大仏の兄は飄々としている   作:奈良の大仏

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今回の地の分は、かぐや様のアニメのナレーションを意識しております。
あのボイスで脳内再生してください。


石上優はゲームをする。

 高校生とは青春を謳歌するための時期とも言える。

 アオハルともよく言われるこの時期に、色恋に興味がない男女は1人もいない。

 かぐや達の通う秀知院学園もその中の一つ。恋に頭を悩ませ、愛に心を踊らせる。

 そんな多感な高校生の中で、一際モテる男がいた。

 その名も、大仏たいき。

 親はどちらも超有名な芸能人。妹は秀知院学園が誇る難題女子の1人、大仏こばち。

 誰も彼もが見惚れる容姿を持っているこの男は、まさにモテ男と言っても過言では無かった。

 今まで付き合った秀知院女子生徒の数、なんと9人!

 今まで告白してきた秀知院学園女子生徒の数、なんと100人オーバー!

 秀知院が幼稚園から大学までの一貫校であることを鑑みれば、この数は脅威でしかない。

 あの大仏の友達、サッカー部エースの神童くんもこれにはびっくり。

 しかし、この異常なモテ度には実はからくりがあったりする。

 それがこの学園に存在する2つのピラミッドのうちの1つ、家柄によるピラミッド。

 ここ秀知院学園はその99%が金持ちの子息・令嬢によって構成されている。

 順位としては上から、「特級階級」「各界トップ」「官僚、宮仕え、大企業の役員」「医者、中小企業の社長、プロスポーツ選手」「外部入学(一般人)」。

 つまり、芸能人が親である彼は秀知院の中では実は下の方の身分なのだ。

 となれば必然、他の階級の女はこう考える。「あれ、これいけそうじゃね?」と。

 その手頃そうに見えるところから、この男、表面的に好意を寄せられることが多いのだ。

 実際、すごいモテるくせに本人にまでその好意が届いていない人間などざらにいる。

 例えば彼の妹を含む難題女子とか、四宮かぐやなんかもその部類と言えるだろう。

 それに引き換え彼に対する好意は向けやすい。

 だって彼女が9人もいたのだから、フラれない可能性が高いのだもの。(母数が多いことを誰もが無視をするけど)

 となれば必然、彼にはこういった話も舞い込んでくる。

 

 

 

「先輩、誰か僕に女の人紹介してくださいよ」

 

 女の子の斡旋!

 男だけの飲み会や、カラオケなどで女の子を呼びたい時、「お前モテてるからお前が呼べよー」とか「女友達多いからよろしく」と言われる時の、あれである。

 当然、大仏たいきもこういった話はよく舞い込んで来る。

 彼からすれば、そんなの自分で探せと言いたいのだが、それよりも思うことがあった。

 

『いいけど。優は俺が紹介する女の子でいいの?』

「あー……」

 

 石上優はそれを聞いて言い淀む。

 それもそうだ。今たいきが言ったのはつまり言い換えるとこういうことになる。

「俺が紹介する女って、つまり俺目当ての女が大半だけど、俺と競って勝てる?」

 普通の男が言えばただの嫌味だが、この男が言えば圧倒的強者の自信である。

 モテる男が紹介するということはつまりそういうこと。

 これが、女友達が多いだけの奴ならば話は別であったが、相手は秀知院学園高等部の女子、凡そ1/3から告白されている強者。

 そんな男と競おうとするほど、石上も馬鹿ではない。

 

「やっぱりさっきのは無しでお願いします。先輩と比べられたら堪りません」

『懸命な判断だなー』

「蟻と象が争うようなもんですよ」

『どちらかといえば、チーターと亀が競争するようなもんだな』

 

 そうやってくつくつと笑うたいき。

 反面、石上はそんな彼の反応に呆れながら、ちょうど今キルされた自分のクリプトを眺めてさらに深いため息をついた。

 

「すみません。階段上で殺されました。1パ来てますね」

『お、まじか。とりまバナー回収するわ』

「いざとなったらアイテム漁ってください」

『おけますー』

 

 そうやって呑気に返事をするたいき。

 石上は死んでしまったため、彼の操るデブったレイスをぼーっと眺めていた。

 

