陽の昇りたる異界、星落とされたる覇者   作:C6N2

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ドイツ的作戦名。

ドイツかぶれなのは陸軍だろって?
こまけぇこたぁいいんだよ!!



第一〇話 ロデニウス海演習作戦

 

「まるで蛆虫だ・・・」

 

茂中一飛曹は二式飛行艇の操縦員席から、水平線まで広がる景色を見てそう独りごちた。

 

見渡す限りの船、船、船。まさに海に(たか)る蛆の群れだ。

帆船だから良かったものの、これが現代艦艇だったらと思うと鳥肌が立つ。

 

「そう酷く例えてやるな。中世国家がここまでの船を用意できたこと自体奇跡みたいなもんじゃないか。

まったく、戦列艦だったら機銃弾だけで一網打尽なんだがなぁ。

1回の出撃で十隻ちょっとしか屠れないとなると困ったもんだ。」

 

宮間機長からそう返される。

 

「先着の連中は、上手いことやれてるんでしょうか」

 

「いくら鈍重な飛行機でも、トカゲには落とされんだろう。」

 

今回の航空攻撃は、日本軍では珍しい偵察爆撃作戦である。不可侵条約締結後、少しずつ行われている日米の技術交流の成果のひとつでもあった。

二式大艇や九八陸偵、さらには制式採用前の試験機まで、出撃できる機体を台湾などからかき集め、爆装可能なものは爆装させたうえで、偵察と爆撃を一挙に行うというのだ。

敵艦隊と接触した編隊はすぐさま位置を打電して爆撃を行い、他の編隊もそこへ集合して五月雨的に艦隊を攻撃する。

米軍にはこの任務専用の機体が存在するが、鈍重なワイバーン相手ならば機種は問題にならないとして、とりあえずなんでもいいから出撃することになった。

 

『後方より敵飛竜接近』

 

『了解、機銃射撃用意』

 

見張りの報告を受け機長が指示を飛ばす。敵の迎撃はあるものの、防御機銃で十分に対応出来ている。

ただ油断してはならない、機体の性質上、火炎弾に当たれば機内に漏れた気化ガソリンに引火する危険があった*1

 

『茂中、そろそろだ。高度一〇(ひとまる)まで下げろ』

 

『高度一〇、宜候(ようそろ)

 

『爆撃目標はどれにしますか?』

 

『なるべく大きい奴だ。旗艦的役割がある可能性が高いし、運が良ければ周りも巻き込める』

 

『了解しました』

 

爆撃手と機長の会話を聴き、自分も大物を探しにかかる。といっても探すだけだ。爆撃機・偵察機においては、操縦員に求められることは偵察員の指示通りに操縦を行うこと。

 

『針路(ふた)(はち)(まる)

 

『針路二八〇、宜候(よーそろー)

 

どうやら目標が定まったようだ。

 

『ちょい右・・・・・・針路そのまま』

 

『用意・・・・・・てぇっ!』

 

投下索を引く音がして、機体が少し軽くなる。

 

『命中!』

 

しばらくして、敵船撃沈の報が入る。

難易度としてはほとんど爆撃演習に近い。

あとはこれを繰り返していくだけだ。

 

 

 

 

──────────────────────

 

海将シャークンは、これまでに経験したことの無い攻撃を受けたとの報告に、純粋な恐怖を感じていた。

 

「海が・・・爆発した、だと?」

 

司令部から存在を通達されていた日本の飛行機械は、ワイバーンの迎撃をものともせず我が艦隊に攻撃を仕掛けてきていた。

 

初めのうちは連射型の小弾での攻撃だったため、被害もそこまで多くなかった。

だが、先程現れた一回り大きな飛行機械は・・・格が違った。

その腹が空いたと思うとそこから何かが飛び出し、海面に当たると爆発するのだ。

木造船からしたらひとたまりもない。たとえ直撃しなかったとしても、至近弾の衝撃でたちまち船体に穴があき、そこから浸水して沈没するに至る。

既に4隻が、この攻撃で海底へ引き摺り込まれていた。しかも敵は大きめの船を集中して狙っているようで、先程は第6艦隊の指揮艦が我が艦との通信中に攻撃を受けたため、攻撃の詳細が生々しく伝わってきた。

