大仏の兄は飄々としている   作:奈良の大仏

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早坂ぶっちぎりですやん。
最初はツバメ先輩が圧倒的だったのに。
今は白銀妹とミコちゃんが追い上げてきてはるやん。


アンケート集計終了はこれの次投稿した時にします。


四宮かぐやは決めてもらう。

 ひゅうと穏やかな風が吹く。まだ夏前ということもあり風は少し寒さを運んでいた。

 今日も今日とてこの教室にいるのは2人の男女のみ。

 それが最早このクラスで一般常識になりつつあるのか、この常識が覆ったことはない。

 開いた窓枠に腰掛けているのは大仏たいき。

 秀知院学園難題女子の1人、大仏こばちを妹に持つなんとも食えない男。

 そしてもう1人は秀知院学園生徒会副会長の四宮かぐや。

 半年前から気になる男ができた彼女は、時折アホになってしまう残念系美少女である。

 そんな彼女達が今日話していることと言えば、これまたどうしようもなく仕様もないことであった。

 

 

 

 

「とりあえずフリフリでも着ていけば?」

 

 たいきは黄金色に変わりつつある空を見上げながらそう呟いた。

 今日、私が振った話題は映画館に行くためには何を着ていけばいいのか、について。

 今度の休日、会長と”偶然”にも映画館でばったり出くわすため、その際何を着ていけば良いのか男目線からのアドバイスをもらおうと思ったのだ。

 しかし、彼はあまりその話題に興味がないらしく、先ほどから返ってくる言葉はどれも投げやりなものばかりである。

 

「フリフリってなによ。私こう見えてあんまり服について詳しくないの」

「まあお前の場合、使用人が決めてるだろうしな」

「ええそうよ。彼女、そういうのに詳しいから」

 

 彼の言う通り、私はこれまで自分の服を自分で買ったことなどない。

 そのため服についての勝手を知っている訳もなく、また流行の知識など皆無に等しい。

 今シーズンはどんなカラーが流行っているのか、着こなしは何がいいのか。

 下はズボンがいいのか、それともスカートがいいのか。

 服装について一度疑問を持ってしまえば、そこから抜け出すのは非常に困難であった。

 そのため貴重な男からの意見欲しさに、今日も私はムカつく男友達に相談している。

 

「てか今更だけど、別に御行と一緒に行くわけでもないんだろ?」

 

 ふと何か思い出したのか彼は私にそう尋ねた。

 

「当然。待ち合わせなんてしてないもの」

「え、じゃあ、待ち伏せするつもなの? 普通に引くわ」

 

 そう言って彼は大袈裟なジェスチャーで私を罵倒した。

 ふふっ、目の前にいるこの喋る無能は何を言っているのかしら。

 私は会長が素直に誘えなかったのを哀れんで、わざわざ会いに行ってあげる側。

 待ち伏せに近い事はするつもりだけど、本質的にはまったく違う行為と言える。

 決してストーカーや変質者の類などではない。

 それを彼のような無能にも分かってもらうため、私自ら優しく諭してあげましょう。

 

「少しは歯に衣を着せなさい。まだ海開きもしてないのに沈みたくはないでしょ?」

「いや、こえーし。海開きしても沈みたくねーよ」

 

 彼はそう言うと、ポケットからスマホを取り出してカタカタと何か操作を始めた。

 

「てか、かぐやは一般人として映画館に行った事あるっけ?」

「無いわ。あなたや早坂、藤原さんと見るときなんかも大抵貸切か家だもの」

「だよな」

 

 彼はそれだけを言い終わると、スマホを見せながらサッと人差し指を一本だけ立てた。

 これから何かをしようとするつもりなのかもしれない。

 

「さて問題です。映画館を見るときの一般的なマナーや、常識を貴方が知っているでしょうか?」

 

 そう言われて少しだけ考えてみる。

 私は生まれてこの方、一度も一般の人たちに紛れて映画を見たことがない。

 つまりそれは身内と見るときのルールしか知らないということになる。

 例えば目の前の男と映画を見たとき、彼は最後絶対にスタンディングオベーションをする。

 駄作であっても良作であっても、彼は関係なしに完成した作品自体を称賛する。

 それが一般的なマナーや常識かと言われれば違うと断言できるだろう。

 現に、一緒に見ていた当時(初等部)の早坂は面食らっていた。

 つまりこれは身内だけのルールみたいなもの。彼だけのルールということになる。

 ならば一般的なマナーや常識とは何だろうか。

 

「微妙なラインね。多分、分からないこともないと思うけど」

 

 まあ、結局そう答えるしかできなかった。

 もしかしたら自分の知らないところで一般的なマナーが潜んでいるかもしれないのだ。

 いくら四宮家の人間と言えど、私は全知全能の神では無い。

 知らないことは知らないし、分からないことは分からないのだ。

 こういう時は素直に認めるのが一番である。

 

「油断するなよ〜。チケットの貰い方とか座席指定とか、かぐやからすれば未知の体験がいっぱいだぞ」

「? このチケットを入り口で渡すだけでしょ?」

「ほら。もう間違えてる。それを受付でチケットと交換して、見るための座席を選ぶんだよ」

 

「ちなみにこれが座席表な」と言って見せてきたのはスマホに映った何列何行もの表。

 ざっと200人は収容できそうなそれに私は納得する。

 

「これじゃ一緒に受付しないと会長と隣同士で見れないわね」

「そゆこと。まあ、初心者なんだから最初はかぐやも誰かと一緒に行くべきだと思うけどな」

 

 そう言って彼はそのままスマホをポケットの中へと入れ込んだ。

 確かに、彼が行ったこと全て納得のいく話である。

 無知であることは恥でないけど、無知であることを許容するのは恥。

 知らずば人に問えとは、まさに良く言ったものだと思った。

 

「なら練習がてらこれでも見に行くわよ」

「え?」

「最初は誰かと一緒に行くべきなのでしょ? それとついでに当日の服装も選んで」

「わがまま娘か、お前は」

 

 彼の意見なんて聞かずに私はどんどん話を進めていく。

 どうせ彼はこれから部活に行くか、家に帰るかの二択なのだ。

 彼女も今はいないと言っていたし、何か問題になることなんてないだろう。

 それに、どうせ私と彼が友達というのは学園では周知の事実だし、下手に勘違いされることもない。

 ついでに早坂でも誘っておけば、久しぶりに3人で遊べる完璧なプランだ。

 

「そうと決まれば善は急げね」

 

 そう言って私は嫌そうな顔をする彼の背中を押して教室を後にする。

 昔とは対照的な図式。

 私が彼を押し出し、彼を無理やり遊びへと連れ出していく。

 なんだかそのあべこべな事実が面白くて、つい私は笑ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃の白銀……

 

「何時に行けば四宮と鉢合わせる? 何時に行けば四宮と鉢合わせる? 何時に行けば四宮と鉢合わせる? 何時に行けば四宮と鉢合わせる? 何時に行けば四宮と鉢合わせる?」

 

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