無職転生 - SSでも本気だす -   作:イルキ

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第10章 青少年期 新婚編
第九十七話「披露宴・終了」の後のお話。(本文約9,200字)


俺とボクの15歳の誕生日 前編

俺は16歳で結婚した。

 

前世では、結婚とは無縁の生活をしていたこともあって、

今がかなり幸福に思える。

 

結婚相手はシルフィエット。

俺はシルフィと呼んでいる。

ブエナ村の幼馴染で俺と同い年だ。

7歳のときに離れ離れになって、

15歳の時にラノア魔法大学で再会出来た。

 

ちなみに彼女は就職している。

アリエル王女の護衛という仕事だ。

前世の俺とは大違いだ。

 

仕事中、彼女は男装をして彼になる。

そのときの名前は、フィッツ。

俺は、フィッツ先輩と呼んでいる。

彼はアリエル王女の力の象徴であり、

無詠唱魔術を使って一言も喋らないことから、

「無言のフィッツ」と呼ばれていた。

 

俺は約1年、彼の正体に気付かなかった。

色々、理由があって気付かなかったのだが、俺は自分の鈍感さを自覚した。

 

そしてある日、正体を明かされた。

 

そこで、彼女から告白され結婚することになったのだ。

同時に、俺の病気も彼女に治療してもらい、

2年間に渡る闘病生活は幕を閉じた。

 

終わりと始まりが同時に来た、そんな感じがした。

 

 

結婚後、彼女の名前はシルフィエット・グレイラットになった。

 

シルフィは自分の名前に俺の名字がついたのが嬉しいらしく、ご近所さんに「グレイラットさん」と呼ばれると、よく俺にはにかみ笑いをしつつ自慢してくる。

 

アリエルに「シルフィエット・グレイラット」と呼ばれたときは飛ぶように驚いていた。

 

そんなシルフィの姿を見て、

俺も結婚出来たことが嬉しくなる。

 

 

俺とシルフィの夫婦仲は今の所、良好だ。

もちろん、夜のほうもね。

 

今が幸せだからか、特に不満もない。

 

ただ、結婚してそろそろ1ヶ月経つが、

彼女の従順っぷりには少し驚かされている。

 

家でのシルフィは従順だ。

俺のやりたい通りにやらせてくれる。

俺がうっかり変態的な言動をしてしまっても、

彼女は応えてくれる。

もちろん、彼女が嫌がることはやらない。

 

だが、俺はシルフィに何もしてあげられていない。

むしろしてもらってばっかだ。

 

それが嫌というわけじゃないが、

俺もシルフィも物じゃない。1人の人間だ。

シルフィにも、きっとやりたいことがあるはずだ。

 

俺はそう思いつつ、

シルフィにやりたい事を聞いても、あまり成果がない。

 

それどころか、

俺はシルフィの甘い言葉に理性をぶっ壊され、

何度も好き放題してしまっている。

 

この前もやりたい事を聞くと、

潤んだ瞳で「ルディはしたくないの?」なんて言ってきた。

そりゃあ、俺だってしたいけど、好き放題してしまうのはまずいと思うんだ。

 

ちなみに、それを聞いた時の俺は、

シルフィを寝室に連れ込み、好き放題してしまった。

 

やはり、俺はシルフィから色々と貰ってばかりに思える。

 

ん? 貰う、か。

 

 

そういえば、俺は10歳の誕生日プレゼントとして、

杖とシルフィが作ったペンダントを貰った。

 

シルフィは10歳の誕生日に何を貰ったのだろうか。

 

俺は気になって夕食の時、シルフィに聞いた。

 

「なあ、シルフィエットさんや」

「なんだい、ルーデウスさん」

「シルフィは10歳の誕生日の時、何を貰ったんだ?」

「え、んーと、白のワンピースだったよ」

「へ、へぇー」

 

シルフィが白のワンピース!?

