Persona5 ~Phantom Thief of Å Villain~   作:誤字脱字

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第三話 I was a villain

Persona5 ~Phantom Thief of Å Villain~

 

第三話 I was a villain(私は悪党だった)

 

 

 

 

6月7日―――

 

 

鴨志田の件から凡そ1ヶ月、彼等は再び注目を集める事になった。更なる巨悪を改心させたことによって――

 

画家『斑目一流斎』のスキャンダル―――

門下生や弟子達の作品を盗作し、あたかも自身の作品として世に発表し若き画家の才能と夢を食い物にした極悪人。我が校で時の人になった彼等から云わせれば『虚飾の大罪人』のスキャンダルは、世間に彼らの存在を学校と言う小さいコミュニティから世間と言う大きなコミュニティへと認知させる切欠としてはあまりにも大きい出来事であり、そして我が組に齎された損害は予想よりも少なく済んだ

 

何故ならば【さゆり】の贋作は、既に組の倉庫には一枚も無く、全て売捌いた後だからだ。

『鉄は熱いうちに打て』と爺ちゃんの掛け声と共に入手から数日で足が付かない様に全ての贋作が完売。十分な資金を我が組と私の懐に産み出したのだ。……まぁ、斑目の悪行に伴い【作:斑目】の作品の評価が見直される事にはなったが、【さゆり】自体は、名画と云う事には変わりなく贋作だとしてもある程度の需要はあり続けるだろう

 

そんな事もあり、もはや手元にない絵画の作者がどうなろうと関係ないと潤った財布事象にホクホク顏で教室へ向かおうとしたら掲示板に1通の張り紙が…………例の赤い手紙でも無ければ血生臭い脅迫文でもない。張り紙に群がる生徒の隙間を縫って書かれている文章を読んで、またよからぬ事が起りそうだと頭を抱えるのであった

 

 

 

 

 

「『生徒の皆さんへのお願い 情報を募集します 気づいた事があれば 生徒会長へ相談してください』……いつから探偵になったのですか、生徒会長様?」

「……知らないわよ。」

「ですよね。大方、事態が発展しない事に煮えを切らした校長の仕業だとは思っていましたが、生徒達はそんな事なんてお構いなし、蓋を開ければこんなにもってね?」

 

机の上には公募した『情報』が書かれた匿名の通知が50枚ほど広げられている

全校生徒数から考えるに、この投稿数は多くはない。中には『いいバイトってない?』やら『怪盗団サイコ―!』と言った中身が無い物、白紙や落書きと言った遊び感覚で入れられたモノも多く『怪盗団』に対する有益な情報が書かれたモノは皆無に等しかったのだが、別の意味で問題が判明してしまった。

 

 

「『友達を助けて欲しい』、ね?」

「……恐喝されている生徒って誰なのか検討は着くのかしら?」

「いえ、寄せられた情報には『恐喝されている生徒がいる』や『友達を助けてほしい』というものばかりで、唯一の情報が渋谷で何かが起きているってくらいです」

「そう……」

 

怪盗団の情報ではなく、今校内で起きている問題の解決を求める投稿が多く寄せられていたのだ

 

「無視するには物騒すぎる内容ですし、とりあえずは生徒会としては、この張り紙は回収した方が良さそうね?」

「えぇ。明日、校長先生の所に行って『恐喝』の件について伺ってみるわ。」

「なら、私も行くわ。そう言う事だからみんなには、張り紙の撤収と生徒に無駄な心配を掛けないようにそれとなく促して頂戴」

「「「「はい」」」」

 

気持ちの良い返事と共に仕事に取りかかる生徒会役員達に来期の生徒会は安泰だと安堵する一方、この問題は今期の生徒会最大の難題だと皺を寄せるのであった

 

 

 