 

「まずいな・・・

通信長。」

 

「はっ。」

 

「全艦に伝達したまえ。『密集隊形を解き、ある程度散開せよ』」

 

「『密集隊形を解き、ある程度散開せよ』了解しました」

 

回避もままならず沈んではたまったものではない。それに密集していると数隻が一挙にやられる可能性もあった。

 

「提督。ここはワイバーン全騎をもって迎撃に当たることを具申します。」

 

作戦長の案を聞き・・・・ワイバーン全騎だと?

 

「なぜ全騎なんだ?120騎を喪失した本隊がそれを容れるとは思わないが」

 

「流石に容れるとは思っておりません。あくまで交渉術、ですが実際あの飛行機械相手には一機に百騎でかからないと厳しいでしょう。それも、問題の爆弾投下型飛龍なればこそ火炎弾で爆発させられる可能性がありますが、それ以外ではそもそも火炎弾が通用するかもわかりません。

実際ギムの戦いでは火炎弾が機体に当たってもビクともしなかったとの報告もあります。このことから、200騎ほどをもって一斉に攻撃し、それが敵の弱点を突く僅かな可能性に賭けなければ敵の攻撃を防ぐのは難しいかと・・・・・・」

 

「・・・なるほど解った。ものは試しだ、訊いてみよう。

通信長!」

 

──ここに、ロデニウス沖大海戦、その第一幕は山場を迎えようとしていた。

 

 

 

──────────────────────

 

「3時方向より敵増援!数・・・50以上!」

 

「畜生めが!いったいどんだけ増えりゃ気が済むんだ!」

 

福谷二飛曹の報告を聞き思わず悪態をついてしまった。

もうかれこれ5騎は落としている。航空機相手なら立派なエースだが、実際には100騎を越している敵騎の中のほんのひと握りでしかない。

 

「芦野、片っ端から落とすんだ!」

 

「了解!」

 

操縦員に檄を飛ばすが、如何せん敵が遅すぎる。

空戦訓練を受けているとはいえ、半分の速度の敵と戦うことなど今回が初めてなのだ。

7.7mm機銃の携行弾数は600発。だが慣れない敵に当てるのは容易くなく、5騎を落とすために100発はすでに消費されていた。

 

「そろそろ慣れてきましたよ、二連射もすれば一騎は片づけられます」

 

「頼んだぞ」

 

すでに250kg爆弾2発は投下してあるから運動性能が高くなっているのが幸いか。

しかし懸念事項は他にもある。敵の発射する弾は弾速こそ遅いものの火炎弾であり、エンジンに吸い込むと非常にまずい。

慎重に回避する必要がある。

 

「後部機銃も動作良好ですよ!ですが遠隔操作だと・・・やはり手動旋回よりも扱いづらいですね」

 

「試作機なんだから文句言うんじゃないよ」

 

この機体は十三試陸戦と仮称された試作陸上戦闘機であり、今回は実用試験の一環として出撃している。この結果次第では陸上偵察機としての制式採用が決まるらしいが、制式型では手動旋回に戻してほしいものだ。

 

 

とそのとき、後部座席からあっと声が上がった。

 

「敵、大艇へ斉射!」

 

「斉射だと?」

 

振り向くと───

 

「なっ!!まずい!」

 

数え切れない程の敵弾が、後下方を飛ぶ二式飛行艇へと殺到していた。

 

「芦野、機銃を──」

 

「無理です!撃てたとしても大艇に当たります!」

 

無為にも時間は流れ、火炎弾が機影と交錯する。

 

「命中弾数は確認できた限りで5発、被害は・・・」

 

「・・・まずいな、エンジンが一基お釈迦になっとる」

 

右翼の外側のエンジンから煙が出ていた。これではあの機体は戦線を離脱するより他無い。場所によっては基地より前で緊急着水となる可能性もある。

 

