Persona5 ~Phantom Thief of Å Villain~   作:誤字脱字

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プロット練り直しましたので一部変更です



第四話 I am thou, thou art I

第4話 I am thou, thou art I(我は汝、汝は我)

 

 

渋谷―――

日本屈指の繁華街であり、若者の街と云っても過言ではなく若者と流行が集まる発展都市の筈なのだが、私が目の辺りにしている渋谷は、若者の街とは掛け離れた空から万札が舞い振り、地にはATMが動き回る奇奇怪怪(ききかいかい)な街へと変貌を遂げていた

 

新島さん達を待っている最中に連日の疲れが出たのか?と思い何度か頬を叩いてみたが、コレが夢でない事を教えてくれるのみで、正直お手上げ侍状態。だからと言って何もしない訳にも行かず辺りを散策している中で、解決に導いてくれそうなモノの検討は付いてきたのだが……

 

「……UFOよね、あれ」

 

奇奇怪怪(ききかいかい)な街を更に異色に染めているUFO……

まるでこちらを誘い込む様にUFOから伸びる階段の先には大きな建物が見え隠れしている

このまま街に留まっていても事態の変化は望めないし、宇宙人と遭遇したとしても人型なら殺りようはあると己を奮い立たせ階段を上った先には、やはり建物があった。……あったのだが―――

 

「……カネシロ銀行って何よ」

 

架空銀行よろしく日本銀行ほどの大きさをした似非臭い建物が聳え立っていたのだ

非現実的で馬鹿げている光景に本格的に頭が痛くなってきた

 

しかし、考えていても仕方がないと一階の窓を叩き割り室内に侵入、内部構造は銀行に似た作りになっていたが、人の気配はなく容易に探索する事が出来た。……出来たのだが何分、構造が可笑しくただ単に広い。それにエレベーターに鍵が掛っているようで、これ以上奥への探索は難しくなっていた

 

何かしら手を打たなくてはと考えながらも来た道を戻っていると、何やらエントランスの方で話し声が聞こえたので近づき2階に身を隠した。

耳を澄ましていると下の階から聞き覚えのある声が聞こえ、もしかすると思い縁から下を覗いてみると気前の良いスーツを着た小太りの男性と黒ずくめの人型そして……コスプレ集団と新島さんが言い争いをしていたのであった

 

「意味不明な銀行に侵入した先はコスプレ会場でした……一体どうなってんのよ、これ」

 

よくよく見てみるとスーツを着た小太りの男は金城であり、コスプレ集団と比べてインパクトは弱いが、逆に秀尽学園の制服の新島さんだけが浮いている様に見えて笑いが込み上げて来そうなモノだが、彼等の会話は決して笑えるモノでは無かった

 

「………まさか金城の客になったっていうの!?」

 

姉に払って貰え、お前が客を取れなど金城が口にする言葉はどう考えても裏の仕事を斡旋しているにしか聞こえない。そこから想像するのは容易く新島さんが金城に弱みを握られたと言う事実。

頭の中でスパークが走り彼らの会話だけで新島さんの状況を理解した私は腰が浮き、無策にも飛び出そうとした瞬間―――

 

『助けに行くのか?』

「ッ!……誰?」

 

聞き覚えのある声に呼び止められたのであった

ドクンドクンと大きく音をたてる胸を手で押さえながらもゆっくりと振り返った先には、私と瓜二つの容姿をした存在の登場に思わず後退りしてしまう

人間ありもしない事を体験するとパニックに陥ると良く聞く話ではあるが、実際に混乱は無く不気味さと一部の恐怖が私の感情を締めていた

 

『新島はカネシロの客になった。ならばカネシロと同じ道を行くオマエが助けに行くのは筋違いなのではないか?』

「………何を言っているのかしら?」

 

だが、此方の心情など知った事はないと話し始めたワタシはエントランスにいる彼女(にいじま)を指差しながら金色の目で私を見つめ問い質してきたのだ

 