翌日、昨日の件や今生徒達の間で問題になっている件を校長に伝えたのだが、校長の顔色は優れなかった

まぁ、学生だと言うのに圧がある私達に問い出されたら否応にも顔色が悪くなるだろう

昨日の校長の独断行動に対する説明責任、学生間で横暴する危険な案件、そして鴨志田の横暴の認知確認……学園の長として一人の大人としての対応が期待されたのだが、私達の問い掛けにしどろもどろに応える校長は本当に切羽詰っているのであろうと感じられ―――

 

「わ、私も忙しくてね。どうしてもと言うなら君が解決してくれ!」

「…え?」

 

―――あろうことか最悪最低な選択である責任放棄をしてきたのだ

校長の云い様に唖然とした様子の生徒会長様。このままだと流されて要らぬ責任まで負わされると感じた私は声を上げた

 

「ちょっと待ってください!これ以上の『怪盗団』捜索は学生の領分を逸脱しています!生徒会は探偵でも無ければ貴方の部下でもありません!」

「それもそうですが、君達は私が赴任して来てから一番優秀な生徒会長と副会長です。君達なら出来ると私は思っていますし――」

「だからなんだと云うのですか!?いくら私達が優秀だとしても生徒会の仕事は学校生活を送る上で問題点や課題を解決、改善する事です!……これ以上、貴方が好き勝手に生徒会(わたしたち)に干渉するのであれば出る所出ますよ?」

「ッ!」

「ちょっと稲山さん!」

 

流石に言葉が過ぎた様で狸はタコへ変わり、会長様は私を咎めてきた

いつもならもう少しオブラートに包んで告げますが今回ばかりは、こっちにも事情がある故、強く言ってしまった。……まぁ、第三者から見れば学生が校長を脅している様に、いや、実際に脅しているのだけど何せ世間体が宜しくない。この場には私達3人しかいないのだが、障子にメアリー

いらぬ噂が飛ぶのは良くないと『Its joke』と誤魔化そうとした瞬間――――校長が動いた

 

 

 

「……犯罪組織の件ですが、真実ならば私から警察に相談してみましょう」

「本当ですか!」

「えぇ、ただ……被害を受けるのは貴女かもしれませんがね?」

「ッ!」

 

タコが墨を吐いてきた。しかも最悪のタイミングで――ッ!

先程虚仮にされた腹いせか、ニタニタと笑みを浮かべながら私を見てくるタコを絞め殺したくなったが、新島さんもいる手前、我慢しながら校長を睨み返した

 

「……それはどういう意味ですか?」

「この件は君の方が詳しいのでは?と言う話しです。それにその犯罪組織とやらの話を追えば怪盗の手掛かりも得られるかもしれません。話は終わりましたね?では……退出しなさい」

「「……はい」」

 

完全にしてやられた形になってしまった

心の何処かではタコも教師であり、生徒の立場が悪くなる事は言わないだろうと思っていたが、完全に裏切られた。……いや、信用できないと判っていたのに隙を見せた私の落ち度、か……

 

私は、自身の失態に拳を握りしめながらもその場を後にしたのであった

 

 

退出を促され生徒会室に戻る帰路は最悪な雰囲気だ

会長と副会長の関係を逆手に取って、この私に脅しをかけてくるなんて!

勿論、私達『稲山組』は渋谷の件は関わっていない、ただ長年の経験から同業者の匂いを感じ取っていたので、会長の前では、いらぬ心配を抱かせない様に直接的な発言は避けて警察に任せる流れに誘導してきたと云うのにあの野郎……!

 

「あの様子だと鴨志田の件、校長は知っていましたね」

「………」

「渋谷の件はサツに頼るとして、『怪盗団』の件は教育委員会に申し立てれば………新島さん?」

 

隣を歩いていた彼女の足が止まった

何事かと思う反面、先程の件だろうと当たりは付けている手前、周りに人の気配があるかどうか確認しもう一度、彼女の名前を呼ぶと俯いていた顔を上げ強い眼差しで私を見つめ、そして口を開いた

 

「単刀直入に聞くわ。渋谷の件、貴女達も関わっているの?」」

「いやいや、何を言って……えぇ~?」

 

誤魔化しようにも彼女の強い眼差しは嘘や虚言ではなく真実を求める物であり、同時に私があっち側の世界の人間だと確信していた

………お姉さんにでも聞いていたのかな?