ぜひ見たい。

 

「あ、でも、一回しか着てないんだよね」

「それは勿体ないな。でもなんで一回だけ?」

「えっと、その、ルディに見てもらいたくて、汚しちゃいけないから大切に保管してたんだよ」

「そ、そうか」

 

シルフィがはにかみ笑いをしつつ、耳の裏をポリポリかいている。

これは、フィッツ先輩のときからやっていた仕草だ。

俺はこの仕草が好きだ。

 

あのときは、この仕草を見ても俺にはどうすることも出来なかったが、今は夫婦だ。

しかも、隣り合って座っている。

ならば、やることは1つ。

 

「ひゃあ!?」

 

耳舐めだ。

 

「もうっ、ルディ! 今は食事中なんだから邪魔しないでよ」

「ごめん、シルフィがかわいくてつい」

 

話が脱線してしまった。

主に俺が原因だが。

 

だがそうか、白のワンピースを俺のために大切に、ね…。

 

「コホン、それで白のワンピースは今どこに?」

「え、……転移事件で消えちゃったよ」

「あ、そっか」

 

シルフィは苦笑いしていた。

落ち込んでいるようにも見える。

 

まったく、転移事件を起こしたやつは許せないな。

シルフィの白のワンピースだけじゃなく、それを見る機会まで奪いやがって。

許すまじ。

 

「ルディは何を貰ったの?」

「あの杖とシルフィから貰ったペンダントだよ。

シルフィからのプレゼントは、だいぶ後に貰うことになっちゃったけどね」

「そっか。今もペンダント着けてくれてて嬉しいよ」

 

シルフィは俺の胸のあるペンダントを見ながら、そう言った。

 

俺はシルフィが作ってくれたペンダントをいつも身に着けている。

というか、リーリャから受け取ったときから、あまり外したことがないな。

 

俺は最初、このペンダントがシルフィの作ったものだとは知らなかった。

 

渡してくれたのはリーリャだが、

当時は彼女もシルフィの安否を知らなかったため、

俺が悲しまないようにと隠していたのだろう。

 

だが、シルフィに告白されたときに、

本人からそれを作ったのは自分だと伝えられた。

 

「それ作るの大変だったんだー」

「そうなのか?」

「うん、最初に普通の木から形を作って、模様を彫ってって感じでやってたから、何回も手をケガしたし、ほぼ毎日それ作ってたよ」

「え、手にケガって大丈夫か? 跡とか残ってない?」

「うん、大丈夫だよ。なんせボクは無詠唱で治癒魔術を使えるんだからね」

 

シルフィは自慢気にそう言った。

 

「あ、でも、小さい頃ルディが教えてくれた通り、傷口はちゃんと洗ったよ?」

「いや、それはありがたいけど、ケガをしてまで作ってくれたことがなんか申し訳なくて」

「ボクがルディに贈りたかったんだ。だから、ルディはボクにありがとうって言って、抱きしめてくれればいいんだよ」

 

俺はその言葉の通り、シルフィを抱きしめた。

 

「ありがとう、シルフィ」

「あ、あのね、ルディ。それは今じゃなくて後でって話だったんだけど。それに今は食事中だし」

「もう食べ終わってるだろ?」

 

俺とシルフィは喋りつつも食事の手は止まっていない。

いつの間にか、食べ終わっているのだ。

 

「そうだけど、うぅ〜」

 

シルフィの顔がどんどん赤くなっているのが分かる。

シルフィの体は華奢なのに抱き心地が素晴らしい。

それに匂いも素晴らしい。

髪から香ってくる匂いは女性特有の匂いがする。

 

しかしこうイチャイチャしてると、俺も我慢できなくなってくるな。

ほら、俺の聖剣もエクスカリバーになった。

 

「あ、ルディ…」

「す、すまん」

 

俺の聖剣がエクスカリバーであることがバレてしまったようだ。

ふっふっふ、バレてしまっては仕方がない。

見よ、我が聖剣エクスカリバーを!

 

「と、とりあえず、お皿洗いもあるし、もう少しだけ我慢してね」

「おう」

 

なんてね、俺も少しくらいは我慢できる。

少しくらいは。

 

「あ、でも、

どうしても我慢できないなら、その……いいよ?」

 

シルフィはたまにこうやって、俺の理性を吹き飛ばそうとしてくる。

 

もう我慢しなくていいんじゃないか?