『ヤクザとマフィアは組織的には全く違うモノだが悪事に手を染めて力を付け組織を大きくし地位を高めていく。組織の違いはあれ、カネシロは悪道を通るニンゲンでありオマエも同じく悪道を通る同業者だ。……同職の食い争いは不毛だとは思わないか?』

「……貴女にとやかく言われる筋合いはないわよ?」

『確かに筋違いだが、貴様の言動も筋違いだろう?ニイジマは自分の認識の悪さによってカネシロの客になった。……その行動に対しとやかく言う権利は貴様にもない。ましてや同業者の邪魔をする意味もないだろう』

 

本来、聞くに値しない言葉だが、何故か耳に…心に響き彼女の言葉に対し『確かに』と思えてしまっている自分がいるのに私は驚きを覚えると同時に怒りを抱いた

 

「……確かに今回の件は金城の方が一枚上手で新島さんの認識が甘かったのが原因。同業者として認めたくはないけど上手く立ち回ったと思うわ。だけど、だからと言って見捨てていい訳がない!私には……私には彼女を助けられる力がある!なら助けてあげるのが友達って言うモノじゃない!」

 

最早、公論は終りだとばかりに彼女達を助ける為に奇襲を仕掛けようと手摺に手を掛けた時、後ろに居た彼女がクスクスと笑い始めたのだ。下の階層には届かない程度のさほど大きい笑い声ではないが、妙に耳に響き……不安を駆り立てる声に(ワタシ)ワタシ()を睨み付けた

 

「……なにが可笑しい」

『助けられる力だと?……その力はカネシロと同じことをやって身に着けた力だろうに』

「なっ!?」

 

『なにを!』と反論する前に彼女は立て続けに言葉を紡いだ

 

『カネシロがやっている事は稲山組も通って来た悪道であり此方の世界ではよくある話だ……弱者を嬲り奪えるモノは全て奪い己が力へとする。その結果、弱者が淘汰されようが知った事ではない』

「ち、違うわ!私はそんなアコギなこと『あわよくば!』ッ!」

 

 

 

 

 

『私の客にしたかったと思っただろ?』

 

 

 

 

 

「ッ!」

『友達……。あぁ、確かに友達だ!今まで(いえ)の事で避けられ続けていたのに事情を知っても尚、変わらぬ付き合いをしてくれるのだから尚更大切にしたい!』

「………」

『しかし、いずれ別れる事になる!疎遠になる!それが高校卒業か、または明日か!オマエは折角できた友達を手放したくないのだ!』

「そ、そんなことは……」

『ならばどうすれば離れ離れにならなくてすむのか!?そうだ!自分の客にしてしまえばいい!そうすれば立場を利用し金を揺すりながらいつでも会える!永遠に!』

「そ、そんなのは友達とは言えないわ!友達って言うのは『そもそもニイジマは貴女の事を本当に友達だと、信頼を預けていると思っているのか?』ッ!」

『ニイジマの姉は検事だ。ヤクザと反対の位置にいる。もしかしたらニイジマが姉と同じ道を進んだ際の出世の道具にされるかもしれないぞ?』

「そ、そんなことは…」

『売り飛ばされずに、そして離れられない関係はどう築いたらいい?言葉の鎖よりも頑丈で丈夫な楔はなにかしら?……あぁ、そうだ。私の客にしてしまえば売られる事も離れる事も出来ない!』

「ッ!……じゃない」

『ふふん、貴女は私。私は貴女の代弁者なのよ……だから声を大にして言うわ!』

「…なんかじゃない」

 

なぜだろう……反論したいし怒りでどうにかなっちゃいそうなのに……自然と涙がこぼれ始めていた。私はワタシがわからない、今にも爆発しそうな気持が涙として溢れ出てくる

 

