陽の昇りたる異界、星落とされたる覇者   作:C6N2

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呆気ない幕切れ。まああくまでチュートリアルだし


第一二話 事変終結

クワ・トイネ公国及びクイラ王国に対し、降伏を申し入れる魔信が届いたのは、4月18日の日没直前のことだった。

 

いや、この言い方では正確ではない。ロウリア王国が申し入れたのは、「クワ・トイネおよびクイラとの停戦を条件とした、日本・アメリカ両国への降伏」である。

 

 

「結局は、日本とアメリカに負けたのだ、ということか。実際その通りだからなんとも言えないな」

 

カナタは、ロウリア王国の降伏を伝えてきた側近と話す。

王国の「クワ・トイネには負けていない」という姿勢は、明日の和平会談に国家元首を出席させるという条件を出してきたということからして明らかだろう。

そして事実そうであるから、アメリカや日本との交渉が中心となる。当然ながら日米は外交官が出るのみであるから、この大陸における主導権は完全に日米にあるということだ。

 

「まあ、我々は正式な通商権さえ手に入ればそれでよいのです。戦後処理については、両国に任せましょう」

 

「うむ・・・仕方あるまい。小国の頭というのは辛いものだ」

 

「御冗談を。日米との友好を決断したのは閣下ではありませんか。そのおかげで、少なくとも今の我が国は文明圏外の小国以上のものであると言って間違いはないでしょう」

 

「そう言ってくれるとありがたい。

・・・にしても、今後の世界はどうなるのだろうな。日米を中心に、一度再構築されるやもしれぬ。少なくとも、中央世界がおいそれと世界の頂点だと威張ることのできない時代が来るだろう」

 

「卓見でございますな。我々は、新たな秩序の中でうまいこと生きていけるよう、努力するのみです」

 

「頼んだぞ。」

 

首相邸のバルコニーから星空を眺めつつ、そんな言葉を交わした。

 

 

 

──────────────────────

 

相対するはかつての仇敵、そして得体の知れない・・・というよりおぞましい2国家の外交官。

 

「では、これより今回のロウリア - クワ・トイネ戦争についての講和会議を開催します」

 

開会を宣言したのもやはり日本の外交官。この大陸におけるパワーバランスは完全に日本とアメリカに傾いている。

 

「今回の事変は、クワ・トイネ公国の併合を目的としたロウリア軍の武力侵攻が発端となっているということに間違いはありませんか」

 

「相違ない。」

 

「そしてそれに対し、クワ・トイネ公国に駐留していたわが軍は介入を余儀なくされ、それによって武力侵攻は頓挫し、またロウリア王国に対する攻撃を併せて行ったことで、ロウリア王国は降伏するに至った。これが今回の戦争の、大まかな流れだということでよろしいですね」

 

「その通りだ。

我々が降伏と引き換えに求めるのは、我が国に対する戦闘行為の一切の停止である」

 

パタジン将軍が答える。少々強気だが、こうでもしないと屈辱的条件を呑ませられる可能性があるのだ。

 

「では、我々が求めることとして以下の四点を挙げさせていただきます。

1、ロウリア王国は、その侵略的行動のいっさいを放棄する。

2、同国は同国の域内において、大日本帝国、アメリカ合衆国、クワ・トイネ公国、クイラ王国の経済的自由を認める。

3、同国は、その域内における日米軍の駐留を認める。

4、同国は、同国が実施してきた亜人に対する差別的政策を、段階的に撤廃していくものとする。」

 

最後の一文が読み上げられた時、アクロ―宰相が顔を顰め、発言した。

 

「亜人との断絶は、我が国の成立にも関わる、非常に根深い問題である。

そのことを、大国の都合で勝手に変更されてはたまったものではない。

 

そこにいる方々も、そのことは十分に承知しているはずだが?」

 

そういって、クワ・トイネ代表団の方を指さす。

 

「我が国としては、特に問題はないと考えます。

確かに、ロウリア王国の成立当初、我が国とは根深い亀裂がありました。

しかしもともと亜人というのはそこまで好戦的ではありません。長い年月をかけるうちに、ロウリア王国と戦争こそすれ、我が国においては人間と亜人との対立は自然と治まっていきました。」

 

返答したのは、クワ・トイネ公国政府に2人いる人間の高官のうちの1人、リンスイ外務卿である。

 

「我々は別段、人間を差別しようという考えが強いわけではないのです。そちらが変化すれば、友好的な関係を築くことは難くないと思います」

 

 

 

これに、ロウリア側の代表団は面食らった。何せ、これはつまり、こちら側が一方的に相手を憎んでいただけということになるからだ。

 

「・・・しかし、仮に我々が差別政策の撤廃を推し進めようとしたところで、わが臣民たちは決して納得しないだろう。何かきっかけが必要だ」

 