「援護するぞ。トカゲを追っ払──」

 

「機長、九八陸偵が・・・・」

 

「なんだと!?」

 

視線を移すと、確かに、両エンジンから煙を吐いて高度を下げていく九八陸偵の姿があった。

 

「相当な手練(てだれ)だな・・・・。

見張りを怠るな、不意打ちに厳重警戒だ」

 

歯噛みする思いで命令する。異世界における海軍航空隊の初陣は、決して華々しいものとはならなかった。

 

 

 

──────────────────────

 

「第一次攻撃は()()()に終わったようだな、なんとも素晴らしいことではないか?」

 

「・・・」

 

叭波瑠散亜皇国派遣艦隊改め久和與伊禰(クワトイネ)公国救援艦隊の旗艦長門、その艦橋は重苦しい雰囲気に包まれていた。

 

「帆船50隻、敵騎120騎ほどと引き換えに二式大艇一機中破、九八式陸偵一機喪失・・・

はっきりいって戦果に見合うとは言い難いですな」

 

「敵の実力を甘く見ていました。ワイバーンといえど数百騎集えば航空機部隊を翻弄し得るということが考慮されていなかったのが大きな要因です。」

 

「・・・まあ、ああだこうだ言っても仕方がない。散った者の為にも、敵艦隊を壊滅させる必要がある。」

 

そう言うのは司令官の小澤中将。

 

「しかし・・・帆船を沈めるのに艦砲を以てする、というのは牛刀割鶏の典型例だな。しかもその牛刀を、刃毀れを気にするぐらいに酷使せねばならんとは、どうにかならないかね・・・」

 

水雷屋の小澤からすれば、戦艦の主砲すなわち駆逐艦における魚雷を、大砲すら持たない貧弱な木造船に態々使うのは非常に勿体ない、そう思ったからこその愚痴である。

 

どうせこの世界で確認できている船舶はすべて帆船なんだから、ラ厶付きの巡洋艦(八雲)でも連れて来ればよかったかな、とほぼ無意味な後悔をする程度には不満を感じていた。

 

「小澤司令、今回ははっきりいって異例づくしの戦いです。まさかこの現代に帆船4000席を打尽する任務を与えられようとは誰も思いません。この程度の消費は仕方がありませんよ。

或いは今回の作戦を、演習とみなせばいいのではないでしょうか?」

 

参謀長が口にした単語に興味を覚える。

 

「どういうことかね?澤田君」

 

「平時であれば演習で実弾発砲などできません。演習で砲身を摩耗させるのが好ましくないのは先程司令官が言ったとおりです。

ですが今はあくまで戦闘状態。しかも敵は演習標的としても申し分ない帆船。砲術員の腕を試し、また練度を上げるには絶好の機会ではありませんか?」

 

「しかし・・・そのために砲弾を無駄にするのはあまりに」

 

「我が国には既にクイラという強力な味方がおるではありませんか。気にする事はないと思いますが」

 

「・・ほう」

 

なるほど確かに、演習と看做すという手はある。思いつきこそしなかったが名案かもしれない。

 

「なるほど、それは面白いな。

では改めて確認するが、この案でよろしいか?反対するものは手を挙げよ」

 

沈黙。

 

「分かった。では作戦の詳細の検討に入ろう。

さしずめ作戦名は───

───ロデニウス海演習作戦、とでもしようか」

 

 

 

 

──────────────────────

 

「まったく鬱陶しい・・・」

 

海将シャークンは恨めし気に空を見た。そこに友軍竜騎兵の姿はなく、代わりに鉄の竜が編隊を組んで悠々と飛行している。

 

最初の攻撃に対して圧倒的多数のワイバーンをもってあたったことで、多すぎる損害の代わりに敵を2機撃破することに成功した。

 