『本当はカネシロに嫉妬したのよ!私より先に友達(えいえん)を掻っ攫ったカネシロを!』

「ッ!あんたなんて私なんかじゃ「うぜえんだよ、この成り金が!」ッ!……え」

 

最早我慢の限界が訪れた瞬間、普段の彼女からは想像の出来ない怒声にフッと我に返った

唖然と彼女の方に視線を送ると頭を抱え苦しみながらもカネシロを睨み付け怒号を吠え―――蒼い炎が立ち上がると共に大型の単車(バイク)に乗った彼女が姿を現したのだ

 

「なに、あれ……ヨハンナ?」

 

趣味も講じて単車には詳しくなっていたつもりだが、見た事も聞いた事もない単車の登場に色々な事が頭を駆けまわる。カスタム車?でも排気量可笑しくない?そもそも新島さん免許は?などと色々と浮かぶがどれも全てが答えに結びつかない

 

『……ペルソナ。内なる自身に秘めたもう一人の自分。それは反逆の意志であり心の具現』

「ぺる、そな……心の具現……」

 

この答えを教えてくれたは先程までの勢いが嘘の様になりを潜めたワタシ―――

弱弱しく今にも泣き出しそうなワタシの金色の瞳と目が合わさり――――頭の中に声が響いた

 

 

 

 

【生まれた家なんて関係ない】

 

「ッ!?なにこれ!?」

 

【云いたい事を真っ直ぐに云える貴女だから友達になったのよ】

 

「これは、この間の…」

 

【確かに貴女の家は世間的には認められないのかもしれない。】

 

「…………」

 

【でも貴方は違うでしょ?】

 

「………そっか、そうよね」

 

 

言葉だけではない瞼を閉じれば脳裏に浮かぶ彼女の顔―――

私と言う人間を信じ真っ直ぐに見詰めてくれる貴女に私は助けられたのだ

奇しくも新島さんと同じく頭を抱え響く声に震えていた私は、表を上げると真っ直ぐにワタシを見つめた

 

「………あーぁ、本当に新島さんは速まった事をしてくれたわ。足並みを揃えてくれれば他にやり方があったって云うのに」

『……………』

「どうせ此方の世界に踏み込むなら私の眼の届く範囲。それこそ私の手の中なら良かったのに。………いつも私の想像を裏切る行動をとってくる。そう考えると確かに私と新島さんは相容れない立場同士なのかもしれないわね?」

『………』

「だからココがターニングポイント。今ではない未来において責任感の強い彼女の事だから金城経由で此方の世界に遅かれ早かれ首を突っ込んでしまうかもしれない。……貴女が心を鬼にしてあんなキツイ事を言ったのは、私との交友関係で彼女に迷惑が掛からない様にする為。……そして真っ黒な私が後ろ盾になって新島さんを此方の世界から守れるようにしたかったのね?」

『………』 

「稲山組も……爺さんもアコギな真似をして組織を大きくして力を得たのかもしれない。そして私はその恩恵を受けて育っていた。」

 

今まで疑った事は一度もない。

両親を亡くしてから男手一つで今まで育ててくれた格好良い大切な祖父だ。いや、疑いたくなかったのかもしれない。……格好良い極道である祖父がアコギな真似をしている現実を

 

「私が得た力はアコギな力。でも、貴方も聞いたでしょ?家なんか関係ないって真顔でヤクザの孫娘に云える新島さんを!だから私は信じたいし、力になりたい!例え悪党の力でも共に歩む事が出来なくとも!守る事は出来るって!そして友達を、この力の糧にはさせたくない!」

『……お前は誰だ?』

「ふふん、自分の名前も云えないのかしら?……私は関東指定暴力団稲山組組長が孫娘、稲山椿!悪の力を持って友達を守る女よ!―――ッ!」

  

 

名乗り上げた瞬間、地面から私を包む様に風が吹き荒れ秀尽の制服が蒼い炎に呑まれていき、次の時には黒色の和服をベースにした服装へと変化を遂げた

 