「そういえば、先輩って今シーズンK D(キルレ)どれくらいですか」

『んー? あんまし確認してないけど、多分6とか5くらいじゃね? いつも通りなら』

「野良パでもやってるくせによく保持できますね、それ」

『まあ、周りが化け物多いからな』

「ああ、確か藤原先輩と同じ部活の人でしたっけ」

『そう、寺島さん』

 

 そう言って思い出すのは一回のマッチで20人キルしていた女性。

 今年度行われるF P Sの大会に出るとか言っていたし、あれは自分とは別次元の存在だと石上は感じた。

 ちなみに彼の中ではもはや崇拝対象になりつつあったりする。

 

『あー、撃ち負けたすまん』

 

 そう言ってコントローラーから手を離す音が聞こえた。

 石上が画面を覗いてみれば、そこには3人の敵がレイスのデスボックスを弄っている。

 どうやらこの3人に取り囲まれて射殺されたらしい。哀れなり。

 

「仕方ないですね。3対1で勝つ方が無理ですし」

 

 石上の言う通り、3人に取り囲まれて生き残れるのは人力チーターくらいである。

 普通は上手く遮蔽物などを入れて、できるだけ1対1に持ち込むのがセオリーだ。

 3人同時に相手する輩は、それこそ馬鹿か最強である。

 レイスのウルトでも使って安全に引かせてほしい。

 と、そんなゲームの話はいいとして石上にある質問が投げかけられた。

 

『前から気になってたけど、なんで優はそんな彼女が欲しいの?』

 

 それはモテない男達からすれば地雷を踏み抜く一言。

 彼女持ちに言われると腹が立つ言葉ランキング堂々の1位!(嘘)

 それを大仏は最も容易く言い放つ。が、逆に石上も冷静になった。

 確かになぜ己が彼女を欲しているのか、それを明確な言葉へしたことが無いからである。

 そのため石上は少しの間考えてみる。己の欲求がどこから来るものなのか頭を働かせる。

 

「まあ……、僕だって多分誰でも良いから付き合いたいとか、童貞捨てたいから付き合いとかそういうのじゃないんですよ」

『……』

 

 ぽつりぽつりと語りだす言葉。それを大仏は黙って聞く。

 

「でも、リア充っていうんですか。恵まれてる奴らっていうんですかね……。そういう人たちを見てたら、ああこれが幸福なんだろうなって思うんです」

『まあ、満ち足りてるもんな』

「そうなんです。だから僕もその気持ちを味わってみたいんだと……そう思いますね」

 

 言葉にして気がつく自分の思い。

 それと同時に湧き上がる、「めっちゃ恋人」欲しいという欲望。

 今の彼であれば、どんな女が相手でもロミオとジュリエットの関係のように燃え上がるだろう。

 さっきの「誰でもは良くない」「童貞を捨てたいからじゃない」という言葉に突然嘘が芽生えた瞬間である。

 

『じゃあ、そこまで言うなら1人紹介してやろうか』

「っ、まじっすか!!」

 

 石上の感情の変化に気がついていない大仏は、普段は絶対に言わないセリフを口にした。

 つられて石上は立ち上がる。この先輩から紹介される女子など絶対ランクが高い。

 下の下みたいな地雷女子を紹介することもなければ、中の下のような中途半端な女を紹介されることもないだろう。

 石上はそこに安堵する。

 まあ、こんな考え方をしているやつに彼女なんて一生できるはずないのだけど。

 

「ちなみにどんな子ですか?」

『んー、真面目で人の話をきちんと聞いてくれる子』

「あえて外見は聞きません。その子でお願いします!!」

『うぃー。優も知ってる子だから、すぐに引き合わせられるよ』

 

 と、そこまで聞いて石上は嫌な予感がする。

 今、彼はなんと言った? 石上も知っている子と言った。

 さてはて、何をもって知っていると言っているのか。

 その定義にもよるのだろうが、石上はそこで自分が一番嫌な答えをあえて導き出す。

 

「先輩、聞きたいんですけど」

『んー?』

「それって、もしかして”い”から始まって”こ”で終わる女子ですか?」

『あ、分かったか? 相変わらず勘がいいな』

「よし、ちょっと今から先輩の家に火をつけにいきますね。まだまだ夜は冷えますし」

 

