あさひとふゆことときどきめいちゃん

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拙者、ストレイライト好きの新参侍。
義によってこのSSを投稿致す。


あんまんとピザまん

最近、何か二択を迫られるときに天使と悪魔が現れるようになった。

 

『やっぱりここはあんまんがいいっすよ』

『はぁ?何言ってんのよ、ピザまん一択よ』

 

コンビニのレジに並ぶ私の背後には、二頭身にデフォルメされた女の子二人が言い争いを繰り広げている。

 

きらきら輝くラッパを持った白い天使の子は“あさひ”

とげとげ鋭い三叉槍を持った黒い悪魔の子は“ふゆこ”というらしい。

 

初めて彼女たちが見えたときは、私の頭も仕事のしすぎで遂に逝かれてしまったのかと思った。

 

寝れば消えるかとも考え、病気休暇をとって一日中布団の中で温もりに包まれ養生したが、次の日の朝にはまた現れてしまった。どうやら目を背けるわけにはいかないらしい。

 

私は彼女たちと折り合いをつけつつ、何かとやかましくなった日常を過ごしていくこととなった。

 

『ふゆこちゃん甘いものが好きって言ってたじゃないっすか』

『よく考えたらふゆって甘いものそんなに好きじゃなかったわ。あんたこそ前にピザ食べたがってたじゃない』

 

天使と悪魔なので当然なのかもしれないが、二人の意見はよく対立する。

毎度のこと耳元できゃいのきゃいのと騒ぐので、それを聞かされる私は気疲れすることもしばしばである。

 

さて、姦しくも進行する本日の議題は『あんまんとピザまん、どちらを購入するのか』だ。

 

『仕事終わりには甘いものが身体に沁み渡るっすよ〜。疲れてる時にピザまんなんて食べたらチーズが胃もたれしちゃうっす』

 

『いいえ、疲れてる時にこそ栄養が必要なの。ピザといえばトマト、トマトといえばリコピン』

 

『りこぴん…でも、あのピザまんは皮まですっごく赤くて身体に悪そうっすけど』

 

『赤いのはリコピンの色素よ。リコピンには老化防止や血液の流れの改善が期待できるの。あんたも天使ならそれくらい覚えときなさい』

 

フッと口角を上げ得意げに笑うふゆこ。しかしピザまんに健康志向を求めるのもどうなのだろうか。早さと手軽さが売りのコンビニ食は健康とは些かかけ離れている気がしなくもない。

 

『ほうほう……りこりこぴーん。りこりこぴーん。あ、天界から緊急リコピン速報っす!』

 

『…ぶっ飛ばされたいのかしら〜?』

 

ふゆこは『あ〜さ〜ひ〜!』と口から火を吐きながら天使の頬を左右へと引っ張った。

びよーんと伸びる天使のほっぺは、彼女の肌の白さも相まってまるでお餅のように見える。

怒られている本人は『ふぃふぁふぃっふ〜(いたいっす〜)』と笑って、じゃれあいを楽しんでいる様子だ。

 

まあ、話しを聞いてばかりでは何も始まらない。私も少し考えるとしよう。

 

ガラスケースの中を見る。

保温されている商品の中には、あさひの推すあんまん、ふゆこの推すピザまんが鎮座している。

 

あんまんは、コンビニでよく見かける普通のあんまんだ。

ほかほかと蒸気を立てる白い皮に齧りつけば、ほんのりと甘い黒ごまの餡が優しく顔を出してくれることだろう。

良くも悪くも普通のあんまんだ。

 

やはり問題はピザまんか。

こちらは見た目からしてエキセントリック。具材が丸々と詰まった皮は、まるで地獄の閻魔様もかくやといった具合に赤く染め上げられている。

その赤さはリコピンとかそのような生易しいものではない。明らかに唐辛子か何かが練り込まれた一品のようだ。

滅多にお目にかかれるものではないというのは確かだ。数量限定という点も評価のポイントか。

 

「次の方どうぞ〜」

 

『急に黙ってどうしたのよ、早く頼みなさい』

『あんまん!あんまん!』

 

まずい、前にいた客は全て掃けてしまった。

悠長にはしていられない。

 

どうする?

普通ならあんまん一択だ。あさひの言うように、仕事で疲れきった身体には甘いあんまんが身に染みるだろう。

 

だが、それで本当にいいのか?

この天使と悪魔の女の子たちは、私が二者択一の状況に陥らなければ姿を見せない。

 

逆説的に考えれば、彼女たちが現れたということは、あの激辛ピザまんに惹かれている自分がいることもまた事実なのだ。

 

ここは冒険するべき時ではないのか?

取り敢えずあんまんでいいや、なんて思いで買ってしまっては後悔するのではないか?

いや、する(反語)

 

くぅ、どうする。

あんまんか、ピザまんか。

安全牌か、危険牌か。

 

どうしたら…

 

『やっほープロデューサー…じゃなくて、ふぉっふぉっふぉ、困っているようじゃのうPさんや』

 

…!

頭の中に映像が直接流れ込んでくる。

 

眩しいほどに輝く後光を背に現れた黒いシルエット。

徐々に光は収まっていき、その姿が明らかとなる。

 

手元には取手に大きな宝石をはめ込んだ杖。

顔にはあまり似合っていない立派に蓄えた白い髭。

胸元にまで伸びた燻んだ金髪。

日に焼けた健康的な肌。

そして、ギャルっぽさが漏れ出る人の良さそうな性格。

 

貴女は、賢者『めい』!

 

『うむうむ、迷いもまたヒトの持つ……え〜と、台本台本…あ、つけ髭が落ち……コホン、迷いもまたヒトの持つ“かるま”よ」

 

賢者めい。

私はどちらを選べば…

 

『どちらか選べないとな…では逆じゃ。逆に考えるのじゃ…』

 

逆じゃ…逆じゃ…裏返すのじゃ…

とヒントを残し、セルフエコーの演出と共に賢者めいは姿を消した。

 

逆?

逆とはいったいなんだ?

 

いや、ふゆことあさひの答えを裏返すということは───

 

なるほど…彼女のおかげで答えが見えた。

そうだ、つまりここで出す答えは!

 

「肉まんください」

 

『オイ!(っす!)』

 




・あさひちゃん 天界であぶれていたらふゆこに出会って懐いた。

・ふゆこちゃん 澱んだ魔界に辟易としていたらあさひと出会って懐かれた。

・めいちゃん たまに二人を仲裁しに現れる(レックウザ並感)

あさふゆに
めいちゃん混ざって
てぇてぇな
あんたはここで
ふゆと死ぬのよ  終



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