だが敵の意思はその程度では挫折しなかった。最初の飛行機械の部隊が去ったのち、しばらくすると今度は明らかに制空任務に特化した部隊が現れたのだ。

瞬く間に竜騎兵が10騎単位で撃墜されていくのを見て、シャークンは竜騎士たちに撤退を指示した。(いたずら)に竜騎兵を喪失するよりも、帆船の喪失を以て代えたほうがいいと判断したためである。

 

敵の攻撃がこれだけで済めばいいが・・・と、儚い期待を抱いてからすでに2日が過ぎ、1639年4月15日の朝。

 

航空攻撃だけで艦隊を止めることはできない。このままいけばマイ・ハークへたどり着ける、そう思っていたのだが───

 

 

「第1艦隊より入電!『我、敵艦隊と遭遇す』!」

 

「ほう。敵艦隊はどういった内容なのだ?」

 

「それが・・・」

 

と、通信長が記録用紙を見せてきた。

 

『敵艦は鉄でできている。全長は200mを越している!』

 

 

「頭がいかれてるんじゃないか?

そんな船、パーパルディアですら持っていないはずだ!」

 

「しかし第一艦隊の全員が幻覚を見ているというのも考え難いですが・・・」

 

その時、突然おどろおどろしい音が響いた。

 

「雷か?大した雲はないように見えるが・・・」

 

直後。

 

 

()()()()()

 

 

 

 

「「なっ!!??」」

 

数人の声が重なった。

まだ敵艦の姿は見えない。見えないが、明らかに敵艦の存在を示すものがそこにはあった。

 

艦隊旗艦「ハーク・ロウリア」から数千メートル離れたところではあるが、旗艦の甲板から見ても度肝を抜かされるような水の柱が、あわせて8本屹立していた。

 

「・・・」

 

司令部の要員は暫しの間言葉を発することすら出来なかった。

 

「・・・いったん艦内に避難だ。

通信長、第1艦隊旗艦へ連絡せよ。敵がどのようにして攻撃を行ったのか報せるように、と」

 

「・・・はっ。」

 

先ずシャークンが口を開いたものの、その顔はいかにも苦々しいものだった。

 

「情報からして、明らかに日本の船でしょうが・・・」

 

「・・・まだだ。まだ可能性はある、あれほどの威力の魔導はそう連発出来んだろう。とにかく第1艦隊からの情報を待つよりあるまい」

 

数分後、通信長が慌てふためいて戻ってきた。

 

「提督!第1艦隊旗艦「アラル」との連絡がつきません!!」

 

「なんだと!?」

 

既にやられたということか・・・おそらく大きい艦であるために狙われたのだろう。

副官のヘクトへと疑問を口にする。

 

「ヘクトよ、司令部を他の艦に移すことは可能か?なるべく小さい艦だ。」

 

「確かに可能です。しかしその場合、艦隊運用の肝となる通信機能が大幅に衰えますから、そこが懸念点です」

 

「そうか・・・

まあいい、それはひとまず置いておこう。

第1艦隊のうち通信機能を備えている船は他にもあるだろう。そちらにも聞いてみたまえ」

 

「既に部下に確認させております」

 

「手早いな。・・・普通に考えれば、ワイバーンの援軍を要請すべきだろうが・・・」

 

「またあっという間にやられては元も子もありません」

 

八方塞がりだ。

と、今度は通信員が入ってきた。

 

「失礼致します!第2艦隊から連絡が!」

 

「何?第2艦隊だと?」

 

第2艦隊は、先鋒を務める第1艦隊の左後方に展開している。普通に考えて、まだ敵の姿を仔細に捉えてはいないはずだが・・・。

 

「とにかく読みあげたまえ」

 

「はっ。『敵は我が方に比して圧倒的に優速である。敵艦隊はその一部を我の北方に展開させつつあり』」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「・・・これは」

 

「失礼します!第1艦隊臨時旗艦からの情報です!

