「うわぁ・・・・・・くっさぁこの男・・・・・・でもノルマは足りないし明日出発・・・・・・仕方ないか。ねぇ! ちょっと起きなよあんた」
「・・・・・・」
「いや、寝たふりしてもバレバレだから。今明らかに私のこと見たよね」
「・・・・・・なんだおまえ」
いくら調整された気温が保たれたコロニーの中とはいえ、着の身着のままの野宿は寒い。サワユキは河原で横になっていたが体を起こし、いきなり話しかけてきた怪しげな女を睨みつけた。
「言っておくが僕は働かないぞ。僕は間違っていない、連邦憲章が間違っているんだ」
「あたしもそう思ってるよ」
そう言って女はサワユキとやや離れた場所に腰を下ろした。それはようやく自分の理解者が現れたと思ったサワユキを若干傷つける行為であった。
「ふん、言葉では何とも言えるさ!」
「あんた、ジオン・ズム・ダイクンの名前は聞いたことある?」
女はサワユキの発言は無視して尋ねた。これもまたサワユキの誇り高きプライドを傷つけるものであり、自分を愚図とバカにする妹を連想させて腹が立った。
「知ってるよ! 宇宙に出たらエスパーになれるとかほざいてたキチガイのことだろ」
女は顔色を一瞬変えたが、闇夜に紛れてサワユキが気づくことはなかった。そして女は静かな声色を使った。
「・・・・・・人じゃなくて、国の方は知ってる?」
「あぁ。地球圏の隅っこで貴族ごっこを始めたバカの国だろ」
今度は顔色を変えず、逆に笑顔で女は応えた。
「アハハ、そうだね。アンタそこにいってみる気はない?」
「は?」
余りにも突拍子な言葉にサワユキは呆れた。
「なんで僕があんなクソ田舎の野蛮な国に行かなきゃならないんだ。だいたい君は何者だよ」
「アタシはバカで野蛮な国の貴族で、アンタみたいな連邦嫌いの人間が好きなのさ」
「な・・・・・・!?」
「ジオンはまだ生まれたてのこどもみたいなもんさ。なにもかも手が回っていない。そこでアンタみたいな地球生まれのエリートさんの手を貸してほしい」
そこで女はサワユキの手を握った。怖かったので女の顔を見ていなかったのだが、よく見ると気の強そうだが幼さの残る可愛い顔をしている。そして暖かく柔らかい手だ。サワユキは途端に頭が回らなくなった。
「どう? 協力してくれるかい?」
「う・・・・・・うむ・・・・・・」
このままハンガーストライキをしていてもいいが、野蛮国家を文明の光に導いてやるのも悪くないとサワユキは思った。
「よかった! じゃあこれ、ジオン行きのチケット! 出発は明日だけど、別にいいよね! アタシはやることがあるからまた! シャトルで待ってるわ!」
「え?・・・・・・ちょ・・・・・・!」
そう矢継ぎ早に言うと女は足早に立ち去っていった。
サワユキは呆然として、後からまだ名前も聞いていないことに気づいたのであった。
あー臭かった!!
手もベタベタしてたし最悪!!!
早くホテルに戻ってシャワー浴びたい!
でもその前に国へ電報打っとかないと・・・・・・あの男は何の特技もなさそうだし、ただの輸送兵って事にしとけばいっか。
これでようやく我が家に課せられた軍役兵数も達成出来そうね。いくら総動員で人的資源が不足してるからって、頭数を揃えるためにサイド7なんてクソ田舎くんだりまで来る羽目になるなんてあり得ない!
もう二度と来ないわ!こんなところ!!