当然である。今回の戦争も、亜人憎しという感情が根底にあったからこそ実行できたのだ。

 

「それならば、私からいい考えがあります」

 

そう発言したのはアメリカ外務省の第三文明圏担当、クリス・ノートン。

 

「我々がクワ・トイネやクイラに行ったのと同様、ロウリア王国に対しても近代的生活基盤の整備を行いましょう。そしてそれに、クワ・トイネ公国の人材を用いるのです。

ただし有償で」

 

最後の一言が余計である、ロウリア代表団はだれもがそう思ったが、しかしあの強大な力を考えれば、もとよりこちらに拒否権などないのだ。

あの大国の技術で自国が近代化されるとなれば、国力も増え、代金を支払うことも不可能ではないかもしれない。そう考えることにした。

 

「公国としては異存はありません。」

 

王国の財務卿、レウスも発言する。

 

「我が国もその提案を受け入れたいが、仮に有償として、通貨の交換比率を設定しなければならないのではないか?」

 

「それに関しては後日早急に策定することといたしましょう。では、この内容で合意したものとみなしてよろしいですか?」

 

「「異存ありません」」

 

かくして、講和会議はなんとか平穏に終えることができた。

 

 

 

 

・・・しかしロウリア王国にはひとつ、解決しなければならない問題があった。

レウスは苦々しい表情で告げる。

 

「我が国は、この戦争の準備のために、パーパルディア皇国から莫大な有償援助を受けていました」

 

顔を顰める一同。

 

「・・・わかりきったことではありますが、返済のめどは」

 

「全く。」

 

パタジン将軍が後を引きとる。

 

「その為、パーパルディア皇国が、返済を求めて武力での恫喝をしてくる可能性があります。」

 

「つまり、我々にそれに対する庇護を求める、ということですね?」

 

「その通りです」

 

「・・・」

 

またしても面倒ごとに巻き込まれるのか、と日米の外交官は思った。

しかし、せっかく手に入るであろうフロンティアをないがしろにするわけにはいかない。

クワ・トイネからの情報により現世界の技術レベルを知った日米は、実力的侵略よりも経済的侵略の方が利益的にも国際評価的にも有用であるとの認識をしていた。しかしもしそれが脅かされるならば、躊躇なく実力行使に踏み切るべきであるのは明白だ。

 

「わかりました。軍の駐留は既定事項ですから、駐留軍で対応することになるでしょうが、万が一敵が膨大な物量で攻めてきた場合のことも考えねばなりません。要望は本国の方に伝えることとします」

 

「我が国も同様です」

 

「ありがたいことだ・・・」

 

あくまで敗戦国であるこちらに対して、これほど丁寧に対応してくれる。ハーク・ロウリアは改めて、日米が大国たるにふさわしい理性的な国だと思った。

 

 

 

──────────────────────

 

「以上が、ロウリア紛争の講和結果となります。」

 

「なるほど・・・」

 

報告を受け、少しの間考え込むのは合衆国大統領フランクリン・ルーズベルト。

 

「具体的な方法については政府内でしっかり話し合う必要があるが・・・

相手から手を出させれば、平和ボケした国民の目も覚め、フロンティアも手に入るから一石二鳥だな」

 

「やはりそうなりますか」

 

世界大戦(G r e a t W a r)が終わってからというもの、合衆国の不戦世論は根強い。近年は両洋艦隊法などで一応軍事力拡張の目処はたっているが、日米不可侵条約の締結によってその意義が疑問視され始めている。

しかし、何が起きるか全く予測のつかないのが異世界である。いざ強力な国家と戦争になった時のため、だけでなく世界の全貌を明らかにするためにも、軍備は是非とも必要であった。

ここは宗主国(ブリカス)に倣ってでも、うまいこと世論を味方につけなければならない。たとえそれが謀略の結果だとしても、世論が味方すれば何も問題はない。それが民主主義である。

 

「・・・して、例の事件の調査は?」

 

「・・・はっ、やはり最大の原因は復原力不足です。海軍は大慌てで改善に取り組んでおります」

 

東海岸の守りを固めるうえで重要であるバミューダ諸島が転移してきたことは、合衆国にとって幸運であった。すぐさま太平洋艦隊からいくつかの艦を回航し、謎に包まれた大西洋の探索に乗り出した。1942年2月のことである。

 

