もしも、こうだったらとそういう願望。
「ネイトー朝よ、おきなさい」
「ん〜」
扉の向こう、若干くぐもった母の声に
布団にくるまった黒髪の少年はモゾモゾと動き出す。
が、起き上がる気配は無い。
「ネイト起きなさいって、もうクルーエルさん来てるわよ」
「ふぇ? えっうわっわっわっ?!」
起きる気配が感じられなかったからだろうか、
部屋に入り少年....ネイトの身体を揺すりながら
掛けられた母の言葉にネイトの寝ぼけた頭は一瞬で覚醒し、
慌てて飛び起きる。
そのときにネイトの上に乗って眠っていた黒い羽根つきトカゲが
床に落ち文句の声を上げているが、母もネイトも気にしていない。
「お、お母さん?! なんでもっと早く起こしてくれないの!!
クルーエルさんが来てるってホント!?」
「何度も起こしたわよ、それよりさっさとしなさい?
そんなんじゃ、本当にクルーエルさん来ちゃうわよ?」
呆れた顔をして、時計を指差す母の指を追い時計を見てみると
-6:30-
年上の恋人、クルーエルがネイトを迎えにくる時間は毎朝
7時30分であるため、つまるところまだ1時間程時間があることになる。
「え?」
「時間が有るってわけじゃぁないでしょう?
一時間なんてあっという間よ、特にその寝癖じゃね」
そう言われて、頭に手をやってみるとそれはもう
見事に爆発していた。
「あはは、それで慌てて降りてきたんだね」
「もう、笑わないでよお父さん」
新聞紙をたたみ、テーブルの脇に置きながら笑うのは
ネイトの父であるカインツ・アーウィンケル。
まだ若くして世界随一と謳われる天才である(如何なる分野に置いて
そう言われているかは面倒なのでこの場では省く)が、
妻でネイトの母たるイブマリーに言わせれば唯の優男である。
ネイトの両親にしては若すぎると良く言われるが、
実際ネイトは元々捨て子でありカインツとイブマリーは
実の親では無いが、まぁなんだかんだと言って
実の親子以上に仲の良い3人であるため、事情を知らない人は
気付かないし、知っていてもそうとは見えない為に問題はないのだが。
「はいはい、ぶーぶー言ってないでさっさと食べなさい。
本当にクルーエルさんきちゃうわよ」
「いっいたただきます!!」
「あんまり急ぎ過ぎ無いようにね」
因みにさも自分が作ったかのように朝食をテーブルに
並べるイブマリーであったが、実はトーストを焼いた以外は
全てカインツ作だったりする。
兎にも角にも、これ(ネイトがイブマリーに騙されて起こされる所から)が
アーウィンケル家の毎朝の一コマであった。
最初から原作が息をしていない。
この作品はあくまでも、あくまでも(大事な事なので2回)
“if”であるために、キャラが若干ちがおーが
そんなことは気にしちゃのーなのです。