 

「お願い、答えて……」

 

懇願する様に私に詰め寄り、手を取ってくる新島さん……

もう隠す事も言い逃れする事も出来ないと悟った私は顔を逸らしながら真実を伝えた

 

「……私達は関わっていないわ」

「本当に?」

「えぇ、組ではウリもクスリもご法度よ」。

「そう……よかった」

 

手を放し、安堵で胸を下ろす新島さんの瞳からは緊張の色が消えていた

 

「……新島さんは判りやすいわ。事件の手掛かりが掴めなくて残念って感じかしら?」

「それだけじゃないわ。この件に貴女が関わっていなくて安心したの」

「安心?……確信持っているみたいだから云いますけど、私って渋谷の奴等と同じで犯罪組織側の関係者ですけど?」

「知っているわよ、最初から」

「え?」

 

薄々気づかれていたとは思っていたが、最初からって?

呆気にとられる私を尻目に新島さんは淡々と言葉を口にした

 

「お姉ちゃんが、教えてくれたの。……最近、この辺りを縄張りにしている稲山組ってヤクザが影で何か動いているから気を付けなさいって。……まさか、同い年で同じ学校に関係者が入学してくるとは思っていなかったけど」

「あ、ははは。出所は、やっぱりお姉さんだったか~」

「最初は何かの冗談だと思ったわ。同名の他人とも考えたけど、確信を持ったのは貴女の言葉の淵縁からこぼれる『ヤマ』や『カタギ』って単語が出るようになった時かしら?……普通の女子高生がいう言葉じゃないもんね?」

「任侠映画が好きなの!って言っても、もう遅いですよね?……それで、関係者どころかバッチリ身内な私ですけど、どうするおつもりで?お姉さんに報告しますか?『噂のヤクザの孫娘が同じ学校にいる』って?そもそも、その~え~と、と、友達にいたって?」

「なんで過去形なのよ?……今も友達よ」

「えぇっと、私ヤクザの孫娘。貴方、検事の身内……OK?」

 

珍しく言葉に詰まる私に対し新島さんは、くすっと笑みをこぼした

 

「生まれた家なんて関係ないわ。云いたい事を真っ直ぐに云える貴女だから友達になったのよ」

「……この際だから言いますが、私はヤクザの直系で、貴女の進学希望は警察学校だった筈。表だって交流してはいけない関係――」

 

友達と言ってくれる嬉しさ半分、まだ幼い彼女に、反社との付き合いのデメリットを説こうと口を開いたが、すっと差し出された人差し指に言葉が止まる

 

「確かに貴女の家は世間的には認められないのかもしれない。でも貴女は貴女でしょ?」

 

 

空気が鎮まり静寂が訪れ、校庭からは部活動に勤しむ生徒達の声が聞こえてくるが、私の心境はそれどころではなかった

 

「……やばい、私惚れちゃうかも」

「なにいってんのよッ!ちょっと!」

 

速くなる心音、高まる気持ちを抑えきれずに私は新島さんに抱きついた

誰かに見られたら誤解されそう、いや、誤解されてもいいと思えて彼女の耳元で吐息と一緒に言葉を紡いだ

 

「新島真さん、こんな私を友達だと云ってくれる貴女だから言うわ。……渋谷の件はカタギである貴女が関わって良い問題ではない。下手に首を突っ込んだから貴女も被害者の仲間入りよ」

「ッ!」

「私達からして見れば三下だけど貴方達にとっては厄介な相手と言う事。校長にはもう一度、私から警察に頼る様に伝える。だからこの件からは手を引いて………おねがい」

 

彼女から身を放し、両手を肩に起きながらも彼女の眼を見つめた

私が真剣に伝えている事を彼女も感じてくれたのか一息ついた後、返事を返してくれたのだ

 

「……わかったわ、渋谷の件からは手を引くわ」

「ありがとう、新島さん……いえ、真!」

「っ!?ちょっと!」

 