そして、もう一人の私も地から這い出る鎖によって雁字搦めに拘束されもがき苦しみ、鎖が肉体に食い込み至る所から血が滲み出ていたが、頭に響く声だけは穏やかであった

 

 

 

 

影を持っている人間だからこそ、光り輝くものが出てくる

 

影から出てくるそいつ独自の生き方、光に人は憧れる

 

日陰者だから光を拝んじゃいけねぇわけねぇ

 

我は汝、汝は我―――――

 

おめぇさんが、目ん玉をひん剥いてりゃぁ

 

見えねぇもんも見えんだろう

 

 

 

 

 

「えぇ!私は全て見ていくわ!光も影も!だから来なさい!」

 

かの声に応えるや否や私の口元に鬼の半面が現れ、歌う事を禁ずる

そんな半面が邪魔で邪魔で仕方が無く、手を掛け一気に引き剥し、声を高らかにペルソナ(かの者)の名を叫んだ

 

「刻め!ザトウイチ!!!」

「「「「ッ!?」」」」」

 

拘束されていたワタシの内側を食い破り躍り出るペルソナ―――ザトウイチは、二階の手摺から身を投げ出した私に続きエントランスへと飛び降りると彼女らを囲む黒い人型を一掃した。 

 

「真!」

「ッ!えぇ!」

「「フレア/メギド!!!」」

 

だが、まだ終わらない。

真に声を掛ければ当然とばかりに私に合わせて彼等と対峙する白鬼に攻撃を放つ

その衝撃は絶大で、白鬼だけではなく一掃した黒い人型も巻き込み消滅させたのであった

 

「な、なに!?」

「脱出するわよ!」

「あ、世紀末先輩チース!」

「……叩かれたいの?」

 

いきなりの奇襲と反撃にカネシロは事態の理解が追い付かない様子

それとは逆に落ち着きを取り戻した新島さんは後輩君とじゃれる余裕すら生まれていた

 

「遊びはそこまで。今なすべき事はっ!」

「えぇ、一時撤退よ!」

「ってもどこから!?」 

「出口は一つでしょ!ついて来て!」

「後ろ失礼!」

 

単車(ペルソナ)のエンジンを吹かし始めた時には、彼女が何をするのか理解したとばかりにタンデムシート……は無かったのでマフラーカバーだと思われる箇所に足を乗っけて彼女の肩に手を置いた 

 

「安全運転でお願いします!」

「初乗りで二人乗りは自信ないけど……行くわ!」

「コスプレ君達も早く着いてきなさいね!」

 

私の言ったコスプレと言う言葉に絶句している彼らを余所に新島さんは正面入り口を吹き飛ばし脱出を計ったのであった

 

 

 

 

ぐにゃりと世界が歪んだ

それはあの世界へと侵入した感覚と同じで戻ってこれると本能的に感じた時には見慣れた渋谷駅が目の前に存在していた

 

私からしてみれば異世界から行き成り、現実世界へと帰還を果たしたのだから周囲の人々に豪く驚かれると身構えたのだが、驚きの声はなく最初からソコにいた(・・・・・・・)かの様に通り過ぎて行った

 

まだまだ、あの世界の事やこの(ペルソナ)について理解が追い付かず、コスプレ集団もとい雨宮君達に連れられるがままに渋谷駅のポールベンチへと腰を掛けたのであった

 

「今まで生きて来た中で一番疲れたわ」

「……同感、です」

 

初めて扱う未知の力の反動と情報量の多さに妙に身体が重い……

全身の力と言うか生命力と言うモノが根こそぎ持って逝かれた様な怠惰感に駅の壁に背を預けポケットから飴玉を取り出し口に含んだ

瞼を閉じ、口に広がるミントの香りに少し顔を歪めながらも身体に染み渡って行く糖分が身体を癒してくれているのが判る

 