『敵艦隊は総勢19隻。超大型艦7、大型艦12。敵速は遅くとも時速()()()()を越している。

敵艦は鉄でできた筒を爆発させたかと思うと、そこから何かが飛び出してきて水面が爆発する。非常に強力な魔導攻撃と思われる』」

 

「40だと!?我が艦隊は早くても時速10kmなんだぞ!」

 

「まずいですな・・・このままだと我が艦隊は為す術なく包囲されます」

 

「しかも、その攻撃方法、敵船は確実に魔導砲を積んでいるぞ!パーパルディアの砲艦・・・いやもしかしたらそれ以上かもしれん!」

 

「「なんですと!?」」

 

司令部の要員はパニックになりかける。当たり前だ、自分たちの戦っている相手が列強と同等の可能性があると言われて落ち着いている方がおかしい。

 

「この分では、第1艦隊を救援する手段は・・・」

 

「それどころか我々はいったい、マイハークへ到達することなどできるのか!?」

 

さらに十数分後、凶報が舞い込む。

 

「・・・第1艦隊、臨時旗艦との通信も途絶しました・・・!」

 

「なんだと・・・もはや第1艦隊は突破されつつあるということか・・・」

 

このままでは、この旗艦も危ない。

 

「・・・仕方あるまい。

通信長、全艦へ連絡。コーカス港に向け撤退を開始せよ。急げ!

そして、司令部総員はいったん別の船へ避難だ!通信員は任務完了後速やかに追随せよ!」

 

その声を聴き、艦内の人員が慌ただしく動き出す。艦長の「取舵一杯、進路反転!」という号令が聞こえた。

 

 

急ぎに急ぎ、やっとのことで移動を終えたのは20分後のこと。

その直後に、艦隊旗艦だった「ハーク・ロウリア」は飛行機械からの爆撃を受け、海底に沈んでいった。

 

 

 

──────────────────────

 

「敵艦隊は撤退を開始したようです」

 

「よし。全艦へ伝達せよ。主砲、副砲、魚雷の使用は一旦中止。機銃および高角砲はそのまま射撃を継続せよ。敵艦隊を追撃することなく、その場に留まれ」

 

「航空部隊はどうしますか?もはや撤退命令は発されたのですから、旗艦を潰しても構わないように思いますが」

 

「そうか。ならそのようにしろ」

 

今回の作戦の内容は、敵と接触したらすぐに全艦の全火器をもって攻撃し、側面に回り込んで包囲する構えも見せる。怖気付いた敵が撤退すれば作戦成功とみなして追撃はしないが、撤退しないようなら攻撃をさらに徹底する、というものだ。

 

そもそも今作戦の目的は、敵の侵攻意図を挫くというものだ。その目的を果たすのにおいて、弾薬の消費をなるべく少なくして、かつ各艦の乗員の溜飲を下げるという意味においてはなかなか優れている。

 

まさに演習のごとく砲撃を繰り返したところ、遭遇から30分も経たないうちに敵が撤退を開始したのだ。

 

(敵は中世の軍隊。おそらく航空攻撃も相まって既に戦意は喪失しただろう。これで終わるはずだが・・・嫌な予感がする)

 

少々薄気味悪く思いつつ、撤退していく敵艦隊を眺めた。

 

 

 

 

──────────────────────

 

「敵艦隊の活動、著しく低下しています」

 

副長の言葉に、迷いが生じる。

 

「敵艦隊の魔導はそう大量に使用できるものでもないということだな」

 

「おそらく仰る通りかと。でなければわざわざ撤退を許す理由がわかりません」

 

「うーむ・・・」

 

敵艦隊はたったの20隻。全艦隊で突撃すれば、敵の魔導が途絶えたのちに弓矢や白兵戦でもって敵艦を制圧するということは可能かもしれない。

敵は我が方より速いが、逃げたのならば逃げたでそのままマイハークに向かえばいい話。

 

「ヘクトよ。ここで大人しく引き下がるのと、犠牲を厭わず強行突破するのとでは、どちらが優れていると思うかね?」

 

「それは当然後者でしょう。

・・・と言いたいところですが、日本とやらいう国の詳細が分からない以上は微妙です。あのような艦隊を他にも有している可能性はありますし、余計な消費を嫌って撤退を許容しているだけかもしれません。敵の魔導が有り余っていた場合、我が艦隊の各々は第1艦隊と同じ運命を辿ることになるでしょう。

