えっ、スカンディナヴィア十字を立てちゃいけないんですか!? 作:ryanzi
北半球の星座表も南半球の星座表も用意した。
しかし、それらは不要だったとすぐにわかった。
地球には三つも月はないからだ。
「これはたまげまたな・・・」
アーベルは椅子を別世界の方に置いて、コーヒーを飲みながら座った。
夜風が気持ちよかったし、コーヒーもおいしい。
未来に対する不安を少しだけ忘れることができた。
そんな彼を監視する少女がいた。
彼女がどこからどうやって監視していたのかは現時点では伏せておこう。
「異界人、ですね。ゲートは・・・粗大ごみ?」
彼女の視線はドアをくぐりぬけて、アーベルの家に入った。
「文明レベルはさほど悪くはないっと・・・それどころか高いですね」
少女の視線は外へと向かい、そして遥か地球上空へと跳ね上がった。
彼女の視界に映ったのは夜のスカンディナビア半島であった。
「異界人の住んでいる場所は意外と僻地なんですね」
少女は地球の中心地を探そうとした。
すると、西の方にある大陸が目に入った。
北アメリカ大陸と呼ばれる大陸である。
彼女はその東部に目をつけて、そこに視点を移動させた。
目の前に現れたのは巨大な摩天楼群。
一番高い摩天楼でも地球の単位では449メートルの102階建て。
彼女は現地民の会話から、それが”エンパイア=ステート=ビル”と呼ばれていることを知った。
そして、この街が”ニューヨーク”という名前であることも。
「・・・なかなか発展していますね」
彼女は注意深く現地民の会話に耳を傾けた。
この国がアメリカ帝政合衆国であること、つい最近までは民主国家であったこと、
皇帝の統治により民衆はますます歓楽に溺れているということを。
潜在的に偉大であろうこの民族は、俗悪な特徴により堕落しつつあった。
「これじゃあイリアス人よりもひどい。こんなのが異界の覇権国ですか・・・」
彼女の視点は再び地球上空に舞い戻った。
さらに西に視点を動かして、今度は巨大な大陸の東端にある列島を見つけた。
「・・・なにか見れそうな予感がしますね」
その列島は昼の時間帯だったので、さっきのアメリカとかいう国よりは人が活発に動いていた。
実に奇妙な国だった。街並みは二つの文化が混合したかのような外見だった。
道を闊歩している黄色い肌の人間たちは大まかに二つに分けることができた。
伝統的な服を着ているタイプと、さっきのアメリカのような服装をしているタイプだ。
付け加えると、アメリカ風の服装をしているものは全員が眼鏡を付けていた。
さらに言えば、帝国としての歴史はこの列島国家の方が長いらしい。
それなのに歴史が短そうに見えるのは、彼らの短絡的な猿真似文化のせいだろう。
「国名は・・・大日本帝国、ですか」
この国はアメリカと緊張状態が高まりつつあるようだが、まだ平和だ。
野原のほうに目を向けると、子供たちが遊んでいて、その近くでは軍隊が行進訓練をしていた。
軍隊の武器は筒に剣が付いているという風変わりなものであった。
「軍隊と子供の距離がこんなにも近いなんて・・・よほど、軍紀がしっかりしてるんですね」
さらに、その野原の近くには風変わりな門が立っていた。
子供たちの会話から判断するに、それは”鳥居”というものらしい。
許されるのであれば、少女はいつかそこにちゃんと訪れてみたいと思った。
懐かしい、という言葉をまさに体現したような風景だったからだ。
一度も行ったことがないのに。
これ以上は仕事にならないので、地球上空にまた戻ってきた。
「さっきの半島は・・・あそこですか」
彼女は再びスウェーデン上空に戻ってきた。
改めて見ると、あることに気がついた。
なぜか、
「・・・田舎だからでしょうかね」
とりあえず、青年の家に戻ってきた。
しかし、そこにドアはなかった。
外から音が聞こえたので、そこに視点を向けてみる。
青年は何かの土木作業をしていた。
「ふう、これでよし!」
どうやら青年はドアを自分の畑のそばに設置したようだ。
彼女は自分の世界に視線を戻らせる。
「・・・監視中止」
スウェーデンが〈監視機構〉と接触するのはそう遠い先のことではない。