まだ回りきらない頭で雨宮君達と稲山さんの話を薄らと聞きながらも『お姉さんが検事』だとか、『私がもっとしっかりしていれば』とか後悔後に立たずとはまさにこの事だな~と軽く考えるが半面、雨宮君達の口から『怪盗団』と言うワードが出てくる度に彼等が噂の『怪盗団』であり、あまりにも無警戒な態度を取る為、軽く手を叩いた

 

それ程強く叩いていないのにも関わらずに怪盗団の視線を一斉に集める事が出来て、私ご満悦

 

「少しは警戒しなさいよ?こんな人通りが多い所で軽々しく『怪盗団』なんて口にしたらダぁメ」

「あ、わりぃ……って!おぃい!一緒に居たから勘違いしてたけど思いっきり部外者じゃねぇか!」

 

ふふ~ん、素直は美徳!

坂本君は素直に己が間違いを謝り、頭を下げたが直ぐに私が部外者と言う事に気づき大声を上げ、注目を浴びそうな行為を再び行ったので私はにんまりと笑みをこぼし、そして表情を戻した

 

「金城潤矢……未成年に裏の仕事を斡旋して、それを脅迫材料にして金を巻き上げ、その家族をも更に脅すアコギなシノギで金を稼いでいる小悪党。」

「「「「「!?」」」」」

「彼の縄張りは渋谷全体。……天草組の島だけど彼等も隠している感じに思えなかったし鼠が入ったって所ね?」

 

同意を求める様に彼らに話を振るが、当の彼等と言えば猫を囲みながら相談事をしているようで――――

 

「お、おい!なんでコイツ、金城の名前を知ってんだ!?まさかッ!」

「いや、決めつけるのはまだ早い。彼女はペルソナを使っていた」

「だけど、敵じゃねぇって訳もないだろ!」

「うむ……」

 

―――……猫がしゃべった!?

き、き、聞き間違えじゃなければ確かにあの黒猫は人語を話していた。まさかあの空間には侵入すると幻聴を及ぼす副作用があるのか!?で、でも!幻聴作用があるのであれば個人に起るモノで彼等全員が黒猫の言葉が理解出来ている様に見える訳で集団幻聴!??

 

回り始めた頭が余計な事まで答えを導き始め終いには『語尾はニャンじゃない』と言う画期的で斬新で未知の答えを出したところで、肩に手を置かれ正気に戻れた

 

「安心して、彼女は敵じゃないわ。どっちかと言うと彼女も金城を探していた口だから」

「え?それって…どういう意味?」

「……いいかしら、稲山さん?」

 

許可を貰うべく視線を合わせてくれる新島さんに私は頷く

 

「彼女のご実家は極道なのよ」

「極道って……ヤクザか!?」

「竜司!声デカいって!」

 

三度目の正直ならぬ三度目の大声は坂本君と高巻さんの二人から発せられたが、内容が内容だけに洸星高校の子も目を大きく開けて驚きを露わにしていた

 

「新島さんが言った通り、実家絡みで金城の居場所を探していたのよ。そしたら見知った顔が数日前から探していた金城のアジトへと連れて行ってくれた。予想外な事は、金城の顧客になっているなんて何かの冗談だと思ったわ。でも、これで金城の居場所が分かったから、この事に対してはみんなに感謝しているわ。……ありがとう」

 

改めて頭を下げて感謝を告げる。勿論、みんなをこれ以上、裏社会へ干渉しないように釘を刺す為でもあるが、洸星高校の子が口を開いた

 

「感謝、か……金城をどうするつもりだ?」

「貴方は?」

「洸星高校二年、喜多川佑介。画家をしている」

「………あぁ!斑目さんのお弟子さん!?」

 