このままベッドに連れ込んで、しっぽりと…。

 

いや、だめだ。皿洗いもある。

我慢、我慢だ。

 

「大丈夫さ」

「そ、そっか」

 

シルフィがそう言うと、

俺は「ごちそうさまでした」と言って

シルフィは「お粗末さまでした」と返した。

 

 

さて、皿洗いは俺も手伝う。

シルフィが洗う係で俺が拭く係だ。

 

皿洗いをしていると、シルフィが口を開いた。

 

「そういえば、ルディは15歳のプレゼントは何を貰ったの?」

 

まあ、さっきまで10歳のプレゼントの話をしていたし、

15歳のプレゼントの話にもなるだろう。

 

「貰ってないぞ。冒険者時代は誕生日なんて考えたことなかったからな。それに闘病生活中だったし」

「あ、そっか」

「シルフィは?」

「ボクもだよ、護衛の仕事が忙しくて」

 

うーん、俺とシルフィも15歳の誕生日は祝ってもらえてないのか。

 

よく考えるとシルフィの場合、

10歳のプレゼントは残ってないし、15歳はそもそも祝われてない。

 

この世界は、5歳、10歳、15歳で誕生日を祝うのが通例だそうだ。

しかも、15歳で成人だから、それが祝われてないのは、

少しかわいそうだな。

 

あ、そうだ。良い事を思いついた。

 

だが俺より先に、シルフィが口を開いた。

シルフィも何か思いついたような顔をしていた。

 

「ねえ、ルディ」

「なんだい?」

「ボクらで15歳の誕生日を祝おうよ。それでさプレゼントを贈り合おうよ」

「…シルフィ、実は俺も同じことを言おうとしたんだ」

「ふふ、じゃあボクら同じこと思ってたんだ。なんか夫婦って感じで良いね」

 

シルフィは幸せそうに笑いながら、そう言った。

 

「よし、じゃあ決まりだね」

「そうだな」

 

そうして、俺たちの誕生日会の開催が決定した。

 

 

ーーー

 

 

あのあと、シルフィと誕生日会について話し合った。

もっとも、普段とあまり変わらない。

夕食が豪華になるだけだ。

誰かを招いたりもしない。

 

だが、今回はシルフィも俺も祝う立場であり、祝われる立場にある。

 

俺は何もしないのはまずいと思い、

「俺も夕食作るの手伝うよ」と言ったが、シルフィに拒否された。

以前からそうだが、やはり譲れないものがあるらしい。

 

理由を尋ねたら、俺の腹を撫でるように触りつつ、

甘い声で「ルディのここはボクのものなんだからね」と言ってきやがったので、

ベッドに連れ込んで、シルフィを俺のものにした。

 

だが、やはり何もしないのは俺が許せなかったので、

部屋の装飾とプレゼントを2つにすることにした。

 

1つ目のプレゼントはもう決まっている。

俺はそのプレゼントに疎いので、ナナホシに協力を仰いだ。

すると、すぐに取り寄せてくれるらしい。

これで1つ目のプレゼントは大丈夫だ。

 

だが、2つ目が決まらない。

 

「なぁ、ナナホシ」

「なに?」

「プレゼントもう1つ贈ろうと思うんだが、何が良いと思う?」

「知らないわよ。少しは自分で考えたら?」

「考えたさ。だけど、あの年齢の娘が何をあげたら喜ぶか分からないんだ」

「シルフィなら、何を貰っても喜ぶと思うけど」

「そうだろうけど、どうせなら、もっと喜ぶものを渡したいだろ?」

「そうね…」

 

ナナホシは少し考えた。

 

「この辺、結構寒いしマフラーとかどうかしら」

「マフラーか」

「あとはネックレスとかどう?

 私の高校にいたカップルは、誕生日にネックレスを贈っていたわよ」

「高校生でネックレスってちょっと…」

「そう? 別に普通のことだと思うけど」

 

今どきの高校生は金持ちだな。

俺は昔の高校生も知らないけどね!

 

だが、ネックレスはいいかもしれない。

俺もシルフィが作ってくれたペンダントを着けているし、

俺がネックレスを贈るのも良いだろう。

 

よし決めた。ネックレスでいこう。

 

「ネックレスにするよ」

「そう。じゃあ御礼として、これ全部に魔力を通してちょうだい」

 

そう言って、俺の前にドンッと置いてきたのは100枚を超える紙だった。

その紙には全て魔法陣が書いてある。

 

「…これ全部にか?」

「当たり前でしょ? 私はあなた達のプレゼントに2つも関わったんだから」

「確かにそうだが…」

「じゃあ、頼むわね」

 

これは、久しぶりに魔力枯渇するかもな。

ええい!ままよ!

これもシルフィのためだ!