しかし、この目論見は最悪の形で失敗してしまう。空母レンジャーを基幹とする部隊は2月24日、地球ではスーパー台風(Super hurricane)といって差し支えない規模の台風に遭遇。中心気圧880ミリバール*1が齎す暴風と波浪は、可航半円*2にいた艦隊にも容赦なく襲い掛かり、空母も駆逐艦もなすすべなく翻弄された。随伴する駆逐艦が、トップヘビーの指摘されていたファラガット級だったのが運の尽きで、駆逐艦3隻が沈没、空母「レンジャー」及び軽巡洋艦1、駆逐艦3が中破し、他の艦艇もすべてが何らかの損傷を被るという、アメリカ海軍史上最大の海難事故が起きてしまった。

 

この事件は「レンジャー・アクシデント」と呼称され、衝撃を受けた米海軍は調査に乗り出した。その結果、復原力不足と判定されたファラガット級駆逐艦などの条約型艦艇の改装と、気象用も兼ねた艦載レーダーの高性能化及び全艦艇への搭載を可及的速やかに行うことが決定されたのである。

 

「当面の我が海軍の仕事は大西洋の探索になるだろう。今回よりもさらに大規模な荒天に遭遇する前提で、対策は徹底してやっておくように言っておかねばな」

 

「彼らならば、言われずともそのくらいはやるでしょう。・・・勇敢な若者たちが嵐の中に消えたことを考えると、非常にやり切れない気分です(政治的失点とみなされる可能性もあります)。」

 

「・・・まだ大丈夫だろう。幸い、フロンティアはいくらでも転がっているからな」

 

アメリカの覇権獲得に向けた動きは、着実に進んでいた。

 

 

 

 

──────────────────────

 

パーパルディア皇国、国家戦略局。

 

「・・・・・・飛行機械だと・・・・・・?」

 

「はい、ヴァルハルだけでなく他の諜報員からも同様の情報がはいっていますから、確実性は高いです」

 

報告を受けたイノスは、露骨に眉を顰めて見せる。

 

「まさか、あのムーがクワ・トイネを支援していたとはな・・・・・・

どうするか。内密に進めていた計画だが、これがもし陛下にバレれば首が危ない」

 

ロウリア王国への支援は、文明圏外国担当部南方担当課長たる彼が独断で推し進めてきた計画だ。

負けるはずのない物量を送り込み、ロウリア王国が勝った暁には、支援国の権利で()()()()()()()を分捕る。負けるはずがないとわかりきっていたからこそ、独断で進めていたのだ。

しかし今やその計画は水泡に帰し、国家予算に影響を及ぼすレベルの出費だけが残ってしまった。

 

「やむを得ん。我が国がロウリア王国に対し支援を行っていたという証拠は、すべて抹消しろ」

 

「承知しました」

 

「今すぐとりかかるぞ・・・いや、待て」

 

「何でしょうか」

 

部下のパルソが首を傾げる。

 

「ムーがクワ・トイネを支援しているというのはなかなかに重大な情報だ。

諜報員が目にした、といえば噓にはなるまい。この情報だけは上に伝達することにしよう」

 

「いいのですか?隠蔽が失敗する可能性も高まると思いますが・・・」

 

「いくらでもやりようはあるだろう。あるいはこの情報を対価にして、叱責を免れる可能性もある。ばれなければ昇進のチャンスだ。十分な価値はあるだろう」

 

 

かくして南方担当課より、皇国上層部に「ムーがロデニウス大陸に進出している」という情報がもたらされる。

ロデニウス大陸には今まで手を出していなかった皇国だが、それは海で隔てられているために、進出しやすい他国を優先していただけの話。

「裏庭を荒らされたようなもの」と、事態を重く見たパーパルディア皇国はムー大使を召喚。

 

 

第三文明圏での日米の戦いは、第一フェーズが終わった直後から早くも第二フェーズへ移行することとなる。

*1
1ミリバール(mbar)=1ヘクトパスカル(hPa)

*2
台風の進行方向に対して左側の海域。台風の風が進行方向によって打ち消されるため、風が弱まる




・・・・はい。非常に申し訳ないながら書き貯め分はここまでなので、以降は不定期となります。
更新できなかった時でも週一回は生存報告的なものはしようと思ってます。


実際にはもっと亜人差別は根深いだろうし、こんなまともな講和会議になるとは思えないけど、さすがにそんなものを書けるような文章力は持ち合わせてないのでご勘弁。

レンジャーアクシデントの元ネタは第四艦隊事件・・・ではなく「コブラ台風」です。ggれば出てきます。
レンジャーは転移当時バミューダにいたってことにしといてください。史実ではトリニダードトバゴにいたらしい。
というか・・・・・・

【急募】大西洋の使い方

今のところ原作で存在をほぼ無視されてるせいでまともに活用できる気がしない。思いつかなければレンジャーアクシデントはただの米海軍強化フラグになります()



次回:『皇国の疑念』
※今回の最後の部分と少々内容が被りますがご了承ください


──この物語はフィクションであり、実在するいかなる人物、団体、国家、歴史とも無関係です。
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