「シャトルの中はまるで地獄でしたよ・・・・・・」
サイド7に到着しへたりこんだサワユキは出迎えの入港管理官にそう愚痴った。管理官は同じように疲れ果てた移民達へ黙々と飲食を提供した。その顔には哀れみと侮蔑が入り交じっていた。
大歓声と流麗な演奏に背中を押され、胸躍りつつシャトルに乗り込むと、まずエレベーターに案内された。誰かが「エレベーターガールが見当たらないな」とジョークを言い、皆愉快に笑った。しかしエレベーターのドアが開くとそこは座席をギッチリ並べてある以外に何もない殺風景な空間であった。外の歓迎ムードとはまるきり反対の異様な空間に移民達はエレベーターから出るのをためらっていると、エレベーターの壁が動き出し彼らを強制的に押し出した。座席には各自の移民番号が張り出されていた。そこに座るとアナウンスが流れ出発時刻までに座って待つこと、指示に従わず事故が発生しても連邦政府は何ら責任を負わないことがアナウンスされた。
あまりにも無機質な通達に移民達はどよめいたが、もはやまな板の上の鯉に過ぎず、不安げに待機するしかなかった。
窓がないため地球の光景に別れを告げる事もなく、シャトルは無情にも打ち上げられた。
宇宙空間に入るとシャトルの共有スペース開放が告知され移民が殺到して芋洗い状態となり、かえって疲労が増した。
結局、移民達の大半は座って寝て過ごし、ようやくサイド7へ到着したのであった。
「何なんですか! あのシャトルは!」
サワユキはサイド7の港で一息つくと入港管理官に食ってかかった。
「僕のような善良な地球市民にふさわしい待遇とは思えないですが!」
怒るサワユキを見て、移民達もそうだそうだと同意し、港内には俄かに不穏な空気が漂う。
「勘違いするな! 貴様等は移民ローン契約をした宇宙移民だ!」
突如現れた連邦軍人の一喝に、移民達が静まり返る。
「大方地球の移民局員のおべんちゃらに乗せられてやってきたんだろうが、ここはそのようなユートピアではない! まずそのことを胸に刻め! これからは移民ローンと呼吸税と大地税を常に頭の中に入れて生きるんだな」
「呼吸税って、ほとんどかからないんじゃないのか?」
「大地税ってなんだよ?」
「フン、そんなことも知らんのか。大地税とは宇宙における大地即ちコロニーの維持費だ。呼吸税とは人工の空気を消費するおまえ等に当然支払い義務があるし、そう安いものでは勿論ありえない」
「移民ローンって、俺たちは移民を頼まれてしたんだぞ? なぜその費用を払わなきゃならん」
「黙れカスども! 貴様等は先行して宇宙移民する勇気もなければ、自ら費用を払う財産もなく、ただこれまでダラダラと地球にしがみついていた地球の蚤!そして二流のスペースノイドだ! これからはこのサイド7駐留連邦軍の軍属として基地建設にこき使ってやる。怠けると給金を払わんからな! 呼吸税を払えん奴は息が出来なくなるぞ! 大地税を払えん奴は宇宙に放り出すぞ!」
連邦軍人の脅しに悲鳴が上がるも、サワユキはそれ以上に大声を張り上げた。
「ふざけるなっ! そんな蛮行を地球連邦市民にして良いと思っているのか! 連邦憲章違反だ!!」
「ククク・・・・・・バカが・・・・・・貴様等はもう地球市民権を喪失しておる・・・・・・よって連邦憲章も宇宙移民者としてのそれしか適用されん! そして合法になるのだ!」
「な・・・・・・ば、バカな・・・・・・」
「今まで地球で働かず惰眠を貪ってきた貴様等に対し当然の報いだとは思わんか? 貴様等の飯は宇宙移民者が働いて納めた税でコロニーの中で作られたものだ。今度は貴様等がそうする番だ。全くの自業自得だよ。」
地獄の後もまた地獄、コロニーはユートピアではなくディストピアだと、サワユキは絶望したのであった。