腕時計で時間を確認しながら、机の上においていたカバンを手に取り立ち上がる。

 私もそろそろ生徒会室に行こうとしていたし、今日の談義はここまでのようだ。

 

「ええ、今日はありがとう」

 

 飄々としているからこそ私は彼との関係を続けられている。

 どれだけ距離を離そうとどれだけ刺々しく接しようと彼が全く気にしない人間だから。

 今では会長との関係性を真摯に聞いてくれる唯一の男性意見者。

 そして私が唯一誇れる男友達。

 

 それが———……。

 

「また明日。たいき」

 

 大仏たいきというムカつく男なのである。

 

ヒロインアンケート。

  • 大仏こばち(近親相姦ルート)
  • 伊井野ミコ(ロリコンルート)
  • 早坂 愛 (王道すぎルート)
  • 白銀 圭 (●学生 ルート)
  • 龍珠 桃 (天文部 ルート)
  • 子安つばめ(石ミコ推ルート)
  • 藤原 千花(巨乳好きルート)
  • 白銀 御行(ネタだからな!!)
  • 石上 優 (ばか、その先は地獄だぞ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。