斑目の名前が出た瞬間に顔を歪める喜多川君

彼の名前と顔は【贋作・さゆり】の件で斑目の内弟子と言う事で資料に上がっていたのを思い出し思わず声に出てしまったが、不正を働いた師匠の事を言われるのは不快だろう

 

喜多川君に軽く謝罪し金城の処遇について濁して伝えた

 

「勝手に人様の島でアコギなシノギをやっている奴の末路なんて一つしかないでしょう?」

「いや、そうではなく―――」

「脅迫されている件を心配しているのね?大丈夫、元凶がいなくなるのだから脅迫の件は無くなるわ。」

 

敢えて喜多川君の追及を押し切る形で会話を終らせる

【どうするつもり】と聞いて来ているので、どうなるのか―――凡その想像が付いているだろうけど学生が気軽に入り込んでいい内容ではないでしょ?

 

「……殺すのか?」

 

だと言うのに雨宮君はその一線を何の躊躇もなく超えて来てしまった

案の定、【どうするつもり】の意味に気づいていなかった坂本君と高巻さん、それと猫?は驚きの声を上げていた

 

「………貴方、空気読みなさいよ?知らなくても良い事だわ。この件は忘れなさい」

「それは出来ない」

「……お姉さんの話を聞いてなかったのかな?この件はどう考えてもカタギが口を挟んでいい問題ではないのよ?」

「だからって殺すのは間違っている」

「貴方、自分の立場をわかっているのかしら?いくら、金城が子悪党だとしてもコッチ側の人間ならコッチのやり方で落とし前つけるのが筋よ。金城なんかに弱みを握られている貴方はどうするつもりなのかしら?」

「法の下で裁きを受けて貰う」

「法って……」

 

彼の言葉を受けて思わずため息が出てしまう

悪人を法の下に裁きを降すなんて、今の日本では到底無理な事だと理解していない

豚箱に入れられたとしても直ぐに出て来て、同じ道に戻ってくる事など目に見えて判っていると言うのにそれを成そうとするなんて……

 

判っていない、と彼を諭す為に口を開こうとした時に新島さんが間に入って来た

 

「ごめんなさい、稲山さん。貴女の忠告を受けていたのにこんな事に巻き込んでしまって」

「……どちらかと言うと巻き込んだのはコッチですわ。私が余計な事を話さなければ巻き込まれた可能性は減ったモノ。でも安心して。カネシロは稲山組がケリを付けるから」

「……そのことなんだけど、金城には私が、いえ私達がケリを付けるわ」

「ッ!」

 

まさかと思い、彼女の顔を二度見してしまうが、彼女の顔から冗談ではなく本気でそうしたいと訴えているのが感じ取れた

 

「貴女の考えている事はわかっている。でも、私は彼等と一緒に金城を改心させたいのよ」

「改心?」

 

聞き慣れない言葉に頭を傾けると先程まで沈黙していた猫?が雨宮君の肩に乗っかり、『改心』の詳細。更にはあの世界の事、あの力の事を教えてくれた。

現実放れしている内容だけど実際に体験した事なので信じるを得ないと言った感じかな?ちなみに猫?の名前はモルガナと言うらしい

 

「……なるほど、ね。さっきの金城は本物じゃなくて心の具現。そしてあの世界の心を盗めば改心し、罪を償うと」

「あぁ、正義を成す為だ」

「………正義、ね」

 

正直、彼等が言っている事が事実であれば金城は豚箱を出た後は更生し、二度と此方側の世界へとは足を踏み込んでこないだろう。悪事を起こす気が起きないのであれば

 

しかし、それよりも気になった事ができてしまった。それは―――

 

「なら稲山組にも予告状をだすのかしら?」

「「「「ッ!」」」」

 

【理不尽なルールや強者に嬲られた人々を助ける】と言った彼等の行動理念は逆に云えば、彼等は【理不尽や強奪者、社会的強者】をターゲットにしている事が明確であり、社会的強者であり強奪者であり理不尽なルールを敷いている反社会的勢力など格好のターゲットであるのだ