 

「うおおおおお!」

 

 

ーーー

 

 

翌日、俺はネックレスを買いに町に出た。

 

入った店はよくアリエルやシルフィがお世話になっているところだ。

シルフィに俺のローブを選んでもらった場所でもある。

 

「これはこれは、いらっしゃいませ。ルーデウス・グレイラット様。本日はどのようなお買い物で?」

「えっと、妻の誕生日プレゼントにネックレスを贈ろうと思いまして」

「それでしたら、こちらにどうぞ」

 

そう言って連れて来られたのは、

ネックレスやペンダントが置いてあるところだった。

 

それにしてもここは本当に品揃えがいいな。

アリエル達も使うわけだ。

 

「奥様のご趣味やご職業は?」

「ええと、あまり詳しくは言えませんが魔術師です」

「それでしたら、こちらはいかがでしょうか?」

 

そう言って見せられたのは、魔術師が使う杖のような形をしたネックレスだった。

 

よく見ると、シルフィが使ってるような初心者用の杖の形をしていた。

杖の先端には魔石を模した、宝石が入っている。

 

これはシルフィにぴったりだ。

そう思った。

 

「これでお願いします」

「畏まりました」

 

俺はお会計をして店を後にした。

 

よし、これでプレゼントが揃ったぞ。

ナナホシに頼んだのも明日届くらしいし、バッチリだ。

 

そういえば、シルフィは何を贈ってくれるのだろうか。

当日が楽しみだ。

 

 

−−− シルフィエット視点 −−−

 

 

ルディとボクらのお誕生日会を開くことになった。

 

そういえば、お誕生日会の話をしているときに、

ルディが「夕食の手伝いをする」って言い出したんだけど、

ボクは拒否した。

 

ボクがいるときはルディに台所に立ってほしくないんだよなぁ。

 

理由は分かんないけど。

 

普段はあんまり理由を聞かれないのに、

今回は突然ルディに理由を聞かれて、まずいと思って、

咄嗟に誘惑するようなことを言ったらベッドに連れ込まれて、

ボクが息できないくらい攻めてくるし。

 

あのときのルディすごかったなぁ。

 

ボクが、なんか変な感じがするのを我慢できなくなって、

ルディに「待って!」って言っても待ってくれなくて、

何度も気持ちよくなっちゃったし。

そんなルディに応えようと頑張ったんだけど、

ボクのほうが先に……。

 

って、そうじゃなくて、ボクらはお誕生日会を開くんだ。

 

当日の夕食のメニューはもう決まっている。

仕込みも問題はない。

 

けど、プレゼントだけが決まっていなかった。

ルディが喜ぶものが分からなかった。

 

そこで、ボクはナナホシを頼ることにした。

 

ナナホシはルディと転移や召喚魔法の研究をしている。

そのときに、雑談もよくしていたみたいだから、

ルディが喜ぶものについて知っているかもと思ったのだ。

 

「ねぇ、ナナホシ」

「なによ?」

 

ナナホシは何故か少しイラついていた。

 

「ルディにお誕生日会でプレゼントを渡すんだけど、何がいいと思う?」

「はぁ、あなたたちは似た者同士ならぬ似た者夫婦ね」

「どういうこと?」

「ルーデウスもここに聞きに来たのよ」

「あ、そうなんだ」

 

ルディもここに相談しに来てたんだ。

ルディが何を贈るのかも知っているってことかな。

 

「じゃあ、ルディが何を贈るかも知ってるの?」

「知っているわよ。なんだったら教えてあげましょうか?」

「ダメ!!」

「ふふ、冗談よ」

「そ、そっか」

 

お、思ったよりも大きな声が出てしまった。

というか、ナナホシも冗談を言うんだ…。

 

「えっと、それで、何がいいと思う?」

「そうね…。正直、男へのプレゼントは男に聞いてほしいんだけど…。あなたの周りに相談できる男はいないの?」

「…ルークとか」

「あぁ、あの男ね…。なら私がアドバイスしたほうがいいかもしれないわね」

 

ナナホシはルークが苦手みたいだ。

 

ルークはよく女の子からモテてるけど、苦手な女の子も一定数いる。

ナナホシはその1人みたいだ。

 

けど、ナナホシもルークもそんなに関わりがあるわけじゃない。

多分、ナナホシは直感的にルークのことが苦手なんだろう。

 

ルークは女の子をお人形みたいに考えてそうだから、仕方ないといえば仕方ない。

 

ルークが悪い。

ボクはそう思うことにした。

 

