えっ、スカンディナヴィア十字を立てちゃいけないんですか!? 作:ryanzi
作者は世界史にそこまで詳しくないんだ。
あと、政治・思想にも詳しくないんだ。
仕方ないので、ドアを自分の部屋に置くことにした。
一応、いたずら用の偽ドアというインテリアとして。
「・・・そもそも、これちゃんと開くんですかね?」
とりあえず、試しにドアノブに手をかけ開けてみた。
すると、どういうわけか草原が広がっていた。
目の錯覚だと思い、いったんドアを閉じる。そして、また開ける。
やっぱりドアの先に広がっているのは広大な草原だった。
草原だけではない。川と湖もあるし、遠くには山脈も見えた。
「・・・えっ?」
完全に予想していない展開だった。
(・・・まさか、おとぎ話とかにあるような別世界?)
そうであるならば、アーベルは広大な土地を一瞬で手にしたことになる。
つまり、彼には大農場主になるというチャンスが手に入ったのだ。
しかし、アーベルはそういった欲望を持った人間ではなかった。
性格に言えば、そういう欲望のステータスを愛国心のステータスに振り込んだ人間だった。
(これをスウェーデンのために・・・!)
しかし、この粗大ごみが祖国を救うなど誰も信じてくれないだろう。
それに、まず実験しなければいけないこともある。
アーベルはドアを持ち上げて、少しだけ動かし、また開ける。
向こう側におけるドアの位置はまったく変わっていなかった。
次に、向こう側に行って、同じような事を繰り返した。
アーベルの部屋においても、ドアの位置はまったく変わらず。
どちらか一方でドアを動かしても、もう一方には反映されないことがわかった。
二つ目の実験は、ドアの向こう側が本当に別世界かどうか確かめることだ。
そのためには、向こう側が夜になるのを待たなければならない。
アーベルはコーヒーを淹れて気長に待つことにした。
彼は新聞を広げて、南北アメリカ大陸の情勢を伝える一面を読むことにした。
まず、アメリカでは大統領制が廃止され、ハーバート・フーヴァーが皇帝に就任した。
”キチガイ”ウィルソンの軍事的奇行に国民は怒りを露わにしたのだ。
これに対し、ヨーロッパ領も大いに歓迎した。ついさっきまで叫んでた独立はどうしたのか?
次にカナダ。イギリス王室の亡命先であるが、もはや王室の存在は空気に等しくなっていた。
それどころか、最近では王室追放の動きすらあるらしい。
もはや、カナダは今までのカナダではなくなりつつあるようだ。誰にも予想ができない。
メキシコは特に何もなかった。オブレゴンとかいう男が大統領になったくらいか。
ブラジルはイギリスのシステムを取り入れ、”情報省”が幅を利かせるようになった。
アルゼンチンはアジェンデ陛下の善政の下に立件民主化が進みつつあった。
パナマは〈国際貿易連合〉という機関に統治されているが、誰にも詳細はわからない。
アメリカでさえも、国際貿易連合が何なのかわからないのだから。
どちらにせよ、結局は
「・・・二十世紀は、アジアとアメリカの世紀、か」
青年はまだ知らない。
二十世紀が〈カナダとスウェーデンと国貿軍の世紀〉と呼ばれるようになることを。
そして、そのきっかけを青年が生んだことすらも。