 

「自分で云うのもなんだけど、稲山組は金城とは比較にならない程の巨悪よ?正義を語るのであればターゲットになっても可笑しくない。」

「……」

「正義を語る怪盗団はどうするのかしら?」

 

無論、私が判る範囲で現在、稲山組に黒い噂は流れてはいないし、ウリもクスリもご法度にしている。だが、過去は判らない。もう一人のワタシが言っていたように過去に悪事に手を染めていた可能性は捨てきれないし、むしろやって来ていただろうと今の私ならわかる

 

どうするのだと視線で訴えかけると彼は重く口を開いた

 

「……今は出さない」

「理由は?」

「……貴女を見ていると悪党だとは思えない」

「ふ~ん、私は、まだ染まっていないだけで稲山組は真っ黒かもしれないわよ?」

「ちょっと椿!」

「新島さんは黙っていて!」

 

流石に云い過ぎだと口を挟んでくる彼女を黙らせ雨宮君を睨み付ける

別に意地悪して彼を試しているのではない。彼の瞳にブレは無く本当にそう思っているのが手に取って分かるのだ。ただあの時、廊下で見せていた反抗的で強い意志が篭った瞳で私を見つめ返してきて、それがもう―――――タマラナカッタ

 

彼との睨み合いは私の根負け、思わず声を上げて笑ってしまった

 

「くふ、くふふ!くふふふふ!悪党に見えないから盗まない狙わないって綺麗事過ぎるわ!正義を語るのであれば芯を通しなさい!」

「………芯は通している」

「ふふん……でも、気に入ったわ。」

「?」

 

首を傾げる彼に私はスマホを取り出し彼等に見える様に翳した

 

「不思議なモノね?結構な時間が経っていた筈だけど、現実だとあまり時間が経っていない。………本当なら私がココにワンコールするだけで金城の所に稲山組の構成員がカチコミする所だったのですが……辞めましたわ」

「「「ッ!」」」」

 

私の言葉に顔色を変える彼等だが雨宮君だけは違った

 

「……狙いはなんだ?」

「流石ね……ここ数年、東京の勢力図に大きな動きがあったわ。勿論、稲山組にも影響を与える程の大きな変化。それが、意図的に引き起こされている可能性があるの。……目に見えない様な力によってね?」

「……」

「目に見えない力……これは私の勘だけど、この力や異世界に似た様なものだと思っているわ」

「……それで?」

「貴方達が正義を成すというのであれば後々巨悪は立ち塞がる。その中には私の御相手がいるかもしれない。ならばこの力に理解がある貴方達に協力する事が解決の近道だと思ったわけ」

 

タダよりも高い物はない

私は貴方達に私と言う戦力を渡し、貴方達は私に情報を与えてくれる

ギブ&テイクの関係が後々、裏切るとしても対立するにしてもいい関係を生む出してくれる。……まぁ、彼等にとっては些細な事なんだろうなぁ~と彼等の顔色を見ていると嫌にも思ってしまう

無条件の信頼、そして期待が篭った瞳は、こそばゆいが嫌では無かった

 

「いいだろう、契約だ」

「オーケー、宜しくね~?」

 

無論、彼はどちら側になったとしても彼の正義の下、行動に移せると判っているのも大きい

差し出した手を握り返し、笑みを浮かべる彼を見つめていると脳裏にあの声が聞こえてくる

 

 

我は汝…汝は

汝、ここにたなる契りを得たり

 

契りはち、

囚われをらんとする反逆の翼なり

 

我『顧問官』のペルソナの生誕に祝福のを得たり

自由へと至る、なる力とならん……

 

 

だが、それは私にかけられた言葉ではない

 

 

雨宮蓮君

色々と噂の絶えないニューフェイスである彼。

数多の絆が貴方を強くするのであろうと私は直感的に感じたのであった

 

 

 

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