「あのルーデウスにプレゼントねぇ…。うーん…」

「ナナホシはよくルディと雑談してたみたいだけど、何か聞いてない?」

「好物とかそういう話はしてないわね。私がいた世界のことはよく話していたわ」

「そっかぁ」

「あっ」

 

「あっ」と声を出したナナホシを見ると、

何か思いついたようだった。

 

「良い事を思いついたわ」

「良い事?」

「私がいた世界にはね、ペアルックというのがあるのよ」

「ぺあるっく? どんな意味なの?」

「恋人同士で同じ種類、同じ色の服を着るのよ」

「それがぺあるっくっていうんだ」

「そうよ」

 

ペアルックの話をしているナナホシは少し楽しそうだった。

ボクも女の子とこんな話をしたことがないから、少し楽しい。

 

「ペアルックはね、周囲に自分達の仲の良さをアピールしたり、

恋人が自分と同じ格好をしていることに安心して嬉しくなったりするのよ」

「へぇー」

「あなたも実際にやってみるといいわ。あれすごい嬉しいんだから」

「ナナホシはやったことあるの?」

「……私はまだよ。実際にやった友達に聞いたのよ」

「そうなんだ」

 

ルディとペアルックかぁ。

恋人同士がやるものみたいだし、ちょうどいいかもしれない。

そういえば、ボクもルディもお揃いの物は何も持ってないんだよね。

 

「多分、ルーデウスも喜ぶわよ」

「ほんと!?」

「ええ」

 

ルディが喜んでくれるなら、ボクも嬉しい。

よし、ペアルックにしよう。

 

「じゃあ、ルディとボクの分の服を買うとして、何を買えばいいかな?」

「そうね…。後ろに帽子がついた服ってこの世界は無いわよね? パーカーって名前の」

「似たような服ならボクも、小さい頃に着てたけど…」

「それって、前開き?」

「うん、前を閉める時はボタンで閉めてたよ」

「そう。じゃあ、私が言っている物と違うわね」

「え、ナナホシが言ってるのって、どんなの?」

 

ボクがそう聞くと、パーカーについて教えてくれた。

 

ナナホシは、ボクが小さい頃に着ていたのは、

ジップパーカーに似た物だと言っていた。

 

ジップパーカーは前開きの服らしく、

ジップがボタンに変わった物が、

ボクが小さい頃に着ていた物らしい。

 

ナナホシが言っているパーカーとは、

プルオーバーパーカーという名前の服で、

ボタンも付いてないし、前開きでもないらしい。

 

 

うーん。

 

ルディが同じような服を着ていたと思うけど、

ナナホシが言っているのとは違う気がするんだよなぁ。

 

あれは普段着というより運動着に近かったし。

ルディも運動する時にしか着てなかった。

それにボタンも付いていたし。

 

ボクはそう伝えると、

ナナホシは「そう…」と言って考え込んでしまった。

 

思えば、ナナホシがここまで考えてくれるのは本当に珍しい。

パーカーの話をしている時もなんかノリノリだったし、

ナナホシは服が好きなのかな?

 

「あ、じゃあ、首の部分の襟を折り曲げて着るセーターはどうかしら?

タートルネックセーターって名前なんだけど」

「あ、それならあった気がするよ」

「そう。それなら、寒いシャリーアでも快適に過ごせるし実用性もあるでしょ」

「そうだね。じゃあタートルネックセーターで決まりだね」

「あとは、パンツね。パンツは……」

 

ナナホシはまたノリノリになって、

ボクに色々教えてくれた。

 

セーターの色は白色にすること。

ルディのパンツは黒色にすること。

ボクはいつものショートパンツを黒色にすること。

なんでも足の服の色を黒色にすることで、

セーターの白色と見た目の相性が良いらしい。

 

ボクも服装について、ある程度は自信があったけど、

ナナホシはボクよりも知識があるみたいだ。

 

それと、ボクには萌え袖にするよう言ってきた。

 

「萌え袖?」

「袖から指先だけを出すことを萌え袖って言うのよ」

「へえー、その萌え袖をやるにはどうすればいいの?」

「簡単よ、いつもよりサイズが上の服を買えばいいだけよ」

「え、でも邪魔にならない?」

「何言ってんの、あれが可愛いんだから!」

「そ、そうなんだ」

 

ナナホシのテンションが高くて少しびっくりした。

 

「それで、こういう仕草をすればもっと可愛くなるわよ」

 