私は再び真に抱きつき、頬に軽く口付を交した

我ながら大胆だったと思ったけど驚きと羞恥で驚く彼女の表情(かお)を見て更に感情が高ぶり、柄にもなく舞い上がってしまった

そう舞い上がってしまったのだ………彼女の気持ちも考えずに

 

 

 

 

そして私は気付いてしまった時にはもう遅かったのだ

 

 

「To:TSUBAKI INAYAMA

 

     私、頑張ってみるね……

 

           From :MAKOTO NIIZIMA」

 

 

彼女が危険な橋を渡ってしまっている事を………

彼女の裏切りを……

 

 

 

 

 

6月12日―――

 

共通模擬試験

全国の進学を希望し足を運んだ学生には悪いが私の気持ちは試験どころではなかった

昨日、送られてきたメールに書かれた一文の真意を聞く為に彼女を捜し周っていたのだ

 

休み時間、昼休み、そして試験後……

時間が許す限り捜し回ったのだが、全てが空振りに終わり焦りを覚えてしまう

 

彼女の事だから一人で抱え込んでいる可能性が高く、犯罪組織そして怪盗団の件を一人で解決しようとしているのに違いない!

そして、校長から実家の事を引き合いに出された私に心配を掛けまいと意図的に私を避けている!

 

………私の事を思っての行動だと心の何処かでは踊り回っている私がいるが、同時に約束したのに裏切られたと憤怒する私もがいる

 

歓喜と憤怒、二つの感情が混ざり合いゴチャゴチャになって―――

 

「……shit!」

 

衝動的に自販機の横にあるゴミ箱を蹴り飛ばした

カランカランっと音を立てる転がる空き缶を無表情に眺め、一息……

物に当るなど自分らくしない行動だったと反省し、その場を離れようとした時―――

 

「缶は片付けないのかい?」

 

やけに耳に残る声が掛けられた

イラつきながらも振り返ってみれば最近TVで見る事の多い人物が微笑んでいた

 

「……新手のナンパですか?」

「流石に試験会場(ここ)で、ナンパする勇気は僕には無いよ」

「そうですか…なら私は「新島さんの事を捜しているのかい?」ッ!……彼女は、いま何処に?」

 

私は静かに優男に近づき胸倉を掴み上げて問い質した

彼は目を白黒させて驚いている様だが、どこか私を観察している感じにも見えた

 

「……何か?」

「いや、すごい顔。まるで犯罪者だ」

「さっさと唄え。こちとら気が立ってんよ」

「その前に手を放してくれないかな?…締まっていて苦しいよ」

「………」

 

降参とばかりに両手を上げる彼に私は、苛立ちを覚えながらも手を放す

 

「新島さんならさっき、バスに乗っている所を見たよ」

「っち!」

 

開放され軽く笑みを浮かべながらも身なりを整える彼に、視線で早く言えと急かすと肩を下げて唄うが、その内容に舌打ちが出てしまう

遅かれ早かれ明日には学校で彼女と顔を合わせる事になるが、このごちゃまぜになった気持ちは抑えられないし、耐えられない

柄を返し彼女の後を追い掛けようとしたが、彼に肩を掴まれてしまった

 

「………まだ何か?」

「彼女の後を追うのは辞めた方がいい」

「あぁ?」

 

眼光鋭く、また首を締められたらたまったものではないと両手をあげ降参の意を表す彼に対し落ち着きを見せていた私の感情が再び燃え上がっていくのを感じたが、彼の紡ぐ言葉にどうしようもない不安感が舞い込んできた

 

「彼女から君に伝言さ」

「……伝言?」

「『心配しないでほしい。全てが終わったら、またお茶しましょう?』だってさ」

「……なによそれ。私の気持ちを裏切っておきながら心配しないで?ふざけんな!貴女だって精一杯でしょう!校長にお姉さんに学園の事も!何もかも一人で背負うって云うの!?」