あるいは無事に上陸できたとして、陸上においても、ギムでの戦いのように様々な兵器を持ち出される可能性があります」

 

「・・・しかしだ。

我が艦隊がこの場から撤退し、海上侵攻を断念した場合。如何にして我が国は戦争に勝つのだ?」

 

「それは───」

 

「ギムの戦いで証明されたように、日本という国家がある以上愚直な陸上侵攻のみでは埒が明かない。

なんとしてでも我が艦隊がマイハークへたどり着き、敵の後背を衝く必要がある。儂はそう思うのだ。

だいいち、儂はまだ敵艦の姿すら見ていない。こんな状況でおめおめと逃げ帰るということは、儂には出来ん。」

 

「・・・」

 

「許せ。」

 

そして、通信長を呼び出し、艦隊総員への命令を伝えた後、彼はこう告げた。

 

 

──我が艦隊は、その命を以て、この一大戦争の勝利に向けた(さきがけ)とならん。

 

我に続け。祖国の勝利の為、その身を捧げよ!!

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

「敵艦反転!」

 

「なに!?」

 

突然の報告に、司令部の要員は動揺した。

 

「砲撃の中止を、弾切れと捉えたのか・・・?」

 

今回の救援艦隊は、叭皇国派遣艦隊の12隻に三水戦・四航戦の居残り組を合わせて18隻。敵艦隊は多少散開しているが、それでも1隻の一斉射で2〜3隻は沈められるだろう。もし仮に敵艦隊4000隻をすべて沈めることになったとしても、単純計算で百数十斉射。まぁそんなにうまくはいかないだろうが、どのみち高角砲や機銃の射撃が主になるので()()()()()()()()()()()。戦艦の主砲に百斉射は荷が重いかもしれないが、高角砲にとっては百斉射など普通のことだ。いざとなれば魚雷もあるし、そもそも艦隊の半数ほどを沈めれば残余は戦意を喪失して敗走するだろう。

 

弾切れを期待した敵の攻撃は無意味に終わる。司令部内で、そのことはすぐに理解された。

 

「哀れな敵だが、全力で向かってくるというのならばこちらも全力を以て応じようではないか。

 

 

全艦に告ぐ。攻撃を再開せよ。手加減は無用だ。」

 

 

 

 

 

かくして、ギムの戦いを優に超える規模の大虐殺が始まった。

 

救援艦隊は微速で東に航行することで侵攻艦隊と等距離に占位しつつ、向かってくる敵艦隊へ攻撃を行った。

 

侵攻艦隊は既に300隻ほどの損害を受けていたが、先程の弾を節約しながらの攻撃に比して日本海軍の全力攻撃はあまりに強力であり、1時間も経たないうちに1000隻を失うことになる。

 

海将シャークンはなおも突撃の続行を主張したが、ここで臨時旗艦たる「ポラス」も被弾し艦尾から沈没。

シャークン含む司令部の要員10名は退艦に成功したものの、もはや敗勢と見た各艦隊の指揮官が独自に撤退を決定。

 

ここに、6万余名が犠牲となったロデニウス大陸史上最大の海戦、【ロデニウス沖大海戦】は幕を閉じることとなった。

*1
史実でもこのために機内禁煙である。




海戦書くの難しすぎるだろ・・・はっきりいって過去一駄作な自信がある()

というか、結局最後はダイジェストになってしまった・・・なんでやろなぁ。

当然のごとくギム攻防戦よりも描写・設定に自信が無いです。思う存分ご指摘をどうぞ。

ちなみにシャークンは無事に救助されました。今なら無謀な突撃を行った無能指揮官の汚名もセットでお得!



次回:『ジン・ハーク空襲』


※2022/10/25 大幅改稿
矛盾点を指摘してくださった方に感謝します。


──この物語はフィクションであり、実在するいかなる人物、団体、国家、歴史とも無関係です。
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