 そう言ってヘッドホンを外し、乾電池とアルミを用意すれば大仏からスマホに着信が入る。

 プレステの方で通話をしていたため、スマホからの通話は可能なのだ。

 石上はそれに出るか一瞬、真剣に迷ったものの、流石にやりすぎかと思い通話に出る。

 

「なんですか」

『流石に悪かった。もうしない』

「分かればいいんですよ。次はないですから」

 

 そうやって石上が告げれば、大仏はからからと笑う。

 絶対にまたやるわこの男。石上はそう確信した。

 

『はいほーい。でもミコの素って結構可愛いんだぜ。優も見たら分かるよ』

「そんなに言うなら先輩がもらってあげればいいじゃないですか。伊井野もそれなら喜びますし」

『俺? 俺はs———……』

 

 と、そこまで言った瞬間に通話が切れた。

 石上は毎度のことか、と慣れた様子でスマホの画面を暗くしゲーム画面へと向き直る。

 電話回線を使った通話はインターネット回線を使ったLINE通話よりも優先される。

 設定を変えていない限り、この常識は覆されることがない。

 そのため大仏は、仕事や友人の関係上などから普段の優先順位の低い通話はLINE。

 優先度の高い電話は全て通常電話で行っている。

 多分、LINE通話が上書きされたと言うことは、今頃、いつもの後輩かLINEを使えないかぐやにでも呼び出されたのだろう。

 あと10分くらいは帰ってこないなと予想した石上は、一旦通信を切って野良パと1マッチ行うことにした。

 

 

 とまあ、そんな感じで30分くらい時間を潰していると……

『悪い悪い、仕事の話してたわ。合流する?』とプレステに繋いだヘッドホンに声が通る。

 

「大丈夫ですよ、今全滅させられましたから。僕がそっちに入り直しますね」

 

 そうやって全滅の文字と戦闘ログを適当に見終えると、ロビーに戻って合流する。

 すると見慣れないアカウントが1人、既に大仏とともにロビーで待っていた。

 

『あー、すまん。なんか勝手に入ってきてたんだわ』

『はろはろー。石上くん? だっけ。元気にしてる』

「その声はまさか……」

 

 それを聞いた瞬間、石上の脳が一気に覚醒する。

 天使の息吹。妖精たちの歌声。

 どう表現すれば良いのか分からないほどの激情に、石上はつい声を荒げてしまう。

 

「テラ子さん!!!」

 

 それは、石上の崇拝対象であった———。

 

『あははは、喜んでくれた。ほら、大丈夫だったでしょ、たいき』

『いや、いつも勝手に入らないでって言ってるじゃん』

『それは無理だよー。昨日私とマッキーの誘い断ったんだから、これくらいはね』

 

 T G部所属、秀知院学園3年生の寺島先輩。実は校長の孫だったりする、すごい人。

 そんな彼女がケラケラと笑いながら、この男臭いパーティーに入ってきたのだ。

 まさに紅一点。荒野に咲き誇る一輪の花。愛でる対象はただ一つ。

 これは流石の石上もテンションが爆上げ状態。

 クラブでダンスしている陽キャにも負けないくらいのハイテンションを叩き出す。

 さっきまで女を欲していた男というのは、この程度で喜んでしまうのか。

 

『よーし、じゃあ今日は5連ちゃんぽん取るまで寝れまテンしよっか』

『いや、俺は先に寝るぞ。オフの時は0時回ると活動限界迎える』

「貧弱ですね、先輩。僕は今メガ子さんのおかげで1日が48時間になりました」

『あはは、何それ面白いね。たいきが落ちたら石上君、2人で頑張ろっか』

「はい、喜んで!!!!!」

 

 こうして男2人と女1人の戦いは幕を開けた……。

 

 最終的な結果は9回中、7回ちゃんぽん。

 彼らが就寝したのは朝の6時である。

 ちなみにこの時の石上は、鬼神の如く力を発揮できたとか、なんとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プレイ中。

 

「うるせぇバーカ!! あたんねぇーんだよ、バーカ!!!」

((エンジンかかってんなー……))

 

 石上のエンジンは女の子1人で容易くかかることが分かった2人であった。

 




次回は早坂回
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