ニートだが宇宙世紀を生き延びたい   作:池横

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第3話

サイド7

連邦軍基地建設予定地

 

サイド7に最近到着した宇宙移民者――打ち上げセンターの名前を取ってタネガシマと呼ばれた――は全員が連邦軍基地建設に従事する軍属となっていた。港で連邦軍人が叱咤した通り、彼らには勇気も財産もなかった。そんな彼らには黙々と過酷な建設作業をする他なかったが、それで得られる労賃は僅かでコロニー諸税に消えていった。それでも抵抗しないのは連邦軍人の呼吸禁止と宇宙追放の脅迫が彼らを恐怖させていたからだった。

「だいたいよ、なんで俺らがこんな肉体労働しなきゃならないんだ。地球じゃほとんど機械が自動でやってたじゃないか」

「しらないよ、宇宙じゃ機械が足りないんじゃないの」

「まぁ、効率が悪くてもやらないよりはマシなんだろ。俺らは無駄飯食らいと思われてるし、少しでも働かせたいんだろうぜ」

「それで事故死したら余剰人口も減って一石二鳥だな」

自虐して笑い合う移民達であった。

「おい! そこのタネガシマども! しっかり働かんか!!」

笑い声を聞きつけた連邦軍人の監督が飛んでくる。蜘蛛の子を散らすようにタネガシマ達は逃げていった。

「フン、タネガシマの連中はすぐサボる! クズぞろいだ。クズと言えばあいつはどうしている?」

「はっ! 未だ営倉で反抗しております」

「チッ・・・・・・奴はクズの中のクズだな。本当に殺ってしまうか」

「そ、それは・・・・・・流石に不味いかと。サボタージュを理由に死刑は周囲が・・・・・・」

「・・・・・・私にいい考えがある。ついてこい」

 

営倉

「起きろ、サワユキ・ドウナイ」

サワユキは壁を向いて横になっていた。看守の呼びかけにも応えず背を向けている。

サイド7到着後、サワユキは監督官と揉めた。宇宙移民者の権利を認めない連邦憲章自体が無効だとゴネたのである。連邦憲章より天賦の人権が上だと暴れて営倉入りとなった。

「起きろと言っている!」

看守は怒鳴りつけるがサワユキは動じない。ニート歴が長いため狸寝入りはお手の物である。

「いい、いい・・・・・・サワユキ君、少し話せないかな?」

猫撫で声で話しかけてきたのは港で揉めたあの連邦軍人の監督官であった。

「実はね、我々は君の強い精神に敬意を持っているんだよ。だからここから出してあげたいんだ」

サワユキは少しだけ体を揺すり、聞いていることをアピールした。無論、都合が悪くなれば狸寝入りを継続するつもりである。

「しかし、無条件で釈放と言うわけにはいかないんだ。他の人々に示しがつかないからね。だから、一日だけ労働してもらうというのはどうだろう? ここらで手打ちにしようじゃないか」

が、サワユキは無視した。サワユキからすれば一日でも働きたくないのである。

「・・・・・・下手に出ていれば調子に乗りおって! 聞こえているんだろう! この穀潰しめが!!」

監督官は怒り出し鞭をしならせながら営倉の中に入ってきた。たまらずサワユキも身を起こす。

「営倉で鞭打ちも、連邦憲章違反――」

「黙れッ!」

監督官はサワユキを鞭で打った。

「ぎゃあっ! このクソジジイ!! なにが一日だけ労働だ! どうせその時に事故死させるつもりだったんだろ!!」

「黙れ! 黙らんか!!」

「監督官殿! それ以上はまずいです!」

感情に抱き抱えられるようにして、監督官は営倉から出て行った。サワユキは鞭の痛みに耐えながら、あらんかぎりの罵詈雑言を監督官へ向けたのであった。

 

何日か経った後、サワユキは釈放された。同時に連邦軍との軍属契約も強制解除されたが、元々働くつもりもなかったので気にならなかった。しかしコロニーでは地球と違い生活保護という制度はない。そして建設後時間のたったコロニーならともかく、まだ新造といえるサイド7にはスラムもなくホームレスをすることも出来なかった。このままでは飢え死にするか食べ物を盗むかそれで捕まるかの未来しか見えない。

悩みながら歩くサワユキの前に、少年少女が通りすがった。

「おいフラウ、あれって噂の・・・・・・」

「ハヤト! 人に対してあれだなんて失礼でしょ」

「でも、あの人税金も払ってないんだぜ」

「何か事情があるのよ」

「軍で働いてたけど、サボってクビになったんだってよぉ。な、サワユキさん?」

「・・・・・・・・・・・・」

サワユキは突然話しかけてきた不良の少年を無視した。いじめられた経験があるので不良は嫌いである。

「おいおいおい、無視すんなってのぉ。俺、カイ・シデンってんだ。あんたのこと、けっこう気になってんだぜ。あの連邦軍に反抗したってんで、サイド7で噂になってるぜ。俺も連邦軍の生意気な兵隊が嫌いだからよ」

「・・・・・・・・・・・・」

サワユキは無視して通り過ぎていった。正直嬉しかったがコミュニケーション能力がなく、どう答えたらよいかわからなかったのである。

「ちぇっ、つれないやつだことで」

「カイ、危ないわよ!」

正直あの少女のことは可愛いと思ったが、今更どうしようもなく、離れていった。

さらにあてどもなく歩いたが、とうとう腹が減って動けなくなった。

働くくらいなら死んだ方がいいと思ったサワユキはその場で横になり、寝た。幸いコロニーは気温が一定に保たれているため寒くて眠れないという事はなく、保釈初日は野宿となった。しかし、寝るサワユキを影から観察する一人の人物がいるのであった。

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