「君なら絶対に助けてくれるって信頼でもある様に感じるよ?今日、君と会わない様にしたのも彼女なり罪悪感を覚えて気まずいからじゃないかな?あくまで僕の推測でしかないけど、少なくとも君の事を思って行動したのは事実だ」

 

なにそれ、勝手に『信頼』しないでよ……

生徒会と言うコミュニティ以外での信頼関係は、これから築いて行けると思っていたのに一方的な感情の押し付けだったと思うと苛立ちが自分への憎悪となって渦巻き心の底から溢れ出てきそうだ

 

「僕も新島さんの全てが分かる訳ではないけど、さっき言った通り『信頼』はしているよね?何かあったとしても君が、君の家が助けてくれると信じているから」

「……私の…家?」

「あぁ、この職業柄かな?君のご実家の事は知っている。……言葉が悪いかも知れないけど、言わせて貰えば君に頼めば最悪の事態は避けれると打算していると思うよ」

「………」

 

何も言い返せない

彼の瞳の奥で淡く光るナニカが、私の心に入って来て感情を濁らせていく……

ニイジマサンハワタシヲミテクレテイナイノカナ?

 

「何も新島さんが君と友好を結んだのは、そういう事を望んでと言う訳ではないと思おうけど、保険には考えているかも知れないね?」

 

…ホケン?そんなの利用しているだけじゃない!

堅気からして見れば極道もマフィアも変わりないと思われても仕方がないけど!

都合の良い女(ユウジン)である稲山組(わたし)に頼み込めば卑劣な行為から身を守ってくれると愚行したのカナ?

実際問題、そんな甘く片付けられるものではない。、裏の人間であったとしても所詮は、他人の庭であり、隣人の稲山組(わたし)がいくら叫ぼうが全くと言って良い程に声は届かない

 

 

 

だと言うのに私の忠告を破って自ら危険な道を進んだ新島さん、そんなのって――――

 

 

 

  『……都合よく裏切っておきながら、また私を裏切る(利用する)の?』

  『……上等じゃない。私も裏切らせて貰うわ!』

 

 

 

新島真と言う女性と過ごして築き上げたモノは上辺だけの偽物だった

 

(ロキ)の云う通り、カウンターガーディアンとして利用しているだけだ

 

醜く人間の深層心理に存在する絶対的な醜態であり怠惰なり

 

己が道を切り開らかず、(ヘラ)へと縋る傲よ…

 

それとも彼女と過ごし築き上げてきた絆は真実だと唄うに値するのか

 

今一度、汝の心に問いかけて見るがいい――……

 

 

 

だと言うのに私の忠告を破って自ら危険な道を進んだ新島さん、そんなのって――――

 

 

 

   『……都合よく裏切っておきながら、また私を裏切る(利用する)の?』

  『……上等じゃない。私も裏切らせて貰うわ!』

 

 

 

「………へぇ」

「保険?上等じゃない!例え彼女が私の忠告を裏切ったとしても私は貴方が言う通り『信頼』しての事だと信じるわ!だから私も彼女を『信頼』して彼女を裏切らせて貰う」

 

思い出すのは私が新島さんに言った言葉

『しない後悔より行動しての後悔』を実行したに過ぎなく彼女が信じる道を歩んだだけ

それが私の忠告を無為にする行動だってわかって起こしたのなら言った私が責任を取らなくてどうするって云うの!

恐らく彼女は望まないだろうけど、裏切った報復だ

こっちも好き勝手、新島さんの思いを裏切らせてもらう

 

心の中の突っかかりが取れて、先程まで渦巻いていた気持ちが心に納まっていくのを感じながらも私は、初めてちゃんと彼の眼を見て笑みを浮かべた

 

「迷惑を掛けましたね?柄にもなく冷静さを失っていました。……感謝します、明智五郎くん?」

「……僕の事、知っていたんだね?」

「有名人じゃないですか、二代目探偵王子」

 

つい先週もテレビに出演していた今をトキメク探偵王子

ルックスも良く爽やかなイメージからお茶の間の人気タレント……私もミーハーではないから詳しくはないけど、送られてきた情報からは彼が本物の探偵だと報告されていた

 