ナナホシはそう言うと、お面を外した。

すると、両手を口元にやって、口を隠すような仕草をした。

その仕草をしたナナホシは少し可愛くみえた。

 

「ええ/// なんかあざとくない? 大丈夫かな?」

「大丈夫よ、男なんてこれでイチコロよ」

「ルディがボクにイチコロ…」

 

ルディがボクにイチコロ…。

そんなこと言われたら色々想像してしまう。

 

けど、ナナホシが口を開いて、すぐ現実に戻されてしまった。

 

「まあ、萌え袖のセーター着て、一度ルーデウスの前でやってみなさい。駄目だったらやらなければいいだけよ」

「う、うん」

「あ、セーターは一度試着して萌え袖になるか確認するのよ?」

「うん、分かったよ」

 

ボクはナナホシに御礼を言って、研究室を後にした。

 

 

ーーー

 

 

一応、アリエル様にもアドバイスを貰いに生徒会室に行った。

 

結果から言うと、成果はあまりよくなかった。

 

アリエル様は媚薬とルディのアレの形に似た物をボクに渡してきた。

 

ボクはルディのアレにそっくりだなぁって思っていると、

アリエル様もそれを感じ取ったのか、

ボクの耳元で「これでいっぱい気持ちよくしてもらいなさい」なんて言ってきた。

 

そのせいで、昨晩のことを思い出して色々妄想してしまった。

 

体中が熱くなるのを感じた。

 

ボクは恥ずかしくなって「キャー!」と悲鳴を上げながら、ルークの顔にそれを投げた。

ルークはそれを避けることが出来ずに「ぐはっ!」という声を上げて動かなくなってしまった。

 

ボクはルークに謝りつつも、媚薬だけ貰って生徒会室を後にした。

 

 

ーーー

 

 

翌日、ボクはルディのプレゼントを買いに町に出た。

ルディの服のサイズは、昨日バレないように調べておいたから大丈夫だ。

 

お店はボクらがいつもお世話になっているところだ。

なんだかんだ、1人でここに来るのは初めてかもしれない。

 

お店に入ると、今日はいつもの人はお休みらしく、違う人が対応してくれた。

 

ちょっと中を散策してみたかったので、

お店の人にそう言って自由に見てまわることにした。

 

もっとも、今日は買うものが決まっている。

散策はすぐ終わり、目的の品へと手を伸ばした。

 

(えっと、白のセーターと、黒のパンツと)

 

試着して鏡を見るとナナホシが言った通りだった。

普段、こんな服を買わないこともあってか別人のように思えた。

 

今度、ナナホシに服装についてレクチャーしてもらおう。

 

ボクは、2人分の服をお会計してお店を後にした。

 

 

「あら、シルフィじゃない」

 

お家に帰っていると、声をかけられた。

エリナリーゼお祖母ちゃんだ。

 

「お祖母ちゃん!」

「奇遇ね。何をしているんですの?」

「えへへ、ルディのプレゼントを買いに来たんだー」

「あら、ルーデウスの」

「うん」

 

ボクとお祖母ちゃんは近くのカフェにお茶をしに寄った。

そこで、ルディとお誕生日会を開くことやプレゼントを贈り合うことなど色々雑談した。

 

「そうだ、良い事を思いつきましたわ!」

「良い事?」

「シルフィ、耳を貸しなさい」

「う、うん」

 

そこからお祖母ちゃんが言ったことはボクには到底、想像出来ないことだった。

 

ボクは顔が熱くなるのを感じた。

 

「えっ!? そんなことするの!?」

「ルーデウスもきっと喜びますわ!」

 

うぅ、ルディが喜ぶって言われるとやるしかないじゃないか。

 

「わ、分かった。ボク、頑張るよ」

 

そう言って、お祖母ちゃんとは別れた。

 

さて。

 

ボクはもう1件、お店に寄らなくちゃいけなくなった。

けど、あまり時間はかからなかった。

目的の品は案外すぐに見つかってしまった。

 

よし、これでルディへのプレゼントが揃った。

 

そういえば、ルディはどんなプレゼントを贈ってくれるのかな?

当日が楽しみだ。

 




・2人のプレゼントリスト

ルーデウス
1つ目:???
2つ目:ネックレス

シルフィエット
1つ目:白のタートルネックセーターと黒のパンツ


※各キャラの服装については漫画版や書籍版を参考にしました。

・編集記録2021/03/19
パーカーの話について加筆修正
その他、見た目や表現等の修正
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