「しかし、探偵って云う人種はお節介なのですか?新島さん経由で私の事を知っていたとしても伝言を頼まれるなんて」

「僕もそこまでお人よしじゃないよ。ただ……君が少し僕と似ていると思ったからさ」

「ふ~ん」

 

極道と探偵が似ている、ね……

そういう彼の表情は、テレビで見る彼とは掛け離れた、どちらかと言うと社会の裏側を知っている私達に近い表情をしていた。

暗く濁った社会の影……理不尽や横暴、裏切りなどを実際に体験したような曇った瞳を彼が持っている事に驚きはあれ、今まで会った男性には持っていない魅力に私は頬が緩んでいった

 

「ふふ~ん、この礼は必ず返すわ。……なんならデートしてあげるわ」

「はは、それは楽しみだ」

 

そう返す彼の表情は既にいつもの表情(かめん)へと変わっていた

 

 

6月20日―――

私はあの日の翌日、10日間ほどの欠席届を提出した

高校3年のこの時期に出す長期の欠席届に教師陣は首を傾げ、口を揃えて『病気』の心配をしてくれたが校長だけは口に出さずとも心なしか『安堵』しているように感じられた

 

おおよそ、信憑性がなかった渋谷の犯罪組織の件に真実味が浴びた為に動揺していたのだろう

そんな中、『稲山』が欠席届を出したと聞けば自ずと渋谷のマフィアに対処する為だと想像したのも容易い

勿論、私が校長なんかの為に動く気など更々なく、新島さんにいらぬ責任の矛先が向かない様にするためだ

 

勿論、彼女には軽くメールはしてある

いきなり10日も欠席するのだ。心配する必要はない事と生徒会の事をおねがいしますと……

そして最後のやり取りは―――

 

 

 

「To: MAKOTO NIIZIMA

 

     私も頑張ってみるね……

 

           From :TSUBAKI INAYAMA」

 

 

 

裏切られたのだからこの位の意趣返しはいいだろう

 

学校側から生徒を守る為に彼女は動く

世間側から生徒を守る為に私は動く

 

秀尽学園きっての会長副会長コンビとしての手腕を見せてあげましょう!………って息巻いたのは良いですが、ここ数日の成果はボロボロ

 

無論、わかった事もある

星は金城潤矢 独身32歳

高校中退後『運び屋』としてマフィアの傘下に加わり、長い下積み生活を送った後、渋谷区の幹部に昇進

渋谷は各地から流れる薬を目的地となる他の区画に中継する地域の拠点となる区画であり、彼は自身の経験と知識から『運び屋』に指示し、それなりに安全なルートを確立している人物

 

奴さんを探す為に先だって行ったのは色々と勢いの良い天草組への挨拶だ

……渋谷を島にしている天草組も稲山組と同じくクスリの売買を表向きは禁止しているので、隣接する稲山組の島にクスリが流れて来ている可能性を建前に声を掛け協力体制および稲山組の渋谷内での行動に目を瞑って貰っている

いくら冷戦状態であり敵対する可能性があろうとしても通す筋は通さなければいけない

無論、天草組の人員も稲山組の島での行動を一時的に許可している。……こちらがいちゃもんをつけている手前、ある程度の妥協も必要なのだ

 

天草の奴らを島に入れるのはリスキーだが、早期解決を目指す為仕方がない

爺ちゃんには迷惑を掛けるが、カタギに被害が既に出ている手前、苦湯を呑んでもらった

 

そして金城のシノギだが……本当に胸糞悪いモノであった

クスリの売買と運搬、それに調達。これだけなら只のクスリのバイヤーで憎悪感を抱かないのだが、奴は『運び屋』にカタギの学生を使っている

何も知らない学生を使う事で薬の出所と組への危険を減らし、もし捕まっても蜥蜴の尻尾切り自分達には何も痛手が無い。『運び屋』としては美味しい労働力である為、良く使われる手だが、本当に許せないのは、その後だ。

 

奴は『運び屋』を更に強請って小遣い稼ぎまでしている

部下に『運び屋』の学生を尾行させ、それを出汁に家族に被害を加えると脅迫し彼等から財産を巻き上げているのだ

 

百歩譲って堅気の学生を『運び屋』にして稼ぐのは許そう。金に釣られて引き受けた彼らも悪い……手痛い社会勉強として受け取って貰おう

だが、その後も手を出すのは許容の範囲を超える

誤解しがちだが、極道と堅気は持ちつ持たれつの関係にある。その事も判らず金を絞り取るしか頭にないマフィアは、だから嫌いなのだ

 

だが、ここからが苦労の始まりだった

この落とし前をつける為に情報収集も含め何カ所か奴らの拠点を潰して周っていたのだが肝心の金城が姿を暗ましたのだ

どうやら少し動きすぎたせいで警戒し相当深くに潜ってしまっているようだ

 

……時間がないと事を急いだ弊害だと反省はするが、残りは星の確保のみ

欠席届最終日まで粘ってみたモノの姿を捕える事は出来なかった

 

「最後まで手を出せなかったのは悔しいけど、これ以上の欠席は爺ちゃんが許してくれないし、仕方がないか………」

 

現場に出る事は出来ないが、策は練る事はできる

金城は金に執着しているようだし、頃合いを見て囮捜査でも仕掛けて見るのも一興と後の事は組の者に任せバイクのエンジンをかけた時―――黒塗りのハイエースに乗った新島さんとそれを追うタクシーに乗った彼が目の前に飛び込んできたのだ

 

「…………あの馬鹿ッ!」

 

突然の出来事に思考が停止してしまったが、二、三の瞬きの間には脳がフル回転で動きだし、バイクのアクセルを全開に回しタクシーの後を追いかけた

ただ単に知り合いの車に乗っているとか、探偵ごっこの延長だったら良かったのだが、あからさまに彼女達は攻め過ぎてしまっている

 

危険がある故、『攻め』ではなく『守る』役割を与える事で彼女の行動を抑制したつもりだったけど、今の彼女には『怪盗団』と言う切札があったのを忘れてしまっていた

そんな彼女が『守る』だけで終わる女ではない事は長年の付き合いからわかっていたのに不甲斐ない!

 

自身の考えの甘さに苛立ちを覚えながらも2台の後を追い、辿り着いた先は会員制の遊戯クラブであり、一度稲山組の者が見て回った場所であった。

……まさか敢えて手が入った場所に身を隠すとは私も本当に考えが甘い!

 

このまま私一人で仕掛けるのも一手、ある程度なら対応できる武器は持ってはいるが、中にいる彼女達が離脱した事を確認しなければ文字通り流れ弾に当たる可能性がある。……それに逃げられても仕留められても刑務所送りになる確率は高く、それは彼女達は望まない解決策であり、立場的にも咎められる行動だ

 

鉄砲玉になるのは軽率だったと頭を振りながらも、念の為に持ってきていたサラシをビルの影で腹に巻いて心構えだけでも作っておく。……事を起こすのは彼女達が解放されてから

既に組の者には連絡を入れたし3時間後には金城を押さえる事が出来るが、それより速く彼女達が奴さんの誰かと一緒に出てきた場合……助ける為に私は鉄砲玉になろう

 

これまでの学校生活楽しかったな~、やり残したことが無かったっけ?と自問自答し時間を潰していると顔色が悪い新島さんと彼等―――雨宮君、坂本君、高巻さん、そして明星学園の制服を着た長身の男性が店から出てきた

 

制服で捜査していた事実に驚きを覚え同時にクスリ漬けにされていない彼女らを見て安堵の息をこぼす

相手はクスリのバイヤー……もしもの場合は考えていたが今回は『小遣い稼ぎ』を優先されたみたいだ

 

ともあれ条件は満たされたと彼女達を保護する為に足を踏み出した瞬間―――

 

 

 

――――世界が揺れた

 

 

 

Next stage→ I am thy. Thou shalt be me

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